マーケットレポート

マーケットの視点

円安一服もあり当面の日本株市場は不安定な膠着状態が続きそうだが、仕切り直しでの銘柄選択を考える機会と捉えたい

・5月後半にかけて、世界株市場は負の連鎖で急落、世界全体の株価指数の平均を表す「MSCI世界株指数」は5月に3カ月ぶりの下落に転じたという。5月通じてブラジル、豪州、ロシアなど資源国の株価指数が軟調だったことに加えて、前半は好調だった日本、欧米の株価指数が軒並み急落に転じたためだ。欧米株市場はNYダウが7カ月連続上昇を保つなど5月もかろうじてプラスを維持したが、日経平均株価は12年8月以来、9カ月連続上昇という記録を続けていたのが、5月は月間ベースで“86.32円安、0.62%下落”とわずかではあるが10カ月振りの下落に転じた。結果的には23日“1143.28円安”、27日“469.80円安”、30日“737.43円安”と、この3日間合計での“2350.51円安”が響き、31日が戻し切れなかったためだ。先週末にNYダウが前日比“208.96ドル安”の大幅安、更には為替が100円/米ドル台スレスレまで円高気味に振れたこともあって、週明け3日の日経平均株価は再び急落、先週末比“512.72円安”と安値引けとなり「1万3261円82銭」は4月18日「1万3220円07銭」以来に水準まで逆戻りしてしまった。

・根底にあるのは、22日のバーナンキFRB議長の議会証言での「緩和策早期縮小」発言をきっかけとする米国の『QE3』(量的金融緩和策)の方向転換で、“金融相場”から流れが変わることへの認識の高まりである。実は22日の日中に開催されたみずほフィナンシャルグループの決算説明会で佐藤社長が「外債投資を増やすか」と言う質問に対して「米国の銀行はバランスシートを大きくするなという方向に向かいつつあり、FEDは既に明らかに変わっており13年内には脱QE3に向かうはずなので外債保有はリスクが大きい」と答えていた。すなわち、バーナンキ発言に拘わらず、米国が早期に緩和縮小に向かうということは既定路線として捉えられていたようだ。更に、その一方で、わが国の長期金利が、日銀が異次元緩和策を打ち出した直後に乱高下しその後は0.6%前後で落ち着いていたのが、5月中旬以降に再び1%近い水準にまで跳ね上がっている。その結果として、為替の円安進展にブレーキが掛かった格好となっており、加えて住宅ローン金利の引き上げに踏み切るなど、実体経済への懸念も浮上している。

・当面の焦点は米国の経済指標。まずは、3日に発表された「5月のISM製造業景気指数」が“49.0”と市場予想の50.7を大きく下回って6カ月ぶりの50割れとなり、09年6月以来、4年ぶりの低水準に悪化した。新規受注が4月の52.3から48.8へと急落、輸出が54.0から51.0、生産も53.5から48.6へと悪化しており、先行きへの不安を募らせる結果となっている。これを受けて一気にドル安が進み99円/米ドル台と5月9日以来の100円/米ドルを突破する円高となっている。また、ユーロ17カ国の失業率の悪化傾向が続き4月が前月比0.1ポイント悪化の12.2%まで上昇し危機感が高まっており、失業率が高止まることで欧州の景気回復が相当に遅れるとのニュースも伝わっている。日本株市場の急騰の最大の背景であったとも言える『円安』に対して歯止めが掛かっていることが当面は重石になりそうだ。今週は7日に発表される米国の「5月の雇用統計」に対して最大の注目が集まる。非農業部門雇用者数は前月比“16万4000人”と4月16万5000人と同程度、失業率も7.5%の横ばい予想となっている。これよりも良好であれば、いよいよ“緩和策縮小”への傾きが大きくなり世界株市場の停滞に拍車をかけることになりかねない。これより悪化すれば、緩和策継続への期待に繋がる一方でドル安・円高が進みかねない。どっちにしても日本株市場にとっては、目先、不安定な膠着状態に陥る要因となりそうだ。

・5月の1カ月間でほとんどの銘柄の株価水準は“行って来い”になってしまった。但し、円安が一服していると言っても13年度の企業の為替想定90、95円/米ドルに対しては依然として“円安の水準”であり、13年度業績が大幅増益かつ増額修正期待の方向性は変わらない。米国が緩和策縮小の方向に向いているとしても、それは米国経済が順調な回復トレンドを辿ることが大前提であり、結果的には世界経済には大きなプラスとなるはずである。日本経済に対する成長戦略の実行はまだ始まっておらず、これからである。今回は異常なほどの上昇ピッチだっただけに、調整下落も衝撃的な印象が強い。しかし、日本株市場の長期上昇トレンドの方向性は不変、仕切り直しでの銘柄選択の機会を与えられた試練と捉えたい。

(中島)

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