マーケットレポート

マーケットの視点

海外投資家の積極買いに支えられる日本株市場、復興関連の上昇目立つが、売られ過ぎや戻り鈍い銘柄群には投資チャンス

・ 世界的に株式市場も落ち着きを取り戻し、先週末の主要な海外株市場は昨年来高値に対してNYダウが“98.6水準”にまで戻しているのを筆頭に、軒並みほぼ“95%前後水準”にまで戻している。日本株市場も大震災直後の安値に対して日経平均株価は“930.98円、10.8%上昇”し大震災直前の高値に対して“87.8%水準”と、まずは「行き過ぎた下落」からの大幅なリバウンドを達成している。東証2部指数が安値から“20.5%上昇”し同“95.0%水準”、日経ジャスダック指数が“16.1%上昇”し同“90.7%水準”と日経平均株価を上回る水準にまで戻していることから、単なる「行き過ぎた下落」に対するリバウンドに止まらず日本株への買い意欲を感じる展開とも判断される。実際、海外投資家が今回の日本株急落に対して投資チャンスと捉える動きが目立った。21日にバークシャー・ハサウェイ会長のウォーレン・バフェット氏は「大震災は日本にとって非常に大きな衝撃だが日本は2~3週前のようなエネルギーや意志、資源を持っており、時間がかかっても再建できる。もし、日本の株式を保有しているとしても売らない。日本は米同時多発テロのように打撃を直ちに挽回できると思う」と日本株への強い信頼感をコメントとして述べた。

・ また、米投資週刊紙バロンズも21 日付で「BUY JAPAN NOW(今、日本を買え)」と題した特集記事を掲載。「東日本大震災の影響で今年の日本経済は減速するものの、落ち込みは一時的で、復興とともに来年の成長見通しは上がる」と指摘、「災害時にありがちだが、市場が過剰反応しているのは明らだ」と明言した。震災後の相場急落で日本株がいかに割安になったかを強調、具体的に日本株の平均PERは13.9 倍で、金融危機以降で最低水準、現在の日本の時価総額は日本企業の純資産総額を下回っており「世界最高の企業の幾つかが聞いたこともないような安値で手に入ることを意味する」としている。魅力的な個別銘柄としソニー、キヤノン、トヨタ、日産自、資生堂、KDDI、NTT、三菱商、住友商、伊藤忠、JFE、新日鉄などを挙げた。実際、3月14~18日の週で海外投資家は19週連続買い越し、かつ9552億円の買い越し額は04年3月第1週の9678億円に次ぐ過去2番目の水準を記録、証券会社の自己売買の7281億円、個人投資家の1998億円の売り越しを吸収した格好となっており、この買い意欲の強さはリーマン・ショック後とは違い新興国経済の高成長、米国景気回復を背景とする世界経済の堅調見通しを前提としている。また、日本経済に関しても大震災の影響を内閣府は国内生産や輸出の減退で11年度の実質GDPに対し“-0.5%”と試算し、おそらくは計画停電の影響や消費者マインド低下を考慮しても11年度がマイナス成長に陥ることはないだろう。

・ 個別銘柄では前週末段階で東証1部上場銘柄の約2割が大震災前の水準に戻しているという。復興関連銘柄としてセメント、建設、住設機器、建設機械株の中には大幅上昇しているものが目立ち、原発代替のLNG関連としてエンジニアリング企業なども買い込まれている。その反面、被害の大きな半導体のルネサスや東北に国内工場が集中しているアルプス、休園が続くOLCなどは株価急落したままであり、電子系重要部品の供給がネックとなり世界的にも生産立て直しに時間がかかりそうだと伝えられる自動車関連の株価の戻りも鈍い。復興関連として囃されている銘柄群はおそらく業績効果が限定的であり、更に買い進むことは控えたいところだ。一方、影響甚大で長引く見通しの東電、世界的な原発見直し機運の関連企業の株価は厳しそうだが、一時的な影響で売り込まれている半導体、電子部品、自動車関連は業績面への影響は限定的で一時的であり、むしろ、仕込むチャンスだろう。国内経済指標に関しては4、5月と一転、大震災の影響が色濃く出た結果が発表されることで失望を誘う展開になる可能性は高い。4月末以降の11年度の業績見通し発表は一層、慎重にならざるを得ないだろう。しかし、統計面では6月以降にも大震災の影響が和らぎ始め、再び回復トレンドを描き出すことになると予想する。大震災、原発事故の影響が消費者マインドにどの程度現れてくるかがマイナス面での焦点となりそうだが、自動車関連を中心に生産面の影響に関しては、海外生産が中心なことから中枢部品の手当てが軌道に乗れば問題なく進むことになろう。むしろ、今回の思わぬ減産によって需給が引き締まり価格維持の効果が収益面でプラスに働くことが期待される。インセンティブ競争が激しい北米自動車市場や、国内の紙パや石油製品など、例えば石油製品は元々、余剰精製設備が稼働することで全体の平均稼働率が高まりコストダウン効果が生まれそうだ。これらのプラス・マイナスを見極めが難しいが、現時点では為替が落ち着いていることもあり、余程のことがない限りは11年度業績が減益になることはないと予想され、個別には売られ過ぎの銘柄は多い。


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 月例経済報告では震災影響を限定的に認識、計画停電などの影響を織り込んだ今後に注目

