マーケットレポート

マーケットの視点

ECB理事会、EU首脳会議は充分に評価できる内容で、中国CPIも落ち着き、トヨタショックも特殊要因と判断

・ 先週は好悪材料が入り混じる中で、世界が注視したECB理事会、EU首脳会議が100点満点とは言えないながらも一定以上の成果を出して充分に評価できる内容だったはずだ。しかし、先週の世界株市場は方向感を失い、全般には先々週に大幅回復した反動での下落が目立った1週間だった。まず、ドラギ新総裁が主催して2度目となった8日のECB理事会は、ユーロ17カ国の政策金利を0.25ポイント下げてユーロ誕生以来最低の1.0%に戻した。本年に入り4月、7月と0.25ポイントずつ上げたことが欧州債務問題を深化させる一つの要因になったと反省し、追い込まれつつある実体経済の回復を狙った。同時に12月時点の経済・物価に関する内部予測を公表したが、実質GDP成長率は11年を据え置いたが12年は1.3%成長から0.3%成長へと下方修正、新たに13年を1.3%成長とした。またCPI(消費者物価指数)については11年を2.6%→2.7%、12年を1.7%→2.0%、13年を1.5%の上昇とした。12年の0.3%成長という数字は“リセッション(景気後退)”が視野に入った見通しである。28日に発表したOECDが世界経済見通しの中で既にユーロ圏の成長率を5月時点の2.0%から0.2%へと大幅下方修正していたが、同時に「悲観シナリオ」も提示し警告を促している。具体的には、「ユーロ圏で無秩序なデフォルトや金融機関の破綻が発生、米国が減税措置の打ち切りなど過度の財政引き締めで景気後退に陥る」となれば、日米欧とも標準シナリオから2~4ポイントも下振れし欧米は2%程度のマイナス成長、日本は復興需要が支えながらも11年、12年と若干のマイナス成長に陥るという恐怖シナリオだ。この予防のために、今回、ECB理事会では2度目の利下げに踏み切り、かつ資金供与策を従来の最長13カ月物に加えて3年物を新設したわけだが、ユーロ圏内の国債購入やIMFへの融資を否定したことがマーケットの期待を裏切る結果として受け止められた。

・ 一方、EU首脳会議は8~9日とベルギーの首都ブリュッセルで開催されたが、今回は当初より“債務危機克服に向け財政規律強化と将来の経済・財政統合の青写真を示すとともに、足下の金融安全網の強化で不測の事態に備える”方策を打ち出せるかという重い期待を背負って幕を開けた。将来の青写真に関してはほぼ期待通りの結果となったが、足下の金融安全網の強化に関しては不充分という評価で、金融不安を払拭し切るまでには到らなかった。具体的には、今回の欧州問題の根幹となっている債務危機を改善、防止するために財務規律を強化するため将来的に財政赤字をゼロとすることを規制した新条約『財政協定』(Fiscal Compact)を締結することにイギリス以外26カ国が合意、これは「財政統合」に向けた一歩と評価され好感された。更に、短期の金融支援策としては、EFSFの機能強化、IMFの活用、欧州版IMFに相当する欧州安定メカニズム(ESM)を新たに設立、3つのセーフティーネットで債務不安国、欧州金融機関を守る体制を整えた。EFSFは4400億ユーロの資金規模で12年早々にスタート、IMFに対してはユーロ中銀から1500億ユーロ、他国から500億ユーロの融資を募りそれを緊急対策の財源として活用することを確認、13年設立の計画だったESMを前倒しで12年7月に稼働させ5000億ユーロの資金を用意、合わせて1兆1400億ユーロで危機対応にあたる体制とした。しかし、イタリアの債務残高は1兆8428億ユーロでポルトガル、アイルランド、ギリシャ、スペインを合わせたいわゆるPIIGS5カ国の債務残高合計3兆1195億ユーロに対しては不充分であり、時間的に間に合うかどうかの問題もあり、金融不安を完全に払拭することが出来ない内容となっている。

・ なお、9日に発表された中国の11月にCPIは前年同月比4.2%上昇と市場予想の中央値4.4%を下回り政府目標である“4%程度”に落ち着いたことから今後の利下げへの期待が高まることとなり安心感を与えた。しかし、同じく9日に仕切り直しで発表されたトヨタの12.3期見通しは衝撃が走った。営業利益を円高1900億円、タイ洪水1200億円などの影響で4~6月期決算発表時の4500億円から2000億円、前期比57%減へと大幅下方修正した。ただ、国内生産に拘ってきたことで輸出比率が6割と高いトヨタ固有の問題であり、小沢副社長によると85円/米ドルで震災影響、タイ洪水という一過性の問題がなければ7600億円、前期比62%増と大幅増益に転じていたとのことであり、4~9月期の326億円の赤字に対して10~3月期は2326億円の黒字へと一応は大幅黒字転換する見通しであり、それほど悲観的になる必要はない。他への波及を含めたショック安はむしろ買いのチャンスと考える。


