マーケットレポート

マーケットの視点

南欧諸国の財政問題が中心国への波及懸念、米国の国債格付け引き下げ懸念が解消すれば今週にも世界株反転へ

・ 先週の日経平均株価は欧米の財政問題による金融危機再燃で11、12日と急落、13日以降は一進一退の動きとなったが週前半の2日間の下落幅“211.81円安”が響き週間では前週末比“163.26円安”と4週間ぶりの下落となり「9974円47銭」で終えた。ただ、海外株市場が大揺れし、円高が進んだにも拘わらず、日経平均株価は終値ベースで9900円台を維持しておりどちらかと言えば底堅い推移だったと言える。欧米株市場も13日以降は一進一退、日本が三連休で休みだった18日も下落している。一方で先週より始まった米国企業の4~6月期決算はアルコア、グーグル、JPモルガンといずれも好調な内容の決算を発表している。南欧諸国の財政問題、米国の国債引き下げに対する対処策が今週中に打ち出される可能性は高い。そうなれば、一転、欧米株市場は反転に向かい、為替もユーロ安、米ドル安に歯止めがかかることになろう。今週のうちに日経平均株価は再び1万円の大台を固めに行く可能性は充分にあり得ると予想する。

・ 海外が金融危機再燃への懸念が浮上し大揺れしている。欧州での国家財政問題がイタリア、スペインという中心国にまで波及しかけており、一方ではジョージ・ソロスがギリシャ破綻は時間の問題と発言するなど、厳しい見方も浮上している。米国では、13日にムーディーズ・インベスターズ・サービスは米国が連邦債務上限(14兆3000億ドル/約1130兆円)を数週間以内に引き上げられない場合は、「AAA」の格付けを格下げする可能性があると警告、14日にはスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が米国の長期格付け「AAA」と短期格付け「A-1+」を引き下げる可能性があると発表した。S&Pは米国の長期と短期の格付けを「クレジットウオッチネガティブ」に指定、これは今後90日以内に2分の1の確率で格下げする可能性があることを意味する。米議会とオバマ政権が債務上限の引き上げに対する解決策を成し遂げておらず、予見できる将来に達成できる可能性は低いと同社が判断した場合に、長期格付けは1段階かそれ以上引き下げて「AA」の範囲に修正する可能性があると説明した。 欧米株式市場は混乱、為替もユーロ安、米ドル安が進み、結果的に再び70円/米ドル台突入の円高となっている。

・ バーナンキFRB議長の発言も揺れている。13日に下院金融サービス委員会で証言を行い、「最近の経済の弱さが予想以上に長引く可能性が依然存在し、デフレリスクが再び浮上する可能性は残っており、それは追加の政策支援が必要なことを示唆している」とQE3の可能性を匂わせる発言したかと思えば、14日の上院銀行住宅都市委員会で証言した後、ティム・ジョンソン委員長の質問に対して「今の時点ではさらなる追加金融緩和の行動を取る準備はない」と答えた。このバーナンキFRB議長の揺れる発言の内容は、米国経済が非常に舵取りの難しい局面に差し掛かっていることを物語っている。

・ 一方、日本での一連の原発騒動を見ていると、あたかもこのまま日本という国家が壊れて行くような錯覚を覚える。“通産省”を中心に過去60年という歳月をかけて築き上げてきた安定的な電力供給、海外からの資源調達の体制を単なる“思い付き”が瓦解させてしまうような気がしてしまう。確かに、電力会社の地域独占体制、発電/配電一貫体制、実質的官制企業など、わが国の電力経営体質に大きな問題があることは事実だが、電力危機を意識したことは皆無に近かった。電力各社は「施設計画」を10年単位という視野で緻密に作り上げて、しかも頻繁な定期点検を実施することで安定的で高品質な電力を提供してきた。それゆえ、わが国の電機、自動車業界が世界最強を誇るレベルまで登りつめることが可能になり、不自由なく便利な生活を享受することが出来るようになったのだと思う。その産業界や日常生活という大前提を考慮せずに“脱原発、自然エネルギーシフト”を一国の首相が叫ぶのは国家意識がないとしか思えない。現実に、13日の記者会見の中身は空疎だった。米倉経団連会長が危機感を唱え憂えるのはもっともなことだ。幸い、長い間、日本株市場では政治の欠点は直接的にマイナスに働くことがないので別段、勝手にやっていればいいが、逆にこの重石が取れた時はプラスに働くので、先行きの期待材料として認識しておきたい。(中島)

先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 米国消費者物価指数は1年ぶりに前月比減少、インフレ懸念は和らぐ

