マーケットレポート

マーケットの視点

情けないほどの株価低迷が続く日本株市場、しかし、日本企業に対する実態認識不足に大きな投資価値が存在しよう

日経平均株価、NYダウ、香港ハンセン指数の推移
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・ 上図は、日経平均株価、NYダウ、香港ハンセン指数の株価を01年1月以降からそのまま並べたものである。11月2日号のエコノミスト(毎日新聞社)の中でメリルリンチ日本証券ストラテジストの菊池氏がこの三指数の関係を指摘していたので、実際に検証してみたのがこの図である。現在の日本株市場が如何に情けない状態にあるかをよく物語っている。三指数は03年春頃には並んでいたが。その後、中国隆盛で香港ハンセン指数は大幅上昇、日経平均株価も07年頃までは戦後最長の景気拡大、空前の業績好調でNYダウを大きく凌駕したが、リーマン・ショック勃発、世界大不況で08年秋には再び三指数は並んだが、一早い中国の高成長復帰を反映し香港ハンセン指数は勢いを取り戻したが、デフレ継続の日本、デフレ懸念の米国は株価停滞が続き、とりわけ、直近ではNYダウは10年の年初来高値を更新する戻りを示し堅調となっているが、歴史的な円高局面を迎えている日本は日経平均株価がNYダウを下回ったままズルズルと株価低迷にはまり込んでいる。先週も、米ナスダックはハイテク決算の好調を映して29日まで8日連騰で「2507.41ポイント」の年初来高値である4月23日「2530.15ポイント」更新を目前としているが、TOPIXは29日まで5日連続下落で「810.91ポイント」と8月31日の年初来安値「804.67ポイント」を更新しリーマン・ショック後の世界大恐慌への恐怖感が漂っていた09年1~3月以来の“800ポイント割れ”目前、と余りにも対照的だ。

・ 米日企業の7~9月期決算は、米国は先週で概ね発表が終わり、わが国も既に先週中に主要企業の発表が集中し、いずれも“予想以上の好調ぶり”が鮮明な決算内容が明らかになっている。例えば、NYダウ構成銘柄30社のうち発表済みとなった16 社でEPSの水準が事前のアナリスト予想を上回ったのが15 社、残り1社も予想と一致し予想を下回った会社はない。31日の日経新聞によると、わが国でも発表済み475社集計の7~9月期の経常利益は前年同期比86%増、4~6月期比でも14%増と急回復、リーマン・ショック前の08年4~6月期の98%に達する水準となっている。米国の好決算の牽引役はアップル、インテル、キャタピラーなどハイテクや新興国での業績好調が著しいグローバル企業、わが国でも電機が前年同期比4倍増、自動車が同3倍増など、やはりハイテク、グローバル企業の絶好調ぶりが目立っている。しかも、米国のグローバル企業群は“ドル安”の恩恵を受けている一方、わが国の電機、自動車を中心とするグローバル企業群は“円高”で散々、株価が叩かれ続けているが、7~9月期の為替は日経新聞によると前年同期に対して94→86円/米ドルと、134→111円/ユーロと各々8円、23円もの円高になりながらもの大幅な収益急伸である。

・ ホンダ、日産自、ソニー、パナソニック、日立、東芝、三菱電、日本電産、TDK、村田製作、コマツ、海運三社、総合商社など今回の決算発表を見ていると、その印象はまさに“空前の好決算”である。マスコミ等が株価低迷の理由として掲げ続けた“円高ダメージ”とは程遠い。今回、10.3期下期の想定為替レートをほぼ80円/米ドルと、いよいよ企業は覚悟を決めている。「どうにでもしやがれ!」という声が聞こえるような想定レートだ。これまでのマスコミ等の騒ぎ方だとこの為替水準だと赤字になっているくらいだが、充分な収益を確保する見通しにある。しかも、この下期は、夏までのエコカー補助金やエコポイントなどのインセンティブ特需、猛暑効果などが剥落し販売、生産数量が落ちても充分な収益水準を確保する業績堅調ぶりである。リーマン・ショック前の08年4~6月期は104円/米ドルの為替水準であり、その時からは24円/米ドルもの円高となっているにも拘らずである。東芝は70円/米ドルにも耐えられる経営体制を目指す「プロジェクト70」を打ち出し、日本電産の永守重信社長は「政府・日銀が何とかしてくれる可能性があればいいが、可能性はない。企業が健全に成長するには経営努力を急ぎ、10円/米ドルになっても(収益に)関係のない体制をつくることが正しい。2015 年度をメドに為替影響度ゼロの経営体制確立を目指す」と語った。すなわち、何もしてくれない、何も出来ない日本国政府には期待せず、“自らのグローバル経営”を徹底的に窮めることで一層強固な収益体制の確立を目指す。今回、パナソニックが三社統合を一段と進める『Transformationプロジェクト』の推進を打ち出したが、最大の注目点は高い成長力を実現するために“グローバルな開発、生産、販売体制”の確立を目指すという点だ。この言葉だけでは従来からある“グローバル化”のようにしか見えないが、最大のポイントは、「日本市場もグローバルベースの中の単なる一市場でしかない」という視点である。日産自動車が同社の旗艦小型車「マーチ」の国内生産をやめてタイから輸入することに対する批判の余地はない。

