マーケットレポート

マーケットの視点

ユーロ9カ国格付け引き下げ後の成り行きを見守りながら、米日企業決算のプラスサプライズに期待したい

・ 先週は、米国景気指標の堅調、スペイン、イタリア国債の良好な入札結果などを背景に、総じて世界株市場に楽観的ムードが漂い、13日の日経平均株価は「8500円02銭」と大発会以来の8500円台を回復、東証一部売買代金も1兆632億円と12月9日以来、実に21営業日ぶりに1兆円を上回った。その13日にS&Pがユーロ9カ国に対する格下げを発表した。“フランスとオーストリアがAAA→AA+、スロベニアAA-→A+、スロバキアA+→A、マルタA→A-と5カ国が1段階引き下げ、スペインAA-→A、イタリアA→BBB+、キプロスBBB→BB+、ポルトガルBBB-→BBと4カ国が2段階引き下げ”となり、ドイツ、オランダ、フィンランド、ルクセンブルクはAAA、ベルギーはAA、アイルランドはAを維持した。格付けを見直した16カ国のうちドイツ、スロバキア以外の14カ国に対して格付け見通しを「ネガティブ」とした。ちなみに、AAAは他にイギリス、スイス、カナダなどが付与されており、米国はAA+、日本と中国はAA-、韓国はA+、ロシアはBBB、インドはBBB-、そしてギリシャはCCだ。とりわけ、ドイツと共にユーロを牽引し欧州安定化基金(ESFS)の要の一つであるフランスがAAAから陥落したダメージは小さくない。元来、ESFSはユーロ内のAAA6カ国の信用をベースに資金困難に陥ったユーロ国を救済するものだが、資金規模が当初予定を下回るリスクやESFS債自体がAAAから格下げされるリスクを孕むこととなった。また、独メルケル首相と共にユーロ体制を維持するために奔走する仏サルコジ大統領の4、5月実施の大統領選挙での再選も危ぶまれる。

・ 今回のユーロ9カ国格下げという事態に対しては、昨年来、既に織り込み済みとする見方が一般的でマーケットへの影響は限定的ではあろうが、決して欧州債務問題が解決した訳ではなく、これからイタリア、スペイン、ギリシャの国債の大量償還が到来、いよいよギリシャ問題がクライマックスを迎えるなど、依然としてマーケットの最大の不安要因であることには変わりない。また、S&Pはフランスに関して、豊かで多様かつ耐久力のある経済、高度な技能と生産性を持つ労働力に支えられるものの、高水準の政府債務や労働市場の硬直性がそれを一部打ち消し、フランス政府が財政再建計画から外れた場合やユーロ圏の資金調達・経済リスクが高まり偶発的債務の大幅増加や資金調達環境が著しく悪化する場合は再度の格付け引き下げを行う可能性があると警告した。まずは16日に実施される87億ユーロの国債入札の成り行きが注目される。極端な金利上昇はないとみられるが、なんら異変が起こらないことを期待したい。なお、12日のECB理事会後、就任直後に2カ月連続で利下げに踏み切ったドラギ総裁は、今回、「低水準ながらも経済が一時的に安定した兆しが出てきている」と発言し政策金利を1.0%として据え置いた。しかし、「引き続き高い不確実性と下向きのリスクがある」との懸念をも表明しており、予断は許されない。日本にとっては、週明け早々に一段の対ユーロ円高に見舞われることになろう。

・ 先週の国内の最大イベントは13日に実施された内閣改造だ。“消費税増税”の実現を最大ターゲットとする新布陣を整えた格好だが、野党そして世論からの批判の声は強まる方向にある。絶好のタイミングでユーロ9カ国の格付け引き下げが行われ、野田首相、安住財務相がともに「対岸の火事ではない」と発言し危機感を醸成しようとしているが、どうにも説明力不足の感が拭い切れない。先進国における現在の最大の焦点は『国家財政再建』となっており、今こそ、わが国も財政再建への道筋を明確に描き明瞭に説明すべきだろう。もちろん、その大前提として歳出削減のための議員定数・歳費削減、公務員改革、地方分権化・民営化の推進、歳入拡大のための短期的な景気浮揚策、中長期的な成長戦略の鮮やかな絵図を描いて見せることが最も重要なことだと考えるが、どこまで理想に近付けるかを見守るしかない。先週来、米国企業の決算発表が始まっており、来週以降に日本の3月決算企業の11年10~12月期決算がスタートする。米国企業の11年第4四半期(10~12月期)決算に関してはS&P500企業集計のEPSは10月3日の前年同期比15.0%増益から1月13日時点では6.6%増益へと大幅下方修正されている。7~9月期の同17.8%増益からも増益率は大幅ダウンする見通しとなっており、期待は低いだけにかえってプラスサプライズにマーケットが大きく反応する可能性は高い。わが国企業も大震災、タイ洪水からの着実な立ち直りが今度の決算発表に反映されることで注目度が高まりそうなことに期待したい。


(中島)


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 国内の「12月の景気ウォッチャー調査」は好転、「1月の米国小売売上高」は堅調

