マーケットレポート

マーケットの視点

どちらかと言えば“売り材料”にされ易い決算発表シーズンが再び到来、“失望売り”を買い進むべき内容は多いはず

・ 先週末の日本株市場は、S&Pの日本国債格下げを引き金としたような“日本売り”となってしまったが、先週来、日経新聞の観測記事を含めて、業績動向、決算発表の内容が株価を大きく左右するシーズンが再び到来した。決算発表に関しては、いつものことながら、よほどのポジティブサプライズでないと株価は好反応しない。例えば、3月決算会社で今回発表した10年4~12月期の内容が予想以上に好調でも、11.3期通期見通しを据え置くと売られてしまう。12月本決算を発表したキヤノンは次期11.12期の公表見通しがコンセンサス予想通りに止まったということでやはり売られた。ほとんどの日本企業は“奥床し過ぎる”がために投資家の気に合うような会社予想を公表することは数少ないことは経験上、充分に承知しているはずなのに。3月決算会社の中には四半期ごとに好調な結果を発表しても頑なに通期見通しを変えず、ついに本決算発表まで辿り着き慎重過ぎる次期予想を発表し失望売りを浴びてしまう。注目すべき決算内容を続けているのに、一体いつその内容が評価されるのだろう。企業自身も、“奥床しい美徳”を追及することが株主にとって果たして誠意なのかどうかを考え直すべきだろう。また、決算に関して、本来は評価すべきメッセージが伝わらずに、表面的な数字だけがネガティブに解釈されて株価が売られる場合もある。

・ 先週の決算では、25日発表の日本電産と27日発表のキヤノンの決算内容がその例だ。日本電産の10~12月期の営業利益は220億円、前年同期比6.3%減とネットブックパソコンがタブレットPCに食われ、世界シェア8割のHDD用モータにブレーキがかかったと失望された。しかし、同社の永守社長のコメントでは、確かにネットブック用HDD向けモータの勢いが止まったのは事実だが、その代わり、クラウドコンピューティング普及も含めネット需要急拡大を背景にサーバー需要が予想以上に伸びており、サーバー用HDD向けモータの引き合いが予想外に急拡大しており、10~12月期はその需要シフトに対応し切れずに機会損失30億円程度が発生したとのことだ。それがなければ10~12月期の営業利益は250億円、同6.3%増と増益を確保したことになる。サーバー好調に関しては、米インテルもサーバー向けのMPU好調がパソコン向け減速をカバーしたことが予想外の10年度業績好調につながったと発表していた。ネットブックパソコンには2.5インチHDD、サーバーには3.5インチHDDが搭載されており、元来、3.5インチHDD向けは同社得意であり採算的にも高付加価値。11年1~3月期中には対応を終え、収益性は回復し再び高成長に復帰するとの自信を示している。永守社長にとって、この需要シフトの読み違えは珍しいことのようでしきりに反省していたが、HDD向けモータの全体需要そのものは10月末時点の予想通り1億6800万台だったことで、予測精度の高さを改めて強調していた。今後は、米エマソン社のモータ事業を買収したことで電気自動車向けを含めた車載用、そして家電向けモータ事業が急拡大すること、携帯電話向けモータのシェア28%(日本電産コパル15%と合わせ43%になる)、アップル、ノキア向けでスマートフォン向け振動モータのシェア80%を有する三洋電機の子会社「三洋精密」を買収したが、日本電産のテコ入れで現在の営業赤字を売上高営業利益率20%の高収益部門に仕立てあげると表明したことなど、マーケットに評価されていない注目点は多い。

・ キヤノンは10.12期通期で大幅増益だったが、10~12月期の営業利益が828億円、前年同期比10.1%減となり、11.12期の営業利益を4700億円、前期比21.3%増と公表したがコンセンサス予想通りで5000億円を上回る公表値にならなかったのが気に食わないと28日の株価は“130円、3.1%下落”と急落した。しかし、10~12月期は販管費を前年同期比“591億円、22.3%”(年間増分の34%に相当)も増やし、売上高販管費比率は、27.7%→30.3%と急上昇している。これは以下のように解釈できる。足下の収益に自信を深めたことによって、販促費を強烈に使い複写機、レーザービームプリンタを現地通貨ベースで前年同期比「22%増収、17%増収」と販売攻勢かけた。同製品は11.12期も同じく「25%増収、15%増収」を狙う。PPC、LBPの拡販は収益貢献の高い消耗品・サービス需要に繋がる。恐らくコンパクトデジタルカメラも値引き攻勢で販売ラッシュをかけたのだろう。キヤノン製「コンデジ」ユーザーはキヤノン製「デジ一眼」の潜在ユーザーともなる。予想数字に関しては、期初公表値としては“二桁増収増益”は充分に意欲的で、10.12期も円高進展の中で営業利益は期初公表値を576億円上回って着地、11.12期が5000億円を上回る可能性は極めて高い。以上のような点を評価すれば、日本電産もキヤノンも決して失望売りする内容ではないはずだ。今週は、ホンダ、ソニーなど、“誤解され易い決算内容”を発表する企業が相次ぐが、勿論、内容を吟味する必要はあるが“失望売り”は買いだ。