・ わが国のグローバル企業群は、“高い成長力と収益拡大を実現するグローバル最適化”を目指して進んでいる。残念ながら、現在の株式市場はその経営姿勢を正しく評価しているとは言えない。永守社長が決算説明会で「目先の変動ばかりを見て悲観的なことを騒ぐと絶対間違う」と説き、短期間での需給変動や為替変動に囚われ過ぎて企業が描く中長期展望を見ていないアナリストや投資家に声を荒げて正しい評価を促す姿は説得力がある。今回の決算で多くの決算説明会に出席すると、巷間に流布される厳しさとは裏腹に余裕を強く感じる。決して、単純に楽観視しているのでなく、経営戦略としての裏付けが滲み出ている。従って、その状況と株価とのギャップが余りにも大きいと感じてしまう。企業が実現してきたこれまでの実績、そして今下期、来期以降に起こり得ることを予想すると、現在の株価ポジションには強い違和感がある。企業が日本独特の奥床しさに基づいて、その“自信”を包み隠して慎重過ぎる公表数字を表現しても、アナリストは充分に理解しているものの、マスコミ、投資家の多くはまったく理解出来ていないということを企業自身は自覚するべきだろう。業績数字が下振れした時にマーケットの非難を浴びることが怖くていつまでも慎重な数字を発表し続けるのではなく、その時点における実態に即した数字を正直に公表し、想定が外れた時に詳しくそのズレを説明することで理解を得るようにすれば、その思いは充分に通じるはずであり、その時にこそ初めて正しい株価形成がなされるはずである。

・ 上図のような日本株低迷の原因は、メガバンク株の株価に象徴されているように世界に打って出られない企業群に“未来がない”ということのためなのだろう。問題なのは、国内の閉塞状態を打破しグローバル展開を勢いよく進めている企業群までにもそのイメージを押し付けている日本株市場の“大誤解”だ。わが国企業のグローバル展開は、決して自動車、電機だけの十八番ではない。キリン、アサヒ、ヤクルト、味の素などの食品関連のグローバル開拓も一層スケールアップしており、昨今はJR、電力までもがグローバル展開を標榜している。現在の日本株市場の最大の重石ともなっているメガバンクは早くグローバルという視点を経営にどうのように組み込むかに気がつくべきだろうが、それとも、そのような余裕は全くないほど実体が腐っているということを株価が示し続けているのだろうか。それ以外の企業群は、企業自身の説明力不足という側面も多少あるが、投資家、特に機関投資家サイドの分析が浅くなり過ぎていることにも原因があるのだろう。そして何より、中国に振り回され続け、欧米に無視され続けながら、東南アジアや中東、中南米の国々の熱い期待に応えようとしない日本国政府の情けなさを見ると、まさしく「日本には未来がない」となってしまう。これでは株価低迷も当然だ。79円と80円台の差はあと1、2円でしかないのに、いつまでも“15年半ぶり”と書き立てるマスコミも、いい加減にもっと突っ込んだ取材と分析をした方がいいのではないだろうか。今週は米国で中間選挙、FOMC、「雇用統計」など重要指標の発表、予定を早めた日銀金融政策決定会合、豪・英・ECBの金融政策会合、APEC財務相会合と重要スケジュールがビッチリだ。マーケットは身動きが取れない状態が続こう。しかし、外部環境がどのように変動しようが、企業は進化を続けている。明白なことは、進化過程にある多くの企業を現在の株価は決して正しく評価していないズレがあることだ。そこに投資の価値が存在していることは間違いのないことだろう。


