マーケットレポート

マーケットの視点

G20の結論と米財務長官の「強いドル支持」で円高進行回避、割安感強いグローバル企業の決算好調を再評価へ

・ 韓国・慶州で開催されたG20は、まさに現在の経済情勢、先進国/新興国のパワーバランスを象徴する内容で幕を閉じた。先進国、新興国の経済トレンドが“デフレ懸念-インフレ懸念、超低金利策継続-利上げ実施”と全く反対方向にあることから、結果的に双方の微妙なズレを余韻として残したままではあったが、最大のテーマであった「通貨安競争の回避」に関しては、一定の協調合意に達したものと評価できる。18日に米ガイトナー財務長官が「通貨引き下げで成長、繁栄を実現することは不可能で米国は通貨安政策を採らない、中国・人民元は著しく割安」と、また欧州ではユーロ圏財務相会議議長のユンケル・ルクセンブルク首相が「為替の過度な変動や無秩序な動きはグローバルな金融・経済の安定に悪影響を与える」と発言、その一方で18日にブラジルはレアル高に歯止めをかけるためにブラジル国内の債券投資にかかる「金融取引税」の税率を4%から6%に引き上げ、中国は人民元を割安に抑える政策を批判する米国などに対応する狙いもあってか中国人民銀行が19 日に電撃的に、銀行の基準金利を20 日から期間1年物で0.25%上げ、貸出金利を5.56%、預金金利を2.50%にすると発表、G20直前での「通貨安競争」議論に向けての牽制が目立っていた。G20では、経常収支の赤字幅・黒字幅のGDP比率を制限する“数値基準”を決める案も浮上したが、結果的には見送られたものの、『為替レートの過度の変動や無秩序な動きを監視し通貨の競争的な切り下げを回避する。国際収支の過度な不均衡を是正するための政策を追求する。IMFの出資比率を見直して6%以上の議決権を新興国サイドに移す』等の共同声明を発表した。また、米ガイトナー財務長官が「強いドル支持」発言を強調したこともあり、米国の追加緩和策が既定路線とはいえども、この先、極端な円高進行は回避される可能性は高いだろう。

・ 先週は、昨今の中国の世界的なプレゼンスの高まりを印象付ける1週間でもあった。18日に終えた第17期中央委員会第5回全体会議(5中全会)で格差是正、環境を柱に国内消費主導の成長実現を目指す「第12次5カ年計画」を発表すると同時に中国共産党の次期最高指導者候補として習氏が指名され、19日に利上げ発表、21日には10年7~9月期の実質GDPが前年同期比9.6%増と世界経済の牽引役ぶりが改めて確認され、更にIMFへの出資比率の見直しによって現在の第6位から米国、日本に次ぐ第3位に浮上することになった。尖閣諸島問題、劉暁波氏のノーベル平和賞受賞の波紋、チベットでの学生による抗議デモ、各地での反日デモ勃発など、大国とは思えない異質ぶりも露呈されてはいるが、リーマン・ショック後の景気回復がもたつく米国の衰えが目立っているだけに、世界は中国を中心に動き始めているという認識をいよいよもって強くする。その点、人民元の水準維持操作を含め、多少強引なやり方があるとしても中国経済の高成長が持続されることは、結果的に世界経済にとって、多くの日本企業にとっては、大きな恩恵をもたらすことは間違いないだろう。19日の中国利上げで米日株価は急落したが上海株式市場は堅調であった。中国利上げの世界経済への影響に米日株式市場は過剰反応した格好だが、したたかな中国に対する過度の悲観は当面、必要ないだろう。中国国内で4~6月期に生じていた過剰在庫等による急激な生産調整も既に終了し、9月の工業生産は前年同月比13.3%増と回復に転じている。

・ 今週以降にはわが国での決算発表が本格化するが、既に日立、東芝、TDK、村田製、富士写などの観測記事が流れているようにハイテク中心にグローバル企業の業績は予想以上に好調である。米国でもS&P500 種株価指数の構成銘柄で22日までに決算発表した46 社のうち純利益が市場予想を上回った企業は83%、中でもテクノロジーは86%に達している。これまで、電機、自動車を中心に円高ダメージで株価は散々叩かれてきたが、現実の為替(円/米ドル・ユーロ)の動きは4~9月期が09年95.5・133.2→10年88.9・113.8、10年4~6月期92.0・117.1→7~9月期85.8・110.7と、前年同期比、前期比ベースで大幅に円高が進んだにも拘らずに、現実のグローバル企業の業績は予想以上に好転している。この背景は、各社のグローバル戦略に基づくコスト低減策の効果が大きな威力を発揮し円高抵抗力を格段に高めていることと、新興国での販売急増、生産回復に伴う操業度上昇効果が円高ダメージを充分に吸収しているためだ。下期は景気減速とインセンティブ効果の消滅で数量効果が減衰するが、その点を考慮したとしても株価の割安感は否めない。一連の流れは日本株買いシグナルのはずなのだが、円高ダメージの間違った印象と日本国内だけでの成長期待欠如が株価の重石になっているだけに過ぎない気がする。


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 米国住宅市場は底を打ちつつあるが、依然として低水準が続くだろう

 先週は国内で20日に「8月の景気動向指数(改訂値)」、海外では米国で18日に「9月の鉱工業生産・設備稼働率」、「10月の住宅市場指数」、19日に「9月の住宅着工・許可件数」、21日に「9月の景気先行指標総合指数」、「10月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数」、中国では21日に「7~9月のGDP成長率」を始めとする一連の主要指標が発表された。経済指標以外では国内で19日に「10月の政府月例経済報告」、米国では20日に「ベージュブック」が発表された。

