マーケットレポート

マーケットの視点

世界株市場は欧州財政問題、米国景気2番底懸念で暴風雨に曝されたが、“へこたれない、あきらめない”日本企業に注目

・ 世界株市場のサマーラリーを期待したが一転して暴風雨、「夏の嵐」となってしまった。先週末にかけて欧米株市場は軒並み年初来安値を更新、主要なアジア株市場でも印SENSEX、香港ハンセンが年初来安値を更新、韓国総合、上海総合もほぼ年初来安値水準まで急落した。仏CACは先週末まで10日続落と過去2週間下げ続け、独DAXは8日続落。NYダウは8月2日まで8日続落の後、3日は下げ過ぎと反転したが4日に前日比“512.76ドル安”とリーマン・ショック時の08年9月15日の“504.48ドル安”を想起させ、87年10月19日のブラックマンデーの下落幅“507.99ドル安”とも符号する下落幅となり、5日は発表された「7月の雇用統計」が予想を上回ったこともあり“60.93ドル高”と反転したが勢いはなく、不安なままに週末を終えた。日経平均株価も、円売り介入しても歯止めが効かない歴史的な円高進行に見舞われていることもあり、先々週“299.08円安”、先週“533.15円安”と2週間で“832.23円安”とアッという間に9000円割れを窺う株価まで沈んだ。過去2週間の下落率を見ると、独DAX14.9%、仏CAC14.7%、英FTSE11.6%、米ナスダック11.4%、韓国総合10.5%、NYダウ9.8%、日経平均株価8.2%、印SENSEX7.6%、香港ハンセン6.7%、上海総合5.2%となっている。財政問題がスペイン、イタリアまで波及する懸念が台頭した欧州の下げが最もきつく、それに景気2番底の不安が台頭した米国株市場が続く。特に、ユーロ安効果を受け輸出好調で欧州のアンカー的存在だったドイツ市場の下落率が最大ということが今回の世界株市場を襲った「夏の嵐」が「金融不安」を煽るような格好になっていることを象徴している。

・ まさに激震轟く2週間が過ぎた。米国の「債務上限引き上げ」問題は予想通り、米国両党合意の下で“事なきを得た”が、すかさず米国景気の2番底不安が強まり、追い撃ちをかけるように4日の記者会見でトリシェECB総裁がユーロ圏の景気下振れリスクを指摘すると同時に不透明感が強いのはユーロ圏ばかりではないと発言したことが一気に世界経済減速不安を煽った。今回の世界株同時暴落の背景は、“欧米が抱えたジレンマ”であり、問題の深刻さゆえの欧・米のズレ、不協和音が不安感を高めている。欧州は、ギリシャを発端とした国家財政問題がスペイン、イタリアに波及することで欧州の金融機関が持ち合う国債、融資資金に多大な損失が発生することでリーマン・ショック時と同様な「金融不安」が発生しそうだがどうにも出来ない。米国は「債務上限引き上げ」問題に一応の決着をみたが5日にS&Pが過去70年維持してきた米国長期債の格付けAAAを史上初めてAA+に格下げしたことで今回の政府・議会が合意に達した財政健全化計画が不十分であることが指摘され、そのため安易な景気刺激策に踏み切れないことで米国景気が腰折れしかねない。その一方で、新興国ではインフレ抑制に追われ、利上げ継続で成長減速感が漂い始めている上にリーマン・ショック後に世界経済急回復を演出したような大胆な財政投資が難しい局面に入っている。先週、この場で指摘した今回決算発表の中での変調、すなわち欧米での液晶TVやデジタル一眼レフカメラの販売失速、海運の欧米航路の市況低迷、新興国市場での建機販売急落、などの現象に対する認識が一過性のものではなくてマーケットを根底から脅かすものとして不安視されている。このため、先週末に米欧首脳陣がそれぞれ電話会談を行いG7財務相が電話会議を開催し、マーケットの安定化を取り戻すための打開策を協議し続けており、少なくても世界株市場の下落に歯止めがかかることになろう。

