マーケットレポート

マーケットの視点

世銀の中国成長率引き下げで悲観色募り、今週はIMF・世銀の東京総会の成り行きと米国企業の決算発表に注目が集まろう

・5日に発表された米国の「9月の雇用統計」はあたかも米大統領選でオバマ大統領を支援するような発表内容となったが、これに対しジャック・ウェルチ元GE会長のツイッター発信が物議を醸している。「9月の雇用統計」は失業率が市場予想では8月の8.1%から悪化して8.2%になるとされていたのが“7.8%”と09年1月以来、3年8カ月ぶりに7%台に低下、非農業部門雇用者数は市場予想の12万人増に対して“11万4000人”と発表されたが、7月を14万1000人から18万1000人、8月を9万6000人増から14万2000人増へと、2か月分で8万6000人もの大幅上方修正を行った。結果的に雇用者数の増加は3カ月連続で10万人を超えたが、米国で失業率が改善するためには雇用者数が15万人以上の増加が必要とされているにも拘わらず、失業率が急に大幅改善したことからジャック・ウェルチ氏の発言となった経緯がある。反オバマ政権の急先鋒である同氏の発言は「雇用統計は信じられない数字だ。シカゴの連中は何でもやるものだな。討論会に勝てないと、今度は数字を変えてくる」という内容だ。

・現在の失業率は、大統領選直前としては過去最悪の水準であり、歴代大統領で再選に失敗したフォード、カーター、ブッシュ(父)の各大統領は選挙時点の失業率がいずれも7%を超える水準で、過去に7%超で再選を果たした例外は1984年のレーガン大統領の7.4%だけで、「失業率7%の壁」を崩すのは難しいとされている。アイオワ大学の電子市場の「大統領選の予想先物市場」によると、5日時点でオバマ大統領の当選確率は67%とロムニー候補の33%を圧倒しているが、3日のTV討論会の前はロムニー候補の失言によって9月末時点で81%対19%だったのが、TV討論会でオバマ大統領が劣勢に回ったことで一気に14ポイントも低下している。また、ロイター通信と調査会社イプソスによる世論調査では両者の支持率の差が3日6ポイント→4日5ポイント→5日2ポイントと5日でのオバマ大統領46%に対してロムニー候補44%にまで接近、討論会を視聴した91%の人のうちの51%がロムニー候補に軍配を上げたと言う。今後の世論調査の結果を更に見てみなければ何とも言えないが、11月6日の大統領選までに発表される数々の経済指標、特に投票の4日前の11月2日に「10月の雇用統計」が発表されるだけに予断は許されない。なお、雇用者数の増加はパートタイマーが主体という指摘もあって雇用増加の質は良くないとの指摘もある。

・NYダウは、1日発表の「9月のISM製造業景況感指数」が“51.5”と4カ月ぶりに50を上回り、3日に発表された「9月のISM非製造業景況感指数」が“55.1”と市場予想の53.1、8月の53.7を上回って3月以来の高水準となっていたことに「9月の雇用統計」の改善が加わったことで、5日まで3連騰し3日間で“127.79ドル上昇”の「1万3610ドル15セント」と07年12月10日の「1万3727ドル03セント」以来の高値水準で終えた。為替も再び78円/米ドル台へと円安気味に推移したことから、4日の日経平均株価は5営業日ぶりの上昇に転じ、週末の5日も連騰して終えた。しかし、8日に世界銀行が東アジア・太平洋地域(EAP)の途上国の12年のGDP成長率を7.6%→7.2%へと下方修正、中でも中国を12年8.2%増→7.7%増、13年8.6%増→8.1%増へと引き下げた。これは、5月23日にEAP全体を12年7.8%増→7.6%増、中国を8.4%増→8.2%増に引き下げて以来の連続の下方修正となった。中国は11年9.3%増からの大幅減速となり「12年の景気減速は著しく、更なる悪化の懸念もある」と指摘されている。これを受けて、週明けのアジア株市場は軒並み反落、急落に転じ、欧米株市場も下落している。世界株市場は世界銀行の景気見通しの下方修正、とりわけ中国経済の大幅減速が引き金となって世界経済を冷え込ませることに敏感に反応している。

