マーケットレポート

マーケットの視点

6中銀が資金供給強化で協調、新興国も利下げに転じ、世界的な“金融緩和”シフトが株式市場をリフトアップ

・ 世界株市場があっという間に明転した。先々週までは欧州問題が欧州一面に広がり始めて追い込まれた状況となり、日経平均株価は4営業日連続で年初来安値を更新、TOPIXも厳しく83年12月以来の28年ぶりの700ポイント割れ寸前まで下落していたのに対し歯止めがかかった。一気に明転した背景は以下の通り。

① 27日にイタリア紙スタンパが「IMFがイタリアに4000~6000億ユーロの金融支援を検討」と報じられ、一旦は債務問題への不安が和らいだ。(その後に誤報とされている)

② 米国年末商戦のスタートとなる感謝祭翌日の「ブラックフライデー」(小売業が黒字化するので“ブラック”という意味)である25日の小売販売が予想以上に好調な出足で警戒感の強かった年末商戦に対する安堵感が広がった。年末商戦の幕開けである感謝祭当日24日から週末の日曜日の27 日までを対象に全米小売業協会(NRF)がまとめた米小売業の売上高は、小売り各社の大幅な値引きや開店時間の前倒しやネット通販の拡大継続が奏功し524 億ドルの過去最高となり、前年の同期間と比べた伸び率は16.4%にも達した。

③ 29日に実施されたイタリア、ベルギー国債の入札が順調に済み、ユーロ圏財務相会合で欧州安定化基金(EFSF)の規模拡大策を正式決定し12年1月から本格運用、IMF支援の拡大を要請することにした。

④ 29日に米S&Pが世界で合計37機関、欧米主要銀行を一斉格下げ、欧日主要銀行を見通し引き下げとした。

⑤ 30日に米FRB、欧ECB、英イングランド銀行、スイス中立銀行、カナダ銀行、日銀の6中央銀行がドル資金供給を一層潤沢にし、ドル資金を調達する際のスワップレートを従来の市場金利に対する1%上乗せから0.5%上乗せへと引き下げ、多角的スワップでドル以外の通貨の資金供給を容易にする国際協調体制を一気に整えた。

⑥ 30日に中国人民銀行が預金準備率(市中銀行から強制的に預かる資金の比率)を3年ぶりに21%から0.5ポイント引き下げることを発表、タイが政策金利を0.25ポイント引き下げ3.25%とし、ブラジルも0.5ポイント引き下げ11.0%とした。

この一連の流れの中で“リスクオフ”姿勢が一気に“リスクオン”に明転、元々、米国企業の11年7~9月期業績が「S&P500社のEPSは70%上振れし10月14日時点の12.4%増益が17.8%増益の結果となった」と予想以上に好調だったこともあり、30日のNYダウは前日比“490.05ドル”急騰し「1万2045ドル68セント」と大台復活、ナスダックも“104.83ポイント高”の「2620.34ポイント」、欧州、アジア株市場とも世界株市場が同時急騰を演じた。日経平均株価も先週は5週間ぶりの上昇、“483.74円高”の「8643円75銭」と久々の週末高値引けで終えた。その前の4週続落で“890.46円、9.8%下落”と下落を重ねたが、この下落分の54.3%を一気に取り戻した格好となった。

・ この変化は、“金融緩和”への世界的な転換である。欧州金融市場におけるドル資金の代表的な貸出金利であるロンドン銀行間取引金利(LIBOR)が上昇基調にあったなど、金融市場の資金逼迫によって資金調達が途絶し資金繰り難となり破綻に追い込まれかねない金融機関が出現する恐れがない訳ではなかったが、これでその金融システム不安が当面は払拭されたことになる。なおかつ、新興国が一斉に利下げに転じつつあることもあり、世界経済の失速懸念は一気に和らぐ方向となった。政治要素の強い財政政策による方向付けは各国の政治態勢の違いで容易ではないが、金融政策の方向性を一斉に合致させることで世界的な危機を回避することは出来るということを今回は証明したようなものだ。もちろん、これで欧州ソブリン問題が抜本的に解決した訳では全くない。しかし、資金的な余裕度を高めたことによって大幅な時間稼ぎが実現し、その間に有効な手段を講じることで根本問題を解決することは可能だろう。「単なる時間稼ぎでしかない」との声もあるが、緊迫した状態での時間稼ぎの効果は大きい。また、新興国ではインフレ警戒は依然、大きいが成長過程にあることから、まず重要なのは流動性供給による経済活性化である。タイ洪水の影響もようやく先が見えて来ており、2日に発表された米国の「11月の雇用統計」では失業率が8.6%と8カ月ぶりに9%を下回った。8日のECB理事会、9日のEU首脳会議の結果が気にはなるが、当面は緩やかながら戻りを試す展開を期待したい。


(中島)


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 米国では失業率が大幅に改善、非農業部門雇用者数も5カ月連続で10万人以上の増加

