マーケットレポート

マーケットの視点

欧州ソブリン問題が欧州全域に拡散、日経平均株価が年初来安値を更新し続ける無気力相場、きっかけが欲しい

・ 欧州ソブリン問題の連鎖が欧州全域を覆い始めた。この1カ月間の騒動の中で、ギリシャ、イタリアが首相交代、スペインは政権交代と南欧3カ国が新政権に移ることで債務危機回避に向けて踏み出し始めるやいなや、今度はユーロ中軸国のフランス、ドイツへと波及、更にはベルギー、ハンガリーの格下げに発展、欧州大陸に垂れ込めた暗雲の広がりは容易に晴れそうにない厳しさを増しつつあり、暫くは投資家心理が冷え込んだ状態が続きそうだ。欧州各国の国債利回りは、イタリアに追随しスペイン、フランスも急騰、ユーロ最後の砦であるドイツまでも23日の10年債入札が60億ユーロの募集に対し39億ユーロの応札に止まる“大規模な「札割れ」”となり、翌24日に独国債利回りが2年半ぶりに英国債利回りを上回る水準まで急騰した。更に、ハンガリーが21日にEU、IMFに金融支援を要請したのを受けて25日に米ムーディーズが同国債の格付けを「Baa3」から一段階引き下げて投資不適格級の「Ba1」かつ「ネガティブ」見通しとし、米S&Pが25日にベルギー国債の格付けを「AA+」から「AA」に引き下げた。今後、ユーロ圏の国債入札が29日イタリア、ベルギー、12月1日スペイン、13日スペイン、イタリア、14日イタリア、20日スペイン、28~29日イタリアと年内いっぱい続く予定で、その度にマーケットを揺らしかねない。

・ 一方、米国では23日までを期限に「連邦財政赤字削減策」の超党派協議を続けていたが、21日に民主党のパティ・マレー上院議員と共和党のジェブ・ヘンサリング下院議員が「期限までに合意提案出来ないとの結論に達した」と協議決裂の共同声明を行った。これに対し、オバマ大統領は共和党が富裕層への増税を拒否したことが協議決裂の原因だと非難し、共和党はオバマ大統領がリーダーシップを欠いており民主党が医療制度改革の抜本見直しを拒否したことが合意を妨げたと主張、双方、来年の大統領選挙を睨んでの駆け引きもある。協議内容は今後10年間で総額1.2兆ドルの財政赤字削減策の策定だったが、協議決裂によって2013年からの10年間、各経費一律に1.2兆ドルの支出削減策を実行するという「トリガー条項」が自動的に発動されることになった。本年8月に騒然となった「債務上限引き上げ問題」の時とは違い、米国のデフォルト懸念やすぐに再び格下げとなるような深刻な事態にはならないが、上院下院の議会ねじれ、民主党・共和党対立による政策の足踏み、先行きの支出削減による米国景気への影響など、米国景気を順調な回復軌道に戻すために必要とされる財政政策への妨げになるような不協和音が露呈していることの影響は大きい。

・ 世界株市場全般にこの2週間、9あるいは10営業日のうち1、2日を除いてほぼ下げ続けている。日経平均株価は先週末25日まで、03年末・04年始の11営業日連続以来の9営業日連続での売買代金1兆円割れとなる沈滞相場の中で、10 年8月6~12日の5営業日続落以来と同じ5営業日続落となる後退ぶりだ。21日に9月26日以来の年初来安値を更新してから25日終値「8160円01銭」まで4営業日連続、先週通して年初来安値を更新し続けた。なおかつ、3月15日にパニック売りで記録した「8227円63銭」のザラバ安値を24日「8157円39銭」、25日「8135円79銭」と、今度は事も無げに静かにあっさりと更新した。

・ この間、TV事業大赤字・大再編、オリンパス、大王紙、タイ洪水など個別問題は幾つも連なったが、個別の売り買い材料や、割安・割高などの要因をはるかに超えた“売り外しが続き、買い意欲が全くない無気力相場”の中で実体以上に売られ続けている企業は多い。質的に同一には語れないが、オリンパスが見えざる恐怖の中で5分の1まで売られ、“上場維持”を頼りに一気に2倍まで戻したように、決して衰退の途上にある訳ではないまま軒並み売られ過ぎている多くの企業が、一気に大きく戻す可能性は高いのだろう。当たり前のことだが、問題は“きっかけ”次第である。個別材料ベースでは無反応に近く株価支援にはなり難い。これまでの情勢からは、欧州ソブリン問題が一気に好転する方向が見えることが一つの大きなきっかけになろう。基金増強や国債買い支えなどの中途半端な施策ではテコにはならず、一国がデフォルトする、欧州主要銀行の破綻などを発端とするショック療法が必要なことは歴史が証明する事実だ。そのタイミングはまだ先だろうが、確実にその時はやってくる気がする。