・今週は、9日から14日までの予定で48年ぶりに東京でIMF・世銀の年次総会が開催される。同時にG7も開催されるなど世界中の金融担当首脳陣が東京に集結することから、金融、経済関連の国際的なイベントも多く行われる予定となっている。IMFの世界経済見通しも下方修正となることが予想され、世界の現状認識は『世界経済の危機』に大きく傾いているだけに、東京発信で何らかの打開策が打ち出されることを期待したい。ただ、新華社通信などによると、謝旭人・財政相と周小川・中国人民銀行総裁は年次総会に出席するものの、尖閣諸島問題の影響で肝心の中国側から中国工商銀行、中国銀行、中国建設銀行、中国農業銀行など大手国有銀行が、日本の金融機関などが開く関連行事を欠席し、訪日を見送ると報道されており、そのことは残念なことである。ラガルドIMF専務理事が「今の世界はまるでジグソーパズルのようだ。完成図は予想がつくが全部のピースが納まり切らない」と表現しているように、欧州地域を最大の懸念材料に難問山積の中での東京開催となるだけに、今回の成り行きは非常に重要だ。世銀・IMFの本来的な使命は途上国支援でもあるだけに、今回の東京総会では途上国中心に40カ国ほどの財務相・中銀総裁を対象とした日本の産業界視察ツアーへの参加で日本の技術力や高度なノウハウをアピールする企画も数多く用意されているようだ。このところのIMFは日本や中国を中心とする新興国からの出資拡大を基としての欧州支援がメインになっている流れとなっており、IMFの在り方自体が問われている状況の中での東京総会だけに注目度は高い。

・また、今週以降は米国企業の12年7~9月期決算が本格化する。9日発表のアルコアを皮切りに12日にJPモルガン・チェース、グーグル、15日にシティーグループ、16日にインテル、ゴールドマン・サックス、コカ・コーラ、17日にバンク・オブ・アメリカ、18日にマイクロソフト、AMD、19日にマクドナルド、GE、15日の週にIBM、ヤフー、もるがん・スタンレーなどと続く。トムソン・ロイター社調べによるとS&P500ベースの10月51日時点の7~9月期の純利益は前年同期比2%減と4~6月期の同8%増からは大幅に減速、09年7~9月期以来、3年ぶりの減益になる見通しだと言う。業種別には、中国依存度の高い「素材」が同24%減、原油価格の下落で「エネルギー」が同19%減と厳しく、更には半導体のインテル、AMD、金融大手の決算内容が最大の注目の的になりそうだ。

・また、わが国の3月決算企業の第2四半期(7~9月期)決算発表は19日までに15社ほど行われるが、本格的には22日の週から始まる。主要企業では、23日に花王、24日に日本電産、日本電気硝子、ヤフー、任天堂、KDDI、25日に信越化学工業、日立建機、アドバンテスト、日野自動車、29日にホンダ、11月1日にソニー、ニコン、6日に日産自動車などとなっている。ちなみに、10月1日時点における日経予想ベースの金融・電力を除く東証一部・3月決算会社1563社の13.3期予想の経常増益率は14.3%、純利益増益率は42.5%となっているが、日経観測記事などで下方修正が優位になっていること、みずほフィナンシャルグループ1737億円、ダイキン工業198億円、神戸製鋼160億円、日本郵船100億円など、株価低迷で多額の有価証券評価損を計上する企業も多くなってきていることなどで、今度の決算発表は悲観ムードが強いものになりそうだ。しかし、1563社のうち1047社が増益、57社が黒字転換の予想。この中には下方修正で一転、減益となる企業も出てきそうだが、それでも多くの企業が増益を堅持し、なおかつ過去最高業績を更新する企業も多い。悲観一色に片寄らずに、冷静に注目企業を探していきたいところである。

(中島)

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