マーケットレポート

マーケットの視点

遅れる日本の政策対応で円高定着、夏過ぎれば悲観的な現象も多く出現しそうだが、そこにこそチャンスを求めたい

・ 先週の日本株市場は、一方通行的な、“暖簾に腕押し”的な催促相場となってしまった。日経平均株価は、25日まで4日続落、3日連続で年初来安値を更新、24日にはあっさりと09年5月1日以来、1年4カ月ぶりに9000円の大台割れ、ザラ場で9000円台を回復する場合もあったが勢いが続かず「8991円06銭」、前週末比“188.32円安”と3週連続の下落で終えた。この3週間は5勝16敗、累計で“651円06銭安、6.75%下落”、NYダウも同じく5勝16敗だが“4.72%下落”、ナスダックの7勝14敗“5.89%”と比較しても日本株市場が最も厳しい下落となった。この間、為替が85円/米ドル前後、ついに24日には83円/米ドル台まで円高が進み、暫くは落ち着いていたユーロも再び下落歩調が強まり、106円/ユーロ台にまで円高が進んだことも日本株市場を一段と押し下げた。ただ、ここまで明白な円高の方向性が見えると、さすがに政策対応への期待は高まり、何とか円高には歯止めがかかり26、27日は上昇に転じたが、積極的な買い戻しには程遠い。

・ ここまで日本株市場が深刻な停滞へと落ち込んだ原因は、はっきり言って日本のことを真剣に考えているとは思えない“民主党内の諍い”を背景とする政策不在だ。この経済情勢の厳しさが窮まっている時にこそ、前向きに引っ張ってくれるリーダーシップが必要なのに、政権首脳達は自らの覇権争いに血道を上げている。9月1日に告示、14日の投開票となる民主党代表戦に対して菅首相が再選への地盤固めに躍起になる一方、怒りの小沢一郎氏が出馬宣言、俄然、対決ムードが高まると同時に、今回の代表戦を契機に政局混乱もあり得ると予想されるところだ。ようやく行われた27日の菅首相の円高に対する談話で「必要な時には断固たる措置をとる、日銀に機動的な金融政策の実施を期待する、景気下振れリスクに対応、新成長戦略を前倒し」との言葉は並ぶが、メモを見ながらで付け焼刃的な内容で“現実感”がないことをマーケットに見透かされているようだ。27日に発表された米国の10年4~6月期の実質GDP成長率の改定値は速報値の前期比年率2.4%増から0.8ポイントの下方修正となり同1.6%増となり、景気減速感が一層明白になってきた。もっとも、内容的には個人消費、設備投資の内需項目が上方修正されたことからはそんなに深刻な状況になっている訳ではない。ワイオミング州で開催された国際経済シンポジウムの講演でバーナンキFRB議長が「更に追加の金融緩和を実施する用意がある」と発言しており、米国景気が二番底に陥る懸念は少ないとは予想するが当分の間は超低金利が継続することになり、その一方で日本がとり得る“円高歯止め策”は非常に限定的なものしか考えられなく、趨勢的には円高定着からは脱出できずに厳しいマーケット展開が続くことになる見通しだ。

・ なお、27日にインテルが、パソコン需要が予想ほど伸びないとして7~9月期売上高を112~120億ドル、前年同期比19~28%増→108~112億ドル、同15~19%増へと下方修正したことが景気認識を一層厳しいものにしているが、パソコン需要に変調が生じていることに関しては、既にHDD用スピンドルモータの世界シェア8割を有する日本電産が既に7月末の第1四半期決算発表の時に、HDDが6月末から急激に在庫調整に入ったと指摘していた。しかし、日本電産によると、在庫調整は8月で完了し10~12月期以降は再び巡航速度の成長に復帰すると予想している。一方、世界的な省エネ・環境対応の需要喚起策が停止することの反動が今後は顕著になることで不安感が台頭することになろう。わが国でも自動車のエコカー減税/補助金支給の打ち切りに対する駆け込み的な販売急増の反動が10月以降に大きく出てくることになろう。但し、例えば自動車メーカー側ではそのような事態は10年度下期の業績には読み込んでいるはずだ。いくら政策不在といってもそのような状況は予測出来ていることであり、経済実体への反動マイナスの影響が大きく、明らかになれば消費者マインドを一層冷え込ますことになりかねないことから、一定程度の効果を実現する政策対応は期待される。猛暑続きの夏が終われば、様々な悲観的な現象が多く出現することになりそうだが、一旦、回復トレンドに入った企業収益が一気に大きく失速することは考え難い。従って、今後のマクロ‐ミクロ・ギャップにこそ、投資チャンスを求めたいところだ。


