マーケットレポート

マーケットの視点

変調著しい海外株に対して底堅い日本株市場、予想以上の回復ピッチを見え始めた日本企業への注目度は高い

・ 先週は、過剰流動性相場の流れで好調が続いた商品市場、海外株市場が米国FRBのQE2停止への意識、各国不安材料の台頭などを背景に変調を来している中、日本株市場の底堅さが目立った。日経平均株価は週明け早々の6日に3日続落で「9380円35銭」と大震災後の3月22日以降に維持していた9400円を割り込み、9000円割れを指摘する弱気な見方も散見したが、7日以降は2月14~21日の6日連騰以来の4日連騰となり、先週末の株価は前週末比“22.23円高”と5週間ぶりの上昇に転じ「9514円44銭」と6月1日以来の9500円台を回復して終えた。為替が連日、80円/米ドルを上回り79円/米ドル台を記録し、海外株市場が総崩れする中での底堅い動きだ。5月23日の週に30週間ぶりの売り越しとなった外国人投資家の売買動向は5月30日の週は再び買い越しに転じている。企業業績に対する最大のネックとされた東日本大震災によるサプライチェーン寸断の修復が予想以上のスピードで進んでいること、消費者心理も後退に歯止めがかかり災害復興にようやく向かうことで正常な状態に戻る道筋も見え始め、追加発表されている12.3期業績見通しが予想通りに前向きな内容が多いことが日本企業に対する期待感を高めている。

・ 一方、先週の海外株市場は総崩れ状態。NYダウは1万2000ドルラインの攻防、バーナンキFRB議長が7日にアトランタの会合で「景気の回復ペースは、セクターによってむらがあり、非常に多数の失業者・潜在失業者を考えれば苛立たしいほど遅いが、全体としては引き続き穏やかなペースで回復しているようだ」と発言、経済成長が想定よりも鈍いと認識しているが“QE3”に関する発言がなかったことで米国株市場は方向感を見失っている。NYダウは9日に7営業日ぶりの上昇に転じたが10日は“172.45ドル安”と急落し「1万1951ドル91セント」と3月18日以来の1万2000ドル割れ、欧州株市場は一進一退、10日に3月10日以来の本年3度目の利上げを実施した韓国総合指数は香港ハンセン指数とともに7日続落。欧州では、ドイツ政府が民間投資家の保有するギリシャ国債の償還期限延長を発表したことが不安を煽りギリシャ国債利回りが急騰、欧州の主要銀行の資産査定の結果発表が当初予定の6月中旬から7月に延期になったことも不安をかき立てている。中国では、地方政府傘下の投資会社が抱える債務が2010年末で最大14兆元(約180兆円)に達しているとの指摘もあり、従来から懸念されている中国バブル問題が意識されている。今週は、米国で景況感、住宅に関する需要指標の発表が相次ぎ、中国でも重要指標の発表が集中する。14日にバーナンキFRB議長の財政問題をテーマとする講演会もあり、引き続き海外株市場は不安定な展開が続きそうだ。

・ トヨタが10日に発表した12.3期見通しの発表について日経新聞の表現は必ずしも前向きの評価になっていないが、説明会の感触からは回復テンポは速く、かつ増額修正の余地が非常に高いとの印象を受けた。現時点でも、不透明な要素は多いことから完全な予測にはなっておらず、どちらかと言えば“最低ラインの予測”を出したという感触。営業利益は上期が1200億円の赤字に対して下期は4200億円の黒字と急回復に転じる。今回の大震災の影響額は3600億円と試算しており、実質的には6600億円の営業利益だが、7~9月期の回復テンポが更に高まることで赤字予想が解消される可能性は充分にあり得る。また、下期も在庫積み増しが充分でないことでの販売ロスや販売巻き返しのために販促費などを見込んでの数字であり、想定以上の操業度上昇効果、生産がスムーズに行くことでの販売ロス解消や販促費の抑制によって増額修正される可能性は高いと予想する。他には三菱自動車が震災影響を吸収して12.3期営業利益は3期連続増益、大和ハウスも経常、純利益とも3期連続増益、純利益は5期ぶりに過去最高を更新すると発表した。6月8日の日経朝刊のインタビュー記事(7面)で世界最大の資産運用会社の米ブラックロックのローレンス・フィンク会長兼CEOが日本に対する強気な発言を行い「難局に対する柔軟性が高い、円高への対応も驚異的だ」と日本企業を高く評価している。8日に発表された「5月の景気ウォッチャー調査」では消費自粛ムードが和らぎ2カ月連続の景況感改善を示し、経済企画協力会が発表した「6月のESPフォーキャスト」では実質GDP成長率に関して4~6月期を前回調査の3.30%減から2.97%減へと上方修正、7~9月期4.04%増、10~12月期5.24%増とV字回復を描くと予想している。ドン底から這い上がる日本、予想以上の回復ピッチで進み始めた日本企業への注目度は高い。(中島)

先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 景気ウォッチャー先行きDIは震災前の95%水準にまで回復

 先週は国内で7日に「4月の景気動向指数(速報値)」、8日に「5月の景気ウォッチャー調査」、9日に「1~3月のGDP成長率(第二次速報)」、海外では米国で9日に「4月の貿易収支」、10日に「5月の財政収支」、「5月の輸出入物価指数」が発表された。経済使用以外で注目されたのは7日にアトランタで行われたバーナンキFRB議長の講演、8日に発表された「ベージュブック」である。特にアトランタ講演では最近の米国景気回復鈍化についてのバーナンキ議長の現状の認識と今後のFRBの動きが焦点となった。

