マーケットレポート

マーケットの視点

電力不足は要注意だがサプライチェーン寸断の回復など、11年央には平常ペース、株価下押し強いグローバル企業が狙い目

・ 東日本大震災が株式市場に与えた衝撃を改めて考えてみると、大地震ではあるが阪神淡路大震災よりは「9.11米同時多発テロ」や「リーマン・ショック」時に近いように思える。すなわち、“テロ行為の広がり”、“世界的な金融システム崩壊の広がり”と共通し、福島第一原発破壊による“放射能拡散”が、“見えざる恐怖”として世界を震撼させたからだ。大きな違いは、「9.11」後のように“泥沼の戦争”に進むわけでも、「リーマン・ショック」後のように世界的な“需要の瞬間蒸発”が起こるわけでもない。

・ 但し、被災が広範な地域に及んだこともあって意外なアキレス腱が露呈したことは事実だ。東北地方は電子部品、自動車部品の工場集積地となっており、素材、部品の供給ストップでサプライチェーンが寸断される状態に陥った。中でも自動車業界に与えた影響は大きかった。トヨタ自動車は愛知県内に工場が集中しているリスクを分散するために東北地方に生産拠点を展開していた。日産自動車の福島県いわき工場は年産能力56万基のエンジン工場だが操業停止に追い込まれ、ホンダの燃料噴射系部品を担うケーヒンの主力工場は仙台に近い角田市にある。また、車載用マイコンの世界シェア3割を握るルネサスエレクトロニクスの主力工場はひたちなか市、山形にあって生産停止、自動車を制御する中枢部品の供給が大幅に減少している。更に、首都圏の計画停電の影響もあり、大震災の影響を背景とする自動車の国内減産規模は3~4月で40万台にも達し、海外工場への部品供給が途絶えたことで、例えば日産自動車は米国、英国、メキシコ、中国工場が生産停止に追い込まれた。しかし、このような窮地に対して、日産自動車のゴーン社長は3月末にいわき工場で「日産の将来のために日本の事業を守り、発展させる。日産の競争力の源は日本だ」と従業員を鼓舞し、いわき工場は生産縮小も撤退もないと宣言している。

・ 日銀の白川総裁は、大震災後初めて7日に開催された金融政策決定会合後の記者会見で、今回の東日本大震災が日本経済に与える影響として、素材、部品などのサプライチェーンの寸断と電力不足による供給面での制約が大きいと指摘した。このために11年度の実質GDP成長率は従来予想の1.6%増から大幅に下方修正するとしたものの、プラス成長は維持すると強調した。夏場の電力不足問題を様子見する必要があるが、サプライチェーンの寸断は六月以降には平常に戻るとの見解を述べた。世界経済は新興国・資源国を牽引役に高成長が続いており、リーマン・ショック時のような“需要の蒸発”はないこと、金融システムは健全な状態にあることを強調した。また、資金不足が生じないように監視し、潤沢な資金供給を続けることを約束した。

・ 夏場の電力不足は予断を許さないが、企業サイドの協力の下に大口電力供給の輪番制停電、企業の海外生産代替などで乗り切ることになろう。募る被害者数など大震災の爪痕は強く残り続けることと、復興に向けての予算、仕組みをどうするかという政治への不安はあるものの、復興需要も本格的に動き出し、企業活動も平常ペースを取り戻すことで、一一年央以降は前向き、上向きなムードが甦ることになろう。世界経済は、新興国の高成長、米国の景気回復を背景に順調な見通しが続き、多くの日本企業にとっては海外需要が業績を支え続け、日本が取り残されることで円安が進むこともプラスをもたらす。足下の厳しさを織り込んだ四月末以降の決算見通し発表、四、五月の悲観的な国内経済指標の発表が心理的なボトムを形成、その後は急速な上昇トレンドへと転換すると予想する。

・ 85円/米ドル台へと円安が進んでいるにも拘わらず、日本株市場が海外株市場に割り負けしているのは、サプライチェーン寸断などで自動車、電機などグローバル業種に対する先行きに対する不安が高まっている要因が大きい。しかし、白川総裁が指摘するように、海外需要は好調が持続しており、生産体制が平常ベースに戻れば再び巡航速度の業績拡大トレンドに回帰しよう。国内に関しては、元々、エコカー補助金、家電エコポイントの反動で厳しい見通しにあったために、今回の大震災による下押しの影響は大きくない。むしろ、欧米での利上げが現実化することでの円安が収益を底上げする効果は大きい。従って、ここは、株価停滞が続くグローバル企業こそ、絶好の狙い目だろう。


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 注目の景気ウォッチャー調査、現状判断、先行き判断ともに過去最大の下落幅

 先週発表の経済指標のなかで重要な指標は4日発表の震災前後分割集計の「3月の日銀短観」、8日発表の「3月の景気ウォッチャー調査」が挙げられる。特に「景気ウォッチャー調査」の調査期間は3月25~31日で震災後の状況を充分に織り込んだ結果となった。経済指標以外では各国中央銀行の動向が注目された。国内では6~7日の「金融政策決定会合」、欧州では7日の「ECB理事会」、米国では5日の「3月のFOMCの議事録」と4日のバーナンキ議長のジョージア州での講演だ。欧米ともにインフレ懸念が焦点となっており、その一挙手一投足が注目された。

