マーケットレポート

マーケットの視点

堅調な日本株市場は12.3期見通しでの下期急回復、来期大幅増益を織り込む展開、更に株価見直しが進むと予想

・ 欧米問題に対する不透明感が晴れないことが欧米株市場の重石になっている。欧州のギリシャ債務問題は、パパンドレウ新内閣が22日に議会の信任を受けたことでとりあえずは金融市場に安心感が広がったものの、ギリシャ経済・政治問題が根本的に解決する糸口が見えた訳ではなく、依然とし不安要因として燻り続けることになる。米国では22日のFOMC終了後、FRBは11年10~12月期の実質GDP成長率を4月予想の「3.1~3.3%」から「2.7~2.9%」へと下方修正、バーナンキ議長は景気判断を「緩やかな回復が続いているが、想定よりも幾分遅い」と発言し、QE2は予定通りに6月末で終了することが確認された。QE2の効果に対する評価としては、デフレ懸念を克服することには成功したものの、副作用としての原油高が米国内の個人消費に悪影響を及ぼすなど、想定した通りの景気回復、雇用回復に結びついていないことが指摘されている。なお、23日にIEA(国際エネルギー機関)が加盟28カ国に義務付けている石油備蓄を200万バレル/日の規模で放出することを発表、これを受けて原油価格が急落した。原油価格の急落は、唐突な発表に混乱したこととエネルギー関連株の急落でNYダウを一旦は230ドルも下落させたが、このところ高水準な価格が個人消費に与えるダメージが気になりだしていたガソリン価格が落ち着くことはむしろ景気面ではプラスに働くと評価されるが、ギリシャ問題、米国景気下振れ懸念は払拭されず、ポストQE2の展望が見えないこともあり、欧米株市場の不安定な状態が暫くは続くことになりそうだ。

・ 一方、先週の日本株市場は日経平均株価が木曜日以外の4日間、東証2部指数が月曜日以外の4日間上昇、日経ジャスダック平均は5日間上昇と外国人投資家を中心に買い意欲の強いマーケット展開となった。週末の日経平均株価は「9678円71銭」、前週末比“327.31円高”と、週間上昇幅では東日本大震災直後に急反発した3月22日の週の“329.38円高”以来の上昇幅となった。先週はパナソニック、TDK、スズキ、日産自などが12.3期見通しを改めて発表したが、TDKは増益見通しを発表、パナソニックは営業利益が上期100億円に対して下期2600億円と急回復、スズキは12.3期の営業利益1100億円、前期比3%増、純利益500億円、同11%増と増益見通し、日産自は12.3期の販売台数を460万台、同9.9%増と強気な販売計画を発表するなど“元気な日本企業”を確認する見通し発表の内容が多かった。6月23日までに91社が12.3期見通しを追加発表しており、このうち79社が上期見通しも発表している。79社の経常利益見通しを集計すると、上期が3762億円、前年同期比83%減に対して下期は2兆1319億円、同74%増、上期比5.7倍、売上高経常利益率は上期1.1%→下期5.0%とまさにV字回復に転じる見通しとなっている。この下期の回復基調を受けて、来期は大幅増益、一気に過去最高益を更新あるいは近づく企業が続出することになる。また、20日に政府が発表した「6月の月例経済報告」では景気全体の基調判断を「上向きの動きがみられる」として4カ月ぶりに上方修正している。日本の問題は、あとは政治の膠着状況が打開されることによって、日本に対する期待感が高まることになろう。

・ なお、先週指摘した今後の鍵を握る5社の株価については、任天堂こそ年初来安値を更新し続けたが、ソニーは4日連騰を記録、ホンダは13営業日ぶりに3000円台を回復、コマツ、商船三井も週末に急騰している。決してこれら5社の株価の下押し要因となっている欧米中リスクが払拭された訳ではないが、先行きの業績見通しに関してある程度の安心感が広がったためだ。ここに来て、株価見直しが積極的に行われている。日本株市場が9500円を挟むボックス推移が長く続いた中で、ここに挙げた5社以外でも、先行きの業績を悲観的に見過ぎて株価が陥没したままになっている日本株は依然として多く存在する。欧米中リスクが完全に晴れるまでは本格反騰が難しいかも知れないものの、底値水準と認識されて株価が上昇に転じるケースが増えてくることになろう。とりわけ、今後、第1四半期決算の発表で業績見通しが好転することに対する確信が高まれば、一層、マーケット内でのその傾向が強まることが期待されよう。(中島)

先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
クリックして拡大


今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
クリックして拡大


◆内外経済指標より

先週発表 … 過去2番目となる大きさの貿易赤字だが、想定以上の回復速度に注目

 先週は国内で20日に「5月の貿易統計」、米国で21日に「5月の中古住宅販売件数」、23日に5月の新築住宅販売件数」、24日に「5月の耐久財受注」が発表されたが、経済指標以上に注目されたものが21~22日に開催されたFOMCであろう。リーマン・ショック以降、低迷が続いている住宅市場に加え、5月からの景況感停滞、雇用環境悪化に対し、FRBの現状認識や今後の金融政策方針が焦点となった。