(中島)


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 10月の貿易収支は2737億円の赤字、季節調整済輸出額は震災後初の前月比減少

 先週は国内で21日に「10月の貿易統計」、25日に「10月の全国消費者物価指数」、海外では米国で21日に「10月の中古住宅販売件数」、22日に「7~9月のGDP成長率(改定値)」、23日に「10月の個人所得・消費支出」、「10月の耐久財受注」、「11月のミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)」が発表された。米国のGDP成長率は先月発表の前期比年率2.5%増から0.5ポイント下方修正され同2.0%増となった。主要項目の個人消費は同2.4%増→同2.3%増と0.1ポイントの下落だが、投資が同4.1%増の増加から同0.9%減と減少に転じたことが主因であり、寄与度では非農業部門が-1.01ポイント→-1.48ポイントと悪化した。

 21日に財務省から発表された「10月の貿易統計」は輸出額が5兆5127億円、輸入額が5兆7865億円で貿易収支-2737億円で8月の-7795億円以来、2カ月ぶりの貿易赤字、また10月としてはリーマン・ショック直後の08年10月の-752億円以来、3年ぶりの赤字となった。輸入では原油価格の高止まりと震災後の代替発電源としての需要増から原油及び粗油が前年同月比33%増、液化天然ガスが同64%増と輸入額の増大に大きく寄与しているが震災直後からの上昇傾向が続き特段の変化はない。先行き不安なものは輸出額の減少で10月は前年同月比3.7%減で3カ月ぶりの減少、季節調整値では前月比3.5%減で輸出が持ち直してきた11年5月からは初めての減少となった。欧州財政不安でEU向けが前年同月比で5カ月ぶりの減少となった上に、歴史的円高によって米国、ASEAN、中国と主要地域では全て前年同月比減となった。商品別では電気機器が5月を底にして前年同月比の減少率を縮小させてきたが10月は同12%減となり、9月の同4%減から減少率が急拡大した。11月29日に11月上旬、12月8日に11月上中旬の速報値が発表され、しばらくは速報値の輸出動向に注目したい。


輸出額、輸入額の前年同月比伸び率の推移
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 25日には「10月の全国消費者物価指数」が発表されたが、結果は前年同月比0.2%減、生鮮食品除く総合指数は同0.1%減でどちらも4カ月ぶりに下落した。昨年10月から値上げしたたばこと傷害保険料の効果が剥落したことが主な要因だ。10月の下落要因はテレビが同26%減、電気冷蔵庫が同29%減でアナログ放送とエコポイント制度が終了し耐久財へのデフレ圧力は非常に強い状態が続く。また、右図にたばこや傷害保険料の値上げ、公立高校授業料無償化の効果を除いた消費者物価指数伸び率の推移を示したが、08年末から09年始の原油価格が急落した後は前年同月比で増加に転じたことは一度もないことがわかり、国内の需要増による物価上昇は非常に難しいといえる。


全国消費者物価指数」~“たばこ”、“傷害保険料”、“公立高校授業料無償化”の影響を除く総合、生鮮食品除く総合、食料・エネルギー除く総合の前年同月比伸び率の推移
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今週発表 … 30日の鉱工業生産は前月比1.0%増の予想で、2カ月ぶりの増加

 今週は国内で29日に「10月の労働力調査」、30日に「10月の鉱工業生産」、2日に「7~9月の法人企業統計調査」が発表される。コンセンサスは鉱工業生産が前月比1.0%増で2カ月ぶりの増加、完全失業率が4.1で横ばい、有効求人倍率は0.68倍で0.01ポイント改善となっている。一方の米国では28日に「10月の新築住宅販売件数」、29日に「9月のS&Pケース・シラー住宅価格指数」、「11月のCB消費者信頼感指数」、30日に「11月のシカゴ購買部協会景気指数」、1日に「11月の製造業ISM指数」、2日に「11月の雇用統計」が発表される。注目の雇用統計だが、関連性の大きい新規失業保険申請件数の11月は各週とも40万件を下回っており、雇用統計についても改善が期待される。


(浅枝)



主な決算発表予定

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