 国内では4日に震災前後の業況判断DIを分割集計した「3月の日銀短観」が発表された。調査期間中の3月11日に東日本大震災が発生し、その前後で経済環境が大きく変化していることから異例の対応となった。1日に発表した結果では大企業製造業の最近の業況判断DIは6、大企業非製造業は3であったが、分割集計後では大企業製造業は震災前が7、震災後が6、大企業非製造業は震災前が1、震災後が7となり、製造業では大きな変化は見られなかった。非製造業の業況判断DIは震災後のDIが震災前に対し6ポイント大きいが、業種別DIでは小売業が12月調査の-3から3月調査では10と急上昇していることから買いだめ需要による一時的な上昇と考えられる。一方、先行きの業況判断DIに関して1日発表分では大企業製造業が2、大企業非製造業が-1であったが、分割集計後では製造業の震災前は3、震災後は-2、非製造業については震災前が0、震災後が-4と、震災後のDIはどちらもマイナスの結果となった。しかし、1日に発表した「QUICK短観」の中間集計ほどの急落ではないことから震災後DIも現状を充分に把握しているとはいえない。

 8日発表の「3月の景気ウォッチャー調査」は調査期間が3月下旬であることより、震災の影響を充分に織り込んだといえる。現状判断DIは27.7、前月比20.7ポイント下落、先行き判断DIは26.6、同20.6ポイント下落とどちらのDIとも過去最大の下落幅、さらに統計開始以来初の二桁下落となった。地域別に見ても沖縄の現状判断DIの下落幅9.2を除いた全地域の現状、先行きDIが二桁下落となった。最大の下落幅となった地域は人的被害、物理的被害の大きかった東北で現状判断DIが同32.1ポイント下落、先行き判断DIが同26.5ポイント下落であったが、計画停電や原発事故、物流停滞の影響もあり関東も現状判断が同24.2ポイント下落、先行き判断が同19.9ポイント下落となった。さらには直接の被害地とならなかった西日本のDI下落幅も大きい。近畿では現状判断が同18.1ポイント下落、先行き判断が20.7ポイント下落しており、旅行代理店の「東日本大震災の影響で、好調に動いていた先行予約のキャンセルが続くなど、被災していない関西の客の間でも自粛の動きが出てきている。」、タクシー運転手の「タクシー業界では東日本大震災による影響が大きい。企業による経費の削減や、飲み歩けない事情もあり、乗客が減少している。」などのコメントからわかるように消費マインドの大きな落ち込みが主な理由だ。しかし、震災地となった東北の百貨店では「東日本大震災後、ある程度落ち着くまでは悪い状態が続くが、衣食住の方向が見えてくれば、一時的に消費は戻ってくると予想される。しかし、その後は低迷が続くのではとの懸念もあり、原子力発電所の事故の収束と政治の舵取りが大きなポイントになる。」と政府と東電の迅速な対応を求めるコメントも聞かれ、今後の対応次第ではこの先の景況感も大きく変わる可能性も残されている。


「景気ウォッチャー調査」~現状判断、先行き判断の推移
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 一方の海外では欧米先進国の金融引き締めに関する動向が注目された。7日に行われたECB理事会では、前回会合後の記者会見でトリシェ総裁が4月に利上げの可能性を示唆していたとおり、リーマン・ショック後、日米欧の主要先進国のなかで最初となる0.25%の利上げを行った。ECBは消費者物価指数前年同月比増加率を2%未満としているが、10年12月から11年3月まで2.2%→2.3%→2.4%→2.6%と増加率を拡大してきたことが今回の利上げに踏み切った大きな要因と考えられる。トリシェ総裁は理事会後の記者会見で「物価上昇を非常に注意深く監視する」としたことから今後も段階的に利上げを行う可能性も考えられるが、EU圏内にはドイツやフランスなどの好調な国が存在する一方で、スペイン、イタリアなどの不調な国も残されており非常に難しい局面といえる。また、米国では4日にジョージア州でバーナンキFRB議長の講演があった。現在FRBは6月終了予定のQE2を行っているが、最近では中東の政情不安による原油価格の急上昇、余剰資金による商品市況高騰から米国物価のインフレが懸念されており、タカ派であるフィラデルフィア連銀プロッサー総裁、ダラス連銀フィッシャー総裁などが早期の金融引き締めを主張し圧力が高まっている中での講演となった。その中でバーナンキ議長は「物価上昇は一時的」との従来の見方を崩さなかったと同時に、「この見通しが外れた場合にはFRBは行動するだろう」とインフレを警戒していることも匂わせた。先週はその後も講演が相次いだが、アトランタ連銀ロックハート総裁は「政策反転に適切な時期に来ているとは考えていない」、クリーブランド連銀ピアナルト総裁はFF金利の誘導目標を長期にわたって異例の低水準に据え置くことを想定している」とハト派発言、一方でダラス連銀フィッシャー総裁は「量的緩和を続けるのは、米経済に深刻なリスクを生む」とインフレに対し非常に警戒している様子だ。FEBメンバーの見方が大きく分かれていることから、今後は非常に難しい展開になると予想される。


今週発表 … 重要な経済指標やイベントが集中

 今週は国内で「2月の機械受注統計」、「3月の企業物価指数」が発表される。海外では米国で「3月の輸出入物価指数」、「3月の卸売物価指数」、「3月の消費者物価指数」の物価指数関連の指標、「3月の小売売上高」、「4月のNY連銀製造業景気指数」、「3月の鉱工業生産・設備稼働率」、中国では「1~3月のGDP成長率」などの主要な経済指標が発表される。経済指標についても重要な発表が相次ぐが、国内では11日に「地域経済報告(さくらレポート)」、13日に「4月の政府月例経済報告」、米国で13日に「ベージュブック」が発表される予定で経済指標以外も注目される。さらに、ワシントンで14~15日に「G20、G7財務省中央銀行総裁会議」、16~17日に「IMF・世界銀行総会」の重要イベントも開催され、今週は気を抜けない週になる。



今週の主な決算発表予定


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