マーケットレポート

マーケットの視点

マーケットを大きく左右してきたのは“偏り過ぎた心理状態”、戦略明快かつ業績良好な企業の株価は評価不足過ぎる

・ 先週は、世界的に株式市場の下落トレンドに歯止めがかかった模様だ。“模様だ”と言っているのは、当然のことながら確証はないためだ。先々週まで続いた世界株市場の下落トレンドの根拠は、米国経済に対する悲観論で、先週、潮目が変わった理由は米国経済に対するその悲観論の後退であり、楽観論への傾きだ。1日に発表された「8月のISM製造業景況感指数」が“56.3”と市場予想の53.0を大幅に上回り、しかも7月の55.5を上回った。内容的にも雇用指数が7月の58.6から60.4へと上昇したことで週末発表の雇用統計への期待が高まる格好となり、実際に3日に発表された「8月の雇用統計」は、非農業部門雇用者数が5万4000人の減少と市場予想の10万人の減少に比べて“大幅に良かった”ことで、悲観ムードは一気に大きく後退している。しかし、米国の景気トレンドが1日や2日でガラッと変わる訳はなく、真実は元々一つしかない。では、何故、たったの1週間で悲観ムードが後退したのかと言うと、経済指標の数字自体が悲観的な数字から楽観論に傾く数字に変化したのではなく、発表される数字に対する“市場予測”などの見方が悲観に偏り過ぎていたことが背景だ。在庫調整段階にあれば、製造業の景況感は月次ベースでブレルことが通常で、今回の製造業のISM指数の市場予測である53.0はかなり悲観的過ぎた数字だ。一方、「8月のISM非製造業景況感指数」は51.5と7月の54.3を大幅に下回り、市場予想の53.5をも下回った。内容的には雇用指数が48.2と再び50を下回っている。雇用統計も市場予測が10万人減少だったので結果が“良い数字”に見えるが、減少傾向が継続している厳しさに変わりはなく、もしも市場予想値が“楽観的な”数字であったなら、“悲観”が継続していただろう。為替は、現実には84円/米ドルを軸にぜいぜいプラスマイナス1円/米ドル程度しか動いていないのに、日本株市場の反応はまるで70円/米ドル台と90円/米ドル台に振れているような印象だ。先週の日経平均株価は31日以外の4日間は上昇したが、1週間では前週末比“123.07円”の上昇に止まった。31日に“325.20円安”という今年2番目の下落幅を記録したことが響いている。31日の終値は「8824円06銭」と再び25日の年初来安値を更新した。26日以降、先週末まで6勝1敗という記録なのに、悲観ムードが極まった25日の終値「8845円39銭」に対して先週末の終値は「9114円13銭」と“268.74円”しか戻っておらず、株価は重た過ぎる。

・ 民主党代表戦が佳境を迎えることもあって10日に発表する予定の経済対策に期待は持てず、まして政府の「新成長戦略推進会議」の概要によると、ようやく9日に初会合を開く予定というから、今週も膠着状態が続きそうだ。失礼ながら、出席メンバーの顔ぶれを見ると“新”成長戦略という雰囲気ではない。バランスは取れているが、バランスが取れ過ぎるが故に中庸となり、日本を力強く前進させてくれる迫力のある成長戦略の策定には到らないような気がしてしまう。目下、最大の関心事は民主党代表戦だが、両候補を並べて見ているとどうしても“小沢首相”に見えてしまう。小沢一郎氏の方が、はるかに政治、経済、外交事情、世の中を知っているように思え、話す内容が具体的であり、思わず“小沢ニューデール”に期待したい気になる。恐らく、勝負は相当に際どい結果になるのだろう。菅首相の再選ではマーケットには何も変化が起きないだろうが、“小沢首相”になると風が吹くような気がする。さて、今週も重たい日本株市場となりそうだが、いずれにしても数カ月単位で狭いレンジ相場が続くことは滅多にはあり得ないし、一方的な上昇継続や下落継続もまたあり得ない。数カ月単位では大きなうねりの中での上昇トレンド、下落トレンドかを繰り返す。買うタイミングにもよるが、経営戦略が明快かつ業績の裏付けのある銘柄はマーケットが上昇トレンド転換した時に大活躍することは目に見えている。現在、内容の割には相当に株価が下押しした企業が目立つ状況になっているだけに、そのような銘柄は現時点、ゴロゴロ転がっている印象が強い。具体的には、日本電産を筆頭に、ホンダ、ソニー、日産、ニコン、クラレ、コマツ、パナソニック、キヤノンなど、まさしく日本代表企業だが、マーケットでの株価に対する評価は決してその企業の魅力を正しく反映しているとはとても思えない。これらの企業は、「円高の逆プレミアム」に株価が相当に押し潰されており、今のタイミングが買い時なのだろうと考えるのだが。