 8日に国内で「5月の景気ウォッチャー調査」が発表されたが、大方の予想通り3月分をボトムとして4月分に続き5月分も現状判断DIが前月比7.7ポイント上昇、先行き判断DIが同6.5ポイント上昇し2カ月連続の上昇となった。また、基調判断も震災影響で厳しい状況が続いている旨は示したものの「景気の現状は、東日本大震災の影響により厳しい状況が続いているものの、上向きの動きがみられる」と “上向きの動き”の文言を加えたことで期待以上の明るさが見えてきたといえる。現状判断DIの内訳については、4月分では企業動向、雇用については生産や新規求人数の減少が響き同下落し、家計動向のみ同上昇となり現状判断全体では同0.6上昇とわずかながらの上昇となったが、5月分では家計動向の同9.2ポイント上昇の大幅な上昇に揃って、企業動向、雇用でもそれぞれ同5.4ポイント上昇、同2.8ポイント上昇となった。判断理由としては「東日本大震災で停止していた取引先プラント稼働の目途が立ったとの情報が増加している」や、「東日本大震災の影響が懸念されたが、新規求人数は製造業を中心に大幅に増加した。一部大震災の影響も見られるが限定的であり、全体的には好調である」など生産動向や雇用環境が回復し始めたことを表すコメントが見られ平常に戻りつつあるといえる。先行き判断DIの内訳は家計動向が同6.1ポイント上昇で44.8、企業動向が同6.0ポイント上昇し43.3、雇用が同10.3ポイント上昇し49.3と全項目で40以上、現状判断DIの全項目では30台であったことから、先行きが好転する可能性は非常に強いといえる。中でも雇用については判断の分かれ目である50まであと0.7ポイントと想定以上の急回復となり、「良くなる」から「悪くなる」の5段階評価の回答者割合では「やや悪くなる」が33.1→17.2、「悪くなる」が12.7→5.9と急激に減少したことから回答者の今後についての認識も明らかに変わっていると窺える。しかし、先行き判断では2月の47.2に対し95%の水準にまで回復したが、現状判断DIについては2月の48.4に対しいまだ74%水準までしか回復していないことから、今後は現状判断DIの回復スピードが焦点となろう。


「景気ウォッチャー調査」~現状判断、先行き判断の推移
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 一方、米国では7日にアトランタで開催されたバーナンキFRB議長の講演が注目された。直近2カ月ではISM指数を始めとする景況感関連の経済指標が予想を下回っていること、雇用関連においても新規失業保険の申請件数が40万件以上の水準で推移していること、5月の雇用統計では失業率が0.1ポイント悪化し雇用者数も前月に対し5万4000人増と増加幅を大幅に縮小し、先行きを懸念する展開が続いてきた。それを踏まえての今回の講演だが、議長としては米国経済の回復速度は“想定より幾分遅い”と述べたが、日本の震災影響の徐々に消滅しガソリン価格の上昇も緩やかになることで、11年下期には景気は持ち直していくだろうとの結論を示した。物価に関しては、ガソリン価格や石油関連商品の高騰は米国固有の要因ではなく世界経済動向が要因であり、直近数週間の市況の推移では物価動向は落ち着き始めており、以前から主張している「一時的な物価上昇」だったとしている。また、雇用に関しては、直近で弱い動きが見られるが、民間部門雇用者数は10年5~8月は月次で平均8万人以下、9~12月は14万人以下の増加ペースだったが、11年1~5月では18万人のペースであり、徐々に改善しており11年下期は5月の増加ペースより好転するだろうとしている。残念な点は、量的緩和策第2弾の終了後、市場が注目した量的緩和第3弾についての発言がなかったことだ。これから推測するに、MBSの償還金を再投資するスタンスには変更はなく緩和的な姿勢を維持していくというこれまでの考えから大きな変化はないといえる。

今週発表 … 震災後初の調査となる法人企業景気予測調査には注目すべき

 今週発表する主な経済指標は、国内では13日の「4月の機械受注統計」、14日の「4~6月の法人企業景気予測調査」、米国では14日の「5月の小売売上高」、15日の「6月のNY連銀製造業景気指数」、「5月の消費者物価指数」、「5月の鉱工業生産・設備稼働率」、「6月の住宅市場指数」、16日の「5月の住宅着工・許可件数」、「フィラデルフィア連銀製造業景況指数」、17日の「6月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)」、「5月の景気先行指標総合指数」と特に米国に重要指標が集まった週となる。コンセンサスでは国内の機会受注統計が前月比1.8%増。米国のNY連銀製造業景気指数が前月比1.6ポイント上昇、フィラデルフィア連銀製造業景況指数が同3.1ポイント上昇となり景況感は改善する模様。また、エネルギー価格上昇が落ち着きを見せ始めたことから消費者物価指数は前月比0.1%増、ミシガン大学消費者信頼感指数が同0.2ポイント上昇であり、米国経済の先行きの懸念は薄らぐ予想となっている。また、国内の法人企業景気予測調査は前回の1~3月分の調査時点は2月15日であり、今回発表は震災後初めての調査結果であり是非とも注目したい。

(浅枝)



今週の主な決算発表予定


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