マーケットレポート

マーケットの視点

米国景気回復期待の高まりが欧州問題の不安を和らげる展開が続く中、わが国自動車業界の再飛躍に注目

・ 新年明けての世界株市場は引き続き欧州問題を引き摺っているが、米国景気への回復期待が一段と高まる中で比較的堅調な推移を辿っている。4日にイタリアの銀行「ウニクレディト」が株主割当増資の価格を大幅にディスカウントすることを明らかにしたことで欧州銀行の資金調達懸念が広がった。独連邦債10年物の入札結果が期待を下回り、5日の欧州市場ではイタリアの10年国債利回りが7%台での高止まりを続け、スペイン10年債は5%台後半まで上昇、イタリアでは2~4月にかけて各月500億ユーロ前後の国債償還が実施される予定であり、警戒感が強まる中で今週は12日にはイタリア短期国債とスペイン3年国債、13日にはイタリアの5年国債入札が予定されており、その結果が注目される。12月30日以降に100円割れとなったユーロは6日に97円/ユーロ台と00年12月中旬以来の安値をつけており、入札の結果次第では更にユーロが売り込まれる可能性がある。

・ その一方で、6日に発表された米国の「12月の雇用統計」は前回に続き2カ月連続で市場予想を上回る好結果となっており、米国景気回復に対する期待感が高まっている。詳細は<内外経済指標より>で述べてあるが、今回は“雇用者増加、賃金上昇、労働時間延長”と3つの好条件が揃い、今後、一段と回復傾向が強まる可能性を示唆する内容となっている。欧州不安を米国の景気回復期待が和らげることが下支えとなり、世界株市場の堅調推移に結びついている。但し、年明けの日本株市場は依然として東証一部の売買代金が6日まで17日連続の1兆円割れという記録的な薄商いの中での膠着相場が続いているが、更に円高が進むことになればグローバル企業群の株価下押しから世界株市場の中で再び取り残される可能性があり得るだけに要注意だ。

・ 中でも自動車株の行方は日本株市場全体を大きく左右することになりそうだ。自動車業界の業績に関しては、マンスリーレポート新年号の「2012年相場見通し」の中で「自動車8社合計の業績推移と予想」として取り上げており、東日本大震災、タイ洪水の影響の反動効果が大きく13.3期業績は急回復に転じ、更に14.3期もアップテンポな業績回復が続く見通しだ。まず、世界の自動車販売台数は、新興国需要の拡大が続くことに加え欧米の回復が見込まれる。10年7236万台に対して11年は7450万台程度となった模様で、12年は欧州不振で7600万台と伸び悩むが、13年は8100万台へと急伸し史上初めて8000万台の大台突破となる見通しだ。この増加トレンドに向けて、各社とも12年から14年にかけて著しい新車攻勢をかける計画を打ち出している。昨年6月に極めて意欲的な新中期計画「NISSAN POWER 88」を発表した日産自は、新型車を11年度5車種に対して12年度9車種、13~16年度までに37車種を投入し世界販売台数を10年度418万台から16年度765万台へと拡大させる。ホンダは12、13年と新型「アコード」など一大攻勢をかけて最大のドル箱である米国市場でのモデルの75%を新型車に切り替える。マツダは“SKYACTIV”計画に則って商品力の高い低燃費車を次々に投入し16年3月期の販売台数全体のSKYACTIV搭載比率を80%にする計画。富士重は同社独自の「水平対向エンジン」など環境性能の高いエンジンや新型CVT搭載の新型車を投入、海外販売台数を10年度16万台に対して16年度32台と倍増させる。トヨタはハイブリッド車のバリュエーションを広げ、米国での新型「カムリ」投入などで12年の販売台数を848万台、前年比20%増、生産865万台、同24%増と07年のピーク台数を一気に更新、世界一奪回を目指して一大攻勢に転じる計画を打ち出している。自動車各社の経営戦略面では今後数年は注目すべき展開が続くことになろう。

