マーケットレポート

マーケットの視点

円高、政策無策で最も低調な日本株市場、打開余地が限られているだけに厳しく、狭いレンジ相場を耐え凌ぐしかない

・ 先週までの2週間の日経平均株価の騰落率は“4.8%下落”、NYダウの“4.1%下落”、ナスダックの“4.8%下落”と比べて同程度の下落率だが、この間、日経平均株価は8月11日にあっさりと節目の9500円を割り込み、17日には「9161円68銭」と7月1日の「9191円60銭」を下回り年初来安値を更新する不甲斐無さ。ザラ場安値では12日に「9065円94銭」と9100円割れ、先週もザラ場で16、17日と9100円割れとなり、ザラ場では09年5月18日以来、終値では5月1日以来の9000円割れが意識される展開となった。海外株市場も総じて低調であったが、韓国総合指数、インドSENSEXが逆に年初来高値を更新、上海総合指数も2600ポイント台を維持する堅調な動きで、今回の世界株市場不振の主たる原因となっている米国でも先週末のNYダウは年初来安値に対して“527.14ドル、5.4%”は上の水準に止まっているのとは対照的だ。夏休みということもあったが、売買高、売買代金とも低迷する中での株価沈滞が続く。

・ 直接の原因は、米国経済指標に象徴される世界経済のハードランディング懸念の台頭なのだが、とりわけ日本株不振を強めているのは「円高と政策不信」だ。対米ドルレートは84円/米ドル台と15年ぶりの円高水準を記録している。振り返ると、9~10日の日銀の金融政策決定会合を受けた白川日銀総裁の記者会見の内容は円高を警戒しつつも比較的楽観的なニュアンスが強く政策金利を0.1%に据え置いたが、その一方で同夜に米FRBは景気認識を「景気回復は継続している→生産高と雇用の回復ペースは遅くなった」とし景気判断を下方修正、政策金利を「長期間、異例の低水準のまま維持する」ことを確約、追加金融緩和として米FRBが保有する住宅ローン担保証券や政府機関債が元本償還となった際には長期国債に再投資することや米国債が満期を迎えた場合も米国債に再投資し続けることを発表した。このスタンスの違いが決定的なものとなり、米ドル安・円高が進む方向性が明確になった。しかし、その一方で、これほど円高の定着が明らかになっていることによって、逆にわが国の政府、日銀に対する政策発動への期待が高まり、為替は85円/米ドル前後、日経平均株価も9000円割れを回避する水準のところで踏み止まっている。皮肉にも、為替に関してはこれ以上の円高阻止が実行されると想定した個人の円売りが円高に歯止めをかけた格好となっている。マネーはより安全性への逃避と金利先安を睨んで債券市場に流れ込み、米国10年国債の金利は一気にリーマン・ショック後以来の3%割れ、2.5%台まで突っ込み、日本でも新発10年物国債利回りは0.90%と7年ぶりの低水準にまで低下している。

・ 政府が追加景気対策を検討し始めたことや、菅首相が白川日銀総裁と会談する姿勢を示すなど、政策発動への期待がなんとかマーケットの底抜けを支えている格好だが、その具体的な内容が失望するようなことにでもなれば再びマーケットは厳しい展開を余儀なくされそうだ。とりわけ、日銀は最近になって景気認識を上方修正したばかりであり、急な方向転換は難しい状況にありそうだ。70円/米ドル台の定着など歴史的な円高に進むようなことがあれば、現在の企業収益回復を支えるグローバル企業の業績を足踏みさせざるを得ないことになり、一方で世界的な需要急回復の反動で、中国など一時的な生産調整局面に入っている模様であり、為替問題のみならず数量回復に変調が生じることは気になるところだ。なにより、米欧ではデフレの影に怯える状況にあり、日本では一向にデフレから脱却する道筋が見えない。日米欧はまったく成長期待を喪失し、ただ単に新興国の成長力に依存しようという状態に陥っている。外需効果を最大限に高めるためには自国通貨安が最も効果的であり、これが昨今の「通貨戦争~自国通貨安誘導」を勃発させている。その点、日本は金利低下余地がない、巨額の財政赤字など金融、財政政策とも限られていることから不利な状況が続くことになりそうだ。現状打破には大胆な発想の政策実行を必要とするが、日本の場合は依然として“立ち往生”の状態が続くことから、当面は狭いレンジ相場の中を耐え凌ぐしかない。


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … NY連銀、フィラデルフィア連銀の景況感調査の結果からは先行き不安感は拭い去れず