 先週は国内で29日に「10月の労働力調査」、30日に「10月の鉱工業生産」、「10月の新設住宅着工戸数」、2日に「7~9月の法人企業統計調査」、海外では米国で28日に「10月の新築住宅販売件数」、29日に「9月のS&Pケースシラー住宅価格指数」、「11月のCB消費者信頼感指数」、30日に「11月のシカゴ購買部協会景気指数」、1日に「11月の製造業ISM指数」、2日に「11月の雇用統計」、ユーロ圏では30日に「11月の消費者物価指数(速報値)」、「10月の失業率」が発表され、日米欧とも重要視表の発表が相次ぐ週となった。ユーロ圏ではドイツの動向を気にする神経質な展開が続いているが、日米の景気は深刻な状態からは若干ながら抜け出してきたことを確認できた結果であった。米国のISM製造業指数は主要項目の“新規受注”が前月比4.3ポイント上昇、“生産”が同6.5ポイント上昇し全体の指数は同1.9ポイント上昇の52.7、28カ月連続で50以上をキープした。11年7月には同4.4ポイント下落で急落し、8月も同0.3ポイント下落で50.6となり、50を下回りそうになったが、どうにか息を吹き返した格好だ。また、30日には民間調査会社ADPから発表された非農業部門雇用者数は前月比20万6000人増となった。これで9月、10月の同13万人増とり、1日に米国労働省から発表された新規失業保険申請件数は前週比6000人増の40万2000人と1カ月ぶりに40万人以上となったが、4週間移動平均では40万人以下の水準を維持していることから、雇用環境も悪くはない状態だ。

 30日に発表された「10月の鉱工業生産」は前月比2.4%増で市場予想の1.0%増を大幅に上回る好結果となった。10月は歴史的な円高やタイの洪水の影響で前月比3.3%減と6カ月ぶりの減少となったが、震災後の遅れを取り戻そうとする動きは不変で再度増加に転じた。業種別に見ると9月の自動車等の輸送機械工業はタイの洪水影響で前月比減となったが、東日本大震災での教訓を生かして即座に対応したことで10月は前月比12%増と2桁の増加、一般機械工業ではボイラ用品等が好調で同3.1%増となった。一方で電子部品・デバイス工業、情報通信機械工業はそれぞれ、同5.5%減、同6.0%減となったが、7月のアナログ放送終了前の駆け込み需要の反動が続いていると思われる。先行き予測では11月は同0.1%減で微減、12月は同2.7%増となっている。輸送機械気工業はそれぞれ0.1%減、同0.1%増で現状の生産水準が続く見通しだ。また、情報通信機械工業の11月は同14%減の大幅減だが、12月は逆に同29%増で11月の減少の反動も含まれるが、年末商戦への期待も見られる。


「鉱工業生産」~生産指数、生産指数前月比伸び率の推移
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 一方、米国では2日に「11月の雇用統計」が発表された。結果は失業率が大幅に改善し8.6%、リーマン・ショック後に起こった解雇の嵐の後では最も良好な水準となった。注目の非農業部門雇用者数増加幅は前月比12万人増で、10月分が2万人上方修正され同10万人増となったことから、非農業部門の雇用者数は5カ月連続で10万人の増加が続いたことになる。業種別では建設が同1万2000人減、製造業が同2000人増と相変わらずの低迷状態だが、サービス業が14万6000人増で牽引役となった。中でも目立ったのが小売業の同5万人増だ。しかし、感謝祭後のブラックフライデー、サイバーマンデーの賑わいを見越しての一時的な増員である可能性も考えられるため、小売業やサービス業の雇用者数増加に関しては来月発表の12月分でも確認すべきであろう。総括としては個人消費統計を代表する小売売上高は10月分で5カ月連続の増加、新車販売も11月分で6カ月連続の増加、雇用環境も緩やかながら回復傾向にあることから、米国の景気停滞を過度に懸念する必要はないと思われる。


完全失業率、非農業部門雇用者数前月比増減幅の推移
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今週発表 … GDP成長率は前期比年率5.1%へ下方修正、設備投資の前期比減少が主因

 今週は国内で内閣府から7日に「10月の景気動向指数」、8日に「10月の機械受注統計」、「11月の景気ウォッチャー調査」、9日に「GDP成長率(第二次速報)」、「10~12月の法人企業景気予測調査」が発表される。GDP成長率については11月に発表された第一次速報では前期比年率6.0%増であったが、今回のコンセンサスでは同5.1%へと下方修正される見通しだ。設備投資額が前期比1.1%増から同0.1%減へと減少に転じる予想となったことが主因だ。しかし、設備投資額は4~6月分の同0.5%減からは減少率が縮小される見通しであり、7~9月には震災後の復興需要による設備投資があまり織り込まれていないと考えると、10~12月の設備投資成長率では5四半期ぶりに増加に転じる可能性も考えられる。


(浅枝)

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