マーケットレポート

マーケットの視点

米国企業決算絶好調でNYダウ上昇続く一方で日本企業決算は大震災影響やむなしだが、一時的なものとして“次”に注目

・ 20日に決算発表した米アップルのスティーブ・ジョブズCEOは決算資料の中で「我々は絶好調だ」とコメントした。先週来、主要企業の発表が続く米国企業の決算はまさに絶好調だ。トムソン・ロイター社集計によるとS&P500対象企業ベースで今回も75%が市場予想を上回る好決算を発表しているが、この状況は既に1年以上続いている。今回もまず、19日発表のインテルが予想を裏切る好決算を発表、先行投資負担で粗利益率は低下傾向にあるが、何よりも売上高が増勢ピッチにあることが注目される。11年1~3月期は市場予想115億ドルに対して128億4700万ドル、EPSも同0.46ドルに対して0.59ドル、4~6月期売上高も市場予想118億7411万ドルに対して128億ドル±5億ドルと公表した。また、アップルの決算は1~3月期の売上高が246億6700万ドル、前年同期比83%増、純利益は59億8700万ドル、同95%増と規模の大きさと圧倒的な伸びを実現するという驚異的な数字だ。決算説明会でティム・クックCOOが東日本大震災は部品供給や製造コストに影響していないと発言、問題なく生産を続けていると強調し4~6月期の影響も2億ドル程度の売上高の下押し要因と全体の1%以下で軽微に止まるとした。更に、IT好調のみならず、航空機・機械大手の米ユナイテッド・テクノロジーズ、鉱山大手のフリーポート・マクモラン・コッパー・アンド・ゴールド、クレジットカード大手アメリカン・エキスプレス、外食大手のマクドナルドなど、幅広い業種での好決算が目立った。これらの好決算を受けて先週のNYダウは3日続伸、20、21日と年初来高値を更新、21日終値は「1万2505ドル99セント」と08年6月5日「1万2604ドル45セント」以来の高値となっている。

・ その一方で、先週も日本株市場は膠着商状が続いた。震災復興、原発対策に対する政府対応の不透明感が募っているのに加えて、今週以降に本格化する決算を読み切れないもどかしさと不安から様子見姿勢が強まった。21日に早々とJFEが決算を発表したが、今回の決算説明資料には唖然とした。このところ年度初めに原材料価格と鋼材販売価格の交渉中を理由に見通し発表を見送ることが常となっていたが、それでも1年前の決算説明会資料は、58ページ中、前期実績が15ページ、次期見通しが5ページあったが、今回は60ページと総ページ数は2ページ多いが前期実績は2ページで、それも概要実績数字の表と東日本大震災の影響を簡単にまとめたもののみ。次期見通しは1ページで、その内容は「主原料と販売価格については交渉中であり、さらに、東日本大震災後の各需要業界の活動水準を見通せないため、連結業績見通しは未定とさせて頂きます」でお仕舞いだ。説明内容も質疑応答も曖昧模糊としていた。この状況下では無理もないことかもしれないが、他の企業ではもっと参考になる内容の決算説明会になることを期待したい。決算数字に関しては、震災の影響額が特損計上として住金600億円、JX1000億円の予想であり、あるいは既に決算発表したキヤノン電子が3月11日前までは計画過達ペースだったが震災後に急減速して1~3月期が減収減益となってしまい、6月まで影響が続くので11.12期見通しを売上高1230億円、前期比2%増→1110億円、同8%減、営業利益153億円、同横ばい→108億円、同45%減へと下方修正、キヤノンの大幅下方修正見通しの観測記事も出ている。凄まじい東日本大震災の影響が前期実績、今期見通しに現れることはやむを得ないことだ。アナリストが12.3期予想数字を大幅に下方修正し、一転、大幅減益見通しになった企業も多く、株価はある程度は厳しい見方を織り込んでいる部分はある。もちろん、予想外な下方修正がマイナスサプライズになる企業も出てこよう。しかし、米国企業の決算絶好調が示す通り、新興国の高成長、米国景気の順調回復など“外部環境は極めて良好”なのである。東日本大震災の影響はわが国企業にとって一時的なマイナス要因であり、ほとんどの企業にとっては夏までの影響で11年度下期以降は巡航速度に回帰することが期待される。JFEのケースとは違いそのようなことが感じ取れる、更に「頑張れ日本!」に応えるような“元気な日本、前向きな日本”を感じるような決算発表を期待したい。まずは、25日に決算発表する日本電産の日本を鼓舞する強気な“永守(社長)節”を楽しみにしたい。

(中島)


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 3月の輸出額は大幅な減少、4月は4月としては31年ぶりの貿易赤字となる公算大

 先週発表された経済指標で注目すべきは、国内では20日の「3月の貿易統計」、海外の米国では21日の「4月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数」であろう。貿易統計では3月30日に3月上旬、4月8日に3月上中旬の輸出入額が発表されており、それらを順に確かめて見ると生産設備の損壊やサプライチェーンの寸断、計画停電が国内製造業の回復のブレーキとなり輸出が落ち込んだことがわかる。一方の米国フィラデルフィア地区の景況感指数は前月比で急落し、米国景気の順調な回復に水を差す格好となった。

