マーケットレポート

マーケットの視点

欧州債務問題の打開に向け結束が強まりそう、「日銀短観」の先行き楽観もあり今週は強基調続くと予想

・ 先週の株式市場は前半、後半で一変した。9月26日のマーケットの視点で指摘した通り、先々週は日経平均株価、韓国総合、香港ハンセン、上海総合が年初来安値を更新、そして先週は米国株市場のNYダウ、NASDAQ、S&P500、英国FTSE、香港ハンセンが年初来安値を更新するという、欧州債務問題の嫌なムードを引き摺って始まったが、その後は一転、あたかも最悪期を脱したかのような展開となった。今回の世界株市場低迷の要因は欧州債務問題と米国景気後退懸念である。このうち、米国景気の先行きに関しては依然として不透明感はあるものの、先週発表された「ISM景況感指数」が3日発表の“製造業”、5日発表の“非製造業”ともの市場予想を上回り、製造業は“51.6”、非製造業は“53.0”とどちらも好転・悪化の判断の分かれ目である50を上回っている。更に、7日に発表された「9月の雇用統計」では非農業部門雇用者数が市場予想の6.3万人を上回る10.3万人と発表されたことで、とりあえず安堵感が広がった。詳細な内容は決して楽観できるものではないが、悲観ムード一色の中で“悪くない数字”が出たことで景気の二番底懸念が若干ながら後退したことがマーケットに好影響を与えた。

・ 一方、欧州債務問題に関しても混沌とした状況に追い込まれた中で打開の方向に転じる気配が見えてきた。まず、イタリア国債に関して既に9月20日にS&Pが格下げを行っていたのに続き4日にムーディーズが「Aa2」から「A2」へと三段階引き下げ、7日にフィッチがイタリア国債を「AA-」から「A+」、スペイン国債を「AA+」から「AA-」と引き下げかつ“ネガティブ”見通しを継続し更なる引下げを示唆、ムーディーズがベルギー国債を引き下げの方向で見直すと発表。10日にギリシャ危機の煽りで資産の劣化が激しいフランス・ベルギー系大手銀行デクシアを解体処理、ベルギー国内部門はベルギー政府が国有化しフランス部門はフランス政府系の預金供託公庫と郵政銀行に譲渡する方向と発表された。これに先立ち9日に独メルケル首相と仏サルコジ大統領がベルリンで会談しユーロ圏にある銀行への資本増強を果断に実行することで合意、必ずしも1枚岩でなかったユーロ圏が結束を固め経済連携を高めるとし10月末までには欧州債務危機の抜本的な打開策をまとめ11月3~4日の「カンヌG20サミット」に臨むと宣言した。デクシア解体処理は欧州債務問題に絡む欧州金融機関の破綻としては初めてのケースであり、被害が深刻にならないように政府が迅速処理したことは大いに評価される。すなわち、欧州債務問題における最大の不安は、金融機関が抱える不良債権が顕在化し資金調達が困難になり破綻に追い込まれることで金融システムが崩壊することだ。今回は、その危惧に対し対処策のモデルケースとも言え、独仏を軸に各国政府が結束して立ち向かう姿勢が明らかになったと言える。今週末の14~15日にはパリで「G20財務相会議」が開催されるが、同様の会議でこのところ焦点ボケが続いていたが、今度は欧州対策が明確なテーマとして議論される期待が高まっている。

・ 先週発表された「日銀短観(9月調査)」では予想外に先行きに対する楽観姿勢が明らかになった。先週までに発表されている小売業界の業績は上方修正が相次ぎセブン&アイ、イオンとも過去最高益を更新する見通しとなっている。デフレ、消費低迷、東日本大震災、大型台風と逆風吹き荒れる国内での明るいニュースであり、悲観に傾きつつある3月決算発表にも期待が持てる。週明けの欧米株市場は急反発して始まった。11日に「9月の景気ウォッチャー調査」が発表されるが、意外に“悪くない結果”となるのではと予想するが、そうなれば、今週の日本株市場は急ピッチで戻りを試す展開になる可能性は高いと期待する。


