マーケットレポート

マーケットの視点

天変地異「東日本大震災」は福島原発事故もあり被害甚大だが、この衝撃が「新生日本」の出発点になることを期待したい

・ 今回の地震はマグニチュード9.0と歴史上4番目、津波の被害は青森から福島までの太平洋沿岸一帯に及ぶほど広い範囲で甚大、更に関東でも死者が出ていることもあり、名称が仮称「東北太平洋沖地震」から「東日本大震災」へと拡張したことが影響の大きさを物語っている。報道される映像を見るたびに津波の凄さに驚愕し、目を覆うばかりの惨状に心が痛むばかりだ。阪神大震災の時も日が進むにつれ燃え広がる炎が家屋を舐め尽くし被害がみるみるうちに拡大したことを記憶している。今回も津波の犠牲者数が日を追うごとに増え続け、居た堪れない気持ちになる。そして、追い撃ちをかけるように、東京電力・福島原子力発電所で発生した事故が“炉心溶融(メルトダウン)”、水素爆発という、まるで旧ソ連のチェルノブイリ原発事故を思い起こすような事態となっていることが明らかになるにつれ、暗澹たる気持ちになる。

・ まさに天変地異である。11日14時46分の巨大地震発生直後から首都圏の全ての鉄道がストップし鉄道網が停止したことで道路に車が溢れ出し大渋滞となるなど、交通網は完全にマヒ状態に陥り、特にJRは翌12日午前中も止まったままで、街中には被害がほとんど見られないにも関わらず「帰宅難民」が大量発生した。更に、安否確認の連絡が一斉集中したことで首都圏一帯の携帯電話、固定電話がともに通じ難くなるなど、巨大災害に対する現在の首都機能の脆さが露呈された。今回は東日本の太平洋沿岸の阿鼻叫喚も、首都圏の意外なほどの脆弱さも、初めて見る光景だ。しかも、「計画停電」、「予備自衛官」という初めての言葉まで耳にしている。福島原発は東京電力の原子力発電総出力の5割を担っており、新潟県柏崎刈羽原発もまだ完全復旧に到っていないこともあり、首都圏での電力供給不足が大停電になる可能性があることから1都8県を5ブロックごとに分けて輪番での「計画停電」を実施することで電力危機を凌ぐことになった。このため、鉄道運休が相次いでおり首都圏での混乱状態が続いている。「予備自衛官」とは有事を想定して任用している退役したなど非常勤の自衛官の方々で総勢6500名を招集したという。「計画停電」は戦後1951年に東電が設立されて以来初めてのことで、「予備自衛官」の招集も戦後1950年の自衛隊の前身である警察予備隊が発足して以来初めてのことだという。これは、今回の「東日本大震災」がまさしく、第二次世界大戦にも相当する“日本の危機”であり、週明け後のスーパーで電池や食品の売り切れ続出、ガソリンスタンドでのガソリンや軽油の売り切れを見ると第一次石油危機のパニックを思い起こす。

・ 週明け後14日の日経平均株価は“633.64円安、6.2%下落”と下落率で歴代20位という大幅下落となった。福島原発事故の不安がセンチメントを一層、悪化させ、地震の影響で国内停滞が一段と深まることに加え、企業の復興資金や保険会社の資金手当てのために海外資産を換金して国内還流させるために円高が進むとの思惑から円高リスクが台頭し業績への下方圧力が高まること、18週連続の買い越しが続く海外投資家が先物のヘッジ売りをしていること、などが大幅下落の背景。東北地方には電子部品の工場が多いこととトヨタ自動車系の関連工場が目立つが、いずれも海外や西日本の生産拠点が主力となっており、実際の影響は軽微に止まることになろう。また、為替に関しては、すかさず日銀が金融市場の安定のために14日の政策決定会合後に12兆円の資金供給を表明、今回の巨大地震で日本の経済成長率が下方屈折する可能性が高い、復興のための財政出動、などを背景に先行きはむしろ円安に推移する可能性の方が高いと予想する。企業業績も全体としては増額期待が剥落する程度で、今回の地震の直接影響の大きな東京電力、JR東日本、私鉄・陸運各社、旅行会社、点検のために施設を一時閉鎖したオリエンタルランドなどの一部を除いては、新興国需要の恩恵、企業の内部努力の効果で堅調な見通しにあることは変わりない。また、今回の「東日本大震災」を契機に、インフラ再建整備へと進むことで閉塞感が強かった日本の活性化を期待する。単なる災害復興に留まらず、突発的な巨大災害に充分に耐え得る通信網、交通網、電力供給体制の再整備である。具体的には、周波数帯解放による次世代通信インフラの促進、多様な交通網の整備、太陽光・風力など自然エネルギー活用やスマートグリッド整備の促進、湾岸整備など、国家財政の大赤字という資金的な問題はあるが、大胆な規制緩和や長期的視点に立った予算編成、世界随一の技術力を有する日本の企業力をバックボーンに、今回の過去最大級の衝撃を出発点とした「新生日本」の再構築、国家プロジェクトとしてのインフラ再構築へと歩み出すことを期待したい。それを前提にすれば、ここしばらくの株価下落は、先行き大幅なリバウンドが期待される買いのタイミングでもあるとも言えるだろう。


