マーケットレポート

マーケットの視点

欧州不安の払拭、高まる米国『QE3』への期待、中国の大型景気対策で日本株市場が本格上昇に向かう条件は揃った

・欧米株市場は一気に活気付いた。先週、今週とビッグイベントが続くことになっているが、まずはマーケットにとってビッグ・プラスサプライズをもたらした。NYダウ、NASDAQ、S&P500、独DAXは6日に急騰して一気に年初来高値を更新、週末の7日も続伸して終わった。6日はNYダウが前日比“244.52ドル高”で「1万3292ドル」と5月1日「1万3279ドル32セント」、NASDAQが同“66.54ポイント高”で「3135.81ポイント」と3月26日「3122.57ポイント」、S&P500が同“28.68ポイント高”で「1432.12ポイント」と4月2日「1419.04ポイント」を、独DAXは同“202.64ポイント高”で「7167.33ポイント」と3月16日「7157.82ポイント」のそれぞれの年初来高値を一気に更新、NYダウ、S&P600、独DAXは今年3番目の、NASDAQは5番目の上昇幅を記録した。7日も続伸しNYダウは「1万3306ドル64セント」と07年12月28日「1万3365ドル87セント」以来の1万3300ドル台、S&P500は「1437.92ポイント」と08年1月3日「1447.16ポイント」以来、4年8カ月ぶりの高値水準、NASDAQに至っては7日「3136.42ポイント」は2000年11月15日「3165.49ポイント」以来、実に11年10カ月ぶりの高値水準という記録だ。

・6日に開催されたECB理事会で新たな「国債買い入れプログラム(OMT)」を実施することで合意したことが最大要因。内容は、流通市場で償還期間が1~3年の国債を中心に一定条件の下で無制限に買い入れるとするもので、これで南欧の重債務国のデフォルト懸念は取り除かれユーロ体制が維持される確証が高まったことで、欧州信用不安の暗雲が一気に晴れることになりそうだ。国債を無制限に購入するための条件として、購入を望む当該国がEFSF/ESMに正式申請し支援を受けるために必要な財政・構造改革を実行する条件を受け入れることとする。また、OMTで購入した債券に関しては週次単位で合計額、国別、平均年限を公表し透明性を高めるとしている。これに対しラガルドIMF専務理事は「ECBの措置はユーロ圏の安定と成長を強化する上で重要な一歩となる。IMFには我々の枠組みの中で協力する用意がある」と、OMTを後押しする内容の声明を発表している。具体的に買い入れを実行するためには、12日に独連邦憲法裁判所がESMの合憲性判決を下した後となるが、ほぼ3年に亘ってマーケットの重石となり続けている欧州不安が大きく緩和されることの意味は大きい。また、ユーロ安にも歯止めがかかり、一部には105~110円/ユーロ程度まで円高が是正されるのではという観測もある。

・更に、6日に発表された「8月のISM非製造業景況感指数」が“53.7”と7月の52.6から上昇、市場予想の52.5をも上回って2カ月連続の上昇となり5月の水準に並んだ。内訳では雇用が53.8と7月の49.3から再び50台を回復し4月以来の高水準となっており、この時点で米国経済指標の好転がECB理事会の大英断と相俟った格好となったことが欧米株市場の急騰に結び付いた。そして、いよいよ7日には「8月の米雇用統計」の発表となったが、こちらはビッグ・マイナスサプライズ、非農業部門雇用者数が前月比9万6000人増に止まり、市場予想の12万5000人増を下回り、同時に6、7月分の同雇用者数の伸びも4万1000人下方修正され、改めて米国の雇用市場の脆弱さを再認識するところとなった。また、失業率は8.1%と7月の8.3%から改善した格好となっているが、これは職探しをやめた人が急増したことのためということで、決して良い傾向ではない。ただ、バーナンキFRB議長は既に8月31日のジャクソンホールでの講演で米雇用情勢の厳しさを憂い「深刻な事態」と表現していたこともあり、FRBにとっては驚きのないことだ。そして、今回の雇用統計が厳しかったことはマーケットにとっては幸いなことだ。

・すなわち、“待望”の『QE3(量的金融緩和策第三弾)』実施への望みを繋いだことになるからだ。今回の結果に対する評価として「QE3を正当化するほど悪くはないが、QE3の可能性がなくなるほど良くもない」という評価が的を射ていそうだ。すなわち、これで即、QE3実施に踏み切ることを決断するかどうかはともかく、少なくともFRBは本気でQE3を検討することになりそうだ。ロイターが行ったアンケート調査によると、12~13日のFOMCでQE3の実施に踏み切る確率は、8月24日にエコノミスト61人に行った調査では予想中央値で45%だったのが7日に59人に行った結果では60%に急上昇している。59人のうち49人が今度のFOMCで異例の超低金利水準を維持する期間を14年度終盤までとしていることから、更に延長されると予想している。今週12~13日に開催されるFOMCは要注目だ。

・先週の日経平均株価は5日まで5営業日続落の後、6日に下げ止まり、週末7日は欧米株市場、中国株市場の急騰を受けて“191.08円高”の「8871円65銭」と高値引けで終えた。今週は、先週末の欧米株市場の連騰とユーロ安の歯止めを受けて、基本的には強含みの展開となりそうだが、米国の『QE3』実施への期待感が高まったことによって対ドルで円高が進みそうなこととの綱引きともなり、また、12~13日の米FOMC、12日の独連邦憲法裁判所の判決結果待ち、同日のオランダ総選挙の動向次第、など、週半ばまでは様子見展開ともなりそうだ。

・しかし、欧米株好調に付いて行けなかった原因の一つには中国経済への不安、中国株市場の停滞があったが、これに対し、中国政府が7日までに景気対策として総額1兆元(12兆4000億円)規模の公共投資を認可したと伝えられている。これを好感し7日に上海総合指数は前日比“75.844ポイント高”、香港ハンセン指数は“592.86ポイント高”と各々、1月17日の“92.183ポイント高”、“615.55ポイント高”以来の上昇幅を記録した。低迷が続いていた中国株市場がこれで底入れとなるようであれば、日本株市場にとっても大きな支援材料になる。中国の公共投資実施への期待が高まれば、具体的に、中国内の供給過剰を背景とする市況急落で喘ぐ鉄鋼メーカーにとっては大きなプラスであり、中国市場の低迷で大幅下方修正したばかりの建機メーカーにとって恩恵も大きい。いずれにしても、欧州関連のイメージが強い精密のキヤノンやニコン、そしてソニー、中国関連としての建機、機械、海運、総合商社、更に、円高に歯止めがかかる方向性が見えれば販売急回復・業績V字回復でも株価が重い自動車、など、株価が大きく反転することが期待される業種、企業は多いだけに、今週以降は力強い株価回復となっても不思議はないはずだ。

(中島)

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