マーケットレポート

マーケットの視点

欧州不安を背景とする信用収縮懸念で世界株市場も総崩れ、インテル・ショック、日銀短観ショックと厳しい

・ 先週の世界株市場は再び厳しい展開となった。根本的には、欧州不安が納まらず世界的な信用収縮に対する懸念が投資家マインドを大きく冷やしている。象徴的なのは上海総合指数の低迷。週末になってようやく7日ぶりの反発に転じたが、15日まで6営業日続落、5営業日連続で年初来安値を更新した。欧州の主要銀行が軒並み格下げとなって一層リスクを取りづらくなり、また、自己資本不足を解消するためにも新興国における投融資の引き上げが巻き起こると見ている。中国はCPIも落ち着いたことから再び金融緩和姿勢に転換し、12~14日に開催された中央経済工作会議では12年における経済成長重視を確認したものの、中国株市場の下落に歯止めがかからなかった。

・ 一方、欧米株市場もNYダウ、NASDAQ、独DAX、仏CAC40は12~14日まで3日続落、15日は一旦反発したがNASDAQ以外は16日も再び下落に転じた。最大の理由は先々週のEU首脳会議の合議内容が全くパンチに欠けるものであることが強く意識された。すなわち、欧州債務問題を解決するには不充分な内容として受け止められた。問題となっているのは、体制整備までに時間がかかり過ぎることと、セーフティーネットの資金規模が充分ではないとの指摘だ。資金規模に関して、13日に独メルケル首相が欧州安定メカニズム(ESM)の資金規模拡大に対して否定的な発言をしたことも追い打ちをかけた格好となっている。

・ 更に、EU首脳会議の結果を受けて格付け会社が一斉に欧州各国を格下げする方向に動き始めたことも響いている。フィッチ・レーティングスが16日にイタリア、スペイン、ベルギー、スロベニア、アイルランド、キプロスの国債を格下げする方向で検討すると発表、フランスに対しても債務危機が財政や金融に打撃を与えているとしてトリプルA格付けの先行きの見通しを「安定的」から「弱含み」に変更した。米ムーディーズ・インベスターズ・サービスも16日に、ベルギーの長期信用格付けを上から2番目の「Aa1」から4番目の「Aa3」に2段階引き下げると発表、更に格付けの先行きの見通しは「弱含み」とした。米S&Pも独仏などユーロ圏15カ国の格下げを検討中で、年内にも格下げに踏み切る可能性がある。独仏などの信用力で債券を発行している欧州金融安定化基金(EFSF)も格下げされ、欧州債務危機が深刻化しかねない状況となっている。世界的な格付け会社の引き下げ競争の中で、“AAA”クラスの国は一つもなくなりそうだ。

・ 米国株市場では“インテル・ショック”にも見舞われた。12日にインテルが11年10~12月期の売上高見通しを下方修正したことで半導体関連が大きく売られた。理由は、タイ洪水の影響でHDD生産が急減しパソコンの出荷にブレーキがかかったことだ。ただ、世界経済の下振れリスクを受けて、既に調査会社ガートナーが12 年の世界の半導体売上高見通しを9月の前年比4.6%増から先々週に同2.2%増へと下方修正している。商品市況が軟調な推移となっていることで素材関連の株価も厳しく、一方、予想外に好調な滑り出しとなった米国年末商戦は激しい値引きや利幅の薄い商品を揃えた効果であることが判明しつつあり、売上高の伸びの割に利益は厳しいのではという見方が強まりつつあり、息切れも懸念される。

・ 以上のような世界株市場の流れは日本株市場にとっては大変厳しい。中国株市場の低迷は建機、機械株、米国株市場の半導体ショックは半導体関連株の勢いを大きく削いでいる。更に、欧州不安でユーロ安円高が一層進んでおり欧州ウエイトの高い企業の株価をも再び直撃している。15日に発表された「日銀短観(12月調査)」は思いのほか、厳しい内容だった。足下の大企業・製造業DIが9月調査の「+2」から6ポイント急落し「-4」に落ち込んだ。東日本大震災からの立ち直りの数値を期待したが、タイ洪水、超円高で企業マインドは予想以上に冷え込んでおり、先行きも「-5」と冷えた状態が続く。非製造業は9月調査の「+1」から「+4」へと改善したが、先行き「0」へと悪化する。基幹産業である電機が「-5」→今回「-21」→先行き「-17」と厳しく、自動車は「13」→「20」→「21」と改善するがトヨタの大幅下方修正に表されるように業績数字が伴わない。今後、年末相場に向かうが、当面は期待の持てないマーケット展開が続きそうだ。


(中島)


