マーケットレポート

マーケットの視点

EU首脳会議の「包括戦略」合意での一応決着で株高続きそう、キヤノン、コマツ、日電産の決算の注目点

・ 26日のEU首脳会議において朝までかけて「包括戦略」で合意に達したことでリスクマネーが株式、商品市場に一気に勢いよく再び流れ始め、先週の世界株市場は同時株高に転じた。欧州債務問題はまだ紆余曲折はありそうなこと、米国の経済指標も気になるものの、暫くは株式好調が続きそうだ。先週より日本企業の決算発表がスタートしたが、総じて上期実績は第1Q決算発表時の発表を上回る結果に対して、70円/米ドル台が定着した超円高とタイ洪水の影響で下方修正するところも出てはいるものの、どちらかと言えば第3四半期以降を慎重に見て通期見通しを据え置くところが多い。外部環境が厳しい割には堅調な決算内容になっていると評価出来る。今回は、その状況をキヤノン、コマツ、日本電産の決算内容から読み解くこととする。

・ 12月決算のキヤノンは、7~9月期の営業利益は1225億円、前年同期比17%増と好調だったが、通期(11.12月期)見通しを売上高は前回予想の3兆7800億円→今回3兆6500億円と1300億円、営業利益を同じく3800億円→3600億円へと200億円、下方修正した。10~12月期の想定為替レートは対米ドルを80円→77円、対ユーロを115円→105円へと修整、この影響額が売上高709億円、営業利益383億円、更にタイ洪水被害はインクジェットプリンターの工場が浸水被害を受けていることに加えて部品調達難で販売好調なデジタル一眼レフカメラ販売台数を前回の730万台から720万台へと下方修正したことなどで売上高500億円、営業利益200億円を下方修正要因とした。しかし、第4Qの営業利益は765億円、前年同期比7.6%減の見通しであり、為替が10年10~12月期82.7円/米ドル、112円/ユーロからの円高であり、タイ洪水の影響を想定している割には堅調な収益だと言える。下方修正は残念なことだが、事前に相悲観視されていた欧米需要の低下はそれほど心配する必要がないことと歴史的な“超円高”に対する抵抗力を、本来は改めて評価すべきだろう。

・ また、コマツは中国向けが一転、急ブレーキ、上期は1142億円、前年同期比25%減、通期計画も期初の3800億円、前期比12%増から2400億円、同28%減へと1400億円もの下方修正、為替を期初想定の82円/米ドル、116円/ユーロから今回は下期を77円/米ドル、106円/ユーロへと修整したことで建機・車両部門の為替のマイナス影響額が期初150億円→今回400億円へと大幅に拡大したにも拘わらず、中間期の営業利益は1329億円、前年同期比28%増と好調、通期も3050億円、前期比37%増から2820億円、同27%増と業績急回復基調は不変だ。なおかつ売上高営業利益率は11.3期12.1%→12.3期13.8%へと向上する計画。これは中国向けの失速を北米向け同25%増、欧州向け同20%増、CIS向け同43%増、その他アジア向け同32%増と他の地域で充分にカバー、特に欧米向けの回復ぶりが顕著、更には鉱山機械部門の売上高は期初計画の5050億円、同21%増から5430億円、同30%増へと上方修正、しかもドルベースの増収率は26%増から41%増とまさに絶好調で、中国失速、円高があっても全体としては力強い業績回復が続くことが確認された。

・ 一方、タイ洪水の深刻な影響が懸念された日本電産の決算は上期の営業利益は期初公表の320億円を第1Q決算発表時に370億円、前年同期比29%減へと増額したが、結果的に395億円、同24%減と更に上回って着地、タイ洪水の影響、円高進展があっても今回は通期見通しを900億円、前期比1%減と据え置いた。HDDモータ全体の生産能力の30%を担っていたロジャーナ工場が12月まで生産ストップ状態だがランシット、バンガディ工場は通常生産が可能で、ロジャーナ工場分を中国、フィリピン工場に急ピッチで移管中。浸水前のタイ62%、フィリピン23%、中国15%の生産比率をロジャーナ工場復旧後に各々43%、36%、21%へと平準化する計画だ。同社のHDD用モータ生産量は第3Qが前回計画の1億4400万台分に対して1億台分に止まるが、急ピッチな増産対応で第4Qが前回計画の1億4000万台分に対して一気に1億8000万台分の生産が可能としている。永守社長は「ピンチをチャンスに変える」と“意気軒昂”、結果的に生産性の高いフィリピン工場の生産ウエイトを上げることに加えて、ロジャーナ工場を新鋭マシンに入れ替えることで生産革新が可能となるためだ。しかも、在庫積み増しのためにも第4Q、来期第1Qもフル操業状態が続くことも収益面で貢献、まさに“災い転じて福となる”可能性が高い。一方で自動車・パワステ用モータの受注は想定以上とのことであり、来期以降の業績拡大に一層の弾みが増してくることになりそうだ。