・ 問題は円高が収束するかどうかだが、米国景気の回復傾向が強まること、今夏以降には欧州債務問題に対する懸念が鎮静化する可能性が高いこと、を前提にすれば円高傾向に歯止めがかかり円安気味に転じる公算は大きい。更に、自動車各社とも、根本的な円高対応と新興国市場開拓のために海外生産を急ピッチで拡大する。具体的には中国、インド、ブラジル、ロシアのBRICS諸国とメキシコでの現地生産拡大だ。15年までに日産自230万台、スズキ64万台、ホンダ44万台、トヨタ43万台、マツダ14万台と5社合計395万台の生産能力増強、11年の同5カ国の現地生産能力550万台に対し72%もの拡大となる計画であり、新興国市場での新車攻勢を補完すると同時に、円高抵抗力を格段に高めるものとして注目される。


(中島)


先々週、先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先々週、先週発表 … 米国雇用者数は全ての業種で増加、景況感、住宅市場回復で雇用環境改善へ

 先々週、先週は国内で28日に「11月の全国消費者物価指数」、「11月の労働力調査」、「11月の鉱工業生産」、海外では米国で27日に「10月のS&Pケースシラー住宅価格指数」、29日に「11月の仮契約住宅販売指数」、「12月のシカゴ購買部協会景気指数」、年が明けて3日に「12月の製造業ISM指数」、5日に「12月の非製造業ISM指数」、6日に「12月の雇用統計」、ユーロ圏では4日に「12月の消費者物価指数(速報値)」が発表され、12年を予想する上で重要経済指標の発表が目白押しとなった。国内で28日に発表された全国消費者物価指数では生鮮食品除く総合指数が前年同月比0.2%減となり2カ月連続の減少、たばこの値上げ効果が剥落し数字の上でもデフレ基調が根強く続いていることが確認された。米国の仮契約住宅販売指数の11月分は100.1、前月比7.3%増で10月の同10.4%増に続く2カ月連続の高水準の伸び率となり、さらに10年4月の111.5以来、19カ月ぶりに100を上回る結果となった。10年4月は住宅購入減税の締め切り前で駆け込み需要があったことを考えると、今回の100を上回る結果からは米国住宅市場の自立的回復が鮮明になってきたと判断できる。

 国内では28日に経済産業省より「11月の鉱工業生産」が発表された。結果は前月比2.6%減で市場予想の同0.8%減を大きく下回った。業種別では情報通信機械が同24%減、輸送機械が同9.5%減となり業種別生産指数増減率のワースト1、2位となり、また、ウエイトも大きいことから全体への影響も非常に大きい。輸送機械では11月21日に発表された貿易統計からもわかるように部品などの調達が滞り、小型乗用車が同17%減、普通乗用車が同12%減となった。生産減の影響で輸送機械の出荷指数も前月比2.4%減となったが、在庫指数も同11%減となり自動車需要が落ち込んでいるわけではなく、今後は補助金、減税、自動車各社の生産体制回復で期待できると考えてよい。情報通信機械においても、アナログ放送終了から液晶テレビの生産が伸び悩み、クリスマス商戦の効果で生産増が期待されたが前月比29%減と8月の同43%減以来の大きな落ち込みになった。また、携帯電話やデジカメもそれぞれ同39%減、同63%減と大きな落込み、特にデジカメは統計上最大の減少率となり、情報通信機械においてもタイの洪水の影響が大きい。しかし、輸送機械、情報通信機械の12、1月の予測はそれぞれ同13%増、6.0%増、同43%増、7.9%増と2カ月連続で増加の見通しで、特に12月の生産指数は11月の反動があるとはいえ急回復の予想である。このことからタイ洪水による部品調達の滞りは11月が底と考えてよく、鉱工業生産指数全体も12月から最回復する見通しである。