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 日銀短観では先行き悪化の見通しだが、不透明感も強く好転する可能性もあり得る

 先週の国内では15日に「12月調査の日銀短観」、海外では米国で12日に「11月の財政収支」、13日に「11月の小売売上高」、15日に「12月のNY連銀製造業景気指数」、「12月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数」、「11月の鉱工業生産・設備稼働率」、そして16日に「11月の消費者物価指数」が発表された。

 米国の小売売上高は前月比0.2%増、自動車除売上高は同0.2%増と市場予想の0.6%増、0.5%増を大きく下回ったが、増加傾向は維持し、製品別では家電製品が同2.1%増、ネットショッピングが同1.5%増となり年末商戦は好調と見られる。毎週木曜日に米国労働省から発表される「新規失業保険申請件数」が36万6000件とリーマン・ショック後で最小となり労働環境の改善が続いていることを考えると、今後の消費の底堅さは続きそうだ。さらにNY連銀製造業景気指数、フィラデルフィア連銀製造業景況指数ではそれぞれ前月比8.9ポイント上昇、同6.7ポイント上昇とそろって上昇し、東日本大震災によるサプライチェーン断絶の影響で一時的に落ち込んだが再度上昇基調に転じてきた。また、米国消費者物価指数は同3.4%増と9月の同3.9%増、10月の同3.5%増から増加率を縮小してきたが、食料・エネルギーを除く物価指数では同2.2%増と08年10月の同2.2%増と同じ水準にまで増加率が拡大してきた。現在、FRBは異例の低水準金利を続けており米国経済の自立的回復の予兆もみえることから、物価水準を考えると当面は量的緩和QE3の実施は考えにくい。


新規失業保険申請件数の推移
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NY連銀、フィラデルフィア連銀製造業景況指数の推移
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 国内で15日に発表された「12月調査の日銀短観」では大企業製造業の業況判断DIは-4、前四半期比6ポイント下落、非製造業は4、同3ポイント上昇となった。非製造業はリーマン・ショック後では最高の水準となったが、牽引役となったのは物品賃貸と通信で業況判断DIはそれぞれ20、44となった。震災後の復興需要とインフラの再構築がDIを押し上げたと見られる。また、宿泊・飲食サービスの業況判断DIは-2とゼロ以下だが、前回9月調査の先行き見通しでは-13と悲観的に見ていたことを考えると予想外に個人消費が回復してきたといえる。製造業が悪化した主な要因となったのは電気機械で業況判断DIは-21、前四半期比16ポイント下落だが、歴史的円高と欧州景気停滞懸念を考えればある程度予想可能な範囲だろう。非鉄も新興国の成長減速感から市況が値崩れを起こし業況判断DIは0、辛うじてマイナスには陥らなかったが、前四半期比28ポイント下落の急落となった。好調だったのが自動車で20、前四半期比7ポイント上昇となった。震災後の生産量減少がひどかったことから、海外販売の回復と在庫積み増しに動いている模様だ。一方の先行きについては現状の不透明感が継続する様子で製造業が-5、前四半期比1ポイント下落、非製造業が0、同4ポイント下落と悪化する見通しとなった。しかし回答社数の構成比を見ると、「良い」、「悪い」ではなく、DI算出に考慮されない「さほど良くない」と答えた割合が76%と11年3月の78%、11年9月の77%に続く高水準であり、現時点では先行きを見通せない企業が多いことから、必ずしも悪化するとはいえない。業種別では他業種との関連性の強い自動車が前四半期比1ポイント上昇で好調を持続する見通しであり、次の3月調査の短観はむしろ好転する可能性も十分に考えられる。


「日銀短観」~大企業製造業、非製造業の業況判断推移
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今週発表 … 国内貿易統計は輸出額減少で2カ月連続貿易赤字の見通し

 今週は、国内では21日発表の「11月の貿易統計」、米国では19日の「12月の住宅市場指数」、20日の「11月の住宅着工・許可件数」、21日の「11月の中古住宅販売件数」、23日の「11月の新築住宅販売件数」の一連の住宅関連指標の発表が焦点となろう。貿易統計のコンセンサスは4400億円の赤字で2カ月連続赤字の予想だ。10月の地域別輸出額は米国、EU、中国と3地域揃って前年同月比減少となっており、11月も先月に続き減少の可能性もあり得る。米国の住宅関連指標のコンセンサスは住宅市場指数が前月比横ばい、建設許可件数が前月比1.8%減、住宅着工件数が同0.3%増、中古住宅販売件数が前月比2.2%増、新築住宅販売件数が前月比2.0%増と指標ごとにブレはありそうだが、回復傾向は続く見通しだ。

(浅枝)

主な決算発表予定

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