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
クリックして拡大


今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
クリックして拡大


◆内外経済指標より

先週発表 … 米国でISM製造業景況指数や雇用統計などが市場予想を上回り、二番底懸念は後退

 先週は、国内で8月31日に「7月の鉱工業生産」、9月3日に「4~6月の法人企業統計調査」、海外では米国で8月31日に「8月のシカゴ購買部協会景気指数」と「8月のCB消費者信頼感指数」、9月1日には「8月のISM製造業景況感指数」、3日には「8月のISM非製造業景況感指数」と市場が注目する「8月の雇用統計」が発表された。日米ともに予想を上回る結果も見られたことから、8月は強弱の交錯した経済指標の発表は相次いだものの、依然として景気回復基調はしっかりと続いていることを再確認できた週となったといえる。

 31日には国内で「7月の鉱工業生産」が発表され、コンセンサスでは前月比0.2%減と減少の予想であったが、結果は同0.3%増と2カ月ぶりの増加へ転じた。業種別にみると、一般機械工業が半導体製造装置やFPD製造装置が同24%増となったことが影響し同4.3%増、他の業種でも医薬品除く化学工業が同2.0%増、パルプ・紙・紙加工品工業が同1.9%増となった。一方、エコカー購入補助金の政策効果が一巡したことが響き輸送機械工業が同1.5%減、中国鉄鋼メーカーの在庫増で鉄鋼輸出にブレーキがかかったことや自動車向け鋼板の生産減少が響いたことで鉄鋼業が同5.1%減となった。8、9月の見込みは同1.6%増、同0.2%増と増加基調を維持する模様であり、リーマン・ショック後に大幅減となった反動から急回復した勢いは感じられないが、少なくとも景気の二番底に対する懸念は和らぎつつある。


完全失業率と有効求人倍率の推移
クリックして拡大


 3日には「4~6月の法人企業統計調査」が発表され、企業の売上高は前期比7.1%増で3四半期連続の増加、経常利益は同2.3%増で4四半期連続の増加となった。急激な円高がグローバル企業の減益要因となり製造業の経常利益では同22%減と減少に転じたが、非製造業が同22%増とカバーしたことからトータルでは増加を維持した格好だ。また、ソフトウェアを除く設備投資では前期比6.4%増と9四半期ぶりに増加へ転じた。非製造業では同4.1%増と3四半期連続増となったが、製造業が同12%増と9四半期ぶりの増加となったことが非常に好材料となった。10日発表の「4~6月GDP成長率(第二次速報)」では法人企業統計調査の結果が反映されるため、第一次速報の市場予想を大幅に下回る前期比年率0.4%増が上方修正される可能性はかなり大きい。


住宅販売件数の推移
クリックして拡大


 注目の米国指標では3日に「8月の雇用統計」が発表され、結果としては完全失業率が前月比0.1ポイント悪化の9.6%、非農業部門雇用者数が前月比で5万4000人減少となった。完全失業率のコンセンサスでは9.6%であり結果は予想通りなったが、非農業部門雇用者数は前月比で10万人減少と予想されていたことから好感の持てる結果となった。また、民間部門雇用者数がコンセンサスでは前月比4万人増であったが、実際には同6万7000人増とポジティブサプライズとなったことに注目したい。「7月の雇用統計」での民間部門雇用者数の変化幅はコンセンサスに届かず同7万1000人増であったが、今月の改定値では同10万7000人増と上方修正されており、完全失業率の高止まりが続き雇用環境が改善しているとは言い難いが、これで民間部門の雇用者数は8カ月連続の前月比増加となり、企業の雇用に対する慎重な姿勢も緩和されてきつつあると考えられる。


米国GDP成長率の推移
クリックして拡大


今週発表 … 機械受注統計、GDP改定値など重要指標の発表多く、特に国内企業の設備投資動向に注目

 今週は国内で8日に「7月の機械受注統計」、「8月の景気ウォッチャー調査」、9日に「7~9月の法人企業景気予測調査」、10日に「4~6月のGDP成長率」が発表される。経済指標以外では国内で6、7日に「日銀金融政策決定会合」が行われ、10日には「9月の政府月例経済報告」、海外では米国で8日に「ベージュブック」の発表と、主に国内の統計が焦点となろう。コンセンサスでは機械受注が前月比2.0%増、実質GDPが前期比年率で1.5%増と第一次速報の同0.4%増から上方修正される予想となっている。3日に発表された「4~6月の法人企業統計調査」で設備投資が前期比で増加に転じたことから、GDPの民間企業設備投資が前期比0.5%増から同1.5%増へと上方修正される予想となっていることが主な要因である。また、この先の設備投資の動向を見極めるためにも「7月の機械受注統計」にも注目したい。


今週の主な決算発表予定


今週の主な決算発表予定
クリックして拡大


国内株取引のリスク
株価の変動、および為替の変動等(外国株式の場合)により損失が生じるおそれがあります。
国内株取引の手数料について
国内株の手数料は多岐に渡っているため、このスペースに表示するのが難しいため、詳細は国内株の「手数料とリスクについて」でご確認ください。
株式は、クーリング・オフの対象にはなりません
詳しくは手数料とリスクについてをご覧ください。