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 米国個人消費の回復は予想以上、今後は生産拡大、雇用改善へとつながろう

 先週は国内で26日に「12月の企業向けサービス価格指数」、27日に「12月の貿易統計」、28日に「12月の労働力調査」、「12月の全国消費者物価指数」が発表された。海外では米国で25日に「11月のS&Pケース・シラー住宅価格指数」、「1月のCB消費者信頼感指数」、26日に「12月の新築住宅販売件数」、27日に「12月の耐久財受注」、28日に「10~12月のGDP成長率(速報値)」が発表された。国内では完全失業率の改善、米国では個人消費の力強さが注目されポジティブな指標結果が集まる週となったといえる。

 28日に国内で総務省から「12月の完全失業率」、厚生労働省から「12月の有効求人倍率」が発表された。完全失業率は4.9%、前月比0.2ポイント改善し10年2月の4.9%以来、10カ月ぶりに5%を下回った。雇用者数は前月比8万人増、完全失業者数は同13万人減であり、求職を諦める動きも見られたが、大半は労働市場が吸収した格好となり順調に雇用環境が改善しつつある。また、求職理由別完全失業者数では“勤め先や事業の都合”による完全失業者が前月比6万人減の87万人となり、これで10月の99万人、11月の93万人に続き3カ月連続で100万人を下回り、企業側に余裕が出てきつつあると感じられる。一方の「12月の有効求人倍率」は0.57倍、前月比で横ばいとなった。新規求人倍率では1.01倍、前月比0.06ポイント上昇し、08年11月の1.02倍以来、2年ぶりに1倍を上回ったことから景気が上向きつつあるという認識が企業にも芽生え始め、11年はコスト削減などの守りの姿勢から、生産能力増強へと攻めの姿勢に変わっていくであろう。


完全失業率、有効求人倍率の推移
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 海外では米国で26日に「12月の新築住宅販売件数」が発表され、20日に発表された中古住宅販売件数の急上昇に続き新築住宅販売件数も32万9000戸と3カ月ぶりに30万戸を上回り、前月比18%増の大幅増となった。また、在庫戸数は19万戸となり前月の19万5000戸に続いて20万戸を下回る歴史的にも低水準の状態となっている。新築住宅販売件数急増の理由も、中古住宅販売件数と同じく12月の住宅ローン金利が上昇したことが購入者の足を速めたからである。さらに11月分の販売件数が29万戸から28万戸へと下方修正されたことも大幅増の一因となっている。来月発表の1月分ではこれら二つの一時的な要因の反動で販売件数の減少が考えられ、また、新築住宅販売件数は中古住宅の販売件数と比べると回復力が鈍いことから、しばらくは30万戸前後で推移していくだろう。

新築住宅、中古住宅販売件数の推移
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 28日には「10~12月のGDP成長率(速報値)」が発表された。結果としてはコンセンサスの前期比年率3.5%増には及ばず同3.2%増となったが、GDPの7割を占める個人消費はコンセンサスの同4.1%増を上回り同4.4%増、これで6四半期連続の増加となり、改めて米国個人消費の力強さを感じる結果となった。また、その他の項目では輸出が同8.5%増、輸入が14%減とドル安が輸出増へ大きく貢献したといえる。一方で大幅に減少した項目が民間投資で同23%減となったが、在庫投資を除くと同4.2%増であり、在庫削減がGDP成長率を3.7ポイント押し下げた。個人消費が年末商戦で例年以上に好調であったとはいえ、今後も増加傾向を維持する可能性は高く、今後は生産拡大に転じてこよう。実際に1月のNY連銀製造業景気指数やフィラデルフィア連銀製造業景況指数においても、新規受注と生産はきわめて好調であった。これらが徐々に労働力確保につながり雇用環境の改善に波及してくると思われる。

米国GDP成長率前期比年率の推移
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今週発表 … 注目は1月の雇用統計、弱気と強気が入り混じる予想であるが、回復基調にはかわりない

 今週の経済指標は国内で31日に「12月の鉱工業生産」、「12月の新設住宅着工戸数」、海外では米国で31日に「12月の個人所得・消費支出」、「1月のシカゴ購買部協会景気指数」、1日に「1月の製造業ISM指数」、3日に「1月の非製造業ISM指数」、4日に「1月の雇用統計」が発表される。コンセンサスでは鉱工業生産が前月比2.8%増、個人所得が前月比0.4%増、消費支出が同0.5%増、シカゴ購買部協会景気指数が前月比3.6ポイント減の65.0、製造業ISM指数が前月比0.5ポイント増の57.5、完全失業率が9.5%、非農業部門雇用者数が前月比15万人増となっている。非農業部門雇用者数増減幅は前月比5~20万人増のレンジであり、弱気予想と強気予想が入り混じって入るが、どちらにせよ雇用環境は回復傾向を辿っているということは間違いなかろう。



今週の主な決算発表予定


今週の主な決算発表予定
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