マーケットレポート

マーケットの視点

“ギリシャ悲・喜劇”で大揺れし不安抱えながらも小康状態へ、円高・TV・タイで決算厳しいが悲観は禁物

・ “欧州が大揺れに揺れている”とこの場で何度も書いたが、まったく欧州の動揺は歯止めが効かない。しかも、今回はまるで卓袱台をひっくり返したような噴飯劇が演じられた。欧州債務問題に関して、ようやく「包括戦略」に達したことで欧州の綻びを食い止める方向性が示され、3日からのG20サミットでの国際協調でそれを盤石なものにしようとしていた矢先、31日に“寝耳に水”でパパンドレウ首相が「ギリシャが包括戦略の内容を受け入れるかどうか“国民投票”を4日に行う」と宣言したことで上や下への大騒ぎ。ギリシャ救済に向けて奔走したサルコジ大統領は「ギリシャをユーロに加盟させたのは間違い、ルールが守れないならユーロを去るべき」、メルケル首相は「ユーロの安定はギリシャ救済よりも重要」と発言、一旦は匙を投げかけたが、パパンドレウ首相の説得にあたり、ようやく同首相が「国民投票は間違いだった」との翻意に到り、なんとか国民投票は取りやめたが“内閣信任投票”を4日に実施、賛成多数を得たことで薄氷を踏むような経緯で“欧州危機”を収めることが出来た。ともあれ、“ギリシャ悲劇”というか“ギリシャ喜劇”のせいで霞んでしまったG20サミットではあるが「ユーロ圏の包括戦略は歓迎する」と欧州支援は継続するとの合意で閉幕したものの、「自分達の不始末は自分達で何とかしろ」という冷めた雰囲気が漂い、サルコジ大統領としては面目丸潰れの“カンヌ”G20サミットとなってしまった。

・ しかし、この間、3日に欧州中央銀行(ECB)のドラギ新総裁が初仕事で大方の予想に反してユーロ政策金利を0.25%引き下げ1.25%とする09年5月以来、2年半ぶりの『利下げ』に踏み切ったことが欧州不安の火消しに一役買った。G20での各国首脳の発言にみられるように、依然として欧州債務問題を発端とする危機意識はスペイン、イタリアへの波及懸念として残ったままで予断は許されないが、31日に日本が3カ月ぶりの為替介入に踏み切り、1~2日に米国FOMCが開催され、4日に「10月の米雇用統計」が発表されたこともあり“長く重い1週間”が過ぎ、再び不安を抱えながらも小康状態を維持するような展開に落ち着くものと予想する。

・ 一方、先週はわが国企業の決算発表が山場を迎え悲観的な伝え方が目立っているが、実際には必ずしも厳しさ一方ではない。例えば、5日の日経報道では四半期ベースの経常利益が4~6月期18%減益から7~9月期21%減益へと“下振れ”したとあるが、これはおかしい。我々が東証一部1098社ベースで会社公表値を中心に8月末に集計した結果では4~6月期18%減益に対して7~9月期は34%減益と元々、7~9月期の減益幅が大きくなるとなっていた。これは、東日本大震災の影響を厳しく想定したままであったためで、今回の決算発表の結果からは自動車、電機を中心に東日本大震災からの立ち直りは予想外に早く、12.3期上期に関してはむしろ想定以上となったところが多い。しかし、①円高が進み下期の為替想定を80円/米ドルから77円/米ドルに見直す、②タイ洪水被害が深刻な影響をもたらすところも出ている、③液晶テレビ需要の世界的ブレーキが収益を大幅に押し下げている、ことで下期の収益回復テンポが大幅に鈍ることから12.3期通期としては下方修正がやむを得ない情勢にある。とりわけ、パナソニックが4200億円、ソニーが900億円の最終赤字に転落すると大幅下方修正しTV事業の一大リストラに踏み切る、TDKが全従業員の12%に相当する1万1000人の人員削減を行うと発表、ホンダはタイ洪水の影響で再び12.3期通期見通しを見送った、など重苦しいムードが漂っている。しかし、いずれも手の施しようがないとか、再浮上のメドが立たないとかのレベルではなく、ホンダの池専務が「ホンダは問題が起こると割と頑張ってしまう会社です」と発言するなど、むしろ前向きなスタンスが多く、表面上伝えられているほどには悲観的ではない故、下押し株価は一つのチャンスだ。