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 景気動向、景気ウォッチャー、機械受注とも好結果

 先週の国内では内閣府から重要経済指標の発表が相次いだ。具体的には7日に「1月の景気動向調査(速報値)」、8日に「2月の景気ウォッチャー調査」、9日に「1月の機械受注統計」、10日に「10~12月のGDP成長率(第二次速報)」だ。一方の海外では米国で10日に「1月の貿易収支」、11日に「2月の小売売上高」、「3月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)」、中国では10日に「2月の貿易収支」、11日に消費者物価指数を始めとした主要経済指標が発表された。中東・北アフリカの政治不安を発端とする原油価格高騰の影響が米国の貿易収支を直撃し貿易赤字額が前月比15%増、3カ月連続で拡大したが、国内経済指標にはさほど影響は現れておらず好調な結果となった。「2月の景気ウォッチャー調査」においても景気の持ち直しについてのコメントが多く見られた。

 まず7日に発表された「1月の景気動向指数(速報値)」だが、先行CIは前月比0.9ポイント上昇、一致CIが前月比2.5ポイント上昇でどちらも3カ月連続の上昇となった。先行CIでは1月のエコポイント対象製品絞込みの影響で耐久消費財出荷指数の前年同月比伸び率が前月比8.6ポイント縮小、寄与度で-0.51と大きなマイナス要因だったが、新規求人数、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの寄与度がそれぞれ0.23、0.44、0.30とプラスに寄与し政策効果の剥落による一時的な悪化はあったものの、先行きの景気回復は続く見通しを示した。また、一致CIでは鉱工業生産財出荷指数、製造業の所定外労働時間指数、製造業の中小企業売上高の寄与度が三項目とも0.41と全体の上昇に大きく貢献。基調判断は「足踏みを示している」の部分には変化はなかったが、「改善に向けた動きもみられる」と但し書きを加えたことから若干の上方修正を行っている。来月発表の2月分の一致CIが11月の102.4超であれば、基調判断が「改善を示している」へと上方修正される。


「景気動向指数」~一致CI、先行CIの推移
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 続く8日には「2月の景気ウォッチャー調査」が発表された。現状判断は前月比4.1ポイント上昇、先行き判断は横ばいの結果だったが、今回注目したいことは地域別の判断だ。現状判断では北海道から沖縄まで全ての地域で前月に対し上昇したが、先行き判断では北海道は横ばい、東北、関東、東海はそれぞれ同0.3ポイント減少、2.4ポイント減少、0.2ポイント減少とそろって減少、北陸以西では沖縄の同1.9ポイント減少を除き、西日本全てで前月に対し上昇した。来月に発表される「3月の景気ウォッチャー調査」と日銀の「11年4月の地域経済報告」が発表されるが、今回の東日本大震災の影響がどのように出てくるか見守りたい。


「景気ウォッチャー調査」~現状判断、先行き判断の推移
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 そして9日には「1月の機械受注」が発表され、船舶・電力除く民需は7661億円、前月比4.2%増と2カ月連続の増加となったが、いまだに受注額は7000億円台であり、低水準が続いている。ただ、12月調査日銀短観の大企業全産業の10年度設備投資計画では下期計画が9月調査では前年同期比1.7%増であったが12月調査では同10.7%増へと上方修正されたことから企業の設備投資意欲が増してきたと考えられ不安がる必要は無かろう。また、受注総額では外需が同71%増の1兆2411億円と08年8月以来の高水準となったことが牽引し、2兆4918億円、リーマン・ショック後で最大となった。外需については産業機械や電子・通信機械等の受注が増加したことが要因であり、1月発表のさくらレポートからも海外向けの一般機械が好調であることがわかるため、わが国の産業機械、一般機械へはもう少し期待すべきではなかろうか。

「機械受注」~外需、船舶・電力除く民需、伸び率の推移
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今週発表 … 米国FRB、わが国政府の対応へ期待

 今週は国内で「1~3月の法人企業景気予測調査」、海外では米国で15、17日に「3月のNY連銀製造業景気指数」と「3月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数」、15~17日に2月の輸出入、卸売、消費者、それぞれの物価指数が発表される。しかし、注目する点は国内の東日本巨大地震を踏まえての各国の見解であり、国内では14日の日銀金融政策決定会合、18日の政府月例経済報告、15日の米国FOMCに目を向けたい。日銀の金融政策決定会合では早速、資産買い入れ基金を5兆円増額し40兆円とすることで金融緩和策を一段と強化。米国FRB、わが国政府の対応にも期待したいところだ。


今週の主な決算発表予定


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