マーケットレポート

マーケットの視点

米FOMCで『QE3』実施を決定、欧州不安の霧も晴れ渡り、世界株市場は“リスク・オン”、出遅れ日本株の出番か

・世界的に金融市場はリスク・オンに向かって動き始めた。その背景は先週以降に予定されていた欧米のビッグイベントが全てマーケットの望む最高の形の結論を出したためである。米国3市場は先週11~14日まで4連騰、NYダウは4日連続で年初来高値を更新し続け14日終値は「1万3593ドル37セント」と07年11月6日の「1万3660ドル94セント」以来の高値水準であり、史上最高値の07年10月9日「1万4164ドル53セント」に対してあと“571.16ドル”まで迫っている。NASDAQ、S&P500も13、14日と年初来高値を更新、NASDAQの14日終値「3183.95ポイント」は2000年11月9日「3200.35ポイント」以来の高値水準、S&P500の14日終値「1465.77ポイント」は07年12月31日「1468.36ポイント」以来の高値水準。欧州株市場でも、独DAXは11、12、14日と年初来高値を更新、英FTSE100の14日終値「5915.55ポイント」は3月16日の年初来高値「5965.58」、仏CAC40の14日終値「3581.58ポイント」も3月16日の年初来高値「3594.83ポイント」を今週にも更新しそうだ。一方、先週の日経平均株価も12日以降は3連騰、週末の14日終値は「9159円39銭」と8月29日「9069円81銭」以来の9000円台を回復して終えたが、年初来高値である3月27日「1万255円15銭」に対しては依然として89.3%の水準、“1095.76円”も低い水準に止まっている。

・まず、12日に独連邦憲法裁判所が欧州安定メカニズム(ESM)の合憲性の判断に関して「憲法裁判所は危機対策の有効性を検証する場ではなく、ESM設立は憲法違反にはあたらない。但し、危機が拡大してESMに資金を追加投入する場合は議会の承認が必要」との判定を下しESMは合憲であることを認めた。これを受けて重債務国に対する融資や国債買い取りのための支援資金7000億ユーロが確保されることになった。ドイツはこのうち約3割を負担することとなっているが、ガワク独連邦大統領が法案に既に署名しこの後15日以内に資金拠出されることになっており、ユーロ圏財務相会合のユンケル議長(ルクセンブルク首相)が10月8日にESMの設立総会を開くことを提案した。これで、9月6日に欧州中央銀行(ECB)が決定した南欧諸国の国債の無制限買い取りと合わせ、欧州債務問題の解決に向けた道筋が明確なものになってきた。

・また、同じく12日に欧州委員会(EUの執行機関)がユーロ圏内の銀行の監督をECBに集約する一元化案を発表した。具体的には、13年1月に公的資金注入を受けている銀行を対象に一元化を開始し、同年7月に主要行まで、14年1月にユーロ圏全銀行6000行まで対象を拡大する内容だ。このことも、金融機関の破綻懸念による欧州信用不安を払拭することに対して大きな効果を発揮する施策となる。欧州では矢継ぎ早に欧州不安を封じ込める決断がなされており、ユーロ安も大きく反転している。更に、結果次第ではユーロ体制維持への不安が募ることになりかねなかったオランダ総選挙(下院選、定数150)の投開票が12日に実施され、結果はEU脱退を掲げた自由党が改選前24議席から15議席と大きく後退、その一方で財政緊縮派である与党第1党の自由民主党が31議席から41議席、EUに協調しつつの成長戦略重視を唱える労働党も30議席から39議席と伸ばし“親EU”派の2党を中心とする安定連立政権が誕生することになりそうだ。欧州では社会不安、生活不安に乗じて反EU、反ユーロの動きが台頭しつつあるが、今回の選挙はその動きを抑える結果となっている。

・そして、12~13日の米連邦公開市場委員会(FOMC)終了後の記者会見で、バーナンキFRB議長は委員12人中11人が賛成したとして『QE3』(量的金融緩和策第3弾)の実施を発表した。具体的には、住宅ローン担保証券(MBS)を月間400億ドルのペースで無制限に追加購入、超低金利の据え置き期間を従来の「14年終盤まで」から「少なくとも15年半ばまで」とした。『QE3』実施に関しては景気回復効果が本当に期待できるのかという疑問の声も多い。しかし、バーナンキ議長は、今回の『QE3』実施は雇用回復を最大のターゲットにしている。その流れは「MBSの無制限購入と超低金利継続によって住宅市場の回復が促され、同時に株高が実現することも相俟って消費が回復すれば、企業業績も上昇し、雇用拡大が実現することになる」としている。『QE3』は08年末~10年3月のQE、10年11月~11年6月までのQE2に続くもので、FRBの金融資産購入額はQEで1兆7000億ドル、QE2で6000億ドルと既に2兆3000億ドルに達し、『QE3』は少なくとも失業率が7%程度に改善するまで継続される見通しだが、今回の決定を基にFRBは失業率の14年末見通しを6月時点の「7.0~7.7%」から今回「6.7~7.3%」に改善すると示しており、14年まで購入が続くとすれば更に1兆ドル程度のMBS購入が追加で実施されることになる。また、QE3実施、超低金利策継続が奏効することで米国の実質GDP成長率に関して、12年は6月時点の「1.9~2.4%」→今回「1.7~2.0%」へと下方修正した反面、13年を「2.2~2.8%」→「2.5~3.0%」、14年を「3.0~3.5%」→「3.0~3.8」へと上方修正しており、米国の経済成長率は13、14年にかけて回復度を強めて行くとしている。

・欧州不安の解消、米国の『QE3』実施による過剰流動性資金の供給増加で、世界の金融市場は株式市場を中心に当面は強基調で推移することになろう。ただ、米国の『QE3』実施は通常はドル安を招くことから先週の為替相場は一旦、77円/米ドルまで対米ドル円高が進んだものの、今回の『QE3』には米国債が含まれていないことが一定の歯止めになっていることと、安住財務相の“市場介入発言”もあり極端な円高には進み難いものと考えられる。また、18~19日開催の日銀金融政策決定会合での前向きな決定に期待したいところだ。米国株市場はこれまで『QE3』実施を織り込むような上昇トレンドを続けてきたことに加えて、トムソン・ロイターの調査によると米国企業業績はS&P500社ベースで12年7~9月期の純利益が前年同期比2%減と3年ぶりの減益になる見通しだ。従って、出遅れ感の強い日本株市場への資金流入が高まる公算が大きいと予想されることから、暫くは強気のスタンスで臨みたい。

・ただ、気掛かりなのは、中国内90都市、更に米国ワシントン、NYにまで広がりを見せている中国の「反日デモ」と、燎原の火のごとく世界各地のイスラム圏諸国に一気に広がっている「反米デモ」、そしてこの騒然とした情勢の中で民主党代表選が21日、自民党総裁選が26日に行われることだ。「反日デモ」はパナソニック、キヤノンの工場、セブン&アイ、イオンの商業施設などの破壊行動が伝えられており、好調が続いている中国での日本車販売にも影響しかねない。「反米デモ」は米大統領選直前ということもあり、世界の安全保障に影響が出ないかが心配だ。代表選・総裁選は結果を見守るしかないが、今回はどうなってもあまり良い方向に向かうことは期待し難い。このような不穏な状況が投資家心理にどのような影響を与えるか予想は難しいものの、マーケットを大きく揺さぶるような危機的状態にまで発展するとも考え難い。

(中島)

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