「鉱工業生産」~生産指数、生産指数前月比伸び率の推移
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 一方の米国では12月29日に「12月のシカゴ購買部協会景気指数」、1月3日に「12月の製造業ISM指数」、5日に「12月の非製造業ISM指数」が発表された。シカゴ地区の景況感は62.4、前月比0.1ポイントの下落となったが、コンセンサスの60.7を大幅に上回った。ISM指数は製造業、非製造業それぞれ前月比1.2ポイント上昇、0.6ポイント上昇と11年2月以来、10カ月ぶりに製造業、非製造業が揃って上昇した。注目したいのが製造業ISM指数内訳の“新規受注”で9月の前月比横ばいを含めると5カ月連続の上昇となり、これはリーマン・ショック後の09年1~8月の8カ月連続以来で、ショック後の記録は政府の景気刺激政策が寄与したものだが、今回は自律回復が軌道に乗っているもので、さらに世界全体が欧州の財政不安に苛まれているなかで回復傾向が続いていることが注目される。


シカゴ購買部協会景気指数、製造業、非製造業のISM指数の推移
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 6日に米国雇用統計の12月分が発表された。失業率は8.5%と11月の8.7%に続きリーマン・ショック後の最低値を更新、非農業部門雇用者数は前月比20万人増でコンセンサスの同15万人増を超過、民間部門雇用者数は前月比21万2000人増でこの数字もコンセンサスの同16万人増を超過し現時点では最良の結果になったといえよう。前日の5日に民間調査会社ADPが発表した民間部門雇用者数は前月比32万5000人増で過去最高の増加幅を記録した。ADPのCEOカルロス・ロドリゲス氏のコメントでは「ほぼ全ての業種で雇用が創出されていることを反映した結果」とのことで堅調な回復を裏付ける。それは米国労働省発表の雇用統計においても明らかだ。業種別雇用者数前月比増加幅は鉱業で8,000人増、建設で1万7000人増、製造業で2万3000人増、卸売で1万1600人増、小売で2万7900人増、運輸・倉庫で5万200人増と政府部門を除き民間部門では全ての業種で雇用者数が増加した。また、週間あたりの労働時間も2カ月ぶりに34.4時間へ回復し、雇用増に踏み切る企業が現れてもおかしくない水準になった。今回はISM指数やNY連銀製造業景気指数など景況感の回復基調に加え、住宅市場でも政府の政策なしに自律的に回復していることから、今後の雇用環境も着実に改善していくことが期待できる。


完全失業率、非農業部門雇用者数前月比増減幅、労働時間の推移
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今週発表 … ECBは非常に難しい判断が要求され、ドラギ総裁の発言、記者会見には注目

 今週注目すべき経済指標は、国内では11日の「11月の景気動向指数(速報値)」、12日の「12月の景気ウォッチャー調査」と「12月の工作機械受注」、海外では米国の12日に発表される「12月の小売売上高」、13日の「1月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)」、中国で12日に発表される「12月の消費者物価指数」だ。コンセンサスでは景気動向指数の先行きが前月比0.8ポイント上昇、一致が同1.1ポイント下落、米国小売売上高が前月比0.2%増、輸送機器除く売上高が同0.3%増、ミシガン大学消費者信頼感指数が70.4と11年6月以来、7カ月ぶりに70台へ回復する見通しとなっている。また、12日に開催されるECB理事会にも注目したい。11月からECB新総裁となったマリオ・ドラギ氏は着任早々、11、12月の2カ月連続で政策金利を0.25ポイントずつ引き下げた。12月のECB理事会では大量の国債購入には慎重な姿勢を示していることが明らかになったが、12年はイタリア、スペインなど大量の国債償還を控えていることから、1月の理事会でも総裁ドラギ氏の発言、記者会見が注目点となろう。また、政策金利についても12月のユーロ圏消費者物価指数が前年同月比2.8%増、11月の同3.0%増から増加率を0.2ポイント縮小させたが、依然として基準とする前年同月比2.0%増を上回っており、政策金利でも非常に難しい判断となるだろう。

(浅枝)

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