マーケットレポート

マーケットの視点

米欧経済の厳しさに対する認識が高まる一方で政策は手詰まり感、株価下落継続を覚悟しながら堅調な日本に注目

・ 世界株市場は大幅下落が止まらない。先週1週間の下落率はNYダウ6.4%、英FTSE5.6%、独DAX6.8%、仏CAC7.3%、韓国総合7.8%、インドSENSEX4.6%、香港ハンセン9.2%、上海総合2.0%を除いては著しい急落ぶり、日経平均株価は3営業日ながら3.4%の下落。香港ハンセンは月、水~金曜日と年初来安値を更新し続け09年7月14日以来の1万7000ポイント台、韓国総合は金曜日に1カ月ぶりに年初来安値を更新し09年7月8日以来の1600ポイント台、仏CACは木曜日に年初来安値を更新し09年3月30日以来の2700ポイント台にまで各々、下落している。他の主要国株市場は先週、かろうじて年初来安値の手前で踏み止まったが、今週は日経平均株価を筆頭に軒並み年初来安値を更新することが予想され、あたかもリーマン・ショック後の最安値水準に向かって下値模索する展開を辿っているように見える。

・ ちなみに、仏CACのリーマン・ショック後の最安値は09年3月9日「2519.29ポイント」であり、年初来安値となった先週22日の株価は「2781.68ポイント」で下落余地(あと何%下落すればショック後最安値を更新するか)は“9.4%”とかなり接近している。NYダウの最安値は09年3月9日「6547ドル05セント」で先週の安値「10733ドル83セント」からの下落余地は“39.0%”、日経平均株価の最安値は09年3月10日「7054円98銭」で先週末の株価「8560円26銭」からの下落余地は“17.6%”と比較的小幅で、東日本大震災の急落から立ち直っていないことが響いている。同様に他の主要国株市場の下落余地を算出すると印SENSEX“49.5%”、NASDAQ“48.3%”、韓国総合“44.7%”、香港ハンセン“35.8%”、英FTSE“29.9%”、上海総合“29.9%”、独DAX“29.0%”となっている。仏CACは債務問題当時者となるリスクを織り込み下落余地が小幅になっており、同じ欧州でも財政面での安心度の高い英・独の下落余地は大きいが欧州問題の成り行き次第ではこの下落余地はかなり縮小することになろう(すなわち更に大幅下落する)。一方、日経平均株価に関しては、東日本大震災の急落と円高の影響でかなり割り負けした水準にある。中でも、時価総額ウエイトの高いグローバル関連企業の株価は円高影響をかなり織り込んだ水準にあり、今後、世界株市場の下落歩調が続いたとしても、下落余地は限定的になるのではと考える。

今回の株価低迷は、欧州の債務問題と世界経済の減速懸念が最大の背景だが、ここに来て世界経済の減速が相当に現実的なものとして認識され始めている。別表は20日にIMFが発表した世界経済見通しで欧米地域の下方修正が際立っており、欧米の減速と自国の利上げの影響で新興国の成長率も軒並み下方修正されている。しかも、IMFは「世界経済は危険な新局面にありリスクは明らかに下を向いている」と分析、今回の見通しは「欧州の当局者がユーロ圏の危機を封じ込め、米国の当局者が経済下支えと中期的財政再建の間のバランスの取れた政策運営を実施できる」ことを想定しており、「万一の事態が(米欧の)どちらかでも起きれば世界の成長に深刻な影響を与える」と指摘している。同時にIMFはEUの銀行のギリシャ、アイルランド、ポルトガル、イタリア、スペイン、ベルギーの計6カ国の国債を対象に現時点での潜在的な損失額を2000億ユーロ(約21兆円)になると試算、対象国の銀行への貸出などを含めると損失額は3000億ユーロとなる発表した。既に、米欧各国とも財政政策、金融政策に手詰まり感が強く身動き取れない状態にあることは米欧各国政権の動揺、あるいは先週の米FOMC、そしてG20財務相中央銀行総裁会議の結果を見れば明らかだ。事態の深刻さは想定以上に厳しいものと考える。IMFの世界経済見通しが上方修正させるようになるまでは時間がかかるだろう。それまで“一喜二憂、三憂”し“一進二退、三退”するマーケット展開を覚悟しつつ、海外経済減速の影響はあるものの相対的に堅調な日本の“ツレ安”を冷静に受け止め『売られ過ぎ銘柄』に注目したい。


主な決算発表予定
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(中島)


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … FOMCは資産規模を増大させずに金利低下を促す「オペレーション・ツイスト」を実施

