マーケットレポート

マーケットの視点

日銀が本気の「包括緩和」、先進国の“金融緩和競争”でマーケットは世界的に『流動性相場』の様相が強まる

・ 先週はイベントが盛り沢山、日銀が4~5日の金融政策決定会合後に06年7月以来の「ゼロ金利政策」を復活させると同時に5兆円規模のETFやREITを含めた金融資産をマーケットから買い取るという『包括(金融)緩和』の実施を表明、8日には政府が10年度補正予算を盛り込んだ「緊急総合経済対策案」をまとめ上げ、米国の「9月の雇用統計」における非農業部門雇用者数が市場予想の1万人前後の減少を大幅に上回る9万5000人の減少となったことで11月2~3日に開催される米FOMCで追加金融緩和策が打ち出される可能性が高まり一段のドル安が進み、円高が一時、8日のNY市場で81円72銭/米ドルまで進んだ。一方、2010年のノーベル賞で根岸英一・米バデュー大学特別教授、鈴木章・北海道大学名誉教授が化学賞を受賞し日本人受賞は2年ぶり合計18人目の快挙となったこと、また、平和賞で中国の劉暁波氏への受賞が発表されたことで中国の人権問題が改めて世界的にクローズアップされることとなり、世界的に中国への批判の声が高まった。週末のG7は“中国元への為替操作批判の一方で先進国の金融緩和による為替安進展”の構図の議論が拮抗、堂々巡りの形で今回も国際協調が不調に終わり結論を韓国ソウルでのG20に先送りしている。

・ 目まぐるしい世界情勢の中で世界株市場は堅調に推移し、先週末のNYダウは「1万1006ドル48セント」と5月3日以来の1万1000ドル台、ナスダック総合指数も5月5日以来の2400ポイント台を回復、欧州も独DAXが年初来高値を更新、「国慶節」明けの上海総合指数も5月13日以来の2700ポイント台乗せとなるなど、『流動性相場』的色彩を帯び出した株式市場は、世界的に“楽観ムード”が広がりを見せている。先進国の金融緩和姿勢は根強く、マーケットは溢れ出すマネーが株式市場、商品市場に流れ込む『流動性相場』の様相が強まってきた。日経平均株価も、日銀が本気で思い切った“デフレ・円高対策姿勢”を示したこと、政府の「緊急総合経済対策」が明らかになったことが安心感に繋がり、金曜日こそ3連休を控え「米雇用統計」への警戒心から安値引けの前日比“95.93円安”となったものの先週末は前週末比“184.65円高”の「1万588円88銭」と3週間ぶりに上昇して終えた。

・ 今週の焦点は、米国企業の決算発表で12日にインテル、13日にJPモルガン、14日にAMD、グーグルが発表する。パソコン需要の変調でインテルは期中に下方修正を発表しているが、減速感が更に強まったかあるいは持ち直しつつあるか、とりわけ先行きの見方に対して注目が集まる。その点、インテルより下位メーカーである14日のAMDの決算の方が一層気懸かりだ。為替が限りなく80円/米ドル割れに近い状態の円高に膠着しているだけにハイテク関連株に与える影響は大きい。但し、わが国ハイテク株は円高進展で既に相当に下押ししており、ショック安的状態になればむしろ積極的に買って行きたい。中国の話題も大いに盛り上がりそうだ。今回の尖閣諸島問題に絡む中国の一連の“制裁”行為、劉暁波氏のノーベル平和賞受賞を契機とする中国内の人権問題、経済面での人民元における為替管理姿勢など、『中国異質論』が世界的に波紋を呼んでおり、批判の声も高まり“中国包囲網”が生まれつつあることは事実だ。やっかいなのはかつての中国とは違い、あるいは他の異質な小国とは違い、“異質な世界大国”を相手として議論を進めて行かなければならない点だ。実質GDPは本年に日本を抜き世界第2位に躍進、他の産業界への波及効果が最も大きな自動車産業において世界最大の販売市場となり、世界の工場であるのみならず他を圧倒する巨大な消費市場にもなり、日本再飛躍には絶対必要な『巨大・中国市場』であるだけに、実に微妙な問題だ。

・ ところで、先週、ファーストリテイリング(ユニクロ)は10年8月期業績が9期ぶりの過去最高となる一方で、今期が4期ぶりに減益となる見通しを発表した。上期の好調に支えられ過去最高を達成したが下期は56%減益と急落している。好調を続けた企業が一旦、下降トレンドに入ると更なる下方修正を余儀なくされることはよくある。奇しくも、同社のように“独自の勝ち組”仲間では王将フード、任天堂、ABCマートも曲がり角となっている。これは、反面、“伝統組”企業の業績、株価面での復活を示唆しているのではないだろうか。


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 日銀がデフレ脱却への強い意思を示すことで先行きの不安感が和らぐ