(中島)


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
クリックして拡大


今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
クリックして拡大


◆内外経済指標より

先週発表 … 10、11月の鉱工業生産指数はタイ洪水の影響から幾分増加率が縮小される

 先週は国内で24日に「9月の貿易統計(速報値)」、28日に「9月の全国消費者物価指数」、「9月の労働力調査」、「9月の鉱工業生産」、海外では米国で25日に「8月のS&Pケースシラー住宅価格指数」、「10月のCB消費者信頼感指数」、26日に「9月の耐久財受注」、「9月の新築住宅販売件数」、27日に「7~9月のGDP成長率」、28日に「9月の個人所得・消費支出」、「10月のミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)」が発表された。米国経済指標だが、「10月のCB消費者信頼感指数」は39.8と2009年3月の26.9以来、2年7カ月ぶりに40を下回る結果となったが、「10月のミシガン大学消費者信頼感指数」は速報値の57.5から上昇修正され60.9、「9月の新築住宅販売件数」は前月比5.7%増で5カ月ぶりの増加、「7~9月のGDP成長率」は前期比年率2.5%増で3四半期ぶりの2%台の増加率と好感の持てる結果が続き、依然として不透明な展開が予想されるとはいえさらなる悪化に陥ることはあるまい。

 国内では24日に「9月の貿易統計(速報値)」、28日に「9月の貿易統計(確報値)」が発表された。確報値ベースでは輸出額が5兆9767億円、前年同期比2.3%増で2カ月連続の増加、輸入額は5兆6805億円、同12.1%増、貿易収支は2961億円の黒字で震災後最大の黒字額となった。輸入では原油価格の高止まりが影響し5兆円台後半の輸入額で推移しているが、輸出額は着実に回復している。牽引役である輸送用機器の9月の輸出額は前年同月比5.1%増で2カ月連続の増加となった。1ケタ台の増減率はやや弱めの数字だが輸出額の1兆4472億円はリーマン・ショック直後では08年10月の1兆6617億円に次ぐ最大額であり凄まじい勢いで回復していることはいうまでもない。ただ今後は、極度の円高推移と海外景気の停滞懸念が不安材料となろう。このことは輸送用機器に次いでウエイトの大きい一般機械の9月の輸出額が1年9カ月ぶりに前年同月比減少となったことや、10月上旬の輸出額が同12%減と2桁の減少率となったことからも伺え、今後の国内輸出産業の足枷となることも考えられる。


輸出額、輸入額の前年同月比伸び率の推移
クリックして拡大


 28日には経済産業省から「9月の鉱工業生産」が発表された。震災後の4月から5カ月連続で前月比増加が続いていたが、9月は同4%減と6カ月ぶりに減少し、基調判断も8月の「生産は東日本大震災の影響からほぼ回復したものの、先行きについては注視する必要がある」から「生産は横ばい傾向にある」へと下方修正された。また、業種別に見ても輸送機械、一般機械など全ての業種において前月比減少となり、先行きに不安感が漂う結果となった。しかし、生産減に寄与した主要品目の内訳を見ると輸送機械では普通乗用車や機関部品等、情報通信機械ではデジタルカメラが含まれており、国内のグローバル企業の生産拠点が集まるタイで大洪水によるサプライチェーン断絶が起こっていることを考えると、9月の生産減だけで国内外の需要減少を言い表すには時期尚早だろう。一方で10月、11月見通しはそれぞれ前月比2.3%増、1.8%増と再び増加に転ずる見通しであるが、タイ洪水の影響を考慮した予測ではないことを考えると、上記の増加率を幾分縮小させて考えたほうが良かろう。


「鉱工業生産」~生産指数、生産指数前月比伸び率の推移
クリックして拡大


今週発表 … 今週の最大の焦点は3~4日のG20カンヌサミット

 今週は海外の動きが焦点となる。経済指標では31日にユーロ圏で発表される「10月の消費者物価指数(速報値)」、1日発表予定の中国「9月のPMI指数」、米国では1日に「10月の製造業ISM指数」、3日に「10月の非製造業ISM指数」、4日に「10月の雇用統計」、重要イベントでは1~2日に開催される米国のFOMC、3日開催のユーロ圏のECB理事会、3~4日にフランスのカンヌで開催されるG20カンヌサミットが注目される。カンヌサミットではEUのEFSF拡充案について他の先進国や新興国がどの程度歩み寄ることができるか、目の離せない展開になろう。

(浅枝)



主な決算発表予定

主な決算発表予定
クリックして拡大


国内株取引のリスク
株価の変動、および為替の変動等(外国株式の場合)により損失が生じるおそれがあります。
国内株取引の手数料について
国内株の手数料は多岐に渡っているため、このスペースに表示するのが難しいため、詳細は国内株の「手数料とリスクについて」でご確認ください。
株式は、クーリング・オフの対象にはなりません
詳しくは手数料とリスクについてをご覧ください。