マーケットレポート

マーケットの視点

リスクマネー縮小、欧州での国際会議様子見で神経質な相場展開だが、意外に堅調な12.3期業績を先取りする買い場へ

・ 先週の世界株市場は総じて膠着展開となり、今週も神経質なマーケット展開になりそうだ。バブル気味の高騰を続けていた商品市場が一服、5月に入っての2週間でWTI原油市況は13%下落、歴史的な急騰ぶりとなっていた銀価格は26%下落となるなど、リスク資産からのマネー引き上げ傾向が強まっている。また、欧州のギリシャ問題が再燃し始めており、今週は16日にユーロ圏財務相会議、17日にEU財務相理事会が開催され、問題解決に向けて有効な策が打ち出されるかどうかを睨む展開になろう。更に、来週の26~27日には仏ドービルでG8サミットが開催される予定で、「原子力問題」がテーマとして浮上している。議長役であるサルコジ仏大統領の思惑は、原子力の安全性をアピールすることでフランスの重要な輸出資源である原子力発電に対する国際的な批判を和らげようというもの。しかし、サミットの冒頭で演説する日本の菅首相が唐突に浜岡原発停止を要請して実際に停止、更に昨年発表した原発依存度を50%に引き上げる「エネルギー基本計画」を白紙に戻すと発表したことで、サルコジ仏大統領の思惑とは噛み合わない演説内容になりそうで、オバマ米大統領も早くから原発に対する重要性は変わらないと主張していたこともあり、協調性を欠いたサミットになる可能性が高く、少なくともマーケットの支援要因にはならない。

・ 一方、先週までに3月期決算会社の決算発表はほぼ出揃った。日経報道によると、11.3期の経常利益は“前期比55%増益に減速”したとしているが、第3四半期(10年10~12月期)が発表された時点での決算集計で「同52%増益見通し」となっていたので、むしろ前回予想に対して経常増益率は高まる結果となっている。但し、第3四半期決算発表時に11年1~3月期を慎重に見る企業が多く、本来は「同60%以上の増益」になりそうだったものが「同55%増益」に止まったことになり東日本大震災によって経常利益が5%程度、約1兆3000億円が「3月11日」後の20日間で吹っ飛んだことになる。これは、大震災なかりせばあったはずの1~3月期経常利益6兆円強に対して20%を上回る規模であり、特別損失計上額と合わせてその影響はやはり大きい。しかし、大震災の影響を除いて考えれば、第3四半期決算発表時に予想した通りに11.3期の経常利益は60%を超える増益率へと増額修正されたはずだったと推定され、今回の大震災の特殊要因がなければわが国企業収益は著しい改善ぶりを続けていたことになる。続く12.3期に関しては、4~6月期が一層厳しく、落ち着き始めるとはいえ7~9月期も影響は残り収益面では浮上感が乏しい状態が続くとの見方が多い。

・ しかし、決算説明会における会社側発言の中で目立つのは「日々刻々と好転状況が強まっている」というコメントだ。例えば、トヨタ自動車は4月22日に豊田社長が記者会見で「国内が7月、海外が8月から操業度を上げ11~12月に正常化する」としていたが、先週11日の決算発表では「国内外とも6月には7割操業まで回復しその後、稼働率上昇が続き11月にはフル操業可能となる」と前倒しになるとの前向きな発言だった。決算説明会の席上では、伊地知専務が『11月以降に国内外で大増産計画を実行する』と再浮上への意欲的な姿勢を強調、「従業員の方々には忘年会はないつもりでと伝えた」と鼻息が荒い。12日に決算発表した日産自動車・ゴーン社長は「10月中には全世界でフル生産となり12.3期も2年連続で過去最高の販売台数になる」と強気な発言。自動車業界は生産制約があるものの、予想外にアップテンポの回復を辿る可能性が高い。なおかつ、フル操業になる前は在庫車両をベースに販売をコントロールすることになるが、“玉不足”ゆえに値引きやインセンティブを大幅に抑制することで台当たり利益が大きく向上することになる。更には、下期の大増産による操業上昇効果が大幅に収益を押し上げることになりそうだ。一方、比較的厳しいとみていた電子部品各社の12.3期業績は予想外に堅調な見通しで、日東電工が3期連続増益かつ営業利益890億円は過去最高の06.3期892億円に並び、被災地に国内工場が集中しているアルプス電気は電子部品に関しては自動車のウエイトが高いながらも営業16%増益かつ営業利益率は過去最高の5%になると公表。ニコンも露光装置の急回復、デジタルカメラの増販計画で経常25%増益と公表した。12.3期見通しの発表を見送った企業の多くは6月中に改めて見通しを発表するが、意外に堅調な見通しの発表となり、なおかつ期中で大幅増額修正となり、12.3期が増益となる可能性は高い。それを考えると、膠着相場展開は絶好の買い場を与えることになると考える。