(中島)


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 日銀短観の最近の業況判断は2四半期ぶりにプラスへ回復

 先週は国内で3日に「9月調査の日銀短観」、7日に「8月の景気動向指数(速報値)」、海外では米国で3日に「9月の製造業ISM指数」、5日に「9月の非製造業ISM指数」、7日に「9月の雇用統計」、中国では1日に「9月の製造業PMI指数」が発表された。米国の製造業ISM指数は前月比1.0ポイント上昇し51.6、26カ月連続で50以上をキープし市場予想の50.5を上回り好感の持てる結果となったが、先行きの予想に重要な項目“新規受注”が前月比横ばいの49.6で3カ月連続の50以下となったことで予断を許さない展開が続く。

 国内では3日に「9月調査の日銀短観」が発表され、大企業製造業の最近の業況判断は2、前四半期比11ポイント上昇、大企業非製造業の最近の業況判断は1、同6ポイント上昇となり、どちらも2四半期ぶりのプラスとなった。製造業を業種別に見ると、やはり牽引役は自動車でサプライチェーンの復旧、震災後の生産停滞の取り戻しから最近の業況判断は13、同65ポイント上昇と過去最大の上昇幅となった。ただ、欧州を中心とした海外景気の減速や想定以上の円高推移から製造業の先行き業況判断はやや不安感が点り、最近の業況判断に対し2ポイント上昇と上昇幅が大幅に縮小した。 業種別では液晶パネルの生産調整が長引くとの見方から窯業・土石製品が最近の業況判断に対し10ポイント下落、繊維が同12ポイント下落となり、この2業種が上昇幅の縮小に大きく寄与している。しかし、注目の自動車は最近の業況判断に対し11ポイント上昇、非鉄は同11ポイント上昇と順調な回復を維持する結果となった業種も存在し、一概に先行きに対し悲観的になりすぎる必要もなかろう。


「日銀短観」~大企業製造業、非製造業の業況判断推移
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 一方の米国では7日に注目の「9月の雇用統計」が発表され、失業率は9.1%で前月比横ばい、非農業部門雇用者数増加幅は10万3000人で市場予想の6万5000人を大幅に上回った。内訳は製造業が前月比1万3000人減となったが、建設業の2万6000人増、サービス業の同11万9000人増でカバーした。しかし、非農業部門雇用者数の増加幅は、失業率が悪化しないための必要な水準“前月比10万人増”を辛うじて上回った程度、且つ5日に米国労働省に先んじて発表した民間調査会社ADPの結果が前月比9万1000人増と約10万人増加の水準になったことを考えるとサプライズは全くなかったといえる。また、非農業部門雇用者数についてリーマン・ショック前のピークである08年1月の1億3799万人と11年9月の1億3133万人を考えると、ピーク時の水準まで回復するにはあと666万人の雇用が必要である。ウォール街で格差改善のデモが起きていることなど現在の労働環境を考えるとFRBや政府の希望する水準まで回復するには相当の時間を要すると思われる。


完全失業率、非農業部門雇用者数前月比増減幅の推移
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今週発表 … 週末はパリでG20財務相中央銀行総裁会議、欧州金融安定化への議論が行われる模様

 今週は国内で11日に「9月の景気ウォッチャー調査」、12日に「8月の機械受注統計」、「9月の工作機械受注(速報値)」、14日に「9月の企業物価指数」、海外では米国で13日に「9月の財政収支」、14日に「9月の小売売上高」、「10月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)」、中国では注目の「9月の消費者物価指数」が発表される。また、14~15日にはパリでG20財務相中央銀行総裁会議が行われるが、EFSEの拡充に向けメドが立ち始めた直後であり、欧州金融システム安定化へさらなる議論が求められそうだ。

(浅枝)



主な決算発表予定

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