マーケットレポート

マーケットの視点

米国「債務上限引き上げ」は最終的に収束すると予想、国内の決算は悲観報道多いが実態は予想以上の好転多い

・ 世界の株式市場は一転、暴風雨の中に放り込まれた。背景はただ一点、「米国の債務問題」だ。多くはこれほど紛糾するとは思ってもいなかっただろう。世界のリスク資産市場は“米国債格下げ、米国のデフォルト”を織り込んで価格急落、ドル安が続いた。8月2日が「債務上限引き上げ」のタイムリミットだが、様々な道筋が存在しそれを読み解くのは現時点では難しいが、結果的に“事なきを得る”ことになると楽観的なスタンスを維持することとして、今回は現在発表中の4~6月期、12.3期第1四半期決算で感じたことを述べることとする。

・ 主要な電機大手の4~6月期決算は、「純利益が軒並み赤字」となり厳しい結果で苦戦しているとの報道が多いが、それは間違ったニュアンスで伝えられている。決算説明会ではむしろ実態は“予想外に良かった”との説明が多い。12.3期第1四半期の各社の営業利益/純利益の実績は、パナソニック~56億円、同93%減/▲304億円、シャープ~35億円、同84%減/▲493億円、ソニー~275億円、前年同期比59%減/▲155億円、日立~524億円、同41%減/29億円、同97%減、東芝~41億円、同88減/5億円、同1%増と、この数字を見るだけでは非常に厳しく見える。ほぼ全社が据え置いた通期の営業利益予想に対する進捗率は、パナソニック2.1%、シャープ3.6%、ソニー13.8%、日立13.1%、東芝1.4%に過ぎないことから、あたかも大幅な下方修正になるのではとのニュアンスになっている。しかし、今回の第1四半期に関しては、パナソニックは営業赤字50億円とみていたのが105億円上振れ、ソニーは営業利益▲225億円とみていたのが500億円もの上振れ、シャープは営業利益20億円の想定が35億円、経常利益▲80億円が▲6億円、日立は営業利益▲36億円とみていたのが560億円もの上振れ、東芝は営業利益ゼロが41億円の上振れと、軒並み第1四半期の結果は“想定を大きく上回る好転”となっている。理由は、サプライチェーン寸断の回復、自動車生産の回復が予想外に早いスピードで進んでいるためだ。為替想定が当初の83円/米ドル前後が81円/米ドルと若干ながら円高進行した上での好転ぶりだ。実態的に予想外に好転というスタートを切ったにも拘わらずに通期の予想数字を変えていないのは、足下が80円/米ドルを上回る円高に振れていること、欧米景気、中国経済の動向に不透明感が強まっている、などを理由にしている。ただ、例えば日立は第1四半期で560億円上振れして524億円となったのに上期の営業利益を前回予想800億円から今回1000億円と上方修正、すなわち第2四半期は前回836億円から476億円へと大幅下方修正された格好となっているが、会社側の説明は納得できる内容ではなく、この先の更なる上振れは必至の情勢と予想する。

・ 但し、今回の決算説明会では、非常に気になる点があることも事実だ。ソニー、パナソニックとも欧米でのテレビ販売が予想以上に厳しいというコメントだった。テレビ事業の不振が長引いているが、ソニーは今回、数量を追わず収益重視に徹することに転向したこともあって12.3期のテレビ販売台数を期初計画の2700万台から2200万台に下方修正し一歩踏み込んだ大改革を行う、パナソニックはテレビの生産調整が必要で社内融通の部品への影響も大きいことから今期中に抜本的な改善策を講じると、それぞれ説明した。ソニーはパネルを外部調達に頼るが、パナソニックはプラズマTV事業もありパネルも内部生産でありソニーの方がはるかに身軽と言えそうだ。また、HOYAが世界的に高成長を続けたデジタル一眼レフカメラの販売の勢いが欧米中心に6、7月にパタッと止まったようだとコメントした。日本郵船は欧州航路のコンテナ船市況が想定外に弱いこと、不定期船市況も期初に想定した下期回復が困難なことを背景に12.3期業績を大幅下方修正した。これらのことは、欧米景気が予想以上に足踏みしている可能性を示唆しているようだ。また、コマツの11年4~6月期実績で建機売上高が北米35%増、ロシア72%増と牽引したことで全体は7%増と増収を堅持したが、中国23%減、中南米11%減と絶好調を続けた中国売上高が二桁減収となった変化は見逃せない。更に、新日鉄、JFEとも中国内での鉄鋼の過剰生産が止まらず輸出垂れ流しで鉄鋼製品の市況回復が捗らないとコメントしている。やはり、中国国内において金融引き締めが実体経済に影響を与え始めていることは事実のようだ。問題は、これらの“欧米、中国の変調”が既に終わった過去なのか、これからへの始まりなのかである。ドイツ以外の欧州各国は財政問題もあり景気停滞は明らかなのだろう。また、米国では住宅市場が依然として浮上感がなく、雇用回復も遅れておりQE2が終了したこともあり楽観視出来ない情勢にある。中国は無事に不動産等のバブル崩壊を回避し巡航速度の経済成長を実現できるかどうかの瀬戸際なのか。いずれにしても、わが国企業の決算内容にこのような兆候が表れることは注意が必要だが、一方で各国はその実態を既に把握しその善後策を進めることで世界経済の安定成長が維持される可能性は高いと予想する。従って、警戒は必要だが、引き続き強気の姿勢は変える必要はないだろう。(中島)