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 米国住宅販売件数は予想を上回る好結果となったが、低水準状態は続く

 先週の国内では25日に「9月の貿易統計」、29日に「9月の労働力調査」、「9月の全国消費者物価指数」、「9月の鉱工業生産(速報値)」、海外では米国で25日に「9月の中古住宅販売件数」、26日に「8月のS&P ケース・シラー住宅価格指数」、27日に「9月の耐久財受注」、「9月の新築住宅販売件数」、29日に「7~9月のGDP成長率(速報値)」、「10月のシカゴ購買部協会景気指数」、「10月のミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)」が発表された。経済指標以外では28日に日銀が「経済・物価情勢の展望」を発表した。総じて、10月の最終週であった先週は、国内企業の決算発表が相次ぐ中、日米ともに主要な経済指標が集中した重要な週となったといえる。

 29日に国内で発表された「9月の鉱工業生産」であるが、結果としては前月比1.9%減と直前の市場予想である同0.6%減を大幅に下回り、且つ4カ月連続の減少となった。さらに基調判断も前月の「生産は横ばい傾向、先行きについては弱含み」から下方修正され「生産は弱含み傾向」となった。内訳を見ると、予想通り、エコカー補助金制度の打ち切りの影響によって、輸送機械工業が同4.2%減となった。さらには電子部品・デバイス工業も同5.0%減と大きく減少し、これまで政策効果や外需の牽引によって回復してきた業種の落ち込みが目立つ結果となった。また、先行きの予測についても10月は同3.6%減となっており、5カ月連続の減少となる可能性は高い。11月は10月の減少の反動と年末セールへの在庫積み増しによって同1.7%増の予測だが、6月から続く減少幅を取り戻す程度には至っておらず、当面は一進一退の状態が続くであろう。


「鉱工業生産」~生産、出荷、在庫指数の推移
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 米国では25日に「9月の中古住宅販売件数」、27日に「9月の新築住宅販売件数」が発表されたが、どちらもコンセンサスを上回る明るい結果となった。中古住宅ではコンセンサスの前月比3.6%増に対し、年率換算453万戸の同10%増、新築住宅では同じくコンセンサスの4.0%増を上回り、年率換算30万7000戸の同6.6%増となり、どちらも2カ月連続の増加となった。しかし、図からもわかるように、両方とも住宅購入減税策の終了以前の水準を依然として下回っている。また、ベージュブックでも示されているように、一部の地域や中心地のみ販売件数が増加しているだけで、米国住宅市場は自立的回復の兆しが微かに見え始めた程度であるということをしっかりと認識したい。

新築、中古住宅販売件数の推移
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 29日には、「7~9月のGDP成長率(速報値)」が発表された。結果は前期比年率2.0%増となり5四半期連続の増加となった。4~6月分が前期比年率1.7%増であり、7~9月分では増加率が拡大し再び勢いを取り戻した感触はあるが、雇用環境の回復には未だ力不足といえる緩やかな回復であった。内訳では、ウエイトの大きい個人消費が同2.6%増とリーマン・ショック後では最大の伸びとなり全体を牽引したが、逆に住宅投資が4~6月分の反動で同29%減と減少したことが足を引っ張る格好となった。しかし、一連の住宅統計から住宅市場が現状より悪化する兆候はないと判断されるため、米国市場は個人消費が下支えとなり緩やかな回復を続けていくであろう。


米国GDP前期比年率伸び率の推移
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今週発表 … 日銀、FRBの一挙手一投足に注目の一週間

 今週は、国内では主な経済指標の発表はなく、米国で1日に「10月の製造業ISM指数」、3日に「10月の非製造業ISM指数」、5日に「10月の雇用統計」が発表される。コンセンサスは製造業ISM指数が54.5で前月比0.1ポイント上昇のほぼ横ばい、非製造業ISM指数が前月比0.8ポイント上昇、失業率が9.6%、非農業部門雇用者数が前月比6万人増加となっている。経済指標では大きな変化は予想されておらず、今週はむしろ日米ともに開催されるイベントに注目したい。まずは米国で2日に中間選挙の投開票、2~3日にはFOMCが開催され米国中長期国債の購入規模が焦点となる。国内では当初は15~16日に開催する予定だった金融政策決定会合を米国FOMCの翌日、4~5日に前倒しで開催することとなり、日米両国の中央銀行にとって正念場の一週間となりそうだ。


今月の主な決算発表予定


今週の主な決算発表予定
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