マーケットレポート

マーケットの視点

欧州問題の成り行きを注視し「夜明け前が一番暗い」のスタンスで、“逆襲する日本企業”の再跳躍に注目

・ 10月以降の世界株市場は欧州問題を発火点とする世界経済の減速懸念を意識し往来相場が続いた。欧州債務問題のニュースに一喜一憂しながら、NYダウは11800ドル±500ドル、独DAXは5800ポイント±300ポイント、日経平均株価は8600円を挟んで±500円の騰落を毎週のように繰り返してきた。最も疲れるパターンの相場展開である。11月14日~12月22日までの東証一部・売買代金が11月14~29日までの11営業日連続、12月12~22日まで9営業日連続など28営業日のうち24営業日が1兆円割れの事態。しかも12月20日の売買代金6765億円は11年の年最低記録を更新するなど、投資家離れが進み、まさに株式市場は“事切れ”寸前の状態。しかし、全く希望の光がない訳ではない。例えば、米国の経済指標に関しては良好な結果発表が続いている。とりわけ、これまで最も深刻だった雇用と住宅に関する改善の兆しは注目される。「11月の雇用統計」は8カ月ぶりに9%を下回る8.6%を記録し雇用回復がようやく新たな段階に進みそうな気配が感じられる。全く浮上しなかった住宅関係の指標では、「11月の住宅着工件数」が前月比9.3%増の68.5万戸と市場予想の63万戸を上回り、半年先行する許可件数も同5.7%増の68.1万戸となった。更に、米国の年末商戦は年間小売売上高の3割を占めておりGDPの7割を構成する個人消費の鍵を握るが、予想外に堅調な推移となった模様だ。

・ 新年相場の展望は厳しい見方が多い。最大の懸案事項である欧州問題がどんより曇った状態が続くためだ。再び欧州問題が混迷を強めることで日経平均株価は1~3月に8000円割れに陥ると言う厳しい予測もある。現実に、ユーロ圏諸国は2012年に国債の大量償還を控えている。イタリアが1月150億ユーロから2月531億ユーロ、3月442億ユーロ、4月445億ユーロと特に2~4月に約1418億ユーロ、年間1930億ユーロ、ギリシャが3月に145億ユーロ、スペインが4月に230億ユーロなど、次々と大量償還期を迎えることになる。もちろん、承知のことで資金繰りを充分に配慮した上で立ち向かいデフォルト回避に最大限の努力が払われることになるとは思うが、複数国でのタイトロープ状態であり万が一ボタンの掛け違いが起こらないとも限らない。例えば、ギリシャのデフォルト確率は11月に91%と言われたことがあったが、最近になって100%間違いないと主張する声もあり、イタリアも30%強のデフォルト確率が跳ね上がる危険性は否定出来ない。

・ しかし、この追い込まれた状況の中で、今となっては仮にデフォルトが起こったとしても、その衝撃波を最小限に食い止められるかどうかが焦点だろう。すなわち、他国への連鎖や欧州主要銀行の倒産を防げるかどうかである。問題が勃発した場合、的確な止血処理と縫合手術が速やかに行われるかどうかを冷静に注視することが肝要だ。あるいは、期待すべきは、1月の欧州安定化基金(EFSF)スタート、7月の欧州安定メカニズム(ESM)設立、IMF支援などの防御策を更に強固なものにするウルトラC的な方策が繰り出されるかどうかを見守りたい。その成り行き次第で“天国と地獄”のような劇的なマーケット展開になりそうだ。一方、例えば、米FRBウオッチャーの多くは既にその先を見越している。QUICK調査によると国内のプライマリーディーラー17社のうち8割に当たる13社が欧州債務問題の波及で米国景気が底割れの危機に瀕することから「QE3」に踏み切ると答え、景気回復の途上にある米国経済は欧州危機の衝撃に対して追加金融緩和策で乗り切るだろうと言う構図を描いている。すなわち、冷静に考えれば、“ヤバそうではあるものの何とか凌げるだろう”である。従って、「夜明け前が一番暗い」の格言通り、厳しいマーケット展開になったとしても、“そこにこそチャンスがある”という姿勢で身構えたいところだ。

・ トヨタが2012年は販売848万台、前年比20%増、生産865万台、同24%増と07年ピークを更新、世界一奪回を目指して一気に攻めに転じる計画を打ち出した。ホンダも“燃費No1復活”を旗頭に商品力の高い新車攻勢で再跳躍を目指す。抜本的構造改革を進めるソニー、パナソニックは決して攻撃の手を休めておらず成長戦略はしっかり描いている。11年末になって円高を逆手に取った富士フイルム、旭硝子、東京海上の大型買収が明らかになった。日本企業は前進を続けている。2012年以降、これから始まる日本企業の逆襲に注目したい。


(中島)


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 輸出額は円高、外需停滞が響き2カ月連続の前年同月比減少

