マーケットレポート

マーケットの視点

12.3期見通しの追加発表が相次ぐが、大震災からの立ち直りは予想以上に早く、好感される内容の発表が期待される

・ 5月に入っての世界株市場は停滞色を強める動きとなり、先週末の日経平均株価も前週末比“85.14円安”の「9521円94銭」と3週連続の下落となった。ただ、ズルズルと下落歩調を辿っているというよりは、9500円を挟んだ膠着状態が続いている様相を呈し、9500円を下回れば株価下押しした銘柄に買いが入り底堅い推移が続いている。このところの世界株市場の趨勢は、米国経済指標で低調な発表が続いたことと欧州財政問題の再燃、6月で米国FRBのQE2が終了することも視野に入りで米欧景気減速が強く意識されている。更に、新興国経済に対しても1年以上の利上げ継続でもインフレ懸念が鎮静化せず更なる利上げが経済成長を鈍化させ、結果的に現在主流となっている世界経済の堅調見通しが一転、下方修正されることをマーケットは織り込み始めていた。商品市場も先週は落ち着いたがピークアウト感が漂い、あたかも過剰流動性相場が終焉を迎えるような流れになっている。今週は月末月初となることから、特に米国で重要指標の発表が相次ぎ、過敏な状態になっていることから、上下に振れやすい展開となりそうだ。

・ しかし、27日閉幕後のG8首脳宣言で「各国景気は自律的回復過程に入ってきているものの、なお下方リスクが存在している」との認識を表した上で、「構造改革を通じた行動を含め、財政の持続可能性の向上、回復の強化および雇用の拡大、リスクの軽減、並びに強固で持続可能かつ均衡ある成長の確保のために必要とされる行動に焦点を当て続けること」に合意した。2012年に米国、フランスで大統領選挙を控えており、ドイツでもメルケル政権が劣勢となっている現在、主要国は景気回復を持続させることを引き続き最重点政策とすることになるだろう。従って、現在のマーケット足踏み状態を脱却した後は、仮に一旦大きく下振れしたとしても、むしろ再び上昇トレンドに回帰して行く可能性が高いと予想する。

・ ところで、11.3期決算発表は先週26日のソニーの発表でほぼ終了した。いつもの決算集計で今回は金融関連を除く東証1部3月決算会社1100社を対象に集計したが、当初はこのうち284社、ほぼ4社に1社が12.3期見通しの発表を見送った。しかし、20日に高岳製作所、グローリー工業、ラサ工業、23日に東光電気、東鉄工業、24日に日本梱包運輸倉庫、25日に日立メディコ、メルコ、26日に日立建機、日立ツール、安川電機、タカラトミー、東武鉄道の13社が追加で12.3期見通しを発表しており、今後、6月にかけて300社近い会社が改めて見通しを発表することになるだろう。追加発表した中で、日立メディコ、日立建機、日立ツール、安川電機は“二桁増益”の好調な見通しを発表し、他もグローリー、ラサ工業、タカラトミーも増益見通しを発表するなど、大震災の影響がある中で総じて上期は厳しいが、下期に急回復に転じ、12.3期通期では業績好調を維持する可能性が高いことが示された。これは、上期は大震災の影響を免れないものの、下期以降は上期低調を充分にカバーし得る回復テンポになることを示している。

・ 最大の焦点は自動車、電機の主要企業の発表になる。自動車は、いわき工場のダメージの大きかった日産自動車は当初、10月以降の正常化を公表していたが、6月以降に前年並みの生産を確保できると回復が早まった。トヨタ自動車も5月11日の決算説明会では6月に7割操業となり徐々に切り上げ11月にはフル操業にするとしていたが、6月には9割操業にすることが可能とした。マイコンを中心に重要部品の手当てにメドが立ち始めていることが背景であり、この1カ月で悲観的な見方は大きく後退、予想以上に速い回復ピッチとなりそうだ。自動車業界の見通しが上方修正されることで鉄鋼、化学、非鉄、電子部品など関連業界に与えるプラスのインパクトは大きい。なお、追加発表で好調見通しを発表した会社に対しては、当然のことながら株価は好反応している。従って、6~7月かけて発表される12.3期見通しの追加発表がマーケットで好感されることで株価を下支えすることになろう。国内の経済指標等も下げ止まりから好転を示す内容の発表が期待され、為替次第、政局次第では本格的な上放れの公算もあり得よう。 (中島)

先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 4月の貿易収支は31年ぶりに赤字だが、国内生産体制の想定以上の回復に期待

 先週は国内で25日に「4月の貿易統計」、27日に「4月の全国消費者物価指数」、米国で24日に「4月の新築住宅販売件数」、26日に「1~3月のGDP成長率(改定値)」、27日に「4月の個人所得・消費支出」が発表された。米国の新築住宅販売件数は32万3000戸、前月比7.3%増と2カ月連続の増加、住宅価格中央値は同3400ドル上昇、在庫月数は同0.7カ月減少し6.5カ月と好感の持てる結果となったが、前年同月販売件数の42万戸に対しては低水準であり、差し押さえ物件の増加で中古住宅市場の在庫が多く新築住宅需要の圧迫要因となっていることを考えると当分は予断の許さない展開が続こう。

