マーケットレポート

マーケットの視点

株価低迷続く“5社”の展望が日本株市場の鍵になりそうで、強気の経営姿勢・戦略が見直されることになろう

・ 投資マネー変調が世界の株式市場、商品市場を揺らし続けている。海外株市場に比べて堅調な推移を辿っていた日本株市場も低調な海外株市場に引き摺られる格好で、先週末に下値を切り下げた。日経平均株価は16、17日の2日間で“222.92円安”となり週末株価は「9351円40銭」と前週末比“163.04円安”、震災直後の3月18日「9206円75銭」以来、東日本大震災後の異常な株価急落を除けば10年11月4日「9358円78銭」以来の9400円割れとなった。大震災直後の株価急落から回復して以来、9400円のラインを維持していた粘り腰が一旦、砕けた。大震災からの立ち直り、特に予想以上のピッチで回復する企業の生産動向、業績を下支えに膠着状態ながらも下値抵抗を保っていたが、「ギリシャ財政問題、米国景気減速懸念、中国経済成長へのブレーキ懸念」が日本株への重石となった。根底にある米FRBのQE2(量的緩和策第2弾)の6月末終了が強く意識されたリスクマネーの引き上げムードが日本株市場をも巻き込んだ格好だ。

・ 象徴的なのは商船三井、ソニー、任天堂、コマツ、ホンダの株価である。17日に年初来安値(ザラ場)を更新した銘柄は33社あるが、この中に商船三井、ソニー、任天堂が含まれる。商船三井はリーマン・ショック後に急落した08年10月28日の安値「357円」以来の400円割れ、ソニーは17日終値も「1990円」と09年3月31日終値「1998円」以来の2000円割れ、時価総額が1兆9992億円と2兆円割れになった。任天堂も驚きの新機軸を打ち出した新型ゲーム機「Wii U」を2012年に投入すると6月7日に発表しても株価下落が止まらず、17日終値「1万5230円」は8日終値から更に10%下落した。また、コマツは12.3期業績見通しも好調を持続し増益と発表したことを背景に3月15日の年初来安値「2060円」から5月2日には年初来高値「2926円」まで急騰していたが、その後、中国リスクで再び株価は崩れて17日終値「2337円」は年初来高値から20%下落した水準のままであり、ホンダは大震災後に3000円を挟んだ膠着展開が続いており、17日終値「2927円」は先週14日安値を除けば4月13日安値「2876円」以来の2900円割れとなって年初来安値の3月15日「2820円」に近づく株価水準だ。株価低迷には各社それぞれの個別事情もあるが、基本的には商船三井が“世界景気後退”、ソニー、任天堂、ホンダが“欧米景気後退”、コマツは“中国リスク”を過度に織り込んでいる株価推移となっている。

・ すなわち、“欧・米・中リスク”を象徴する株価低迷である。従って、日本株市場の先行きはこの5社の展望次第となりそうだ。商船三井は12.3期業績を経常51%減益と公表したが、17日にIMFが発表した世界経済見通しは日本を大幅引き下げ、米国も下方修正したが、新興国経済の好調は変わらず世界全体の成長率は11年4.3%増、12年4.5%増と堅調が続く見通しとなっている。任天堂は「Wii U」が全く無視されたままの株価であり、ソニー、ホンダの業績は東日本大震災の一過性の影響が収束すれば急回復に転じる見通しであり、コマツは中国を中心とする新興国の建機需要拡大は不変である。ソニーの株価はTV事業赤字と個人情報流出事件によるネット事業遅れが強調され過ぎ、ホンダの株価は12.3期上期の厳しい見方を織り込み過ぎと考える。この5社が12.3期業績を下方修正する可能性は低く、むしろ強気の経営姿勢、経営戦略が見直されることになろう。今後、この5社の動向、株価推移が本格的な日本株市場の立ち直りを牽引することになるものと予想する。

・ その点、円高による収益圧迫、東日本大震災によるサプライチェーン寸断の影響が最も深刻だった自動車主要各社のアグレッシブな姿はもっと評価されるべきと考える。日産はルノーと共同でロシア最大手アフトワズを買収、ブラジルに新工場建設、中国好調など、日産の世界販売台数は10年度419万台が16年度に700万台超、日産・ルノー連合で10年671万台、アフトワズを加えた723万台は独VWを抜き世界第3位、16年には1000万台超を実現する勢いだ。日産は27日に中期計画を正式発表する。マツダは先週17日に中期計画をアップデートしたが、大震災の影響で足下は落ち込んでいるが、16.3期の世界販売台数170万台(12.3期計画130.5万台)、営業利益1700億円(12.3期200億円、但し上期200億円の赤字で下期は400億円の黒字)は変えず、新たに住友商事と共同で13年度からメキシコ現地生産、12年度以降にブラジルで本格販売を開始する計画を発表した。ホンダは14日に12.3期見通しを発表したが、半導体調達難や新型シビックの立ち上げ遅れなど、最も影響が大きく通期の営業利益を2000億円、前期比65%減益と発表したが、生産台数は上期130台に対して下期は200万台と半期ベースで過去最高水準、シビックなど新車攻勢が続くことから下期以降はV字回復、特に13.3期の営業利益は過去最高水準まで迫る見通しだ。ちなみに11.3期は円高進行しても期初公表4000億円を第3Q決算発表時に6200億円まで増額修正、大震災で実績は5698億円となったが極端な慎重姿勢が公表スタンスだ。(中島)

先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 「4~6月の法人企業景気予測調査」は急落したが、既に先行き回復方向を示す

