マーケットレポート

マーケットの視点

リビア緊迫で世界同時株安となったが短期間で不安収束、成長戦略打ち出す日本企業多く今後の株価下落はチャンス到来

・ 先週は、北アフリカ諸国で連鎖するアラブの民衆騒乱がリビアで燃え盛り、その勢いが中東諸国を巻き込み石油大国での混乱を招くという連想、更には中国でも“一党独裁”打破への動きに繋がるのでは、という思惑にまで発展、原油価格がチュニジア、アルジェリア、エジプトでの騒乱をきっかけに北海ブレントが高騰し100ドル/バレルを突破するまでに上昇していたのが、中東産ドバイ、そしてWTI原油先物も急騰し100ドル/バレル台突破、北海ブレントは110ドル/バレル台乗せまで上昇した。このところ、原油価格も含め国際商品市況がジリ高傾向を強めていたが、新興国のインフレ懸念と同時にリスクマネーが緩み始めたとして評価され「債券市場から株式市場、新興国市場から先進国株市場」への流れになっていたが、今回の行き過ぎた原油高が新興国のインフレ懸念を一層強める一方で、米国の個人消費に打撃を与え順調な回復基調を辿る米国景気を腰折れさせかねないという不安も台頭、一気に世界同時株安に転じてしまった。根底には、中東における米国コントロール態勢が崩れ混乱に歯止めが利かなくなり、米国失墜が一段と強まるのではという不安心理を掻き立てる見方も出始め、問題が長期化するとの予想まであった。

・ しかし、株式市場の混乱は先週木曜日までで一旦収束したように見える。最大の支援材料はサウジアラビアの原油増産宣言だ。同国のヌアイミ石油鉱物資源相が「OPECはリビア分を埋め合わせる十分な量を持っており、必要ならいつでも供給する」と発言、実際に25日にサウジアラビアの原油生産量をそれまでの860万バレル/日から900万バレル/日まで引き上げた。リビアの原油生産量は160万/日であったが、今回の騒動で25%に相当する40万バレル/日もの減産となった模様だが、サウジビアラビアの増産はこの分量に相当する。また、サウジアラビアの原油生産能力は1200万バレル/日の規模で増産余力は300万バレル/日でリビア生産が完全に停止しても原油供給を補うには十分である。また、リビア情勢も反体制派が暫定政権を設立する動きとなり緊迫状態は続きそうなことながらも、民衆騒乱が一気に中東諸国に広がる懸念はとりあえず薄らいでいる。先週は米ナスダックが24日に早くも反発に転じたことも好感され先週末の25日の日経平均株価は4日ぶりの反発に転じ、週末のNYダウ、欧州株市場、あるいは先進国株市場なども軒並み反発に転じ、世界同時株安に歯止めがかかる展開となった。日経平均株価に対しては1万200円の攻防とか、1万割れを指摘する悲観的な見方もあったが、今回の地政学リスク勃発でも3日間で“404.82円安、3.7%下落”とはなったが、83円/米ドル台から81円/米ドル台への円高進行が伴った割にはグローバル関連株が意外に底堅く推移し先週のザラ場安値でも「1万428円32銭」と1万400円台を維持、先週末は5週間ぶりに下落に転じたものの「1万526円76銭」と1万500円台に乗せて引けた。

・ 今週は3月上旬となることで米国の重要経済指標の発表が相次ぐこともあり、緊迫した北アフリカ・中東情勢の行方とともに、引き続き不安定なマーケット展開が続きかねない。しかし、先週を見る限り日本株市場は基本的に底堅い動きとなりそうだ。第3四半期決算の発表を終え、円高抵抗力を含めわが国企業の業績に対する安心感が高まっていることに加え、先々週に日銀、政府が揃って上方修正したばかりの景気判断が簡単に揺らぐとは思えない。一方、25日に味の素が発表した新・中期経営計画で今後3カ年、海外食品メーカーを中心に3000億円のM&Aを実施する方針を明らかにしたこと、富士フイルム米メルクからバイオ医薬事業を買収するというニュースが報じられたこと、更に三菱重工業が経営迅速化を図るために事業体制を見直し1964年以来の機構改革を実施すること、みずほFGが戦略部門である証券、信託部門を100%子会社化しグループ経営の効率化を図ること、など新たな成長戦略の実現に向けた発表が相次いでいる。日本の政治は混乱、停滞状態が深まる一方だが、日本企業は立ち止まってはいない。グローバル競争を勝ち抜くための戦略転換の姿勢を強め始めている。これからの株価下落は大きなチャンス到来だ。


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 1月の輸出額低下は想定範囲内、石炭や原油価格高騰で輸入額が増大

