マーケットレポート

マーケットの視点

欧州債務不安は緩和方向だが予断は許されない、歴史的な円高定着の影響は気になるが“災い転じて福となる”も

・ 先週の日経平均株価は月曜日早々にアジア株市場も低迷する中で年初来安値を更新したが、ギリシャ問題解決への期待が高まったことで欧米株市場が落ち着きを取り戻し火曜日以降は反発に転じている。欧州債務問題に関しては、最大の焦点となっていた29日のドイツ連邦議会の欧州金融安定基金(EFSF)の機能拡充案に対する採決が賛成多数で承認したことによって、まずは最初の難関はクリアした。残り6カ国、南欧諸国への支援拡大に対して批判的なオランダ、スロバキアなどの議会採決はこれからであり予断は許されない。更に、最終的にEFSFの資金規模をどの程度まで拡大するのかなど、欧州発の金融不安を完全に解消するまでには幾つものハードルを越える必要がある。直前の欧米株市場がドイツ議会の承認を既に織り込んでいたこともあり、また、結果的に欧州債務問題が完全に解決されたものでないことなどから先週末のNYダウ、独DAX、仏CACは下落、NASDAQ、英FTSEは3日続落となった。米国景気の二番底懸念も依然、払拭された訳ではなく、今週は3日に「9月のISM製造業景況指数」、5日に「9月のISM非製造業景況指数」、7日に「9月の雇用統計」が発表され、結果数字に一喜一憂する不安定なマーケット推移が続く見通しだ。

・ 3日に「日銀短観(9月調査)」の結果が発表されるが、前回の6月調査では大企業における業況判断DIは“製造業「-9」、非製造業「-5」”と1年3カ月ぶりにマイナスに急落したが、12調査機関の予想値を平均した9月調査は“製造業「2」(0~5)、非製造業「2」(1~5)”と大幅に好転する。東日本大震災の影響から急速に立ち直っているためであり、最も影響力の大きい自動車生産が予想外に早く回復に転じていること、電力供給不安や福島第一原発事故の影響も収束しつつあり消費自粛が和らいでいること、などを反映し業況判断DIが大幅好転している。ただ、為替がほぼ76円/米ドル台に貼り付き、欧州不安の高まりで一段とユーロ安になるなど、円高が一層進んでいることや、最悪の事態は避けられそうになってきているとはいえ欧州債務問題が欧州景気に与える影響、米国景気見通しへの減速懸念、中国を中心に新興国経済の息切れなどを背景に外需に対する先行き不安が台頭してきており、「現状判断」の急好転よりは「先行き見通し」がどのように表現されるか、為替の新たな前提、業績見通しがどのような内容になるかが気になるところだ。

・ 欧米景気は二番底を懸念するほどに減速感が強まっており、米国、ドイツの長期金利が2%を下回った状態が続くという歴史的な低金利に陥ったままであり、“米ドル安、ユーロ安”が常態化した状況が続くことになりそうだ。9月の対米ドル円レートはほぼ76円台の膠着相場が続き、対ユーロ円レートは欧州危機極まり101円95銭と10年ぶりの円高水準まで上昇、その後は一旦、ユーロ高に戻してはいるが状況的に90円台に突入するのも時間の問題のようだ。10月24日の週から本格化する3月決算企業の中間決算発表の中で円高の影響をどのように表現するかが注目される。為替の影響の大きい自動車、電機業界に関して、自動車は第1四半期決算発表時点では震災影響から脱し大幅増産に入る下期について慎重に構えた企業が多かったことから12.3期見通しを大きく修整するところは少ないと予想する。電機は、同じく慎重予想が多かったものの、収益面で影響の大きい欧米市場のテレビ、新興国市場のテレビ、デジカメ、あるいは電子部品メーカーへの影響が大きいパソコンの需要変動が下期業績にどのように現れるかが焦点となる。会社計画自体は第1四半期決算時の感触では“バッファー(上方修正含み)”を持った大手電機が多かったが、今回の一段の円高、海外需要の変調でそのバッファーが消失するに留まり“据え置き”とする企業が多そうだが、やむなく下方修正する企業も出てくることに注意が必要だ。既に業績見通しの観測記事が出始めているが、今週以降、マーケットに影響を与えるようなニュースを覚悟せざるを得ない場面も出て来よう。

・ 一方で、このところ、円高を活用した海外企業に対するM&Aや思い切った海外生産シフトのニュースも目立っている。今回の円高は日本企業にとっては一線を踏み越える決断を促すレベルであり、更に次元の高いグローバル化が進むものとして評価すべきで、結果的にグローバルベースの成長力を高めることになろう。


(中島)


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 9月の国内鉱工業生産指数は一旦、減少したが、増益基調は続く見通し