 25日に財務省が発表した4月の貿易統計は、輸出額が5兆1556億円、前年同月比12.5%減、輸入額は5兆6193億円、同8.9%増、差引で4636億円となり11年1月以来、3カ月ぶり、1月は輸出が落ち込む特殊要因を除くと80年4月の5083億円以来、31年ぶりの貿易赤字となった。主要製品別の輸出額では輸送用機器が同43%減、なかでも部品の供給網が滞ったことで自動車が同67%減と大打撃を受け、電気機器においても同13%減、一般機械は同1.5%増と16カ月連続で増加となったが、11年2月の同23%増、11年3月の7%増からさらに伸び率を縮小した。輸入額においては原油市況が高水準にあることから鉱物性燃料が同15%増と輸入額の増加に寄与し、寄与度も4.6ポイントとなった。鉱物性燃料の数量面では原油及び粗油が1697万kl、同14%減となったが、これは国内石油コンビナートが被災し精製量が減少したことが影響しており、逆に製品として速効性の高い揮発油の輸入数量が同15%増、LNGが同8.8%増、LPGが同5.3%増と価格高騰に加え数量面でも輸入額全体を押し上げた。しかし、どちらも震災による一時的な影響によるものが大部分であり、輸出額は3月の同2.3%減から減少率は拡大したとはいえ、上中下旬別では4月上旬の前年同期比19%減をピークとし、中旬には5.4%減と減少率を縮小、下旬には同12%減と減少率が再度拡大したとはいえ、平常時には輸出額が毎月下旬に膨らむ、例年は国内ゴールデンウイークの休日に備えて前倒しで輸出を増加させる傾向を考えると、4月下旬の減少率は実質的には1桁台の減少率で留まり生産体制は想定以上に回復していると推測できる。来月発表する5月分ではゴールデンウイークの影響があり正確な判断はつき辛いかもしれないが、国内の生産体制は着実に回復しているということはしっかりと認識したい。


輸出額、輸入額の前年同月比伸び率の推移
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 27日には総務省から4月の消費者物価指数が発表されたが、生鮮食品除く総合指数は前年同月比0.6%増と2008年12月の同0.2%増以来2年4カ月ぶりに増加、総合指数は同0.3%増と5カ月ぶりの増加となった。しかし、3月分までは高校授業料も無償化が公立高校で0.4ポイント、私立高校で0.11ポイント、合計で0.51ポイントの指数押し下げに寄与していたが、4月分ではその効果が剥落し逆に0.51ポイントの押上げ要因となった。また、主に輸入に依存しているエネルギー関連では市況の高止まりによりガソリンが0.32ポイント、灯油が0.17ポイントの押上げ要因となった。いずれにせよ、所得増加によるものではなく、一時的な政策効果や外部的要因といった外部環境の変化がもたらす物価上昇であり、震災ショックによる自粛ムードが緩和してきたとはいえ被災によって雇用の受け皿が欠けた現状から消費を控える姿勢をとらざるを得ない点を考慮するとデフレ圧力は根強く残っているといえる。また、8月には消費者物価指数の基準改定で下ぶれの見通しが立っており、10月には昨年のたばこ値上げ効果が剥落することで逆に物価が下落することから、国内の物価上昇が見通せるまでは相当な時間を要するだろう。


全国消費者物価指数」~総合、生鮮食品除く総合、
食料・エネルギー除く総合の前年同月比伸び率の推移
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今週発表 … 4月の新規失業保険申請件数の急上昇を考慮すると、4月米国雇用統計には注意したい

 今週は国内で31日に「4月の労働力調査」、「4月の鉱工業生産」、「4月の新設住宅着工戸数」、2日に「1~3月の法人企業統計調査(速報値)」が発表される。法人企業統計調査について今回は東日本大震災により被災地の調査は困難であることから特例として2段階に分けて発表することとなっている。通常3万社程度を調査するが、回答を見送る企業は1000社程度とみられ、結果へ大きな影響を及ぼすものではないと考えられる。一方、海外では米国で31日に「5月のCB消費者信頼感指数」、「5月のシカゴ購買部協会景気指数」、1日に「5月の製造業ISM指数」、3日に「5月の非製造業ISM指数」、「5月の雇用統計」が発表される。コンセンサスでは国内完全失業率が4.7%、有効求人倍率が0.62倍、鉱工業生産が前月比2.8%増、米国の製造業ISM指数が前月比2.4ポイント下落、完全失業率が8.9%で前月に対し0.1ポイント改善、非農業部門雇用者数が前月比19万5000人増となっている。米国では4月の新規失業保険申請件数が急上昇し4月24~30日の件数は47万8000件と10年8月8~14日の48万8000件以来の高水準となったことから5月の雇用統計には注意が必要だ。1日には民間調査のADPからも前段階として雇用者数が発表されるので、まずはADPレポートで確認し様子を伺いたい。


新規失業保険申請件数の推移
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(浅枝)



今週の主な決算発表予定


今週の主な決算発表予定
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