先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 鉱工業生産の予測調査は7月が前月比2.2%増、8月が同2.0%増と5カ月連続増加の予想

 先週は国内で29日に「6月の労働力調査」、「6月の全国消費者物価指数」、「6月の鉱工業生産(速報値)」、「6月の新設住宅着工戸数」、米国では26日に「5月のS&Pケース・シラー住宅価格指数」、「7月のCB消費者信頼感指数」、「6月の新築住宅販売件数」、27日に「6月の耐久財受注」、29日に「4~6月のGDP成長率(速報値)」、「7月のシカゴ購買部協会景気指数」、「7月のミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)」が発表され、内外ともに重要な経済指標の発表が相次いだ週となった。国内の完全失業率は前月比で0.1ポイント悪化したが、有効求人数が前月比3.4%増となり有効求人倍率は0.63倍、前月比0.02ポイント上昇し、依然として予断を許さない展開が続くが、震災後の国内雇用環境は緩やかに持ち直しに転じているといえよう。米国では耐久財受注が市場予想では前月比0.3%増と増加だったが、結果は同2.1%減と大幅な減少、先行きへの警戒心は緩和されていないことが感じられた。

 国内で29日に発表された「6月の鉱工業生産」は前月比3.9%増、市場予想の同4.3%増を若干下回ったが3カ月連続増加となった。業種別では輸送機械工業が前月比19%増、2カ月連続で2桁の増加率となった。情報通信機械工業は同12%増で、中でもスマートフォン効果で携帯電話が同39%増と牽引役となった。電気機械工業は電力不足で代替エネルギー源の需要が増加したことで一般用タービン用発電機が同22%増、一般用エンジン発電機が同10%増、太陽電池モジュールが同16%増で電機の生産量を押し上げた。一方、電力使用制限令が発動され懸念された先行き見通しは、7月が同2.2%増、8月が同2.0%増で5カ月連続、09年10月から10年3月の6カ月連続増以来の長さになる見込みで、企業の電力不足への対応は想定以上といえる。電力の大口需要家である輸送機械工業は輪番操業が奏功している模様で、7月は同4.6%増、8月は回復ペースをさらに上昇させ同5.6%増の見通しである。情報通信機械工業の7月はアナログ放送終了で液晶テレビの需要増が見込まれることから生産量は同19%増としている。8月見通しは7月に生産量を急増させた情報通信機械工業と同業種と関連性のある電子部品・デバイス工業以外、鉄鋼業、非鉄金属工業、一般機械工業など主要業種全てで前月比増であり、使用電力量が制約される厳しい環境ではあるが、国内企業は柔軟な対応力を見せている。


「鉱工業生産」~生産指数、生産指数前月比伸び率の推移
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 一方、米国では29日に「11年4~6月のGDP成長率(速報値)」が発表された。結果は前期比年率換算で1.3%増と09年4~6月以来の8四半期連続増加となったものの、市場予想の同1.7%増を下回りGDPの7割を占め米国回復の牽引役となった個人消費は同0.1%増、と寄与度は0.07ポイントになった。原油価格上昇でガソリン価格が高騰し他製品への消費が抑制されたことと、過去2四半期で自動車需要が好調で2桁の増加率が続いた耐久財消費が同4.4%減と減少に転じたことが大きな要因である。また、4~6月の成長率に貢献したのは民間投資であり、同7.1%増となったが、同時に在庫が同3.8%増と個人消費の停滞によって在庫が積みあがった面も見られる。さらに、商務省の改訂により1~3月の成長率が同1.9%増→同0.4%増へと下方修正、中でも民間投資が同12%増→3.8%増へと大幅に下方修正されたことを考えると4~6月の民間投資の成長率も一概に好感触であったとも言えない。しかし、4~6月のガソリン価格が前年同月比30%以上の増加率で推移していたことから、4~6月の個人消費の停滞は一時的と考えられ、6月中旬以降はWTI原油先物価格が100ドル/バレル以下で推移しておりFRBの主張する11年下期の回復もあり得る。


米国GDP成長率前期比年率の推移
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今週発表 … 今週は米国に注目、2日が「債務上限引き上げ」の期限、5日に「雇用統計」発表

 今週は国内で5日に「6月の景気動向指数(速報値)」、海外では米国で1日に「7月の製造業ISM指数」、3日に「7月の非製造業ISM指数」、5日に「7月の雇用統計」が発表される予定だ。6月の雇用統計は、前日に発表されたADP雇用統計で非農業部門雇用者数が前月比15万7000人増の好結果となったことから、直前の市場予想は同10万5000人増と大幅に上方修正されたが、同1万8000人増と非常に残念な結果となった。7月の雇用統計では非農業部門雇用者数は同7万5000人増と10万人以下の控えめな予想だが、個人消費の停滞や企業の夏期休暇を考えると妥当な予想と考えられる。まずは3日発表予定のADP雇用統計で様子を伺いたい。経済指標の発表以外では8月2日に米国債務上限引き上げ問題の期限が到来することが最大の注目点だ。

(浅枝)



主な決算発表予定

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