 国内では19日に「10月の政府月例経済報告」が発表されたが、やはり、海外景気回復の鈍化や急速な円高に晒された国内企業の景況感を如実に表す格好となり、政府は基調判断を09年2月以来、1年8カ月ぶりに下方修正した。分野別に見ると、“個人消費”、“設備投資”は9月と変わらず「持ち直している」が続き、“住宅投資”も住宅エコポイント制度の効果が浸透してきたことで「持ち直している」へと上方修正された。一方で“輸出”は「増勢が鈍化している」→「このところ弱含んでいる」、“生産”は「緩やかに持ち直している」→「弱含んでいる」へと、どちらも「弱含んでいる」の文言が加えられ、これらの分野が全体の下方修正の大きな要因となったといえる。しかし、この先の国内景気は一時的に足踏み状態に入るであろうが、米国やアジア新興国は緩やかな回復を続けており外需が景気回復の牽引役となる図式は崩れていないことから、景気悪化状態に陥ることはあるまい。

 米国では18日に「10月の住宅市場指数」が発表され、結果はコンセンサスの14を上回り16、前月比で3ポイントの上昇となり、住宅購入減税策による今春の特需以来、初めての上昇となった。その他の項目である先行き指数、見込み客足指数もそれぞれ前月比5ポイント、2ポイントの上昇となり、米国住宅市場にわずかながら自立的回復の兆しが見え始めたといえる。翌日19日には、住宅関連統計「9月の住宅着工・許可件数」が発表され、結果としては建設許可件数が前月比5.6%減の53万9000戸と減少したが、住宅着工件数は同0.3%増の61万戸と微増ではあるが3カ月連続の増加となった。住宅市場の先行きを示す建設許可件数が減少となったが、これは集合住宅が同20%減と大幅に落ち込んだことが大きく影響しており、一戸建て住宅では前月比0.5%増と6カ月ぶりの増加となった。また、着工件数においても、7月、8月と集合住宅が同38%増、同42%増と大幅な増加となり全体の数字を押し上げたが、9月は逆に同9.7%減と減少に転じており、替わりに一戸建て住宅が同4.4%増と全体数字の押し上げ要因となった。全体的には米国住宅市場の主役である一戸建て住宅が底を打った感触はあるが、住宅市場指数では依然として判断の分かれ目である50を下回ったままであり、着工件数や許可件数もリーマン・ショック前の水準には程遠いということには注意すべきであろう。


「住宅市場指数」~現状指数、先行き指数、見込み客足指数の推移
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新築住宅販売件数、住宅着工件数、建設許可件数の推移
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 20日にはベージュブックが発表され、米国全体の総括的判断は、“緩やかな成長を続けている”となったが、ところどころで不安の残る面もあった。個別に挙げてみると、製造面では全体的に緩やかな拡大を続けており、クリーブランドやシカゴでは輸出、ボストン、ダラスでは半導体などのハイテク製品が好調となったが、フィラデルフィア、リッチモンドでは前回のベージュブック発表時より厳しくなった。個人消費についてはリッチモンド、アトランタ以外では緩やかな回復を続けているが、物価面では消費者が価格について敏感な姿勢を取っているため、仕入れ価格が上昇しても最終品に価格転嫁できずデフレ圧力への警戒感が残っている。住宅市場では、フィラデルフィアでは中古住宅販売が増加、リッチモンド、カンザスシティ、ダラスでは高価格帯の住宅販売が増加基調など多少は好感が持てる内容だったが、ほとんどの地域では住宅在庫が増加しており、今後の価格下落圧力は消えていない。このように地域によっては厳しい状態が続いていることから、11月に開催されるFOMCではFRBがどの程度の金融緩和措置を行うかが焦点となり手腕が試される。

 21日には「10月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数」が発表され前月比で1.7ポイント上昇の1.0となり3カ月ぶりにゼロを上回った。項目別では新規受注が前月比3.1ポイント上昇、出荷が同8.5ポイント上昇となったが、受注算が0.4ポイント下落となり、このことからフィラデルフィア地区の消費は弱含みであるといえる。また、仕入れ価格が同21.7ポイント上昇となったにも関わらず販売価格は同4.9ポイント上昇にとどまり、企業の収益圧迫を避けるために製造業の生産活動も低調にならざるを得ず、下図やベージュブックからも窺えるように同地区の景気回復は少々遅れている。


NY連銀製造業景気指数、フィラデルフィア連銀製造業景況指数、シカゴ購買部協会景気指数、製造業ISM指数の推移
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今週発表 … 国内、海外ともに重要な経済指標の発表が相次ぐ

 今週は国内で25日に「9月の貿易統計」、29日に「9月の労働力調査」、「9月の全国消費者物価指数」、「9月の鉱工業生産」、米国では25日に「9月の中古住宅販売件数」、26日に「8月のS&Pケース・シラー住宅価格指数」、「10月のCB消費者信頼感指数」、27日に「9月の耐久財受注」、「9月の新築住宅販売件数」、29日に「7~9月のGDP成長率」、「10月のシカゴ購買部協会景気指数」、「10月のミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)」が発表される。コンセンサスでは、完全失業率が5.1%で前月に対し横ばい、有効求人倍率が0.55倍で前月比0.01ポイントの改善、生鮮食品除く消費者物価指数が前年同月比1%減、鉱工業生産が前月比0.6%減となっている。米国の指標では中古住宅販売件数が428万戸、前月比3.6%増、新築住宅販売件数が30万戸、同4.0%増となっており、住宅関連の指標は回復となる予想である。注目の米国GDPのコンセンサスは前期比年率2.2%増であり、妥当な水準の予想といえる。


今月の主な決算発表予定


今週の主な決算発表予定
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