マーケットレポート

マーケットの視点

米欧株市場は引き続き好調な推移、再び円安気味ともなり決算も好調な内容が多く日本株市場は先高観が強いと予想する

・日経平均株価は、土日を挟んだ26、29日の2日間で“901.80円”の急落となり、30、31日は一進一退で31日終値は「1万3668円32銭」。98円/米ドル前後の円高気味の推移、30~31日開催の米FOMCの結果待ち、31日発表の米ADP社が発表する「7月の全米雇用報告」を控えて低調だった。今回のFOMC後には、バーナンキFRB議長の記者会見はなく声明文の発表のみで、その内容は「米政府の財政引き締めがなお米国経済の足枷となっており、月額850億ドルの資産買い入れを継続、米経済は回復を続けているものの引き続き下支えが必要」という玉虫色だったことから、米国が“ゴルディロックス”(熱過ぎず冷め過ぎず)のほど良い状態にあることが改めて確認されたことをマーケットは好感し、NYダウ、S&P500は8月1、2日と再び史上最高値を更新、NASDAQは2日まで4連騰し00年9月28日以来の株価水準まで上昇、欧州株市場も仏CAC40が2日まで6連騰、英FTSE100、独DAXが1日まで4連騰、独DAXは1日に“134.76ポイント高”と急騰し「8410.73ポイント」と5月22日の史上最高値「8530.89ポイント」までに、あと“120.16ポイント”と迫った。

・97円/米ドル台に入っていた為替も先週末にかけて99円/米ドル台の円安気味に反転、13年4~6月期決算は自動車、鉄鋼、海運、商社、メガバンクなど軒並み好結果の発表が目立ち、日経平均株価は1日に“337.45円高”、2日に“460.39円高”と一転して急速に値を戻し、先週末は「1万4466円16銭」と前週末比“336.18円高”と2週間ぶりの上昇となり、しかもその晩に米国の「7月の雇用統計」の発表を控えていながら、高値引けで終える力強い展開となった。2日に発表された米雇用統計は7月の非農業部門雇用者の前月比増加数が「16.2万人」と市場予想の18万人前後を下回り、同時に6月19.5万人→18.8万人、5月19.5万人→17.6万人に下方修正。失業率の大幅改善に必要とされている“20万人以上”に近付いていた水準から少し遠のいたことで、9月のFOMCにでも踏み切るとみられていた“QE3の縮小”観測が後退した。先週末の米株市場が堅調な推移となったこともあり、円安気味が続いて決算好調を評価すれば、今週の日本株市場は先高感が強いはずだ。

・4日の日経新聞朝刊によると、13年4~6月期決算は、2日までに金融・電力・新興企業を除きほぼ半分の668社が発表、全産業で「9.2%増収、41.6%経常増益」、経常増益率は製造業が「53.3%増」、非製造業が「26.2%増」と製造業の急伸ぶりが目立つが、非製造業も二桁増益と好調だ。電機、鉄鋼、海運の主要企業などが軒並み大幅黒字転換を達成、大幅増益の自動車を含め各社揃って円安効果や予想以上の販売増を主要因に4~6月期は計画以上の結果としているが、慎重姿勢は変わらずに通期予想を4~6月期の上振れ分の上方修正に留めるか、据え置く企業がほとんどだ。先週指摘した通り、先々週発表したキヤノン、信越化学、日産自動車の決算でみられた“パソコン、デジカメ、中国・欧州”の三大不安要因が業績への大きな足枷となっているのは、一部企業でしかないことは明白である。逆に今回の業績大幅好転の要因として『円安効果、北米好調、内需好調、スマホ急拡大、構造改革効果』などが収益を大きく押し上げている。第1Q決算が好調だったにも拘わらず、いつものようにほとんどの企業は公表計画を据え置いており、先行き増額修正への期待は高い。