 先週の国内指標は、30日に「8月の全国消費者物価指数」、「8月の労働力調査」、「8月の鉱工業生産」、「8月の新設住宅着工戸数」、海外では米国指標で26日に「8月の新築住宅販売件数」、27日に「7月のS&Pケース・シラー住宅価格指数」、28日に「8月の耐久財受注」、29日に「4~6月のGDP成長率(確定値)」、30日に「9月のシカゴ購買部協会景気指数」、ユーロ圏で30日に「9月の消費者物価指数(速報値)」が発表された。米国の住宅関係では「8月の新築住宅販売件数」が前月比2.3%減と4カ月連続の減少、実数は29万5000戸と2月以来、半年ぶりに30万戸を下回った。住宅価格に関しては「7月のS&Pケース・シラー指数」の20都市総合指数が“142.77”、前年同月比4.1%減と10カ月連続の下落となったが、下落率は縮小しつつあり指数の値は11年3月の“137.63”を底に上昇傾向を辿っている。

 国内では30日に「8月の鉱工業生産」が発表されたが、前月比0.8%増と5カ月連続の増加となり基調判断も「回復しつつある」から「震災の影響からほぼ回復した」へと3カ月ぶりに上方修正され、震災被害から立ち直り国内生産は順調に回復している。また、7月1日から実施された“電力使用制限令”が影響し生産に支障をきたすという懸念はあったが、企業の節電対策が奏功し今夏の電力危機は無事に乗り切った。業種別ではアナログ放送終了前の駆込需要がなくなったことで液晶テレビが同43%減と急落したことが影響し情報通信機械工業が11%減となったが、輸送機械工業は生産停滞の遅れを取り戻す勢いで同6.5%増と4カ月連続の増加、非鉄は同2.5%増と5カ月連続の増加となった。しかし、直近の世界景気停滞懸念や円高推移が続いていることを警戒し、製造工業生産予測調査では9月が同2.5%減と6カ月ぶりに減少する見通しだ。主要業種別では非鉄の同1.2%増、紙パの同2.7%増を除き鉄鋼が同1.6%減、化学が同4.3%減、情報通信が同2.6%減、5月から回復の牽引役となってきた自動車などの輸送機械も同6.3%減と減少に転じる予測だ。但し、10月予測は9月が減少となった反動もあるが同3.8%増と増加に転じる見通しである。10月の予測調査の結果から算出した鉱工業生産指数は94.8、8月に対し1.2%増で、一旦は9月に減少するが増加基調は続くトレンドとなっている。例えば、10月の輸送機械は同13.6%増と4カ月ぶりに二桁増となる予測であり、11年度下期以降の増産に拍車がかかる見通しとなっている。


「鉱工業生産」~生産指数、生産指数前月比伸び率の推移
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 一方、30日にユーロ圏の「9月の消費者物価指数(速報値)」が発表された。10年12月以降、ECBの安定基準である前年同月比2.0%増の水準を上回る推移となっており、結果的に4月、7月にECBが政策金利を引き上げている。しかし、その意図に反し「9月の消費者物価指数(速報値)」は同3.0%増と、8月の上昇率である同2.5%増を0.5ポイント上回る結果となり、08年10月の同3.2%以来の高い上昇率となった。速報値ベースでは品別の増加率は公表されないが、8月の確報値では輸送用燃料が同13%増、ヒーティングオイルが同23%増とエネルギー関連指数の増加が目立ちエネルギーを除く物価指数は同1.5%増となっていたことから、9月の上昇率もエネルギー関連の物価上昇が原因と推測される。欧州では、ギリシャをはじめとする南欧諸国の財政不安やユーロ圏主要国の景気停滞が懸念され、10月6日に開催されるECB理事会において政策金利引下げに踏み切るのではとの見方もあったが、9月の消費者物価指数の上昇率から判断するとその可能性はゼロに近くなったといえる。景気に対する不安があることから、物価上昇を抑えるために政策金利を引き上げすることも困難な状況にあり、今後の金融政策の舵取りがさらに注目される。


ユーロ圏消費者物価指数前年同月比伸び率と政策金利の推移
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今週発表 … ユーロ圏は景気停滞懸念とインフレ圧力の板ばさみ、トリシェ総裁の舵取りに注目

 今週は国内指標が3日に「日銀短観(9月調査)」、海外は米国が3日に「9月の製造業ISM指数」、5日に「9月の非製造業ISM指数」、7日に「9月の雇用統計」が発表される。短観のコンセンサスは大企業製造業の最近DIが2、前四半期比11ポイント上昇、大企業非製造業は2、同7ポイント上昇で想定以上の回復ぶりを確認する結果となろう。しかし、先行きDIについては大企業製造業が3で最近DIに対し1ポイントの上昇、非製造業は2で横ばいの予想となっており、世界景気の停滞懸念から厳しい結果となる可能性が大きい。一方、米国では「9月の製造業ISM指数」が前月比0.1ポイント下落、「9月の非製造業ISM指数」が同0.3ポイント下落、また、「9月の失業率」と9.1%で前月比横ばい、非農業部門雇用者数が前月比5万人増で先行きへの不安感を解消できない予測となっている。また、経済指標以外では6~7日に日銀金融政策決定会合、ユーロ圏で6日にECB理事会、と重要な会合の開催が相次いで行われる。特にECB理事会は景気停滞懸念とインフレ圧力の板ばさみの中で舵取りが非常に難しい状況にあり、任期内で最後の記者会見を迎えることになるトリシェECB総裁の発言への注目度は高い。

(浅枝)



主な決算発表予定

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