マーケットレポート

マーケットの視点

福島原発の動向は気掛かりなものの、今後は徐々に平常時に復帰すると予想、日本の、そして日本企業の底力に期待したい

・東日本大震災の爪痕は極めて大きい。今回の地震、特に津波災害の凄まじさは戦後最大だが、唖然とする自然の脅威にとどまらず、人間が作ったものが如何に人間を恐怖に追い込むかを思い知らされた1週間だった。東電・福島原発損壊は情報が錯綜したことと、事態が同時進行的に悪化することで日本全国のみならず世界中の不安心理を掻き立てた。世界各国は自国民への日本退去を促し、米国は福島原発の80km範囲外に出ることを警告、あたかも日本の中に戦場が生まれたような錯覚すら覚える。しかし、何と言っても問題なのは首相の発言だ。一国の首相が一企業の東電に怒鳴り込み3時間も粘り「・・・東電は潰れる」と言うは、揚句に公式の記者会見で「さらなる放射性物質の漏洩の危険性が高まる」との発言はいかがなものか。本来は「幾らでも政府は東電に応援するので今回の事態解決に全社全力を尽くして頂きたい」と言うべきではないか。まさに、放射能を掻い潜って、自衛隊、東京消防庁の精鋭部隊が懸命の放水作業で燃料棒過熱の鎮静化に成功、電源確保で冷却装置が回復すれば、最悪の事態を避けることが可能だろう。その展望を確認することもなく吐いた発言の責任は大きいと言わざるを得ない。

・実際に、15日の日経平均株価は前引けの取引が「8999円73銭」、前日比“621.49円安”だったが、その発言をきっかけに日経平均先物6月物が「7800円」まで、日経平均株価も「8227円63銭」、前日比“1392.86円安”まで一旦、暴落した。瞬間的には約24兆円の時価総額が失われた発言であり、結果的に前日比“1015.34円安”で引けたが、この発言分で約12兆円が失われたままだったとも言える。この日の東証1部の売買高は57億7715万株と過去最高を記録したことがパニック売りを物語っており、下落率は“10.55%”とブラック・マンデー(87年10/20)“14.90%”、リーマン・ショック(08年10/16)“11.41%”に次ぎ史上第3番目の大きさとなった。17日には為替投機が強まり円/米ドルレートは史上最高値を更新し続け「76円25銭」まで上昇したが、18日朝に緊急開催したG7財務相・中央銀行総裁会議で00年9月のユーロ防衛のために行って以来の『協調介入』を決定、実施することで極端な円高は阻止されることになりそうだ。余りに大勢の方が亡くなられたことは耐え難い深い悲しみではあるが、1日でも早く被害に遭われた方々が平常の生活に戻られることを切に願うばかりである。一方、首都圏での計画停電による混乱、ガソリン不足や店頭での品切れの問題はこの1、2週間で落ち着きを見せることになるだろう。あとは、スムーズな物資供給、住宅や他のインフラ設備の復興建設が速やかに進むことと、単なる災害復興に留まらず『新生東北、新生日本』を目標とするような大胆な政策の立案と実行を期待したい。それには、知力・体力に優れた若手政治家と官僚の一致団結、企業の協力が必要だろう。原発損壊への処理や計画停電などで批判相次ぐ東電に関して言えば、今回負った傷は余りに大きいものの、このような全く初めての究極の不測の非常事態に対しては、短時間でよく対応しているものだとも思う。

・福島原発に関しては依然として予断は許されないが、今後は徐々に平常を取り戻して行くものと考える。東北地方や太平洋沿岸の工場の操業停止で石油、化学製品、自動車部品、電子部品など供給困難の影響が指摘されているが、一部を除いては生産再開や海外生産拠点を含めた代替的な生産確保への切り替えが進むことになろう。日本経済の11年度成長率は下方修正されることにはなりそうだが、新興国経済の高成長、米国経済の回復トレンドは不変であり、むしろ資源価格の騰勢が弱まることが好影響を与えることになり、外需に支えられる多くのわが国企業の業績が今回の東日本大震災で急変することも考え難い。過度の悲観は禁物である。日本の、そして日本企業の底力が試される時でもあり、そこに期待したいところだ。


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 日銀の大量資金供給、各国中央銀行による為替市場での協調介入で一時的な不安心理は後退

 先週は国内で16日に「1~3月の法人企業景気予測調査」、海外では米国で15、17日に「3月のNY連銀製造業景気指数」、「3月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数」、15日に「3月の住宅市場指数」、16日に「2月の住宅着工・許可件数」、また、15~17日には2月の「輸出入物価指数」、「卸売物価指数」、「消費者物価指数」が相次いで発表された。しかし、先週の焦点は各国中央銀行の対応であろう。国内では14日に日銀が過去に例がないほどの多額の資金供給を発表、17日にNY外国為替市場で一時1ドル76円25銭と95年の1ドル79円75銭を更新する事態となり、18日の日本時間午前7時から緊急的に電話での「G7財務相・中央銀行総裁会議」を開催。一時的な円の急騰、大震災の被害にあった日本への支援について協議し、日本を含めFRB、ECB、BOE、BOCの各国中央銀行が円高阻止で外国為替市場への協調介入に合意した。