 先週は国内では16日に「4~6月のGDP成長率(第1次速報)」、海外では米国で16日に「8月のNY連銀製造業景気指数」、「8月の住宅市場指数」、17日には「7月の住宅着工・許可件数」、「7月の鉱工業生産・設備稼働率」、19日は「8月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数」と「7月の景気先行指標総合指数」が発表された。NY連銀、フィラデルフィア連銀による地域景況感の調査から窺えるように、米国経済先行きへの不安感が払拭されない不安定な週となったといえる。

 16日に国内で「4~6月のGDP成長率(第1次速報)」が発表され、前期比年率換算0.4%増と3期連続の増加となったが、09年10~12月の同4.1%増、10年1~3月の同4.4%増と比較すると成長率は大幅に鈍化、さらにコンセンサスの同2.3%増を大きく下回る結果となった。項目別には民間最終消費支出が同0.1%増、民間住宅投資が同5.0%減、民間企業設備投資が同1.9%増、公的固定資本形成が同13%減であり、内需が同0.9%減となった。一方、輸入が同18%増、輸出が26%増と、相変わらず外需が牽引する格好となっている。コンセンサスとの乖離の原因となったのは民間住宅投資と民間企業設備投資である。特に民間企業設備投資はコンセンサスで3.6%増であり内需の成長率増加に貢献するはずであったが、ゴールデンウイーク直後から日米の金利差が急速に縮小し始め、その後の為替動向に懸念を持った国内企業が設備投資に慎重になったことが原因と考えられる。


GDP成長率の推移
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 米国では16日に「8月のNY連銀製造業景気指数」、19日に「8月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数」が発表されたが、NY連銀の調査では前月比で2ポイントの改善、フィラデルフィア連銀の調査では同12.8ポイントの悪化となり数字的にはまちまちの結果ではあるが、両指標とも直前のコンセンサスを下回ったことで悲観的な印象を受けた。NY連銀製造業景気指数では前月比改善となったが、項目別では新規受注が前月比12.84ポイント減の-2.71、出荷は同17.81ポイント減の-11.5と09年6月以来、14カ月ぶりに景気判断の分かれ目である0を下回ることになり、製造業の回復速度の鈍化懸念がより強まったといえる。さらにフィラデルフィア連銀製造業景況指数の発表でもこの不安感は継続した。フィラデルフィア連銀製造業景況指数はコンセンサスである前月比2.4ポイント増の7.5を下回り、前月比12.8ポイント減の-7.7と3カ月連続の悪化となった。6月分で前月比13.4ポイント減と大幅に悪化したことから、その後の予想では若干ながら反動を考慮していたが、8月も市場の期待には応えられなかった。しかし、17日発表の「7月の鉱工業生産・設備稼働率」では生産指数、稼働率ともにコンセンサスを上回り、鉱工業生産指数は前月比1.0%増、設備稼働率では74.8%と09年6月の68.2%を底にして緩やかながら堅調に回復を続けていることから、景況感調査においては必要以上に悲観的になりすぎている可能性もありうる。


米国景況感の推移
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 17日には「7月の住宅着工・許可件数」が発表され、結果は着工件数が前月比1.7%増の54万6000戸、許可件数が同3.1%減の56万5000戸となった。着工件数では前月比増となったがコンセンサスの同2.0%増には届かず、さらに6月分の速報値54万9000戸が53万7000戸に下方修正されたことが前月比増となった主因であり、住宅購入減税策の終了が引き続き大きく影響しているといえる。住宅市場の自立的回復には雇用改善と消費者の賃金アップが不可欠であり、当面は雇用統計の発表が焦点となろう。


住宅着工件数、建設許可件数の推移
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今週発表 … 国内は失業率の高止まり、米国では住宅市場において弱気の予想

 今週は国内で25日に「7月の貿易統計」、27日に「7月の全国消費者物価指数」、「7月の労働力調査」、海外では米国で24日に「7月の中古住宅販売件数」、25日に「7月の耐久財受注」、「7月の新築住宅販売件数」、27日に「4~6月のGDP成長率(改定値)」、「8月のミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)」が発表される。コンセンサスでは「食料・エネルギー除く全国消費者物価指数」が前年同月比1.5%減、「完全失業率」が5.3%で前月比横ばい、「有効求人倍率」が0.53で前月比0.01ポイント改善、「中古住宅販売件数」が前月比14%減、「新築住宅販売件数」が前月比横ばい、「耐久財受注」が前月比3.0%増、「輸送機器除く受注」は同0.5%増、「GDP成長率」が前期比年率換算で1.4%増と速報段階から1.0ポイントの下方修正、「ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)」が70と速報段階から0.4ポイントの上方修正となっている。国内の労働市場では改善の兆しが見えず、それが影響してしばらくは物価水準もデフレ傾向が続いていくと考えられる。一方の米国でも雇用環境、所得環境が上向かない前提から、住宅市場の予想も弱気とならざるを得ない状況が続く。


今週の主な決算発表予定


今週の主な決算発表予定
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