 先週は国内で7日に「8月の景気動向指数(速報値)」、8日に「9月の景気ウォッチャー調査」、海外では米国で5日に「9月の非製造業ISM指数」、8日に「9月の雇用統計」の発表があった。経済指標の発表以外では4~5日に「日銀金融政策決定会合」、8日にワシントンで「G7財務省・中央銀行総裁会議」が開催された。国内、海外ともに経済指標の結果としては明確に改善方向に向かっているとは言いがたいが、4~5日の金融政策決定会合で「無担保コールレート・オーバーナイト物を0~0.1%程度で推移するよう促す」方針へ変更しゼロ金利政策を復活させたことや基金を創設しETFやREITなどの金融資産を買い取る臨時の措置を実施することを表明したことでデフレ脱却へと強い意志を示し、マーケットでは先行きの不透明感への警戒心が多少和らいだといえよう。

 7日には内閣府が「8月の景気動向指数(速報値)」を発表した。一致CIが前月比0.5ポイント上昇の103.5と17カ月連続の上昇となったが、先行CIは前月比0.9ポイント下落の99.1と2カ月連続の下落となり不安感の漂う結果となった。各指数の構成項目を見ると、先行CIでは中小企業売上見通しDIが前月比8.9ポイント下落となり、8月時点では先行きに非常に警戒心を抱いていることがわかる。他にも東証株価指数や日経商品指数が先行CIの下落に大きく寄与し市況の弱さも感じられる。一方、一致CIの構成項目では有効求人倍率や商業販売額、さらに猛暑の影響によって大口電力使用量がCIの上昇に貢献したが、持続性があるとは言いがたい。逆に鉱工業生産指数や鉱工業生産財出荷指数は3カ月連続で下落しており、この先の一致CIの推移には注視すべきだ。


「景気動向指数」~先行CI、一致CIの推移
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 翌8日には「9月の景気ウォッチャー調査」が発表され、こちらは現状判断DIが前月比3.9ポイント下落、先行き判断DIは同1.4ポイント上昇となった。指数の構成項目では、現状判断DIについては家計動向が同5.3ポイント下落、企業動向が1.3ポイント下落、雇用が0.1ポイント上昇となっている。判断理由としては猛暑の影響で食料品では飲料、アイスクリーム、家電ではエアコンなどの販売数量が増加しプラスの要素もあるが、その反面、秋物衣料品の売上が落ち込んだことや野菜の収穫量が激減したため販売価格が高騰し価格面では売上に対しプラスに働いたが販売数量が激減するなど異常気象の影響が大きい。さらにエコカー補助金制度が終了し予想通り自動車販売数量が大幅に落ち込んだとの声も聞かれる。先行き判断DIの理由としては、9月下旬から気温が正常に戻り始めたことで秋物衣料品、さらには冬物衣料品の需要増加、人の外出も増え始めたことから観光ツアーの増加、11年3月終了予定である家電エコポイント制度の影響による年末駆込需要などが挙げられるが、天候や需要促進政策の影響であり、本格的な景気回復の効果はしばらく時間がかかりそうだ。


「景気ウォッチャー調査」~現状判断DI、先行き判断DIの推移
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 海外では米国で8日に注目の「9月の雇用統計」が発表された。完全失業率は9.6%と事前予想の9.7%に対し大きなブレはなかったが、非農業部門雇用者数は前月比9万5000人減と予想の同8000人減を大幅に下回った。民間部門の雇用者数が同8万5000人増の予想に届かず同6万4000人増となったことも一つの要因として挙げられるが、政府部門の雇用者数が同15万9000人減と激減したことが最大の要因であり3カ月連続で15万人以上の減少となっている。政府部門は財政状態の悪化から今後も人員削減を続けていくと予想されるが、民間部門は予想に届かない状態が続いているとはいえ、7月分は同7万1000人増→同10万7000人増→同11万7000人増となり、8月分は同6万7000人増→同9万3000人増へと上方修正されており、緩やかなペースながらも雇用環境の改善傾向が続いていることは確かである。


完全失業率、非農業部門雇用者数前月比増減幅の推移
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今週発表 … 米国経済指標は全般的にポジティブ予想

 今週は国内で13日に「8月の機械受注統計」、海外では米国で15日に「10月のNY連銀製造業景気指数」、「9月の小売売上高」、「9月の消費者物価指数」、「10月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)」が発表される。コンセンサスでは機械受注が前月比3.8%減、米国のNY連銀製造業景気指数が8で前月比3.9ポイント増、小売売上高が同0.5%増、輸送機器除くベースでは同0.4%増である。機械受注に関しては単月の予想や結果はあてにならず、現在の円高局面における企業の動向を見るには11月11日発表の7~9月分の結果、さらにはその先も踏まえて判断すべきであろう。米国の市場予想は全体的にポジティブな予想となっている。特にNY連銀製造業景気指数の項目では新規受注が回復の牽引役となる予想であり、米国経済の先行きに対する不安が徐々に薄らぎつつあるようだ。


今月の主な決算発表予定


今週の主な決算発表予定
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