・ この「夏の嵐」の中で暴風雨が止むのを待つしかないが、このところの「日本企業の在り方」は呆然と見送るには“もったいない”部分が実に多い。ソニー、パナソニックがいよいよTV事業の最終戦略に踏み切ることを明言した。自動車メーカーは今回の大震災からの復旧に関して改めて“底力”を発揮しているどころか、日産自動車は新中期経営計画「NISSAN POWER88」でかつてない大躍進を唱え、トヨタ自動車は12年の生産台数が07年の過去最高を上回ることに対して自信が溢れている。他の電機、自動車大手も概ね“へこたれていない、あきらめていない”姿勢を強く感じる。両業界は周辺業界含めて日本の基幹産業であり日本経済の屋台骨であることは今も変わりない。韓国サムスン電子に負け続けようが、米アップルに圧倒的に置いて行かれようが、韓国現代自動車、独VWに猛烈に追い上げられようが、歴史的な円高になろうが、決して“へこたれていない、あきらめていない”。逆境の中での日本企業の上昇志向は必ずや大いなる結果を実現することになるのだろう。嵐に立ち向かい、あえて日本株市場への円高という激流に手を突っ込むような強気姿勢を維持したいところだ。(中島)

先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 米国雇用統計は予想を上回る結果だが、正常な景気回復に必要な水準には力不足

 先週は国内で5日に「6月の景気動向調査(速報値)」、米国では1日に「7月の製造業ISM指数」、3日に「7月の非製造業ISM指数」、5日に「7月の雇用統計」と、景況感や労働市場を見極める指標が発表された。先週は経済指標以外の日欧米の政府、中央銀行の動きも注目された。まずは2日は米国債務上限引き上げ問題の期限であったが、前日の下院での可決に続き、上院でも可決、一旦はデフォルト回避となったが、今度は政府歳出削減による景気の下ブレ要因が焦点となり不安要因は消えてはいない。4日には日銀金融政策決定会合が開催され、当初4~5日の2日間の予定であったが、政府の円売り介入に合わせ4日のみの開催に短縮し、資産買い入れ基金を10兆円増額する金融緩和策を発表、政府と同時に景気刺激策を行った。また、EUでは4日にECB理事会が開催され、7月開催の理事会ではインフレを警戒し利上げを行ったが、今回は足元の情勢を睨んで利上げは見送った。また、ECBの国債買い入れを再開したことを認め、足元のユーロ圏経済は「不確実性が非常に高い」と警告した。

 5日に国内で発表された「6月の景気動向調査(速報値)」は、先行指数が前月比3.8ポイント上昇し103.2、一致指数が前月比2.5ポイント上昇し108.6と、先行指数は震災前の2月の水準に回復、一致指数は2月の106.4を上回り過去最高を更新した。一致指数の内訳ではサプライチェーンの復旧に伴い生産指数の寄与度が0.43ポイント、回復した生産指数を賄うため原材料、部品、設備などの需要が増加したことで鉱工業生産材出荷指数の寄与度が0.43ポイント、残業時間も増加したことで所定外労働時間指数(製造業)の寄与度も0.43ポイントで、被災で滞った生産量を取り戻す動きが目立った。また、自粛ムードが和らぎ消費も回復傾向にあることから商業販売額(小売業)の寄与度も0.22ポイントと3カ月連続で0.2ポイント以上の大きな寄与度となったが、これは消費回復に加え節電意識からくる省エネ家電需要の拡大が寄与しているといえる。一方、先行指数の内訳では最終需要材在庫率指数の寄与度が0.73ポイント、鉱工業生産財在庫率指数が0.78ポイント、耐久消費財出荷指数が0.75ポイントと需要が想定以上のスピードで回復していることがわかる。しかし、先行指数や一致指数がそれぞれ2月と同水準、2月以上になったとはいえ、CIの性質上、景気回復スピードが2月を上回っているということで、それぞれの項目指数、具体的には生産指数、鉱工業生産材出荷指数、鉱工業生産材在庫率指数では2月に対しそれぞれ5.2ポイント下落、11.5ポイント下落、14.6ポイント上昇と、震災前の水準に戻っているわけではないことに注意したい。また、「7月の景気動向調査」は電力使用制限令の発動、欧米中の景気停滞感も鮮明になっていることも考え、予断を許さない展開が続こう。