13年4~6月期決算は自動車を中心に総じて好調、海運、総合商社、メガバンクなど通期は強含みで株価出遅れが目立つ

・海運は、市況面で厳しい局面が続くとしながらも運賃値上げが着実に浸透、足下の円安効果を享受しているとして日本郵船、川崎汽船は早くも通期見通しを増額修正したが、下期の為替見通しを2社とも95円/米ドルに据え置いたままだ。商船三井は下期の為替見通しを95円/米ドルから98円/米ドルに修正し、第1Qの経常利益169億円を据え置いた。上期の経常利益の会社予想250億円に対して68%、通期予想600億円に対しても28%の進捗率であり、今後、3社とも増額修正は間違いないものと考えられ、決算説明会での慎重な説明内容は現在の収益環境から判断すれば納得出来ない。3社とも12.3期に大幅赤字、商船三井は13.3期も赤字継続し構造改革による巨額最終赤字(1785億円)を計上したことの後遺症から抜け出せないでいるためだが、収益状況は確実に大きく好転している。総合商社は、資源・エネルギーのウエイトが大きくない伊藤忠、丸紅の好決算に加えて、同分野のウエイトの高い三菱商事、三井物産も業績好調だ。三菱商事の13年4~6月期の純利益は1157億円、前年同期比15%増と、据え置いた通期計画4000億円に対して29%の進捗率、三井物産は1258億円、同20%増と三菱商事を上回り、やはり据え置いた通期計画3700億円に対しては既に34%もの進捗率に達している。三菱商事は11.3期4632億円、三井物産は12.3期4345億円という過去最高益の更新が期待される。海運、総合商社の両業界の共通項は“資源・エネルギー”であり、今回、業績浮揚感が強まって来た割には株価出遅れが目立っている。

・メガバンク3社は、これまで収益を支えてきた市場部門の国債売買益が異次元緩和策によって先行き不安視される中での好結果を発表している。13年4~6月期の純利益は、三井住友FGが2883億円、前年同期比144%増、三菱UFJ・FGが2552億円1、同39%増、みずほFGが2479億円、同34%増の実績で軒並み大幅増益。国債売買益の急落等で業務純益は減益だが、株価急上昇で株式の減損処理が大幅減少、証券分野の収益が大幅増益、海外部門の好調などが背景。みずほFGは今期から法人税を納付することに伴う会計上の利益計上400億円があるものの、各々の通期計画5800億円、前期比27%減、7600億円、同10%、5000億円、同10%減に対する進捗率は50%、34%、50%の水準であり、減益計画が一転して増益となる公算が大きい。更に、来期以降に国内の貸出増加や金利上昇に伴う利鞘拡大、更なる海外収益の拡大によって本業面の収益が本格上昇に向かうことで、一層、業績浮上し最高益更新の可能性が高まる。そうなれば、3社とも06年当時の株価水準を意識することになるが、現在はこの水準からは相当に低位な水準にあり、やはり出遅れ感が圧倒的に強い。

・電機大手では、ソニー、パナソニック、シャープに関して、それぞれ依然として課題は残ってはいるものの、3社とも最悪期は脱したものと考えられる。ソニーはスマホ好調、高付加価値製品も寄与しTV事業が黒字化達成、年末商戦に向けての「PS4」の投入効果、パナソニックは太陽電池やリチウムイオン電池が大幅増、自動車関連の好調などが収益急回復を牽引、シャープは液晶パネルのOEM供給が軌道化、独自の「IGZOパネル」搭載機器の好調などで業績回復継続への自信を深めている。3社とも抜本的な構造改革で固定費が大幅に圧縮されており、今後、販売増加による収益拡大インパクトは大きく、依然として多い先行きを不安視する見方を一掃する可能性は高い。

・トヨタの決算は最も安心感を抱かせる内容だった。13年4~6月期の営業利益は6634億円、前年同期比88%増、税引前利益は7242億円、同74%増、純利益は5622億円、同94%増の結果で、通期計画を営業利益・税引前利益を1400億円、純利益を1100億円の増額修正を行ったが、新計画に対する進捗率は各々37%、36%、38%、しかも第2Q以降の為替見通しを90円/米ドル、120円/ユーロと据え置いたままで、まさに余裕の好決算。第1Qの売上高営業利益率は“10.6%”と、自動車業界の中では高収益の目安とされる10%を超えている。通期計画ベースは8.1%であり、今後も固定費抑制、更なるコスト低減を継続することから、第2Q以降、どれほどの増額修正となるか非常に楽しみな状況にある。今回、公表計画を営業利益1兆9400億円、前期比47%増、税引前利益2兆300億円、同45%増、純利益1兆4800億円、同54%増としたが、過去最高益である08.3期の2兆2704億円、税引利益2兆4372億円、純利益1兆7129億円はもはや充分に射程圏となっている。今回のトヨタの決算で注目すべきは、国内の販売台数を10万台、生産台数を5万台、上方修正したことだ。今回のトヨタの国内販売・生産台数が上方修正されたという流れが日本にとって大きなトレンドとなり、安倍政権が目標とする日本経済再生が実現に向かう方向性が見えて来ると言えよう。