 20日発表の「5月の貿易統計」は輸出額が4兆7608億円、前年同期比10%減、輸入額が5兆6145億円、同12%増、差引8537億円の赤字となり09年1月の9679億円の赤字以来、過去2番目の大きさとなった。商品別の内訳では、輸出額では数多くの部品供給難で生産が停滞している電気機器と輸送用機器がそれぞれ同17%減、同27%減と前月に続いて2桁の減少となり、輸入額では原子力発電量が減少したことで代替エネルギーとして火力発電量が増加したことから燃料確保が急務となり原油及び粗油が同30%増、液化天然ガスが同33%増とどちらも30%以上の増加となったことが貿易赤字となった原因だ。しかし、従来、1月と5月は国内の正月、ゴールデンウイークで輸出が減少しやすい特性がありこともあり、今回のの貿易赤字の大きさに対して過度に悲観的になる必要はないだろう。実際に、5月の輸出額減少率は前年同月比で1桁台の減少率には縮小しなかったものの、4月分の同12%減の減少率からは約2ポイント縮小し輸出額の改善、すなわち国内製造業の生産回復の兆しを見せつつある。商品別の輸出額においても、特に注目すべきは輸送用機器で、自動車部品の減少率は前月の同15%減から同19%減へと減少率を拡大させたが、これは国内メーカー向けの供給を優先させたことで輸出額が減少したと考えられ、その結果、完成品である自動車の輸出額は同67%減から同39%減へと大幅に改善した。輸出額は前月の2552億円から4025億円へと大幅に増加しており、これまで「想定以上の回復」とされてきたが、今月の輸出額推移でさらにその回復状況が確認されたとも言えよう。6月は直近で原油を初めとするエネルギー価格が落ち着きを見せはじめ輸入額の増加率は鈍化、逆に国内生産量の平常化につれて輸出額の回復も続くことから貿易赤字額は大幅に縮小することが予想される。


輸出額、輸入額の前年同月比伸び率の推移
クリックして拡大


 一方、米国では21日に「5月の中古住宅販売件数」、23日に「5月の新築住宅販売件数」が発表されたが、中古住宅は前月比3.8%減の481万戸で2カ月連続の減少、新築住宅は同2.1%減の31万9000戸で3カ月ぶりの減少となり、景況感の停滞に続き住宅市場もさえない展開となった。気になるのが住宅価格だが、中古住宅市場では中央価格、平均価格ともに11年2月をボトムとし3カ月連続で上昇、価格下落に歯止めがかかった感は見られるが、逆に販売件数が減少、在庫は4月に0.7カ月分増加、5月は0.3カ月分増加となり“価格” と“数量”のせめぎ合いで、先行き好転するとは言いにくい。また、新築住宅では09年以降は中央価格が20万ドル台前半、平均価格が20万ドル台後半の展開が続き、販売件数も住宅購入減税が終了して以降、10年5月から30万戸水準で低迷しており、現在の購入者は富裕層中心と思われる。住宅市場低迷の最大の要因は雇用環境回復の遅れであり、バーナンキ議長の思惑とは異なり失業率も高止まりが続いており、当面は回復の見込めない状態が続くであろう。


新築住宅、中古住宅販売件数の推移
クリックして拡大


 経済指標以外では21~22日に開催されたFOMCと会合後のバーナンキ議長の記者会見が注目された。5月から景況感の低下を表す指標が相次いだことより、今回FRBは景気判断を「緩やかな回復が続いているが、想定より幾分遅い」と下方修正、11年の実質GDP成長率を4月時点の予想3.1~3.3%から2.7~2.9%へ、12年を3.5~4.2%から3.3~3.7%へと引き下げた。また、物価については小幅に上方修正しインフレへの警戒感がより強まったと認識され、量的緩和については予定通りQE2を6月末で終了するとコメントした。ただ、QE2終了を目前に控えた今回の会合では、今後の具体的金融政策への発言はFF金利の据え置き以外になかったことで、今後の米国経済は非常に読みにくくなったといえる。最近の回復速度の鈍化から一部では更なる量的緩和QE3も期待されていたが、4月時点よりも物価上昇への警戒感が強まったため緩和策には慎重な姿勢、現状の異例の低金利については今後も長期的に維持していくことから引き締めに動く気配も感じられず、当面は方向性がつかみづらい展開が続こう。

今週発表 … 注目は日銀短観、震災影響で“最近判断”は下落の予想

 今週は重要な指標の発表が相次ぐ。国内では29日に「5月の鉱工業生産(速報値)」、1日には「5月の労働力調査」、「5月の全国消費者物価指数」、「6月調査の日銀短観」、海外では米国で28日に「S&Pケースシラー住宅価格指数」、「6月のCB消費者信頼感指数」、30日に「6月のシカゴ購買部協会景気指数」、1日に「6月の製造業ISM指数」が発表される。コンセンサスでは鉱工業生産が前月比5.5%増、完全失業率が4.7%、有効求人倍率が0.60倍、米国ではS&Pケース・シラー住宅価格指数が前年同月比4.0%減、シカゴ購買部協会景気指数が前月比2.4ポイント下落、製造業ISM指数が前月比1.5ポイント下落となり、国内では震災後の回復、米国では景気回復速度の鈍化が継続する予想となっている。注目の日銀短観だがコンセンサスでは大企業製造業の“最近判断”は前四半期比で11ポイント下落し-5、震災影響で5四半期ぶりにゼロを下回る予想だが、“先行き判断”は再びゼロを上回り好転する予想であることから回復トレンドには変りはないといえる。

(浅枝)



今週の主な決算発表予定


今週の主な決算発表予定
クリックして拡大


国内株取引のリスク
株価の変動、および為替の変動等(外国株式の場合)により損失が生じるおそれがあります。
国内株取引の手数料について
国内株の手数料は多岐に渡っているため、このスペースに表示するのが難しいため、詳細は国内株の「手数料とリスクについて」でご確認ください。
株式は、クーリング・オフの対象にはなりません
詳しくは手数料とリスクについてをご覧ください。