 先週は国内で13日に「4月の機械受注統計」、14日に「4~6月の法人企業景気予測調査」が発表され、経済指標以外では13~14日に日銀金融政策決定会合が開催された。今回の法人企業景気予測調査は調査日が5月15日であり、震災後の影響を充分に織り込んだ上での企業側の見方であることから注目された。

 注目の「4~6月の法人企業景気予測調査」だが、貴社の景況判断BSIは大企業全産業が-22.0、前四半期比20.9ポイント下落、大企業製造業が-23.3、同20.1ポイント下落、大企業非製造業が-21.4、同21.4ポイント下落と予想通りの急落となった。前回の1~3月分では4~6月の見通しはそれぞれ同2.6ポイント上昇、同7.2ポイント上昇、同0.2ポイント上昇の予想だったことから、震災による生産設備損壊や供給網寸断の影響の大きさを物語る結果となったといえる。しかし右図からもわかるように、リーマン・ショックの金融不安を発端に世界同時不況に陥った09年1~3月のボトム時と比べると今回の景況感の落込みは軽微と言える。さらに減少幅においても内需産業が多い非製造業では過去最大の下落幅となったが、全産業では08年10~12月の前四半期比25.5ポイントの下落幅よりは若干小幅の下落に留まり、製造業においてはリーマン・ショック後である08年10~12月の同34.5ポイント下落、09年1~3月の同21.5ポイント下落、景気回復期においても急激な円高推移に苦しんだ10年10~12月の同21.3ポイント下落とこれら過去3回の下落と比較すると今回の下落では企業の視点からは今後の復旧過程をしっかりと見通すことができるという点から深刻な状況には陥っていないといえよう。実際に、7~9月見通しでは全産業、製造業、非製造業はそれぞれ4~6月に対して、26.4ポイント上昇、28.9ポイント上昇、25.2ポイント上昇と20ポイント以上上昇する見通しであり、10~12月も上昇を続ける見通しである。また、全産業の11年度設備投資計画は前回の前年度比0.5%減少から同4.9%増加へと上昇修正されたが、上下分けて見ると、全産業上期計画は前年同期比12.2%増→11.1%増と若干下方修正されたがほぼ同水準、下期計画では全産業が前年同期比11.9%減→0.3%減、製造業が同10.6%減→3.3%増、非製造業は同12.7%減→2.4%減と復旧計画が多少後ずれする可能性があるにせよ、下期設備投資計画が大幅に上方修正されたことも先行き回復の裏付けとなろう。


「法人企業景気予測調査」~大企業全産業、製造業、非製造業の
 “貴社の景況判断BSI”の推移
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 13日発表の「4月の機械受注統計」では、船舶・電力除く民需が7119億円、前月比3.3%減と4カ月ぶりの減少となり、基調判断も前月の「機械受注は、持ち直し傾向にあるものの、非製造業で弱い動きがみられる。」から「機械受注は、持ち直し傾向にあるものの、一部で弱い動きがみられる。」へと弱めの動きが見られる対象が“非製造業”から“一部”へと変更された。しかし、内閣府コメントでは「基調判断を下方修正したわけではない」とし、今回の減少においても発注のキャンセルがあったことから、先行きを悲観的に見る必要はないと思われる。また、「4~6月の法人企業景気予測調査」の11年度設備投資計画では今年度下期に設備投資を積極化する計画であり、先月に発表した船舶・電力除く民需の4~6月が前四半期比10%増の見通しには未達、もしくは2四半期ぶりに減少する可能性もありうるが、回復に向かっている方向性には変わりはなく、投資計画が後ずれしたと考えるほうが自然であろう。


「機械受注統計」~船舶・電力除く民需の推移
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 一方の米国経済指標であるが、景気回復の鈍化懸念が漂う中、製造業の景況感を示す「6月のNY連銀製造業景気指数」が15日に、「6月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数」が16日に発表された。NY地区は前月比19.7ポイント下落し-7.8で10年11月以来のゼロ以下、フィラデルフィア地区は同11.6ポイント下落し-7.7で10年8、9月の2カ月連続でゼロを下回って以来9カ月ぶりのゼロ以下となり両指数ともブレークイーブンポイントを下回り、先行き不安感がより一層高まる結果となった。内訳をみるとNY地区では新規受注が同20.8ポイント下落、出荷が同33.8ポイント下落、受注残が同9.7ポイント下落、入荷遅延が同5.2ポイント下落、在庫が同9.7ポイント下落、フィラデルフィア地区でもそれぞれ13.0ポイント下落、2.5ポイント下落、8.5ポイント下落、18.2ポイント下落、3.1ポイント下落と主要項目全てが下落した。また今回の結果では先行き指数も急落した。ブレークイーブンポイントを下回った前回では、NY地区の先行き指数が54.6、フィラデルフィア地区の同指数は28.2と先行き不安となる水準ではなかったが、今回の結果ではNY地区が前月比30.2ポイント下落の22.5、フィラデルフィア地区が同14.1ポイント下落の2.5と水準が一気に低下し、今後の景気が停滞する観測も浮かび上がってきた。


NY連銀製造業景気指数、フィラデルフィア連銀製造業景況指数の推移
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今週発表 … 21~22日のFOMCにおけるバーナンキ議長の発言に注目

 今週は国内で20日に「5月の貿易統計」、海外では米国で21日に「5月の中古住宅販売件数」、23日に「新築住宅販売件数」、24日に「5月の耐久財受注」が発表されるが、21~22日にはFOMCが開催され経済指標の結果以上に注目されるだろう。今月でQE2は終了する予定だが、今後の金融政策、具体的にはQE3やMBS償還金の再投資などについての議長発言が焦点となろう。

(浅枝)



今週の主な決算発表予定


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