マーケットレポート

マーケットの視点

GW中に悪材料が集中した割には意外に底堅い日本株市場、決算も一過性要因を除けば実態は好調で下押し株価に注目

・ GWで休んでいるうちに日本株市場に大きく影響を与える海外要因が露呈する展開が続いたが、連休前の4月28日「9849円74銭」に対して連休明けの5月6日は「9859円20銭」とあたかも何事もなかったようにGWは過ぎた。その中で、米国企業決算の好調、ビンラディン死亡を好感し2日に「1万4円20銭」と終値ベースで3月11日の東日本大震災当日以来の1万円台を回復したことを評価したい。従前は大震災の影響でわが国企業の収益悪化を不安視し、1万円を超えることなく“二番底”模索に一旦は沈むとの見方が多かったことを覆したことで、上値追いの余力は充分にありそうな展開となったためだ。大震災後は3月22日以降、9600円を挟んでほぼ上下150円のボックス推移が5週間強続いたが、27、28日と連騰し“291.05円”の上昇となって、連休直前の28日終値が「9849円74銭」とボックス圏を抜け出した。先週は、新興国の利上げ圧迫懸念、厳しめの米国経済指標の発表が相次いだことで米国景気回復の足踏みが指摘され原油、金など商品市況が急落したこともあり、GW後半は海外株市場が急落、更には3月17日以来の70円/米ドル台への円高となったこと、ソニーの個人情報漏洩事件の勃発など、日本株市場にとってはかなりの悪材料が重なった割には6日の下げは“145円安”で済んだ、という印象が強い。1年前、10年のGW明けはGW中の海外株市場の急落を受けて5月6日“361.71円安”、7日“331.10円安”と大幅安が続いたのとは対照的だ。しかも、日本株市場にとっては、最大の下落要因となる円高傾向は実際には既に4月21日頃から始まっていたにも拘わらずに27~2日は3営業日連騰で“445.51円高”となった。

・ ところで、3月決算企業の決算発表は先週までに既に約250社が発表したが、予想通り、自動車、電機を中心に次期見通しの発表を見送る企業が相次いだ。最大の理由は、ルネサスエレクトロニクスのマイコンの供給ネックである。しかし、ホンダは4~6月期まで5割操業が続き7~9月も不透明感が強いとしながらも、販売、生産、部品調達面でのグローバルベースの状況は着実に把握しつつあり5月中に先行きが見通せることになると明言、5割操業となるのはマイコンが正常に調達できるようになるまで生産ラインを止めずに、なおかつ在庫払底を回避するための方策であると説明した。更には、今回は経営が問われる問題ではなく、日本車のブランド価値が傷付いている訳ではないとも強調した。パナソニックは今回、中期計画の目標数字を見直したが、2012年度の売上高を昨年5月に発表した10兆円から円高が進んだことで9.6兆円、更に東日本大震災の影響で9.4兆円へと下方修正したものの、営業利益5000億円はそのまま必達にすると大坪社長が宣言した。また、日本電産の永守社長は、「今回の東日本大震災の影響を甘く見てはいけない」と警告しながらも、例えば、サプライチェーンが正常化する下期のHDD出荷台数は上期比16%増と跳ね上がり、年間通じては従来ベースの予想台数になるとし、通期では増収確保、営業利益は前期比6%減に止まるが経常利益は同2%増と3期連続ピーク更新、しかも営業減益となるのもビジネスチャンスを見据えて車載・家電向けモータの研究開発費を12.3期に50億円積み増すためと、依然強気だ。

・ また、コマツは11年度の世界の建機需要予測を北米25%増、欧州15%増と順調に回復、中国も10%増と堅調、その他新興国も15%増とした上で、コマツ自身はこれを上回る伸びを計画し12.3期業績見通しを売上高2兆1500億円、前期比17%増、営業利益3050億円、同37%増、年間配当金も前期比4円増配の42円と公表したが、82円/米ドルと想定した為替の動向、国内需要次第では過去最高の08.3期3329億円を更新する可能性は充分にあり得る。総合商社の決算は、軒並み11年度の当期利益が連続増益となり過去最高を更新する見通しを発表した。今回の米日決算発表は、一見すると米国の絶好調持続に対して日本が腰折れのように見えるが、11年度上期の一過性のマイナス要因を除くと日本企業の業績も総じて好調を持続する内容だと判断できる。東日本大震災の影響が足下の株価を実態以上に下押ししている銘柄は多く、自動車、電機を中心に目先のマイナス要因に一喜一憂し株価の戻りの鈍い銘柄は大幅リバウンド狙いのチャンスだ。

