マーケットレポート

マーケットの視点

バーナンキ米FRB議長の絶妙な講演内容で時間稼ぎし世界株は暫くは小康状態、好転への変化が多い日本株は割安感強い

・ 先週の最大の焦点は26日にワイオミング州ジャクソンホールで開催された経済シンポジウムでのバーナンキ米FRB議長の講演内容だった。このところ発表された連銀の「8月の景況感指数」がリッチモンド「-10」、フィラデルフィア「-30.7」、ニューヨーク「-7.72」と揃ってマイナスとなったことで米国製造業の減速感が強まっていることが明らかとなり、あたかも景気後退に陥っているような不安が高まっており、1年前の再現で“QE3(量的緩和策第3弾)”を待望する声が募っていた。その一方で、「7月のコアCPI(消費者物価指数)」が「1.8%上昇」とインフレを警戒する“2%弱”のレベルに達していることや、金価格が史上最高値を更新し続け1900ドルを突破するなどQE2の副作用が結果的に世界経済を圧迫していることからQE3実施を否定する有識者の発言が多かったことも事実で、マーケットが望む結論を導き出すのは非常に難しい局面に立たされていた。結局、結論を先送りしたことで最良に近い選択をした印象が強い。9月のFOMCを1日延長し20~21日に開催しじっくりと時間をかけて結論を出すとした。同時に、「長期の経済成長をもたらす大半の政策は中央銀行の外にある」と発言、金融政策は限界にあり政治による“財政”政策の重要性を強調することで過度の重圧から逃れる道筋を示しているようにも見える。いずれにしても、絶妙な講演内容であり、状況分析を深め善処策を練るための時間稼ぎをなし得たと言える。

・ 講演内容が明らかになった当初は具体策の提示が全くなかったことから失望売りでNYダウは一旦220ドル強安まで急落したが、徐々に買い戻され、9月のFOMCに結論を持ち越したことに対する安堵感が広がり、最終的には前日比“134.72ドル高”の「1万1284ドル54セント」で引け、週間騰落では実に5週間ぶりの上昇に転じた。先週末の主要国の株式市場は独DAX、仏CAC40、韓国総合、香港ハンセン、そして日経平均株価も5週間ぶり、上海総合は6週間ぶりの上昇となり、まずは一息ついた格好だ。先週末の日経平均株価は前週末比“78.54円高”の「8797円78銭」で引けた。世界株市場の動揺と歴史的な円高進行で日本株市場も急落が続いたが、それでも8月に入っての先週までの安値は22日終値「8628円13銭」で、東日本大震災時の円高記録を更新したにも拘わらずに年初来安値である3月15日終値「8605円15銭」は何とか割り込まずに推移している。外国人投資家は8月第3週(15~19日)まで4週連続の売り越しと持株整理が続いた中でも海外株市場の多くに比べれば株価下落には一定の歯止めかかる堅調ぶりとなっているとも言える。今後発表される日本の経済指標に関しては、4~6月期の最悪期を脱し7~9月期以降は好転内容が多くなってくること、12.3期第1四半期決算の結果が予想以上にスピード感のある回復を示した企業が多かったこと、などで一方的に売り込まれることなく推移してきているためだ。

・ 日本株市場は一段と割安感が強まったと言える。日経平均株価の26日時点におけるPBRは「0.97倍」と依然、1倍を切ったままであり個別企業でも7割強が1倍割れとなっている。更に、日経225ベースの今期予想PERは「13.10倍」まで低下している。東証1部・25日移動平均ベースの騰落レシオも“売られ過ぎ”の目安とされる「70%」を7日連続で下回っている。欧米の債務問題と景気腰折れ懸念、新興国経済の減速懸念が払拭されるには一定以上の時間はかかりそうだが、日本政治の重石はようやく取り除かれる。新首相の誕生、新内閣の発足に多くは期待出来ないまでも少なくても菅政権の下で止まっていた“日本時計の針”もようやく前進することになろう。本格的な震災復興に向けて歩み出し、日本の成長戦略への道筋が改めて示されることを期待したい。電機では半導体関連が暗雲垂れ込み始めたものの、液晶テレビの収益問題が余りにもクローズアップされ過ぎて株価下落が止まらないソニー、パナソニックなどの大手総合電機は売り込まれ過ぎだろう。欧米景気失速を前提に株価急落している自動車・同部品は世界市場への逆襲展開が始まったばかりだ。ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイが米バンカメに50億ドル出資したことが情けない日本メガバンク株の底入れ、上昇転換のきっかけとなるか、日本株市場はお買い得な株価だらけのように思える。(中島)

先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
クリックして拡大


今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
クリックして拡大


◆内外経済指標より

先週発表 … 景気ウォッチャー現状判断は4年4カ月ぶりの50超

 先週は国内で26日に「7月の全国消費者物価指数」、海外では米国で23日に「7月の新築住宅販売件数」、24日に「7月の耐久財受注」、26日に「4~6月のGDP成長率(改定値)」、「8月のミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)」が発表された。経済指標以外で注目されたのが、米国ワイオミング州のジャクソンホールで開催されたバーナンキFRB議長の講演だった。欧米など先進諸国の財政問題や米国経済の二番底が懸念される中、また昨年同じ場所で追加金融緩和を示唆する発言したことなど、様々な思惑が取り巻く中での講演会であった。