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
クリックして拡大


今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
クリックして拡大


◆内外経済指標より

先週発表 … 米国住宅市場は最悪状態だが、住宅価格下落による需要回復に期待

 先週、国内では25日に「7月の貿易統計」、27日に「7月の全国消費者物価指数」、「7月の完全失業率」、「7月の有効求人倍率」が発表された。海外では、米国で24日に「7月の中古住宅販売件数」、25日に「7月の新築住宅販売件数」と「7月の耐久財受注」、27日には「4~6月のGDP成長率(改定値)」、「7月のミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)」が発表された。もっとも影響の大きかったものはやはり24、25日と続けて発表された住宅販売件数であろう。二つともコンセンサスを大幅に下回る結果となり、今が米国経済回復の正念場とも言える。

 27日に国内で「7月の完全失業率」が発表されたが、結果は5.2%で前月比0.1ポイント減と10年1月以来、6カ月ぶりの改善となった。就業者数は6271万人、前年同月比1万人増加、完全失業者数は331万人、同28万人減となり、完全失業者を求職理由別にみると、勤め先都合による失業者数が前年同月比19万人減と4カ月連続の減少となった。一方の有効求人倍率は0.53倍、前月比0.01ポイント上昇と3カ月連続の改善となった。月間有効求人数は前月比で1.3%増と10年4月から4カ月連続の増加となり、年度が代わり企業が労働力の獲得に動き始めたと思われ、緩やかに労働環境が持ち直している。しかし、図からわかるように依然として低水準が続いており厳しい状態であるということには変わりはない。


完全失業率と有効求人倍率の推移
クリックして拡大


 米国では24日に「7月の中古住宅販売件数」、25日に「7月の新築住宅販売件数」が発表された。中古住宅販売件数はコンセンサスの前月比14%減を大幅に下回り、同27%減の383万戸となった。また、在庫面では差し押さえ増加により前月の8.9カ月から12.5カ月へと上昇し、過去11年間で最多となった。地域別での販売状況でも北東部が同30%減、中西部が同35%減、南部が23%減、西部が25%減と全ての地域で同20%を超えた減少となった。今後、在庫が膨らんでいることによって価格低下の圧力が働き販売件数の下落傾向に歯止めがかかるであろうが、回復の兆しは当分、見えづらい状況が続くであろう。一方の新築住宅販売件数もコンセンサスの前月比横ばいを大きく下回り、27万6000戸、同12%減と住宅購入減税策が打ち切られ、駆け込み需要があった反動とはいえ、統計上最悪の結果となった。しかし、住宅価格が下落し続けていること、さらに住宅ローン金利が低水準で推移していることを考えると、これ以上の悪化は考えにくい。


住宅販売件数の推移
クリックして拡大


 27日には「4~6月のGDP成長率(改定値)」が発表されたが、結果はコンセンサスとほぼ同じ、前期比年率換算で1.6%増、速報値に対し0.8ポイントの下方修正となった。主要項目別では個人消費が同2%増で0.4ポイントの上方修正、設備投資が同17.6%増で0.6ポイントの上方修正とプラス材料にはなったのだが、輸入も同32%増で3.6ポイント上方修正され寄与度が-4.5%となったことがGDP全体の下方修正となった大きな要因である。GDP全体の7割のウエイトである個人消費が上方修正されたが、ISM指数やNY連銀製造業景気指数などマイナス結果が続いており、今後は予断を許さない状況が続くであろう。


米国GDP成長率の推移
クリックして拡大


今週発表 … 注目すべきは米国雇用統計、失業保険申請件数の増加を考慮してコンセンサスでは妥当な予想

 今週は、国内で31日に「7月の鉱工業生産」、9月3日に「4~6月の法人企業統計調査」、米国では31日に「8月のシカゴ購買部協会景気指数」、「CB消費者信頼感指数」、9月1日に「8月の製造業ISM指数」、3日に「8月の非製造業ISM指数」、そして「8月の雇用統計」と日米とも重要な経済指標の発表が相次ぐ。コンセンサスでは鉱工業生産が前月比0.2%減、シカゴ購買部協会景気指数は前月比4.7ポイント減、製造業ISM指数は同2.5ポイント減、雇用統計の完全失業率が前月比0.1ポイント悪化の9.6%、非農業部門雇用者数の変化が同10万6000人減、民間部門雇用者数の変化が同4万5000人増となっている。やはり、注目すべきは米国の雇用統計であるが、週次発表される新規失業保険申請件数では7月から再度増加に転じていることから雇用環境の改善も期待できず、妥当な予想といえる。


今週の主な決算発表予定


今週の主な決算発表予定
クリックして拡大


国内株取引のリスク
株価の変動、および為替の変動等(外国株式の場合)により損失が生じるおそれがあります。
国内株取引の手数料について
国内株の手数料は多岐に渡っているため、このスペースに表示するのが難しいため、詳細は国内株の「手数料とリスクについて」でご確認ください。
株式は、クーリング・オフの対象にはなりません
詳しくは手数料とリスクについてをご覧ください。