(中島)


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 「4月の景気ウォッチャー調査」は現状下げ止まり先行き11.8ポイント上昇

 先週発表の経済指標では、国内の「4月の景気ウォッチャー調査」、海外では米国の「4月の輸出入物価指数」、「4月の卸売物価指数」、「4月の消費者物価指数」が注目された。景気ウォッチャー調査の調査期間は4月25~30日であり、震災後の復興状況が如実に現れている。また、米国では、4月26~27日に開催されたFOMC後の記者会見でバーナンキ議長が「物価上昇には注意しているものの一時的」と発言したことで、年内の金利引き上げ予想が遠のいた後だけに、先週発表された物価指数にはFRBの金融緩和的な姿勢に変更はないかという観点で注意深く確認された。その他の経済指標では国内で「3月の景気動向指数」、米国で「4月の小売売上高」が発表された。米国の小売売上高は原油価格の上昇によってガソリンスタンドが前月比2.7%増となったことが牽引し全体の数字でも前月比0.5%増と10カ月連続の上昇となったが、自動車・ガソリンスタンドを除く小売売上高も同0.2%増と若干ながら増加しており、米国景気は緩やかながら回復していることが確認された。

 11日に内閣府が発表した「3月の景気動向指数」は、先行指数が前月比4.5ポイント下落、一致指数が同3.2ポイント下落となり、先行指数は08年10月の同4.4ポイント下落、一致指数は08年11月の同3.1ポイント下落の記録を更新し、過去最大の下落幅となった。先行指数の内訳は、大震災によるパニック状況から買いだめが発生し最終需要材在庫率指数は前月比1.0ポイント下落し先行指数の上昇に0.11ポイント寄与したのだが、生産がストップしたことで原燃料などの在庫が膨らみ鉱工業生産財在庫率指数の寄与度は-0.75、自動車や電機の部品類の供給が滞ったことで耐久消費財出荷指数の寄与度が-0.75となり先行指数の大きな下落要因となった。一方、一致指数の内訳は、電力供給量の低下を発端とした計画停電や工場の被災などで大口電力使用量が同9.9ポイント下落し-0.45の寄与度となったことを初めとし、鉱工業生産財出荷指数、製造業の所定外労働時間指数、小売業の商業販売額、卸売業の商業販売額、製造業の中小企業売上高の寄与度がそれぞれ-0.44、-0.43、-0.43、-0.43、-0.43といずれも過去最大のマイナス寄与度となった。