 先週は国内で23日に「1月の貿易統計」、25日に「1月の全国消費者物価指数」、米国では22日に「12月のS&Pケース・シラー住宅価格指数」、「2月のCB消費者信頼感指数」、23日に「1月の中古住宅販売件数」、24日に「1月の新築住宅販売件数」、25日に「10~12月のGDP成長率(改定値)」が発表された。経済指標以外では21日に「2月の政府月例経済報告」が発表されたが、予想通り、基調判断を「足踏み状態にあるが、一部に持ち直しに向けた動きがみられる。」から「持ち直しに向けた動きがみられ、足踏み状態を脱しつつある」と2カ月連続の上方修正となった。

 国内では23日に「1月の貿易統計」が発表されたが、輸出額は4兆9702億円、前年同月比1.4%増、輸入額は5兆4455億円、同12.5%増、貿易収支は4753億円の赤字で09年5月の54億円の赤字以来、22カ月ぶりの赤字となった。例年1、5、8月は国内休暇シーズンの影響で生産が落ち込むことにより輸出額は大きく低下する傾向があるため、赤字になったとはいえ驚くことではない。また、最近では中国向けの輸出ウエイトが増大しつつあり、旧正月の影響による中国向けの輸出の減少が全体に大きく影響した。輸入に関しては豪州の大洪水によって石炭価格が高騰したことより豪州からの輸入額が同29%増、また世界景気の回復傾向が鮮明になりつつあることより原油価格が上昇してきたことが影響し、アラブ首長国連邦、サウジアラビアからの輸入額がそれぞれ同13%増、7.7%増となったことが増加の要因である。来月発表の2月分ではエジプト、リビアの政権問題から原油価格高騰の影響で輸入額が跳ね上がる可能性があるが、1月の休暇シーズンによる生産調整の反動や中国の旧正月が上旬で終了し外需に勢いが増してくると考えられることから、貿易収支は黒字へ改善するであろう。 


輸出額、輸入額、貿易収支の推移
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 海外では23日に「1月の中古住宅販売件数」が発表され、結果は536万戸、前月比2.7%増、3カ月連続の増加となった。地域別ではウエイトが最小の北東部のみが同4.6%減であり、その他の中西部、南部、西部はそれぞれ同1.8%増、同3.6%増、同7.9%増と揃って増加となり緩やかな回復が続いていることを再確認することができた。ただ、このところ住宅ローン金利が上昇しつつあることが懸念材料として挙げられる。QE2後、30年ローン金利は4.2%台から4.8%台に上昇し、1月は住宅の買い控えが多くなったと考えられ、住宅ローンを利用しての購入にブレーキがかかっている。実際に、購入者の32%が現金での購入であり、12月の29%、前年同月の26%と比較すると上昇している。30年ローン金利は2月に入り一時的に5%超となることもあり、今後、住宅市場回復のデメリットとなろう。

 24日には「1月の新築住宅販売件数」が発表された。10年末にカリフォルニア州での住宅購入に関する税控除措置が終了することで、前月は西部地区で駆込需要が発生し、同地区は前月比63%増、米国全体では同16%増と大幅増となったが、その反動で1月の西部地区は同37%減となったことが影響し全体でも同13%減の28万4000戸と再び30万戸を下回った。中古住宅価格水準と比べ新築住宅価格の水準は高めであることより金利が急上昇している環境では非常に影響を受けやすい。米連邦住宅金融庁の住宅価格指数を図に示したが、07年4月をピークとしたがそれ以降は下落しており、直近の10年12月ではリーマン・ショック後最小値を更新するなど住宅価格の下落傾向は続いている。新築住宅市場には回復の兆しが見えずしばらくは30万戸前後で推移するであろう。

新築住宅、中古住宅販売件数の推移
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FHFA住宅価格指数の推移
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今週発表 … 鉱工業生産では1月の結果と同時に2、3月予測にも注目

 今週は国内で28日に「1月の鉱工業生産」、「1月の新設住宅着工統計」、1日に「1月の労働力調査」、3日に「10~12月の法人企業統計調査」、海外では米国で28日に「2月のシカゴ購買部協会景気指数」、1日に「2月の製造業ISM指数」、3日に「2月の非製造業ISM指数」、4日に「2月の雇用統計」が発表される。コンセンサスは鉱工業生産が前月比4.0%増、完全失業率が4.9%、有効求人倍率が0.58倍。米国ではシカゴ購買部協会景気指数が67.9、製造業ISM指数が60.5、非製造業ISM指数が59.7、完全失業率が9.1%、非農業部門雇用者数が前月比17万5000人増である。国内鉱工業生産では1月に発表した12月分調査で同時に発表した1月予測が前月比5.7%増と3カ月連続の増加だが、2月予測が前月比1.2%減と4カ月ぶりに減少する見通しであったが、中東・北アフリカの政治不安があるとはいえ、基本的に世界経済は上向きつつあることから、先行きの生産予測には注目したい。


今週の主な決算発表予定


今週の主な決算発表予定
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