マーケットレポート

マーケットの視点

欧州問題に対するドラギ発言が株価を刺激、今週は重要指標発表・イベント多く上下いずれもの波乱展開が予想される

・先週の欧米市場は一気に息を吹き返した。とりわけ、NYダウは週末にかけて3日連騰、26日“211.88ドル高”、27日“187.73ドル高”と2日間で“399.61ドル高”の急騰を演じ週末株価は「1万3075ドル66セント」と5月7日の「1万3008ドル53セント」以来の1万3000ドル台を回復した。欧州株市場も同様な動きで、急回復の背景は、ドラギECB総裁がロンドンの講演で「ユーロを守るためにECBはあらゆる手段をとる用意がある」と発言、ECBとして明言を避けてきた南欧国債の買い入れなどの実施で国債利回りの押し下げに踏み切る可能性を示唆したことだ。これを受けて7.78%の史上最高値まで上昇していたスペイン10年国債利回りは6.77%まで急低下、イタリア10年国債利回りも5.96%へ低下し1週間ぶりに6%を下回る水準となり、再燃していた欧州債務問題に対するECBの前向きな姿勢を評価することで欧米株市場は大幅な戻りとなった。先週1週間でNYダウは“1.97%上昇”、独DAXは“0.90%上昇”だが、スペインIBEX35は“5.94%上昇”、イタリアFTSE・MIBは“4.05%上昇”と急騰している。その一方で、週末にかけては盛り返したものの、日経平均株価は週間ベースでは“1.19%下落”、香港ハンセン“1.86%下落”、上海総合“1.84%下落”、印SENSEX“1.86%下落”と前半に欧州経済の停滞による影響が大きいことが株価の重石になったアジア株市場は総じて下落となった。日経平均株価と印SENSEXは3週連続の下落、上海総合に至っては6週連続の下落と厳しかった。

・27日にはオランド仏大統領とメルケル独首相が電話協議を行った後で共同声明を発表し、「ユーロ圏を守るためにあらゆることをする」とドラギ総裁の前向き発言を後押しした。更に、27日に発表された米国の12年4~6月期・実質GDP成長率が1.5%増と発表され、市場予想の平均1.2%増を上回ったことで米国景気に対する不安が幾分は和らいだこともあり、今週の欧米株市場は強含みに推移し、為替も対ユーロ、対米ドルとも若干は円高を修正する動きになる可能性が高まっている。しかし、米国の4~6月期・実質GDP成長率は市場予想を上回ったとはいえ、1~3月期の成長率2.0%増からは大幅ダウンしている上に米国の潜在成長率である2%台後半をも大きく下回っている。加えて、今週は米国で31日に「5月のS&Pケース・シラー住宅価格指数」、「7月のCB消費者信頼感指数」、1日に「6月のISM製造業景況感指数」、3日に「7月の雇用統計」、「7月のISM非製造業景況感指数」と重要指標の発表が集中する。7月31日~8月1日にかけて米FOMC、2日にECB理事会が開催される。米国経済は決して安泰という訳ではなく、各指標の発表への警戒心は強い。今回の米FOMCでは追加量的金融緩和策(QE3)に踏み切ることはないだろうし、ECB理事会ではドラギ総裁の前向き発言を実現するための南欧国債の買い入れなどの具体策が示されるかどうかが焦点となるが、不透明感は強い。バーナンキ議長からのQE3実施の実現性が高まる発言、ドラギ総裁から欧州債務問題に対して一歩踏み込む具体的な内容の発言があれば、世界株市場の上昇ムードを一気に高めることになるが、その逆であれば失望感が世界中に広がることになる。上下どちらにしても、波乱展開の1週間になる可能性が高そうだ。

・さて、日本企業の3月決算・第1四半期の発表は先週から本格化しているが、総じて予想外に厳しめの内容が多いという印象が強い。24日発表の日本電産は為替想定を期初80円/米ドル→今回78円/米ドルと修正、HDD出荷量を7億1000万台→6億6700万台と6%の下方修正した上で13.3期予想数字を据え置いた。収益環境が下振れする見通しの中で期初予想数字を据え置いた不況抵抗力は評価されるが、円高への修正はともかく「販売数量の下方修正」は思いがけなく厳しい展開となっている。12月決算の1~6月期の発表となったキヤノンは株価急落した。12.12期の営業利益を前回予想の4500億円、前期比19%増から今回3900億円、同3%増へと下方修正した。円高修正による部分が211億円のマイナスに対して販売数量の下方修正による影響を912億円としたことが大きい。欧州での景気後退で企業の投資抑制、経済削減によって複写機、プリンターの販売台数を下方修正したことが響き、デジタル一眼レフカメラが好調でもカバーし切れない。

・自動車の決算の口火を切った日産自の第1四半期は販売台数が121万台、前年同期比14.6%増と世界市場全体が同6.5%だったのに対しては好調そのものだったが、営業利益は1207億円、前期比20%減と297億円の減益となった。最大の減益要因は“販売費の増加764億円”である。但し、理由は明確で、前年同期が大震災の影響で広告宣伝をほぼストップし、なおかつ供給不足のためにインセンティブが極端に少なくなっていた。その反面、この第1四半期は正常化したことで広告宣伝費が143億円の増加、総じてインセンティブが増えたことに加え、米国市場でトヨタ「カムリ」を抜いて“年間ベストセラー車”になることを目指す新型「アルティマ」を今夏に投入するが、その前に旧型車を売り切るために多めのインセンティブを使ったためだ。旧型車は無事に売り切り、新型「アルティマ」の評判は高く、12年度中に10車種の新型車を投入することで世界販売に一層の拍車がかかることから通期の業績見通しを据え置いた。欧州販売は弱含みの見通しとしているが、他の地域で充分にカバー可能としている。想定意以上の円高、欧州市場の低迷があるものの、13.3期の業績見通しはむしろ増額含みという印象を受けた。

・今週は、既に下方修正の観測記事が出ている東京エレクトロンが30日、コマツが31日に決算発表をする。今や苦境御三家のパナソニックは31日、シャープ、ソニーは2日、自動車のホンダは31日、トヨタは3日に発表する。この7社の決算内容に特に注目したいが、7社以外でも今週から来週にかけて主要企業のほとんどが決算発表することになる。期初時点よりも足下が円高気味に推移していること、世界経済の減速感が強まっていることなど収益環境は悪化しているが、その中で下方修正となる企業と、抵抗力が高く業績維持が可能なところと、今回は大きく明暗が分かれる内容の決算発表となりそうなことから、注目度は高い。ただ、解説記事や見出しなどで必ずしも実態を反映しないものもあるので、その点は注意すべきであり、キヤノンのようなケースでショック売りは“買い”なのか、あるいは更なる下方修正があり得るのか、もう少し見守る必要がありそうだ。

(中島)


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