 先週の国内では主な経済指標発表は「6月の企業物価指数」以外は見られず、11~12日に開催された「日銀金融政策決定会合」と13日の「7月の政府月例経済報告」が注目された。一方、海外では米国で12日に「5月の貿易収支」、13日に「6月の財政収支」と「6月の輸出入物価指数」、14日に「6月の小売売上高」と「6月の卸売物価指数」、15日には「7月のNY連銀製造業景気指数」、「6月の鉱工業生産・設備稼働率」、「7月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)」、「6月の消費者物価指数」、中国では「4~6月のGDP成長率」などの重要経済指標が発表され、目の離せない1週間となった。

 11~12日に開催された日銀金融政策決定会合では、無担保コールレート(オーバーナイト物)を従来どおり、0~0.1%に据え置いた。景気の現状判断については生産活動の持ち直しがより明確になってきたことから、6月の「持ち直しの動きもみられている」から「持ち直している」へ2カ月連続で上方修正し、7~9月には震災前の水準へ戻るとの見方を示した。また、今回は4月下旬に発表した「経済・物価情勢の展望」の中間評価を行ったが、12年度の実質経済成長率は前年度比2.9%増で据え置き、11年度の成長率を同0.6%増から同0.4%増へ下方修正したが、下方修正に至った要因は11年1~3月の成長率が大幅に減少し“統計上のゲタ”が下ブレしたことであり、悲観的な内容ではない。ただ、今後については電力不足で経済活動が制約されることについて3点の可能性を指摘した。1つ目は原発が全停止した際、電力供給の減少分を他の発電で補うことは困難であること、2つ目は供給減少分を火力発電で賄えたとしてもコスト上昇圧力が増し、個人消費や設備投資の減少に繋がること、3つ目は電力供給の不安定さとコスト上昇が中長期的な成長力低下に繋がることだ。いずれにせよ順調に生産設備や供給網が回復する目処が立った現状において、今後の懸念材料は電力不足であり政府の原発政策には目が集まる。

 米国では15日に「7月のNY連銀製造業景気指数」が発表された。5月は前月比9.8ポイント下落、6月は同19.7ポイント下落と2カ月連続で下落し米国経済先行き懸念が浮かび上がってきたが、7月は同4.0ポイント上昇し-3.8となり、3カ月ぶりに上昇した。しかし、市場予想では判断の分かれ目であるゼロを上回り8.0と予想していただけに予断を許さない状況には変わりはない。内訳についても、出荷が同10.2ポイント上昇となったが、新規受注が同1.8ポイント下落、受注残が同12.2ポイントの下落となり、需要の弱さが目立つ結果となった。ただ、先行きの景気指数では前月比9.8ポイント上昇、新規受注においても同10.3ポイント上昇と10年11月以来の2桁上昇となり、現状の停滞感が長く続くことはなかろう。同日に発表した「6月の鉱工業生産・設備稼働率」の生産指数では自動車が前月比0.6%減となったにも関わらず、全体では同0.2%増と3カ月ぶりに増加し、東日本大震災の影響で自動車部品の調達がストップしたことが一時的な停滞感に繋がった可能性が大きいといえる。


「NY連銀製造業景気指数」~総合指数、新規受注、出荷、受注残
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 また、同日には「6月の消費者物価指数」が発表されたが、前月比0.2%減、10年6月以来、1年ぶりの減少となった。10年12月から量的緩和による余剰資金が商品市況を押し上げ、さらに中東・北アフリカの政情不安で原油市況が高騰し、10年12月から11年4月まで前月比0.4%以上の増加が続き政策金利引き上げの圧力が強まっていたが、景気の停滞感が浮かび上がり原油価格の急落が見られた5月からは物価推移も落ち着きを見せ始めたといえる。品目別にはエネルギーが同4.4%減で2カ月連続の減少、08年12月の同9.0%減以来の大幅な下落となった。一方、食料・エネルギー除くコア指数は前月に続き同0.3%増となり、こちらは数字的にはインフレ懸念が強まる展開となった。しかし、東日本大震災が発生し自動車供給不安が高まった3月から6月までの新車及び中古車物価がそれぞれ0.8%増、0.8%増、1.0%増、1.0%増と高水準の増加率が続いたことがコア物価を押し上げたと考えられ、日本の自動車生産が回復する今後は増加率の鈍化、もしくは減少に転ずると予想される。


消費者物価指数、消費者物価コア指数前月比伸び率の推移
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今週発表 … 6月の貿易収支は赤字幅が大きく縮小する予想、自動車輸出の回復に注目

 今週は国内で21日に「6月の貿易統計」、米国では19日に「6月の住宅着工・許可件数」、20日に「6月の中古住宅販売件数」、21日に「6月の景気先行指標総合指数」、「7月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数」が発表される。注目は国内の貿易収支だが、コンセンサスでは1328億円の赤字、5月の8558億円の赤字から赤字幅は大きく縮小する予想である。製品別では3月から前年同月比で2桁減が続く自動車輸出の回復に注目したい。

(浅枝)



主な決算発表予定

今週の主な決算発表予定

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