 先週の国内では11日に「11月の景気動向指数(速報値)」、12日に「12月の景気ウォッチャー調査」、「12月の工作機械受注(速報値)」が発表された。景気動向指数では先行指数が92.9、前月比0.9ポイント上昇、一致指数が90.3、同1.1ポイント下落となり、それぞれ4カ月ぶりの上昇、2カ月ぶりの下落となった。先行指数については鉱工業生産材在庫率指数が前月比3.1ポイント下落したことで寄与度が10月の-0.48ポイントから0.47ポイントへとプラスの寄与に転じたことが上昇した背景だ。一致指数の下落は鉱工業生産が前月比2.6%減となったことや、耐久消費財出荷指数が同11.6%減と予想以上に減少したことが主因。生産財在庫率指数、鉱工業生産、耐久消費財出荷指数の低下は、どれもタイ洪水で一部部品の調達が滞ったことで生産が停滞し在庫が減少、自動車など最終消費財の出荷が遅れたと判断でき、一時的な下落と考えられる。

 12日に発表した「12月の景気ウォッチャー調査」は現状判断が前月比2.0ポイント上昇で2カ月ぶりの上昇、先行き判断は同0.3ポイント下落で6カ月連続の下落となった。現状判断の内訳では家計が同2.9ポイントで現状判断の上昇に貢献した。なかでも百貨店が前月比13ポイント上昇、家電量販店が同18ポイント上昇したことの寄与が大きい。実際に北関東地域の百貨店で「12月に入ってから気温の低下とともに、重衣料が売上をけん引している。遅れていたお歳暮も前年に追いつき、クリスマス商戦の宝飾等の高額品も良く動いている」とのコメントも見られ12月の寒波も消費を後押ししている模様だ。一方の先行き判断に対して企業は前月比0.2ポイント上昇、雇用は同0.1ポイント上昇したが、家計が同0.5ポイント下落した。乗用車販売店では補助金や減税効果で楽観的なコメントが目立つが、飲食関連では先行きの不透明感で消費抑制を懸念しているコメントが多い。前月比上昇となった企業は復興需要の本格化を予想する声が聞かれ好印象だが、繊維工業や電気機械器具製造業では円高による悪影響で先行きの厳しさを示していることから当面は方向感が定まらない展開が続くと予想される。


「景気ウォッチャー調査」~現状判断、先行き判断の推移
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 一方の海外では米国で12日に「12月の小売売上高」、「12月の財政収支」、13日に「11月の貿易収支」、「12月の輸出入物価指数」、「1月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)」が発表された。小売売上高全体は前月比0.1%増で市場予想の同0.2%増を下回り、輸送機器除く売上高は同0.2%減となり19カ月ぶりに減少した。品目では自動車・部品が同1.5%増と全体の牽引役となったが、家電売上高が同3.9%減となったことが輸送機器除く売上高が減少した主因だ。11月のブラックフライデー、サイバーマンデーに前倒し需要が発生し12月は逆に控えめな消費動向になったと考えられる。しかし、13日発表の「1月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)」は市場予想71.5を大きく上回り74.0、8月の55.7から5カ月連続の上昇で上向きの雰囲気が感じられることから、1月小売売上高での輸送機器除く売上高は再び増加に転じるものと予想する。


ミシガン大学消費者信頼感指数の推移
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 経済指標以外で焦点となったのは12日に開催したECB理事会だ。11、12月の理事会ではそれぞれ政策金利を0.25ポイントずつ引き下げた結果、09年5月から11年3月まで続いた1.00%、つまりはユーロ導入後の最低水準へ逆戻りした。今月の政策金利の市場予想では、ユーロ導入後初の1.00%を下回る水準へ引き下げるには高い壁があるため据え置きを予想したが、実際の結果も据え置きとなった。1.00%からの更なる利下げは非常に難しい判断となるが、今回の理事会でドラギECB総裁は「経済動向に応じて判断する」とのことで、今後の更なる利下げの可能性も考えられる。物価水準の見方についても、今後の数カ月間は基準とする2%を上回る水準で推移するが、その後は2%を下回る水準に落ち着くとの予想をしており、今後の利下げの可能性も十分に考えられる。一方で12月理事会ではECBの国債購入拡大には慎重な姿勢を示し、金融機関へ資金供給することに留まったが、この政策も効果が見え始めたとの認識を示したことから当面はこの姿勢を崩すことはあるまい。しかし、理事会翌日の13日にはS&Pがフランスなど9カ国の国債格付けを引き下げ、今後のECBの金融政策にも若干変化が見られる可能性もある。


今週発表 … コンセンサスでは米国景況感、住宅関連は堅調に回復する予想

 今週は国内で16日に「11月の機械受注統計」、海外では米国で17日に「1月のNY連銀製造業景気指数」、18日に「12月の鉱工業生産・設備稼働率」、「1月の住宅市場指数」、19日に「12月の消費者物価指数」、「12月の住宅着工・許可件数」、「1月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数」、20日に「12月の中古住宅販売件数」が発表される予定で、米国では景況感や消費者物価、住宅関連の経済指標が発表されることで、米景気の堅調な回復の確認が注目材料だ。コンセンサスは国内の機械受注が前月比5.6%増、米国のNY連銀製造業景気指数が前月比1.0ポイント上昇、フィラデルフィア連銀製造業景況指数が同0.7ポイント上昇、鉱工業生産が前月比0.5%増、住宅市場指数が前月比1ポイント上昇、建設許可件数が前月比0.3%減、住宅着工件数が同横ばい、中古住宅販売件数が前月比5.2%増と建設許可件数の減少を除くと増加・上昇する予想で、米国経済は着実に回復する見通しである。

(浅枝)

主な決算発表予定

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