(中島)


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 米国雇用統計では8、9月の非農業部門雇用者数が大幅な上方修正

 先週は海外に主要な経済指標発表が集中した。米国では31日に「10月のシカゴ購買部協会景気指数」、1日に「10月の製造業ISM指数」、3日に「10月の非製造業ISM指数」、4日に「10月の雇用統計」、ユーロ圏では31日に「10月の消費者物価指数(速報値)」が発表された。また、重要イベントの開催も相次いだ。中央銀行の会議では、米国で1~2日にFOMC、ユーロ圏では3日にECB理事会、国際会議では3~4日にフランスのカンヌでG20サミットが開催された。市場が注目する欧州の動向だが、ECB理事会では11月から新総裁に着任したドラギ総裁が予想外の政策金利引下げを行い資金を調達しやすい環境を作る意思を表明したが、G20サミットでは世界各国の結束力を確認するだけに留まり新たな具体策は発表されず、欧州財政への不安は長期的になりそうだ。

 1日に発表された「10月の製造業ISM指数」は前月比0.8ポイント下落の50.8、市場予想では2カ月連続上昇の52.0を予想していただけに数字的にはネガティブな結果となった。主要項目で“生産”が同1.1ポイント下落、“在庫”が同5.3ポイント下落したことがISM指数下落の主要因だが、今回注目すべき点は“新規受注”が同2.8ポイント上昇の52.4と4カ月ぶりに50を上回り、さらにISM指数をも上回った。“新規受注”は先行指標的な特徴があり、図に示すように“新規受注”がISM指数を牽引していることもわかる。さらに、他の項目である“価格”は09年5月以来、29カ月ぶりに50を下回り今後の受注増に繋がる環境も整いつつある。今後の結果を確認するまでは持続的な回復トレンドに入ったとはいえないが、少なくとも悪化傾向に陥る可能性は極めて小さいといえる。


「ISM製造業」~PMI指数、新規受注の推移
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 注目の「10月の雇用統計」が4日に発表された、失業率は9.0%で7カ月ぶりに改善したが、非農業部門雇用者数は前月比8万人増と雇用改善の必要条件である同10万人増を下回る結果となった。非農業部門雇用者数増加幅の内訳は政府部門が同2万4000人減、民間部門が同10万4000人増、民間部門の中では製造業が同5000人増で相変わらず回復力が弱く、同11万4000人増のサービス業が牽引する形となった。ただ、10月分の結果だけを見ると若干弱めの感じがするが、9月分の雇用者数増加幅が5万5000人の大幅な上方修正され前月比15万8000人増となったことを考えれば、10月分の雇用者数増加幅が弱いとは一概に言えないだろう。また、8月分の雇用者数増加幅は2カ月前の発表当初は前月比横ばいだったが、先月の9月分発表時には同5万7000人増へと上方修正、さらに今回発表時には同10万4000人増へと再度上方修正を行なった。8~10月の3カ月間で34万2000人の雇用回復に至ったことを考えると、欧州の金融不安や中国の金融引き締めなどが回復の重石となっていた状況においては充分に回復したといえる。


完全失業率、非農業部門雇用者数前月比増減幅の推移
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今週発表 … 「景気ウォッチャー調査」が注目点、上昇に転ずる可能性もあり得る

 今週の国内では7日に「9月の景気動向指数(速報値)」、9日に「10月の景気ウォッチャー調査」、10日に「9月の機械受注統計」、「10月の工作機械受注(速報値)」、11日に「10月の企業物価指数」、海外では米国で10日に「9月の貿易収支」、「10月の財政収支」、11日に「11月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)」が発表される。景気ウォッチャー調査では9月分で現状判断が2カ月連続の前月比下落、先行き判断では3カ月連続の前月比下落となっており、①調査の回答期間が10月25~31日であったこと、②26日EU首脳会議で包括戦略の合意に達したこと、を考えるとそろそろ底をうち上昇に転ずる可能性もあり得る。

(浅枝)



主な決算発表予定

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