 経済指標に関しては、まず16日に国内で「1~3月の法人企業景気予測調査」が発表されたが、調査時点は東日本大震災前の2月15日であることに注意したい。大企業全産業の“貴社の景況判断BSI”の1~3月は-1.1と2四半期連続でマイナスとなったが10~12月の-5.0からは大幅に改善した。内訳では製造業が-8.0→-3.2、非製造業が-3.4→0.0となり、製造業は依然としてマイナスが続くが非製造業はブレークイーブンとなり景気は足踏み状態を脱しつつあることを確認できた。ただ、前回調査の1~3月見通しでは製造業が-0.2、非製造業が-1.2であり、非製造業は期待以上の回復であったが、製造業はエジプトの政情不安の影響から原油高騰によって収益が圧迫される懸念が高まり前回の見通しまでには至らなかった。業種別では原材料高に苛まれる「化学工業」、「鉄鋼業」がそれぞれ見通しでは-1.7、6.2であったが、結果では-11.8、-7.2と見通しを大きく下回った。しかし、「はん用機械」、「生産用機械」、「業務用機械」は見通しの8.9、6.4、11.7に対し、28.6、22.1、29.5と外需が牽引することで大変好感の持てる結果となった。4~6月、7~9月見通しでは製造業が4.0、7.5と2四半期ぶりにプラスへ転じその後も上昇を維持、非製造業も0.2、5.5と製造業と同じく上昇していく見通しである。しかし、回復のトレンドを維持し続けるかどうか、東日本大震災の影響がどのように出るかは予測が難しいところだ。


「法人企業景気予測調査」~大企業全産業、製造業、非製造業の
 “貴社の景況判断BSI”の推移
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 15日に開催された米国FOMCにおいて、総括判断で「景気回復はよりしっかりとした足取りになっている」と景気判断を上方修正した。前回との比較を表に示すが、大きく異なった点は雇用環境であろう。1月26日時点の失業率は10年12月調査において9.4%であったが、その後、11年1月、2月においては、事前予測では、一旦求職を諦めた労働者が戻り再度失業率が悪化するとのことであったが、結果としてはそれぞれ9.0%、8.9%と改善を続けた。表から個人消費も拡大を続けていることがわかる。15、17日には3月分のNY地区、フィラデルフィア地区の景況感指標が発表されたが、NY地区では前月比2.1ポイント上昇し17.5、これで4カ月連続の上昇。フィラデルフィア地区では同7.5ポイント上昇し43.4、これは75年11月の43.6以来の高水準となり、68年5月からの統計上では12番目に高い数値となった。これら景況感の歴史的高水準の背景にはドル安による輸出増の影響も含まれるが、米国個人消費の回復も後押ししているといえよう。また、先週発表された2月の輸入物価指数、卸売物価指数、消費者物価指数の推移を図に示したが、卸売物価コア指数と原油除く輸入物価指数の前月比伸び率は鈍化、消費者物価コア指数の同伸び率は前月伸び率と変わらずとなっており、FRBが述べるように「長期のインフレ見通しは安定」となっている。


FOMCでの景気判断比較表 (1/26と3/15)
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NY連銀製造業景気指数、フィラデルフィア連銀製造業景況指数の推移
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消費者物価コア指数、卸売物価コア指数、
 原油除く輸入物価指数前月比伸び率の推移
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 先週は日銀の動きにも注目したい。当初は14、15日両日に金融政策決定会合を開催する予定だったが、開催日は14日の一日のみに短縮、さらには午後1時開始予定を一時間早めて正午開始とした。政策金利を現状の0~0.1%程度で据え置いたことは想定内であり、今回の会合で最も注目すべきことは金融市場への資金供給額である。14日には過去最大となる15兆円、翌日からも15日に8兆円、16日に5兆円、17日に5兆円、18日には4兆円の資金供給を実施した。さらには資産買い入れ枠を5兆円増額し、内訳では国債が1兆5000億円、リスク性資産が3兆5000億円とリスク性資産の買い入れウエイトを増加させたことを発表した。記者会見では「リスク性資産の買い入れ額の規模や内訳が“しょぼい”のではないか」、という質問に対して「委員会メンバー誰一人として、そうは思ってない」と強く反論。このことからも日銀の金融市場安定化、市場参加者のリスクテイクを促して景気の下ぶれを防ぐという並々ならぬ強い意思を感じる。


今週発表 … 目先の経済指標の発表は平常時の結果、国内の大震災の影響はこれから

 今週は国内で24日に「2月の貿易統計」、25日に「2月の全国消費者物価指数」、海外では米国で21日に「2月の中古住宅販売件数」、23日に「2月の新築住宅販売件数」、24日に「2月の耐久財受注」、25日に「10~12月のGDP成長率(確報値)」、「3月のミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)」が発表される。米国の中古住宅販売件数は10年11月から3カ月連続で増加した後、21日発表の2月の結果では前月比9.6%減と市場予想の同4.5%減を大幅に下回り488万戸、3カ月ぶりに500万戸を下回った。新築住宅販売件数のコンセンサスは前月比2.1%増の29万戸であるが依然として30万戸を下回っており、歴史的にも低水準であることから予断を許さない状況がしばらく続くと思われる。経済指標以外では今週も福島原発への対応に注目すべきだ。一部では送電可能となり建物内の放射性物質除去の可能性も見えてきたが、原因不明の白煙が発生するなどで不安要因が漂ったままだ。一刻も早い対応を期待したい。



今週の主な決算発表予定


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