マーケットレポート

マーケットの視点

欧州危機は大幅に和らぐ、G20の内容にも期待、円高進行も止まり当面はリバウンドで9400円超を目指す展開へ

・6月17日のギリシャ議会再選挙の結果は、緊縮派グループが新民主主義党(ND)129、全ギリシャ社会主義運動(PASOK)33の合計162議席と過半を確保、旧与党の政権復活が可能になり、ひとまず“ユーロの危機”は遠のいた。開票率約98%時点での前回5月の選挙との比較ではNDが108→129(得票率18.9%→29.7%)、PASOKが41→33(同10.6%→12.3%)に対して緊縮反対派の急進左派連合(SYRIZA)が52→71(同16.8%→26.9%)の変化。NDとSYRIZAが激しく競り合いながら議席数を伸ばした格好で、得票率の差は前回2.1%、今回2.8%と僅差で、得票率第1位の政党に50議席が上積みされる制度となっているので、それを除いたベースの議席数は79対71とまさに薄氷を踏むような緊縮派の辛勝でもあり、必ずしもギリシャ国民が緊縮政策を強く支持した訳ではなく、終盤に“ギリシャ存亡、ユーロ崩壊の危機”と煽られた危機意識からの投票もあった結果のようだ。更に、必ずしもギリシャのユーロ離脱の可能性が皆無になった訳ではなく、シティグループ証券は再選挙後もギリシャが18カ月以内にユーロ圏を離脱する確率を50~75%に据え置いた。IMF、ECB、欧州委員会がギリシャの財政再建・構造改革プログラムを四半期ごとに点検し「約束」が順守されていないと判断して9月か12月にも金融支援を打ち切る可能性が大きく、ユーロ離脱後にEU内で面倒をみる格好になると予測しているが、ギリシャの現状を考えるとその可能性は高そうだ。

・但し、いずれにしても臨界点に達しそうなほどの勢いだった“欧州危機”が大幅に和らぐことは間違いなく、当面の株式市場は戻り歩調を期待できそうだ。目先の焦点は18~19日のG20、19~20日の米FOMCに移るが、一旦は危機管理モードに入った状態での会合となることから引き締まった議論になり、マーケットに対してはプラスをもたらす実のある内容になるものと予想する。G20では今回の中心テーマは「欧州信用不安への対応」で、当面の問題を克服するためにIMF、EU、欧州委員会のいわゆるトロイカ体制がスクラム組んで支援することは勿論、米日を中心に主要国の中央銀行もバックアップする方向を打ち出すことになり、更には、中長期的な視点の議論で、債務過大国が財務内容の改善を実現するために世界経済成長を確固たるものにする“成長戦略”に関しても踏み込むものと予想される。米FOMCではQE3まで踏み込むかどうかはともかく、雇用情勢が芳しくないこともありFRBは“金融緩和の方向”を強調することになりそうだ。また、21日にユーロ圏財務相会合、22日にEU財務相会合と独仏伊西首脳会合も予定されている。欧州銀行の金融システム不安を緩和するために、7月にスタートする欧州安定メカニズム(ESM)や大幅に資金増強する欧州安定化基金(EFSF)から直接に銀行支援する体制を考察していることや、ユーロ体制を盤石なものにするために、今後はいよいよ、ユーロ共同債や財政統合など一歩踏み込んだ議論に入って行くものと予想される。簡単に結論が出る内容ではないだけに、マーケットの評価は難しいものになりそうだが、まだまだ紆余曲折はあるものの、確実に“解決の方向”を模索して進むことは間違いないだろう。

・一方、今回のG20に対してわが国の野田首相は自信を持って乗り込むことになりそうだ。最大の懸案事項であった「社会保障と税の一体改革」に関する修正協議をギリギリのところで取りまとめることが出来、三党合意に基づく“消費税引き上げ”を今国会最終日の21日までに決議可能な段取りを整えてG20に臨むこととなった。消費税引き上げのタイミングに関する是非論はともかく、世界的に国家債務問題に最も敏感になっているこの時期に日本の現状からして何も対応策を用意することなく国際会議のテーブルに着くことは不可能だったはずである。その点、消費税引き上げ決議を前提とすれば、充分に日本の存在感をアピールすることが出来るものと考える。更に、根本的な原発問題の議論は必要なものの、大飯原発再稼働を決定したことで電力不足が(大震災やタイ洪水の反動と復興需要が輸出減速をカバーしての)本格的な景気回復の腰を折ることを回避できることも一安心と言える。先週15日の日銀・金融政策決定会合後に白川総裁が景気認識をそれまでの「横ばい圏」から「持ち直しに向かう動きが明確になりつつある」へと上方修正したことを後押しすることにもなろう。欧州危機の重石が軽くなると同時に極端な円高が回避されるようになれば、足下での景気回復が明確になりつつあること、日銀がデフレ脱却の姿勢を改めて強調していること、中長期的には消費税引き上げを決定し財政赤字縮小への道筋を付けたこと、などを評価し日本に対する見直しがあっても不思議はないと考える。

・先週末の世界株市場は、米欧株式市場はギリシャ再選挙の結果が緊縮財政派の敗北に終わっても主要国の中央銀行が協調行動で危機回避となると想定し大幅上昇となったが、日本株市場はいつもパターンで様子見を決め込み15日の日経平均株価は前日比“43銭高”に終わった。しかし、ギリシャ再選挙の結果を受けて米欧株市場を追い駆けるように週明けの月曜日は高値が前日比“197.24円高”まであり終値は同“151.70円高”の「8721円2銭」と5月22日以来、ほぼ1カ月ぶりに8700円を突破した。為替が再び円高となったことで年初来高値から年初来安値への下落率は“19.11%”と先進国市場の中では圧倒的に下押していた。ちなみに、同じ下落率は欧州危機のお膝元のフランスが“17.92%”、ドイツが“16.60%”、そしてイギリスは“11.82%”、米国はNYダウが“8.87%”、NASDAQが“12.01%”と日本株は沈み込み過ぎだ。年初来高値に対する月曜日の水準は“85%水準”に止まっている。今回のユーロ危機の当事国であるドイツで87%、フランスでも86%の水準、NYダウは96%水準まで戻しNASDAQが93%水準、英FTSE、韓国総合も92%水準にまで戻している。為替が、対米ドルは75~76円台に上昇しそうな勢いで、対ユーロも95円を上回る円高があり得るとしていたほどの円高進行となりかけていたのが止まる気配となっている。当面は、12年度が急回復するにも拘わらず円高を嫌気して売られ過ぎている自動車、電機、精密を中心とするグローバル関連、世界恐慌までを意識して商品市況の急落を前提に業績好調にも拘わらず株価不調の総合商社、足下の海運市況の回復ぶりが著しい海運、国際比較でも充分に評価できる内容になったメガバンク株の見直しなどで、まずは年初来高値比92%水準の9400円超を目指す展開を予想する。

(中島)


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