(中島)


先々週、先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先々週、先週発表 … 米国の経済指標は厳しめの内容続いたが、「4月の雇用統計」は好転を示す

 先々週、先週は非常に内容の濃い2週間であった。まず経済指標では、国内で震災後の影響を示す3月分の結果が多く発表された。具体的には25日の「3月の企業向けサービス価格指数」、27日の「3月の商業販売統計」、28日の「3月の全国消費者物価指数」、「3月の労働力調査」、「3月の鉱工業生産」だ。一方の海外でも米国で28日に「1~3月のGDP成長率」、29日に「3月の個人所得・消費支出」、「4月のシカゴ購買部協会景気指数」、「4月のミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)」、5月に入り、2日には「4月の製造業ISM指数」、4日に「4月の非製造業ISM指数」、6日に「4月の雇用統計」、ユーロ圏ではECBが4月に続き5月にも再度政策金利を引き上げるかどうかの材料となる「4月の消費者物価指数(速報値)」が29日に発表された。また、日米欧の中央銀行の動きも注目された。日本銀行は28日に「経済・物価情勢の展望」を発表し、11年度の実質GDP成長率を1月発表の前年度比1.6%増から同0.6%増へ下方修正、12年度は逆に、輸出や生産を起点として潜在成長率を上回る成長が続くことから同2.0%増から同2.9%増へ上方修正した。26~27日に開催されたFOMCでは会合後のバーナンキ議長の記者会見、ECB理事会ではトリシェ総裁のインフレ動向の発言に目が集まった。

 まず、国内で28日に発表された「3月の鉱工業生産」だが、結果は前月比15.3%減となりリーマン・ショック後の09年2月の同8.6%減を超え、初の二桁台、過去最大の減少率となった。コンセンサスの同10.5%減より大きな減少率となったが、予想レンジは前月比5.0~25.0%減と非常に幅広く予想が難しかったことを考えると減少率が10%台に留まったことでひとまず安心感が広がった。業種別内訳では、自動車を中心とする輸送機械工業の減少率が最大となり同46%減となった。その他の業種においても、一般機械工業が同14%減で5カ月ぶりの減少、鉄鋼業が10%減で4カ月ぶりの減少、非鉄金属工業が17%減で5カ月ぶりの減少、電子部品・デバイス工業が6.9%減で5カ月ぶりの減少となり、これまで海外の景気回復に支えられ順調な生産回復に転じてきた業種の減少に加え、サプライチェーン寸断の影響で全業種が前月比減少となった。しかし、今回の鉱工業生産指数の急落は需要が蒸発したわけではなく、震災の影響で生産が一時的に滞っていることが原因だ。3月の予測調査の結果は4月が前月比3.9%増、5月が同2.7%増と2カ月連続の増加となっているが、サプライチェーン寸断の影響は比較的広範囲に及んでおり、更なる大幅な落ち込みはないものの、予断は許されない状況にはある。


「鉱工業生産」~生産指数前月比伸び率の推移
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 一方、海外では29日に「4月のシカゴ購買部協会景気指数」、2日に「4月の製造業ISM指数」が発表されたが、シカゴ購買部協会景気指数は前月比3.0ポイントの下落、製造業ISM指数は同0.8ポイントの下落となった。11年2月までそれぞれ4カ月連続上昇、7カ月連続上昇となっていただけに3、4月と連続で下落したことで回復の勢いに鈍化傾向が現れてきた。21日に発表された「4月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数」は同24.9ポイントの急落となり、同指標発表以降の景況感指数は注目度が高まった。但し、製造業ISM指数は下落したものの、市場予想の59.5は上回り60.4となり4カ月連続で60以上を維持したことで今後の鈍化傾向の見方は弱まった感じだ。ただ、注意しておきたいのが非製造業のISM指数だ。4月は同4.5ポイントの大幅な下落、10年8月の52.8以来の低水準となった。この下落の主な要因は新規受注の項目で、4月は同11.4ポイント下落と過去最大の下落幅となった。新規受注の下落が一時的かどうか、今後発表される5月分以降の結果で見極めたい。