 20日に国内で発表された「3月の貿易統計」の結果は、輸出額が5兆8659億円、前年同月比2.2%減、輸入額は5兆6694億円、同12%増、貿易収支は1964億円、同79%減となった。1カ月間トータルでは輸出額の減少率は一桁台であり、震災の影響はわかりにくいが上旬、中旬、下旬と区切ってみると、3月上旬の輸出額は2兆975億円、同15%増で外需が牽引することで国内経済は踊り場脱却へ向けて順調な滑り出しを見せつつあったが、3月中旬の輸出額は1兆8398億円、同5.9%減、3月下旬は1兆9285億円、同13%減と中旬では在庫でどうにか対応はできたと考えられるが、下旬になると部品の生産停止が完成品にまで及ぶことで次第に生産減少の範囲が拡大し、輸出額の減少率も拡大してきた。季節調整後の輸出額推移でも10年5月から10月まで急激な円高シフトによって6カ月連続の前月比減少となったが、11月から為替も落ち着き始め海外の在庫調整も終盤迎えつつあったことから1月を除き前月比増に転じてきており、2月では同4.6%増となっていたが、3月は同7.7%減と09年1月の同16%減以来、大幅な減少となった。主要商品別では一般機械が1兆2850億円、前年同月比7%増であったが、日本を代表する自動車などの輸送用機器が同19%減、電機が同6.1%減と大きく落ち込んだ。電機分野の詳細をみると半導体などの電子部品は同6.9%減、電気回路等の機器は同3.2%減と比較的小さな落ち込みに留まったが、映像機器は21%減、音響機器は31%減、電池は同13%減となり最終製品は二桁の減少率となった。来月発表の4月分の貿易統計では震災の影響が1カ月間フルに影響するため、3月以上の輸出額の減少が予想され、4月としては1980年以来、31年ぶりの貿易赤字となる公算が大きい。


輸出額、輸入額の前年同月比、前月比伸び率の推移
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 海外の米国では21日に「4月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数」が発表されたが、前月比24.9ポイント下落となり、08年10月の同37.5ポイント下落以来の急下落となった。内訳では出荷が同5.8ポイント下落、受注算が2.0ポイント下落、入荷遅延が同2.7ポイント上昇、在庫が10.3ポイント下落と在庫以外は小幅な変動であった。総合指数の大幅な下落の要因となったのは新規受注が前月比24.9ポイント下落となったことだ。わが国の大震災によって部品の調達が遅れることを懸念して受注が大きく落ち込んだと考えられるが、先々週に発表した「3月のNY連銀製造業景気指数」の新規受注は前月比16.5ポイント上昇、総合指数においても同4.2ポイント上昇、5カ月連続の上昇となっており、フィラデルフィア地区景況感指数の結果のみで米国製造業の回復鈍化は予想できず、5月2日発表の「4月の製造業ISM指数」で米国全体の動きを見極める必要があろう。


フィラデルフィア連銀製造業景況指数
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今週発表 … 鉱工業生産、経済・物価情勢の展望、FOMCと非常に重要な一週間

 今週は日米ともに非常に重要な一週間である。国内では28日に「3月の労働力調査」、「3月の全国消費者物価指数」、「3月の鉱工業生産」が発表されるが、いずれも震災の影響を織り込んだ結果となることが重要である。鉱工業生産では前月比10.5%減と予想されているが、予想は非常に難しくレンジは-5.0~-25.0と非常に幅広くなっており、コンセンサス通り同10.5%減の水準に留まれば安心できるといってもよい。また、同日に日銀から発表される「経済・物価情勢の展望」には是非とも注目したい。1月の中間評価では実質GDP成長率の11年度は前年度比1.6%増、12年度は同2.0%増となっていたが、今回の発表では11年度は大幅に下方修正され、12年度は逆に復興需要が本格化することより前回の同2.0%増が上方修正される予想となっている。一方、米国では25日に「3月の新築住宅販売件数」、28日に「1~3月のGDP成長率(速報値)」、29日には「3月の個人所得・消費支出」、「4月のシカゴ購買部協会景気指数」が発表され、コンセンサスでは新築住宅販売件数が2月の大幅減の反動を考慮して前月比12%増、GDP成長率が前期比年率2.0%増、個人所得が前月比0.3%増、個人消費支出が同0.3%増となっている。また、26~27日にはFOMCが開催されるが今回からFRBも会合後に日欧と同様に記者会見を開く予定であり、バーナンキ議長の言動には注目が集まる。原油、商品価格の高騰で米国インフレが警戒されていたが、CPI上昇率も落ち着き始め、失業率も改善しつつあるが依然として8%後半の高水準である。さらに3月の住宅着工件数、建設許可件数、中古住宅販売件数はそれぞれ前月比7.2%増、11.2%増、3.7%増と増加に転じたが、2月の大幅な減少の反動が主要因であり歴史的にも低水準、FHFAが発表した2月の住宅価格指数も前月比1.6%減であったことを考えると、年内の利上げを強調するタカ派の動きも控えめになるのではないかと思われる。

(浅枝)



今週の主な決算発表予定


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