マーケットレポート

マーケットの視点

欧米の財政問題が収束方向で世界株市場は反転、決算発表は米国好調、日本も好調が予想され株価上値追いへ

・ 欧米の財政問題に大揺れした世界株市場は、予想通りに先週、一気に収束に向かった。当たり前のことだが、どの国だって破綻危機に対して手をこまねいているままではない。独・英・仏の株式市場は金曜日まで4連騰、米国株市場も2週間ぶりの上昇、また、米国企業の好調な決算発表も続き、とりわけハイテク好調を受けて先週一週間の上昇率はNYダウ“1.61%”に対してナスダックは“2.47%”の上昇を記録、先週末のNYダウは年初来高値まで“129.38ドル”、ナスダックはわずか“14.71ポイント”まで迫っており、今週中には3カ月ぶりに4月29日の年初来高値「NYダウ1万2810ドル54セント、ナスダック2873.54ポイント」の更新が期待される。なお、先週までに発表したS&P500社対象企業の中で11年4~6月期決算に関して事前予想を上回った比率は75%に達し、ハイテクセクターに限れば90%と、まさに絶好調。為替も円高に歯止めがかかっており、海外株市場の混迷の中でも堅調な推移が続いていた日経平均株価も先週20日以降に3連騰、今週から本格化する日本企業の11年度第1四半期(4~6月期)決算は予想を上回る業績好転となり、11年度見通しを早くも増額修整する企業が多くなりそうなことから、今週以降の日経平均株価は1万円台を固め、いよいよまずは東日本大震災前の水準、3月10日「1万434円38銭」にトライ、1万500円超えを目指す展開を予想する。

・ 米国では19日に議会・超党派議員グループが新たな財政赤字削減策を提示し、20日にはオバマ大統領が広範な財政赤字削減策に関する法案の可決に議会が時間を要する場合には8月2日に迫っている連邦債務上限を「数日間引き上げる措置」を受け入れる方針にあることも明らかになった。しかし、オバマ大統領と3兆ドル(約235兆円)規模の赤字削減案を協議してきた共和党のベイナー下院議長が同案での合意は難しいと連邦債務上限引き上げに向けた交渉の場から退くなど、予断が許されない状況が続いている。一方で、ガイトナー財務長官はバーナンキFRB議長と債務上限引き上げ問題が米国経済に与える影響やデフォルト、米国債格下げの可能性やその影響についても協議し、会談後の共同声明で「議会がまもなく債務上限を引き上げると確信している」と発表しており、最悪の事態を回避する可能性は高い。

・ 一方、21日のユーロ圏首脳会議で、EU、IMFの公的支援1090億ユーロ、民間投投資家の支援370億ユーロなど総額1600億ユーロ(約18兆円)のギリシャに対する第2次金融支援に合意、ギリシャは2014年半ばまでの資金繰りにメドが立ったことになり、それを受けてフィッチ・レーティングがギリシャの格付けを「制限的デフォルト」とした。ギリシャ以外の危機にも備える総額4400億ユーロの欧州金融安定基金(EFSF)の増枠に関して今回は見送られたため、イタリアやスペインの財政危機が募れば再び危機感が台頭する可能性はあるものの、一応の時間稼ぎは実現したと言えマーケットに安心感が広がった格好だ。

・ 米日決算に関しては、米インテルがアナリスト予想を上回る7~9月期見通しを発表したことが注目される。具体的には、売上高がアナリスト予想集計平均135億ドルに対して140億ドル±5億ドルと発表した。昨今のパソコン不振から厳しい見方が多かったことを見事に覆す内容だった。サーバー需要の急拡大や新興国の消費者向けパソコンの好調が寄与している。ポール・オッテリーニCEOの発言によると、クライドコンピューティングの普及でスマートフォン600台、タブレット型端末122台につき各々1台のサーバーが必要とされ、インターネット経由の高画質映像などのデータ量が膨大になりサーバー需要が急拡大しているとしている。22日に決算発表した日本電産は12.3期見通しを早くも増額修整、売上高7200億円→7600億円、営業利益850億円→900億円とした。売上高は震災影響550億円を充分にカバーするほど産業用の一般モータが好調、営業利益は一般モータ好調の効果、HDD向け精密小型モータの稼働益(操業上昇効果)などでレアアース価格上昇による収益圧迫20億円を跳ね返して第1四半期の当初計画の営業利益140億円が192億円と50億円強上回ったことを通期見通しに上乗せしたに過ぎない。日本電産もインテル同様にパソコン不振を充分に補う期待材料が収益を押し上げていると強気であり、永守社長は900億円の営業利益見通しは1000~1100億円程度に更に増額される可能性を示唆している。この傾向は今週以降の決算発表に広く見られると予想され、好調決算を反映した上値追いの展開が期待されよう。(中島)

先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 貿易収支は3カ月ぶりに黒字、輸送用機械は前年同月比減少率を大幅に縮小

 先週は国内で21日に「6月の貿易統計」、米国で18日に「7月の住宅市場指数」、19日に「6月の住宅着工・許可件数」、20日に「6月の中古住宅販売件数」などの住宅関連統計、21日に「6月の景気先行指標総合指数」、「7月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数」が発表された。この中で最も注目すべきなのは国内の「6月の貿易統計」。東日本大震災の影響で3月の貿易収支は黒字額が大幅に減少し、4月には80年4月の5083億円の赤字以来、31年ぶりの赤字となり、5月も8537億円の赤字と単月ベースでは、リーマン・ショック後の09年1月の9679億円の赤字に続く過去2番目の赤字幅となったが、想定以上に復旧作業が進んだことで生産回復が急ピッチであり、輸出急回復による6月貿易収支の改善が注目された。