 先週の国内では24日に「2月の貿易統計」、25日に「2月の全国消費者物価指数」が発表、海外では米国で21日に「2月の中古住宅販売件数」、23日に「2月の新築住宅販売件数」、25日に「10~12月のGDP成長率(確報値)」、「3月のミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)」が発表された。経済指標以外では23日に「3月の月例経済報告」が発表された。当初、3月の月例経済報告は18日に発表される予定であったが、東日本大震災対応のため関係者の出席が困難であるとのことから延期された。

 24日に発表された「2月の貿易統計」では輸出額が5兆5886億円、前年同月比9.0%増、輸入額は4兆9345億円、同9.9%増、差引き6541億円と2カ月ぶりの黒字となった。前月は中国が旧正月を控えていたことが影響し、同国向け輸出額は9281億円と1兆円を下回ったが、2月の輸出額は1兆1637億円とすぐに回復、また中国向け輸出額が牽引しアジア向け輸出額も前月の2兆7290億円から3兆1144億円へと3兆円台へ回復した。輸入に関しては前月に引き続き政情不安による原油価格の高騰や商品市況高止まりが原因となり、アラブ首長国連邦からの輸入額は2627億円、同42%増、サウジアラビアからの輸入額は3268億円、同22%増、オーストラリアからの輸入額は2900億円、同15%増となった。当面は資源価格の高止まりが予想されるため、輸入額が高水準で推移し貿易黒字額の縮小要因となろう。ただ、輸出額の内訳を商品別でみると力強い商品もある。電気機器では同17%増、自動車部品を含めた輸送用機器は23%増、さらには一般機械が21%増と海外需要の大きさにはかげりが見られない。来月発表の3月の貿易統計では計画停電、設備の破損、東北や関東の税関当局業務再開の遅れから生産や輸出の停滞が予想されるが、世界の景気回復トレンドには変化はなく今後の国内のインフラ、設備修復次第で早期回復も考えられる。


輸出額、中国向け輸出額の推移
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 発表延期となった「3月の月例経済報告」だが、23日に発表された。基調判断の総括としては、東日本大震災のこの先への影響を懸念する文言が付け加えられ、「景気は、持ち直しに転じているが、自律性は弱く、東北地方太平洋沖地震の影響が懸念される。また、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある。」となった。個別項目では生産の基調判断において大震災の影響を懸念する表現が挙げられるが、その他の項目については2月の基調判断から変化はない。今回、内閣府は震災が11年度のGDPに及ぼす影響を試算し、民間企業の設備の損害や部品流通の滞りなどを考慮した結果、1兆2500億円~2兆7500億円、率にして0.2~0.5%の押し下げ要因とのことである。ただし、この試算には計画停電や原発の影響などは含まれておらず、基調判断においても下図からわかるように輸出や個人消費、企業の業況判断などは前月と変わらずとされているが、現状を考えるとネガティブなイメージを含んでいることは間違いない。今回の内閣府の判断には盛り込まれていないマイナス要素があることをしっかり認識して今後の動向に注目したい。


政府月例経済報告比較表 (2月、3月)
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 一方の米国では21日に「2月の中古住宅販売件数」、23日に「2月の新築住宅販売件数」が発表されたが、どちらも悲観的な結果であった。まず、中古住宅だが、結果は市場予想の512万戸を大きく下回り488万戸、前月比9.6%減となった。大幅な減少となった主要因は住宅ローン金利の上昇であろう。フレディマック調査では2月の30年ローン金利は1月の4.76%から4.95%へと0.19ポイント上昇、さらに週次でみると2月3日は4.81%であったが、2月10日は5.05%、2月17日は5.00%と二週連続で5%台となった。住宅ローン金利の上昇が新築住宅市場にも影響し、2月の新築住宅販売件数は25万戸、前月比17%減、1963年1月の統計開始以来の最低記録となった。住宅価格の中央値は前月の23万4800ドルから20万2100ドルへと下落したが、在庫月数は1.5カ月上昇し8.9ヶ月といまだに供給過剰感が漂っている。また、2月の差し押さえ物件は前月比14%減の22万5101件、08年2月以来の低水準となったが、これは司法当局が金融機関の差し押さえ物件に関する書類の確認に手間取っていることが理由で、今後も差し押さえ物件が中古住宅市場に流れ、新築住宅の購入意欲を抑制すると思われる。

新築住宅、中古住宅販売件数の推移
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今週発表 … 「3月調査の日銀短観」には特に注目すべき

 今週発表の注目指標は、国内では29日の「2月の労働力調査」、30日の「2月の鉱工業生産」、1日の「3月調査の日銀短観」、海外では米国で1日の「3月の製造業ISM指数」、「3月の雇用統計」、中国で1日発表の「3月のPMI指数」である。上記のうち、特に気になる指標は国内の日銀短観。例年、企業の回答期間は3月末日までであり、今回の大震災の影響が織り込まれていると思われる。海外では米国の雇用統計が焦点となろう。コンセンサスでは完全失業率が8.9%で前月と変わらず、非農業部門雇用者数増加幅は19万人増で妥当な予想といえる。雇用統計発表の前々日、前日にもそれぞれ民間調査会社ADPの雇用統計、労働省の新規失業保険申請件数の発表があるため、こちらの結果にも注意したい。



今週の主な決算発表予定


今週の主な決算発表予定
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