 先週の国内では20日に「8月の粗鋼生産」、21日に「8月の貿易統計」、海外では米国で19日に「9月の住宅市場指数」、20日に「8月の住宅着工・許可件数」、21日に「8月の中古住宅販売件数」が発表されたが、経済指標よりはむしろ20~21日のFOMC、22~23日の「G20財務省中央銀行総裁会議」、23~24の「IMF世界銀行年次総会」が焦点となった。G20財務省中央銀行総裁会議では、直近の世界同時株安に影響を受け当初は予定されていなかった「金融市場安定化の共同声明」を発表したが、金融不安を回避する具体策は織り込まれず、少々物足りない結果に終わった。

 21日に財務省が発表した「8月の貿易統計」の貿易収支は▲7753億円で3カ月ぶりの赤字となった。背景は、元来、1、5、8月が国内の連続休暇となる月で貿易黒字額が縮小、あるいは貿易赤字になりやすいことに加え、今年は原子力発電の代替エネルギーとしてのLNGの輸入額が前年同月比56%増と急増したことで輸入額全体では同19%増となったためだ。注目されるのは、輸出額が震災影響から着実に回復し8月5兆5374億円、同2.8%増と震災直前の2月以来、6カ月ぶりの増加となり、季節調整ベースで前月比0.3%増と4カ月連続の増加となったことだ。輸出回復を牽引したのは自動車で輸送用機器の輸出額は1兆869億円、前年同月比7.7%増と6カ月ぶりの増加となった。ただ、今後は米欧の景気減速や中国、インドなど新興国の利上げ継続による消費拡大へのブレーキがわが国輸出の回復傾向に水を差す懸念が台頭していることは事実である。右図には中国、米国、EU向け輸出額の伸び率を示したが、リーマン・ショック後、09年下期から輸出額は増加に転じ震災前までは増加基調が続いていた。震災後、輸出額は一時的に落ち込んだが、国内の生産回復につれて8月は順調に回復、9月以降も輸出回復が見込まれるものの世界経済減速の影響を見守る必要がある。


中国、米国、EUへの輸出額の前年同月比伸び率の推移
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 一方、世界的にも最も注目されたのは20~21日に開催された米FOMCだ。8月26日にジャクソンホールで行われたバーナンキ議長講演会ではQE3に関する言及はなかったものの、当初は20日だけの開催予定であった9月のFOMCを2日間に延長することを発表したことで、時間をかけて慎重に議論し的確な金融政策を打ち出すことへの期待感は高まっていた。そのような中、今回発表された政策は、ほぼ事前の予想通りに長期債を購入し購入額と同額の短期債を売却する「オペレーション・ツイスト」だ。これによりFRBの資産規模を増大させることなく、長期国債の購入によって長期金利の低下を促すことが可能になる。しかし、ほぼ予想通りにQE3が見送られ「オペレーション・ツイスト」の実施に止まったことでポジティブサプライズはなく、FRBの金融政策の手詰まり感が見えてきた。これまでの量的緩和でFRBの資産がリーマン・ショック前と比べて約3倍へと増大したものの、バーナンキ議長の思惑通りの景気回復の勢いが途絶えたこともQE3実施を見送った一因だろう。いずれにせよ米欧の政府、中央銀行には次の一手が見つからず非常に苦慮する状態にあると言えそうだ。


FRB資産水準の推移
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今週発表 … 鉱工業生産では9、10月の製造工業生産予測調査に注目

 今週は月末になるために重要な経済指標の発表が集中する。国内では30日に「8月の全国消費者物価指数」、「8月の鉱工業生産」、「8月の新設住宅着工戸数」、海外では米国で26日に「8月の新築住宅販売件数」、27日に「7月のS&Pケース・シラー住宅価格指数」、「9月のCB消費者信頼感指数」、28日に「8月の耐久財受注」、29日に「4~6月のGDP成長率(確報値)」、30日に「9月のシカゴ購買部協会景気指数」、「9月のミシガン大学消費者信頼感指数」が発表される。コンセンサスは国内の生鮮食品除く物価指数が前年同月比0.1%増、鉱工業生産が前月比1.5%増、米国の新築住宅販売件数が29万5000戸で前月比1.0%減、CB消費者信頼感指数が47、シカゴ購買部協会景気指数が56.8である。8月に発表した国内鉱工業生産の8、9月製造工業生産予測調査では9月が前月比2.4%減と6カ月ぶりの減少に転ずる予測であったが、今回の発表で9、10月の予測がどうなるかが注目される。

(浅枝)



主な決算発表予定

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