 先週は国内で21日に「11月の貿易統計」、米国では19日に「12月の住宅市場指数」、20日に「11月の住宅着工・許可件数」、21日に「11月の中古住宅販売件数」、22日に「7~9月のGDP成長率(確報値)」、「12月のミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)」、「11月の景気先行指標総合指数」、23日に「11月の耐久財受注」、「11月の個人所得・消費支出」、「11月の新築住宅販売件数」が発表された。米国では重要統計指標の発表が相次いだが、特に住宅関連指標の発表が焦点となった。米国の住宅関連指標以外ではミシガン大学消費者信頼感指数は12月速報値から2.2ポイント上方修正され69.9で11年6月の71.5以来の70台に迫ってきた。個人消費支出は前月比0.1%増で微増だが5カ月連続増加と個人の消費動向は悪くはなっていない。耐久財受注は前月比3.8%増で市場予想の同1.9%増を大幅に上回ったが、これは輸送機器の非国防航空機受注が同73%増となったことが主因だ。輸送機器除くと同0.3%増で市場予想の同0.4%増を若干下回り勢いには欠けるが、これで3カ月連続増加となり緩やかに回復している。


ミシガン大学消費者信頼感指数の推移
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 21日には国内で「11月の貿易統計」が発表されたが、貿易収支は6847億円の赤字となり10月の2801億円の赤字に続き2カ月連続の赤字となった。季節調整済みで輸入額は前月比1.6%減となったが、輸出額も同2.6%減となり、中国経済成長速度の鈍化と歴史的な円高、特にユーロ圏の景気停滞から対ユーロに対しての円高が輸出額の減少に影響したと思われる。地域別輸出額でも米国向けは前年同月比2.0%増と2カ月ぶりの増加に転じたが、中国向けが前年同月比7.9%減、EU向けが同4.6%減と共に2カ月連続の減少となった。また、製品別では乗用車が前年同月比5.5%減と4カ月ぶりに減少したが、タイ洪水で自動車部品の物流が停滞していることが背景にある。これはASEANからの輸入額が23カ月連続増加となっているが、タイから輸入額においては23カ月ぶりに減少したことでもわかるはずだ。為替環境や自然災害に振り回されている輸出動向だが、ゴム製品や建機・鉱山用機械など一部製品では好調を維持していることを忘れてはならない。ゴム製品は前年同月比7.9%増と震災後の4月には一時的に減少したが、5月からは再び増加に転じ7カ月連続増加、建機・鉱山用機械は同9.6%増で4カ月連続増加、世界の資源需要拡大が追い風となっている。しばらくは円高傾向が続くこと、汎用品などの海外生産移転が拡大し始めることで輸出環境は厳しい状態が続くであろう。


「貿易統計」~米国、EU、中国向け輸出額前年同月比伸び率の推移
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 米国では住宅市場の回復が顕著になってきている。19日にNAHBから発表された「12月の住宅市場指数」は21、前月比2ポイントの増加で10~12月は回復傾向が続き2011年では最高水準となった。「11月の中古住宅販売件数」も住宅価格の下落傾向が続いていることから、市場予想の前月比2.2%増を上回り同4.0%増となった。また、住宅着工件数と建設許可件数の増加傾向には注目したい。図からもわかるようにバラつきは見られるものの、平時の水準が30万件台から40万件台にシフトしている。11月の数字については住宅着工件数が前月比9.3%増、建設許可件数が同5.7%増とどちらも増加、順調に回復している。「11月の新築住宅販売件数」の在庫月数も6カ月分へ低下、前月に続きリーマン・ショック後の最小在庫水準を更新し、在庫増加の不安もなく住宅販売傾向も好調なようだ。30年住宅ローン金利も2011年は下落基調で、先週の金利は3.91%となり統計上最低金利を記録した。今後も金利の低下傾向は続く可能性が大きいため、税控除など特例措置に影響されない自律的な回復は続くだろう。


住宅着工件数、建設許可件数、新築住宅販売件数の推移
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今週発表 … 28日発表の鉱工業生産は前月比0.8%減、タイ洪水や前月の大幅増の反動が影響

 今週発表の主な経済指標としては、国内では28日の「11月の労働力調査」、「11月の全国消費者物価指数」、「11月の鉱工業生産」、米国では27日の「10月のS&Pケース・シラー住宅価格指数」、「12月の消費者信頼感指数」、30日の「12月のシカゴ購買部協会景気指数」が挙げられる。コンセンサスでは完全失業率が4.5%、有効求人倍率が0.68倍、生鮮食品除く消費者物価指数が前年同月比0.2%減、鉱工業生産が前月比0.8%減となっている。鉱工業生産はタイ洪水や外需停滞、10月が市場予想を上回る前月比2.2%増となったこともあり妥当な予想と思われる。

(浅枝)

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