・ところで、業績発表によって株価変動する要因として「市場予想に対して未達、上回る」とうことが頻繁に起こっている。米国のS&P500対象企業の四半期決算発表ではほぼ毎回、市場予想を70%前後の企業が上回っている。米国企業は日本と違って予想数字を公表しない。すなわち、米国では、四半期単位でのアナリスト予想に対する会社側の実績値がどうであったかを表現しているが、日本の場合はアナリストの通期見通しに対して会社側の新しい公表計画がどうであったかで議論している。会社が予想数字を発表するパターンは色々ある。先週この場で取り上げたキヤノンのようにバタバタと予想数字を変える企業もあるが、どちらかと言えば上期が終わった時点や第3Qが終わった時点で通期見通しを変えて来る企業が多い。また、環境が好転していても、今回のトヨタのように多くの企業は慎重な前提条件を変えないままにある場合が多い。それに対して、アナリストはプラス要素を重ねて会社予想を上回るアナリスト予想を見立てていることから、“市場予想に対して会社公表が未達”という結果はごく自然な形で起こる。しかし、そのことを理由に売られるというのは、多くの場合は正しい姿とは言えないのではと考える。ましてや、“アナリスト予想”というものが、どれほど精緻なものか、信頼できるものか、はっきり言って疑問は大きい。会社予想を上回るか下回るか、それがどの程度か、のような“雰囲気、強弱を含めた方向性”くらいは当てることは可能かもしれないが、数値を正確に当てることはほとんど不可能に近いと考える。現在のようにグループ全体を考慮する必要のある「連結決算」であればなおのこと、収益構造や収益メカニズムを理解することは、その会社の内部の人間でなければ不可能だ。なおかつ、環境条件が変動することによって、会社側自身が正確に1年後の結果を予想することは、至難の業だ。そのような状況の中で「市場予想…云々」に関しては、もう少し合理的な解決方法を追求するべきだと考える。

・日本電産の永守社長は、毎回のように決算説明会の場で(例えて言えば)「枝ばっかり見ていると木全体、森全体の見方を間違える。日本電産という会社への評価を間違えるぞ」と声高に指摘してくれる。最近起こったことで「楽天と三菱UFJモルガン・スタンレー証券のアナリストレポート事件」がある。楽天が同証券の自社担当アナリストのレポートに対して内容は間違いで、しかも希薄なため投資家は参考にしてはいけない、同アナリストとは面談しないとのプレスリリースを発表した。楽天の山田CFOは今回の決算説明会で「まずは(アナリストが書いた)報告書を読んでほしい」と話したと伝えられたが、実際に問題となったレポート見てみたが、正直言って余りに内容が希薄であり、楽天の株価レーティングをどう考えるかはともかくとして、そのレポート内容で「売り」とされるならば、怒って当然のことと思えた。アナリストレポートとは数字を羅列すればよいものではなく、予想の根拠やロジックを明確に解説して読み手、投資家を説得する必要があるはずなのに、その点が全く欠けている。また、決算説明会で「そんな質問をなぜするのだろう」とか、逆に「なぜもっと核心をついた質問をしないのだろう」と感じるアナリストもたまに見かける。やはり、銘柄を考える時は、自分自身でしっかりと確認しなければならないし、「市場予想を下回ったので売り」は“買い”の場合が多いのかも、と考えるところでもある。

(中島)

今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
クリックして拡大


国内株取引のリスク
株価の変動、および為替の変動等(外国株式の場合)により損失が生じるおそれがあります。
国内株取引の手数料について
国内株の手数料は多岐に渡っているため、このスペースに表示するのが難しいため、詳細は国内株の「手数料とリスクについて」でご確認ください。
株式は、クーリング・オフの対象にはなりません
詳しくは手数料とリスクについてをご覧ください。