「景気動向指数」~先行CI、一致CIの推移
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 12日に注目の「4月の景気ウォッチャー調査」が発表された。先月発表された3月分では現状判断DI、先行き判断DIともに過去最大の下落幅となり、4月分では各判断DIが下げ止まるかどうかが焦点となった。結果は現状判断が前月比0.6ポイント上昇と下げ止まり、先行き判断DIは同11.8ポイント上昇と再び上昇に転じる方向を示す明るいものとなった。現状判断DIは家計動向のみが同1.8ポイント上昇と下げ止まり、企業動向、雇用はそれぞれ同1.3ポイント下落、同3.5ポイント下落と3月分に続き2カ月連続の下落となったが、先行き判断DIの内訳は家計動向、企業動向、雇用ともそれぞれ同12.8ポイント上昇、同11.1ポイント上昇、同7.1ポイント上昇と全ての項目で上昇した。企業動向の判断理由としては「東日本大震災の影響から、部品不足で思うように生産体制が組めない」、「東日本大震災の影響で、東北地区の部品メーカーから入荷していた部品が滞ったことで、工場が数日間操業停止となっている」などサプライチェーン寸断に関してのコメントが多く見られ部品不足の深刻さを物語っている。また、直接の被災地ではない中国地域の鉄鋼業からは「当地区では自動車関連の客が多いが、大手自動車メーカーが東日本大震災の影響による部品調達難で足元での稼動が低操業となっており、それが弊社のユーザーである各部品メーカーやコイルセンター等の生産にも大きな影響を及ぼしている。発注減で弊社の生産にも影響が大きい」との声も聞かれ、自動車業界の減産の影響が素材・部品業種などへと波及する事態となっており、しばらくは幅広い業種での生産停滞が続くと考えられる。一方、現状判断の地域別を見ると、東北地域は3月調査で同32.1ポイントと急落したが、4月調査では同6.7ポイント上昇と全国10地区で最大の上昇幅となっており、既に力強い回復力を見せている。同地域の百貨店からは「東日本大震災により買い控えをしていた人の動きが活発になっている。店を休業することなく営業できたため、来客数が増加している。被災者が改めてトータルで買い求めているため、販売量、単価共に増加している」との声も聞かれた。また、回復の動きは他の地方にも広がっている。北海道地域では「ようやく東日本大震災の負の影響から抜け出し、元気になろうという雰囲気が客に出てきたことから、やや良くなっている」とのコメントから国内消費者の心理状態は明らかに好転しているといえる。


「景気ウォッチャー調査」~現状判断、先行き判断の推移
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 海外指標では、米国において10日に「4月の輸出入物価指数」、12日に「4月の卸売物価指数」、13日に「4月の消費者物価指数」が発表され、輸入物価指数は前年同月比11.1%増、卸売物価指数は同6.8%増、消費者物価指数は同3.2%増となった。これで消費者物価指数の伸び率は2月の同2.1%増、3月の同2.7%増に続き3カ月連続で2%を上回ることとなった。しかし、“食料・エネルギー除く消費者物価指数”は同1.3%増と依然として2%以下であり、原油や商品価格の高騰、ドル安による食料やエネルギー関連の輸入価格の上昇が消費者物価を押し上げてはいるが、過度な物価上昇に到っているとは言えない。また、住宅価格は依然として低下傾向が続いており、失業率も高水準な状態が続いていることなどから、インフレ抑制を目的とする早急なFFレート引き上げは景気回復を腰折れさせかねない。6月21~22日に開催される次回FOMCの内容、そしてそれまでに行われるFRB要人のスピーチにおける発言内容が注目されよう。

消費者物価指数、卸売物価指数、輸入物価指数
 前年同月比伸び率の推移
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今週発表 … 19日に国内の「10年1~3月期GDP成長率」、米国の一連の景況関連指標に注目

 今週は、国内で16日に「3月の機械受注統計」、19日には「1~3月のGDP成長率(第一次速報)」、海外では米国で16日に「5月のNY連銀製造業景気指数」、「5月の住宅市場指数」、17日には「4月の住宅着工・許可件数」、「4月の鉱工業生産・設備稼働率」、19日には「5月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数」、「4月の中古住宅販売件数」が発表される。国内実質GDPは前期比年率で1.8%減と前回の同1.3%減に続き2四半期連続で減少、さらに大震災の影響で前四半期より減少率を拡大する見通しである。また、米国のコンセンサスに関してはNY連銀製造業景気指数が前月比1.7ポイント下落だが、フィラデルフィア連銀製造業景況指数は同2.0ポイント上昇、建設許可件数は同0.9%増、住宅着工件数は同3.8%増、中古住宅販売件数は同2.0%増の見通しだ。

(浅枝)



今週の主な決算発表予定


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