(中島)


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … ECBは2カ月連続で金利引下げ、物価動向を考えると最大限の努力

 先週は、国内では7日に「10月の景気動向指数(速報値)」、8日に「10月の機械受注統計」、「11月の景気ウォッチャー調査」、9日に「7~9月のGDP成長率(第二次速報)」と「10~12月の法人企業景気予測調査」が発表された。景気ウォッチャー調査の先行き判断では前月比1.2ポイント下落で5カ月連続の下落となった。震災直後の急落から予想以上の復旧によって40以上に戻し6月には07年5月以来の50以上を伺う手前まで回復したが、その後の円高、欧州財政不安、さらにはタイの洪水被害で先行きの不透明感が増し停滞気味に陥っている。

 海外では米国で5日に「11月の非製造業ISM指数」、9日に「12月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)」が発表された。ミシガン大学消費者信頼感指数は市場予想の66.0を上回り67.7、これで4カ月連続の上昇となった。感謝祭後のブラックフライデー、サイバーマンデーでは非常に好調な消費動向であったことから、米国景気は明らかに持ち直してきていると判断してよかろう。また、8日に米国労働省から発表された新規失業保険申請件数においても前週比2万3000件減で雇用環境も改善しつつあり、住宅環境においても11年11月の住宅市場指数が1年半ぶりに20台へ回復するなど、米国経済は自立的な回復段階に入ったと思われる。

 経済指標以外では8日にユーロ圏でECB理事会が開催され、政策金利を2カ月連続で0.25ポイント引き下げた。市場ではイタリア国債を購入するなど量的緩和策を期待しており結果的には裏切られた格好だが、ユーロ圏の11月の消費者物価指数は前年同月比3.0%上昇となり一向に下落する予兆が見えないことを考えると、ドラギ総裁の「物価安定の使命を外れたことはできない」とのコメントも十分に納得のいく発言だと感じられる。いずれにせよ、2カ月連続で政策金利を引き下げたことでECBとしては最大限の努力をしたのではないかと思われる。

 国内で9日に発表された「10~12月の法人企業景気予測調査」の大企業景況判断は全体-2.5、前四半期比9.1ポイント下落、製造業は-6.1、同16.4ポイント下落、非製造業は-0.5、同5.1ポイント下落し、主要な業況判断は3項目とも2四半期ぶりにマイナスに転じた。図からもわかるように7~9月は震災後から急回復し、その時点の見通しにおいてはプラスの水準を維持する模様であったが、タイの洪水影響が深刻化してきたことやユーロ圏主要国の国債の格下げが相次いだことが今回の判断指数に如実に表れた格好といえる。また、11年度の設備投資計画においても前回見通しでは前年度比5.4%増だったが、今回は同0.7%増と大きく増加幅が縮小された。上期が前年同期比6.6%増から、同8.4%減を減少に転じたことが増加幅縮小の主な要因である。復興需要が下支えとなったが、ユーロ圏の財政不安や新興国でのインフレ警戒からの金利引き上げの影響から新規の設備投資を見送ったことが背景にあると思われる。これは下期計画で前回の4.4%増から同8.6%増へと増加幅を拡大したことからもわかる。一方の先行き見通しでは1~3月が1.1、4~6月が1.7と再びゼロ以上に回復する見通しだ。具体的には製造業の1~3月が0.7、4~6月が0.7、非製造業では1~3月が1.4、4~6月が2.3となっている。いまだに欧州財政については抜本的な解決には至ってないものの、新興国の利下げを考えると更なる悪化は免れそうだ。


「法人企業景気予測調査」~大企業ベース	「貴社の業況判断BSI」の推移
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今週発表 … 日銀短観の製造業最近DIはマイナスに逆戻り、先行きは不透明な微妙な状況

 今週は米国に主要経済指標の発表が集まる。13日には「11月の小売売上高」、15日に「12月のNY連銀製造業景気指数」、「11月の鉱工業生産・設備稼働率」、「12月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数」、16日に「11月の消費者物価指数」が発表される。コンセンサスはNY連銀製造業景気指数が前月比1.9ポイント上昇、フィラデルフィア連銀製造業景況指数が同1.4ポイント上昇、小売売上高が前月比0.6%増、自動車除く売上高では同0.5%増、鉱工業生産が前月比0.2%増、設備稼働率が同0.1ポイント上昇と総じて回復へと向かう予想となっている。一方の国内では15日に発表される「12月調査の日銀短観」が重要視される。予想では大企業製造業の最近DIは-2、先行きDIは-3、大企業非製造業の最近DIは1、先行きDIは1と製造業ではマイナスに逆戻り、非製造業では横ばい傾向が続く見通しである。しかし、先週の法人企業景気予想調査と照らし合わせると、現状判断が落ち込むことは容易に予想できるが、先行きDIについては先行きの不透明感からはっきりとは見通せない微妙な状況であると感じられる。


(浅枝)

主な決算発表予定

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