 国内で26日に発表された「7月の全国消費者物価指数」は、総合指数が前年同月比0.2%増、生鮮食品除く総合指数が同0.1%増、生鮮食品除く総合指数では08年12月の同0.2%増以来、2年7カ月ぶりの増加となった。物価指数が上昇した主な要因は10年10月に値上げしたたばこが同38%増で寄与度は+0.19ポイント、また原油市況の上昇が影響しガソリンが同10%増で寄与度は+0.24ポイントとなったことで、税制や原油高といった外部環境が押上げ要因となり、国内消費動向は震災後の自粛ムードが和らいできたとはいえ、上向きに転じたわけではないことに注意したい。一方、物価指数の下落に寄与した項目は同30%減で寄与度が-0.28ポイントとなったテレビで、アナログ放送終了前の駆け込み需要増が終わったことによる反動減の影響が大きく出ている。7月分から5年に一度の基準改訂が行われ、出荷数が減少した製品や製造中止となった製品の構成を考慮してウエイトを一新した結果、エコポイント対象製品のウエイトが増加、全体のウエイト数10000に対し、電気冷蔵庫が17→21、ルームエアコンが20→36、テレビが37→97と価格が下落基調の製品のウエイトが増大し、これにより7月の総合指数は0.6ポイント分押し下げられた。自立的な消費回復が見込まれずデフレ圧力が大きい状況で今後の物価上昇は非常に難しい。


全国消費者物価指数」~総合、生鮮食品除く総合、食料・エネルギー除く総合の前年同月比伸び率の推移
クリックして拡大


 海外では米国で23日に「7月の新築住宅販売件数」が発表され、直前の市場予想では前月比1.0%増の31万5000戸と3カ月ぶりの増加に転じる予想だったが、結果は前月比0.7%減の29万8000戸と3カ月連続の減少となり、一向に上向く気配が見られない。地域別では北東部が前月比2倍の2万8000戸となったが、西部が5.9%減の6万4000戸、販売件数の多い南部が7.4%減、16万3000戸で減少戸数では1万3000戸減となり北東部の増加幅をほぼ打ち消す結果となった。さらに在庫についても、7月は前月比横ばいの6.6カ月分、4カ月連続で7カ月分以下の推移を続けており、購入件数も上向く兆しは見られない。図に示すとおり、09年以降は歴史的にも低水準で推移し、ピークの05年7月の138万9000戸と比べると、年率で100万戸以上の需要が吹き飛び、高い失業率が続く現状での回復は非常に難しいといえる。


新築住宅販売件数の推移
クリックして拡大


 26日にワイオミング州のジャクソンホールでバーナンキFRB議長の講演会が開催された。ジャクソンホールでの講演会は本来、中央銀行関係者が中長期課題を話し合う場所であるが、世界経済に不安心理が漂い、市場では方向感の掴みづらい展開となっている現状では、昨年バーナンキ議長が量的金融緩和策「QE2」を実施することを匂わせた発言をしたことから、今年の講演会においてもバーナンキ議長の発言が大いに注目された。しかし、今回は「QE3」などの具体策についての発言はなく、米国景気回復の弱さなど現状の認識程度に留まった。ただ、9月開催のFOMCを2日間に延長することや「FRBは幅広い政策手段を持つ」など、あらゆる状況に対応する準備はしていることを示唆する発言をしたことから、次回のFOMCには「QE3」を実施に踏み切るかどうかはともかく、何らかの政策を打ち出すことは期待されよう。一方、財政出動に関する発言が目立ち、金融政策の限界を強調する姿勢が強く感じられたことも特徴的なことであった。

今週発表 … 米国の「8月の製造業ISM指数」は25カ月ぶりに50を下回る予想

 今週は国内で31日に「7月の鉱工業生産」、2日に「4~6月の法人企業統計調査」、海外では米国で30日に「6月のS&Pケース・シラー住宅価格指数」、31日に「8月のシカゴ購買部協会景気指数」、1日に「8月の製造業ISM指数」、2日に「8月の雇用統計」、中国で「8月の製造業のPMI」が発表される。コンセンサスでは国内の鉱工業生産が前月比1.5%増と4カ月連続増となり震災復旧の回復基調が続く見通し。米国では製造業ISM指数が48.5で09年7月以来、25カ月ぶりに判断の分かれ目である50を下回る予想。雇用統計では失業率が9.1%で前月と変わらず、非農業部門雇用者数増加幅は10万人以下の前月比9万5000人増で回復力は引き続き非常に弱い。

(浅枝)



主な決算発表予定

主な決算発表予定
クリックして拡大


国内株取引のリスク
株価の変動、および為替の変動等(外国株式の場合)により損失が生じるおそれがあります。
国内株取引の手数料について
国内株の手数料は多岐に渡っているため、このスペースに表示するのが難しいため、詳細は国内株の「手数料とリスクについて」でご確認ください。
株式は、クーリング・オフの対象にはなりません
詳しくは手数料とリスクについてをご覧ください。