 21日に財務省が発表した貿易統計は、輸入額が5兆7051億円、前年同月比9.8%増、輸出額が5兆7758億円、同1.6%減となり、輸出額は3月以来、4カ月連続で減少が続いたが、減少率は5月の10.3%減から大幅に縮小、貿易収支額は707億円の黒字と3カ月ぶりの黒字となった。市場予想は1328億円の赤字であり予想レンジの上限でも253億円の黒字であったこと、上中下旬ベースでは6月下旬の輸出額が前年同期比2.5%増、3月上旬以来の増加となり、著しい急回復に転じている。商品別にみると、輸入では火力発電の原燃料である原油及び粗油が同30%増、LNGが同35%増とどちらも2カ月連続で30%以上の増加率となったことが輸入額増加の主因となった。一方、輸出では一般機械が同11%増と18カ月連続の増加となり、4月の同1.5%増、5月の同3.7%増から増加率をさらに拡大させる勢いだ。電気機器の中では半導体等電子部品が同17%減と回復の遅れから2桁減が続いたが、映像機器が同2.0%増、電気計測機器が同10%増と増加に転じ、電気機器全体では同8.7%減と減少率は1桁台に縮小している。さらに、最も被害の大きかった自動車を含む輸送用機器は同11%減で4カ月連続の減少となったものの、減少率は5月の同27%減から大幅に縮小、二輪自動車では同2.4%増と増加に転じるなど順調な回復が見られた。7月1日以降に「電力使用制限令」が発動されているが、国内自動車メーカーの工場は木、金曜に休業し土日に操業する輪番操業で対応していることから7月貿易統計の輸出額も回復基調が続くと予想される。7月28日に発表される7月上旬の貿易統計(速報値)に注目したい。


「貿易統計」~貿易収支、輸出額・輸入額前年同月比
 伸び率の推移
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 一方、米国では19日に「6月の住宅着工・許可件数」が発表され、住宅着工件数は前月比15%増の62万9000戸、建設許可件数は同2.5%増の62万4000戸となった。種類別にみると着工件数では1戸建てが同9.4%増、集合住宅が同30%増、建設許可件数では1戸建てが同0.2%増、集合住宅が同6.9%増、地域別では建設許可件数で北東部が同10%減となった以外は中西部、南部、西部全ての地域で着工件数、許可件数が前月比増加となり、偏りもなく全体的に回復した。20日に発表された「6月の中古住宅販売件数」は着工件数、許可件数とは逆に前月比0.8%減の477万戸となり3カ月連続の減少となった。市場予想では490万戸、同1.9%増であったが、通常10%前後の解約率が16%まで跳ね上がったことが減少したことで景気回復の弱さを懸念する見方もある。また、住宅価格の上昇も販売戸数の減少に影響している。6月の中央価格は18万4300ドル、前年同月比0.8%増、平均価格は23万6000ドル、同2.7%増となり、販売戸数が減少したことで在庫月数も10年11月の9.6カ月以来の水準である9.5カ月まで上昇した。図に住宅着工件数、建設許可件数、中古住宅販売件数の推移を示したが、6月の着工・許可件数が増加したとはいえ、長期的なトレンドでは着工件数、許可件数ともにリーマン・ショック後は60万件前後の水準での推移が続いており、中古住宅販売件数は住宅購入支援策やその延長、終了などの要因で大きく変動しているが、08年10月から11年6月までの33カ月平均は500万戸で推移し低迷状態が続いている。雇用環境が改善し雇用者数の増加、平均所得の上昇が見られない限り、当面は住宅市場の低迷が続こう。


住宅着工件数、建設許可件数、中古住宅販売件数の推移
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今週発表 … 国内鉱工業生産に注目、電力使用制限令が発動した7月見通しは重要

 今週は月末週であり、国内外ともに主要な経済指標の発表が集中する。国内では29日に「6月の労働力調査」、「6月の全国消費者物価指数」、「6月の鉱工業生産」、「6月の新設住宅着工戸数」、海外では米国で26日に「5月のS&Pケース・シラー住宅価格指数」、「6月のCB消費者信頼感指数」、「6月の新築住宅販売件数」、27日に「6月の耐久財受注」、29日に「4~6月のGDP成長率(速報値)」、「7月のシカゴ購買部協会景気指数」、「7月のミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)」、ユーロ圏では「7月の消費者物価指数(速報値)」が発表される。国内のコンセンサスでは完全失業率が4.6%、有効求人倍率が0.61倍、高校授業料無料化効果の剥落とタバコ値上げ効果で消費者物価指数は前年同月比0.2%増、米国では新築住宅販売件数が32万戸、前月比0.3%増、シカゴ購買部協会景気指数が前月比1.1ポイント下落、GDP成長率が前期比年率換算1.7%増、その内訳の個人消費は同1.0%増となっている。注目すべきは国内の「6月の鉱工業生産」であり、市場予想は同4.6%増で3カ月連続増加の見通しとなっている。焦点は7、8月予想で、特に7月以降に電力使用制限令が開始されており、その影響がどのように現れるかが注目される。

(浅枝)



主な決算発表予定

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