「景気動向指数」~先行CI、一致CIの推移
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 米国では1日に「7月の製造業ISM指数」、3日に「7月の非製造業ISM指数」が発表されたが、それぞれ50.9、前月比4.4ポイント下落、52.7、同0.6ポイント下落となった。製造業ISM指数では24カ月連続、非製造業ISM指数では20カ月連続で判断の分かれ目である50以上はキープしたが、市場予想を下回る結果となり、特に製造業ISM指数では直前の市場予想54.3を大幅に下回り2年ぶりの低水準となった。製造業ISM指数の内訳で特に懸念される項目が新規受注である。前月比2.4ポイント下落し49.2と、09年6月以来25カ月ぶりに50を下回り、輸出指数では依然として50を上回り7月も前月比上昇となったことから米国内からの受注減少の影響が非常に大きい。一方の非製造業ISM指数の内訳は事業活動が前月比2.7ポイント上昇、5カ月ぶりの上昇となったが、新規受注、雇用、入荷遅延の3項目は下落し、新規受注に関しては前月比1.9ポイント下落の51.7と、09年8月の50.6以来、約2年ぶりの低水準となり、非製造業分野でも需要の低迷が見受けられる。ただ、価格指数については製造業が前月比9.0ポイント下落、非製造業が同4.3ポイント下落し、インフレ懸念は多少和らいだといえる。特に製造業では直近のピークである4月の85.5から3カ月で26.5ポイントも急落し、今後の政府、FRBの財政・金融政策の如何によっては11年下期の挽回も充分に考えられる。


製造業、非製造業ISM指数の推移
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 5日には「7月の雇用統計」が発表された。結果は失業率が9.1%、前月比0.1ポイント改善、非農業部門雇用者数が前月比11万7000人増で、失業率では予想の9.2%を下回り、非農業部門雇用者数では前月比7万5000人増を大幅に上回る良好な結果となった。政府部門では各地域とも厳しい状態の財政が影響し同3万7000人減、10年11月以来9カ月連続で1万人以上の人員削減が続き、今後の歳出削減からしばらく労働力増加の可能性はなかろう。一方の民間部門雇用者数は同15万4000人増で4月の同24万1000人増以来、3カ月ぶりの10万人以上の増加となった。民間部門の内訳は建設部門が同8000人増と2カ月ぶりの増加となったが、依然として低水準の雇用者数だ。製造業は耐久財製造部門が牽引し同2万4000人増、サービス業は同11万2000人増となった。7月雇用統計では3カ月ぶりに市場予想を上回る雇用者増加となったが、米国の景気回復に必要とされる20万人以上の増加には程遠く、力不足の状態が続いているといえよう。


完全失業率、非農業部門雇用者数前月比増減幅の推移
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今週発表 … FOMC後の記者会見ではバーナンキ発言に注目

 今週、来週は国内で8日に「7月の景気ウォッチャー調査」、9日に「7月の工作機械受注(速報値)」、11日に「6月の機械受注統計」、15日に「4~6月のGDP成長率(第一次速報)」、18日に「7月の貿易統計」、海外では米国で10日に「7月の財政収支」、12日に「7月の小売売上高」、15日に「8月のNY連銀製造業景気指数」、「8月の住宅市場指数」、16日に「7月の住宅着工・許可件数」、「7月の鉱工業生産・設備稼働率」、18日に「7月の消費者物価指数」、「8月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数」、「7月の中古住宅販売件数」、中国では今週に主要な経済指標が発表される。国内の注目指標は来週発表の4~6月のGDP成長率だが、コンセンサスでは前期比年率換算で2.6%減、3四半期連続の減少の予想だ。輸出額の前年同月比では3月から4カ月連続減少だが、減少率は4月を底にして縮小させ回復傾向にあることから想定以上の回復を期待したい。また、経済指標以外では8日午前の財務相・中央銀行総裁緊急電話協議、9日のFOMC、10日国内の8月の政府月例経済報告にも注目したい。先週はECBトリシェ総裁の発言からこれまで以上に金融市場、実体経済を不安視する状態に陥っていることから、当面は各国の政府、中央銀行の発言には注意すべきだ。

(浅枝)



主な決算発表予定

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