製造業ISM指数、シカゴ購買部協会景気指数の推移
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 6日には労働省から「4月の雇用統計」が発表された。4日に民間調査会社ADP発表の雇用統計では民間雇用者数が前月比17万9000人増と妥当な水準とされる同20万人増のペースを3カ月ぶりに下回り、続く5日には労働省が発表した新規失業保険申請件数が47万4000件と10年8月14日の48万8000人以来の高水準となったことから、市場予測では労働省発表の雇用統計でも非農業部門雇用者数は前月比20万人増を下回り同18万5000人増とされていた。結果は同24万4000人増と悲観的な思惑を払拭する格好となった。非農業部門雇用者数は2月分も19万4000人から23万5000人と大幅な上方修正 3月の同22万1000人増とあわせると前月比20万人以上の増加が3カ月連続となった。内訳では政府部門が財政状態の厳しさから同2万4000人減となったが、民間部門が同26万8000人とリーマン・ショック後で最大の増加幅となったことでカバーした。民間部門の内訳ではサービス業が同22万4000人増と全体を大きく牽引、製造業は同2万9000人増、住宅市場の回復が遅れていることから建設業は同5000人増と雇用者数の増加には寄与しているが低迷状態が続いている。ただ、4月の結果はADPの雇用統計や失業保険申請件数で雇用環境の回復にブレーキがかかるのではという悲観的な観測が杞憂に終わったというだけで、力強い回復には至っていないということに注意したい。

新規失業保険申請件数の推移
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完全失業率、非農業部門雇用者数前月比増減幅の推移
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 経済指標以外では欧米の中央銀行の動向が焦点となった。26~27日には米国でFOMCが開催されたが、会合後のバーナンキ議長の記者会見が注目された。これまで会合後には声明文のみが発表され会合の詳細については3週間後の議事録発表まで待たなければならなかったが、今回のFOMCからは日本銀行、ECBと同様に会合後に議長の肉声を聞くことができるので今後の政策金利の行方をより早く見通せるようになったといえる。今回の会合ではQE2の終了後とFFレート引き上げ時期が重要な議題となったが、事前の市場予想通り、QE2は6月に終了する予定だがMBSなどの償還金の再投資は続け、FRBバランスシートの規模は当面維持することとなった。また、最近の物価上昇にも注意しているが一時的な上昇と見ていることから11年中の金利の引き上げはないと判断してよかろう。一方、5日にはユーロ圏でECB理事会が開催された。4月の理事会では政策金利を0.25%引き上げ、5月理事会では据え置きの予想であったが、29日に発表した4月の消費者物価指数では前年同月比2.8%増と3月の同2.7%増から増加率が増大し、5月は据え置くとしても6月には金利引き上げに動くだろうと予想された。しかし、今回の会見では物価について「警戒」、「用心」という文言は使わず6月利上げの予想を大きく後退させた。ユーロ圏ではギリシャやポルトガルなど財政難に喘ぐ国も存在することから今後の金利動向については注意深く見守りたい。

今週発表 … 「4月の景気ウォッチャー調査」が下げ止まるかに注目

 今週は、国内で11日に「3月の景気動向指数(速報値)」、12日に「4月の景気ウォッチャー調査」、「4月の工作機械受注(速報値)」、海外では米国で「4月の輸出入、卸売、消費者物価指数」、12日に「4月の小売売上高」が発表される。注目点は景気ウォッチャー調査と工作機械受注であろう。3月の景気ウォッチャー調査では過去最大の下落幅を記録したがパニック的な状況下であったことから過度に悲観的になっていたと思われ、今週発表の4月調査でもう一度、現状と先行きを見極めたいところだ。工作機械受注においては3月の結果では外需が牽引することで受注総額としては辛うじて前月比増加となったが、4月結果では震災後の影響が1カ月間フル寄与するため内需、外需の動きには注目したい。

(浅枝)



今週の主な決算発表予定


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