公開買付について

公開買付(TOB)に関する基礎知識

香港市場では日本に比べ公開買付(TOB)が盛んに行われます。公開買付をめぐる制度が日本と違うためであり、日本人投資家には馴染みの薄いものと言えます。ここでは公開買付の概要と一般的な対応策について紹介します。

公開買付・非公開化の種類

ボランタリー・オファー(任意公開買付)

上場企業に対する支配力強化や完全買収(非公開化)を目的とする公開買付。買付対象は買付者が保有していない全部の株式。株主の応募を促すため、提示価格は一般的に直近株価を上回る水準に設定される。

マンダトリー・オファー(義務的公開買付)

買付者の義務として実施する公開買付。上場企業に対する買付者の支配力が一定の水準に達した場合に義務として実施される。買付対象は買付者が保有していない全部の株式。提示価格は買付者による過去6カ月以内の当該株式の最高取得価格以上に設定し、現金のみでの選択肢を設ける必要がある。

パーシャル・オファー(部分的公開買付)

支配力の強化を目的とした公開買付。買付対象は買付者が設定した一定数量の株式に限られる。株主の応募を促すため、提示価格は一般的に直近株価を上回る水準に設定される。ただ、買付株数に限りがあるため、これに応じた場合は投資家の持ち株が売買単位未満となる可能性が極めて高い。

スキーム・オブ・アレンジメント(会社法に基づく非公開化)

上場企業の完全買収(非公開化)などを目的とした「会社法」に基づく資本再編。買収計画者は提示した価格の対価を支払うことと引き換えに、未保有株を消却することで、目的を達成する。株主総会や裁判所の承認などが必要。この方法は上場企業の登記地が英米法体系の国・地域(バミューダ諸島、ケイマン諸島、香港、豪州など)の場合に採用されることがある。

公開買付の提示価格

ボランタリー・オファー、パーシャル・オファー、スキーム・オブ・アレンジメントの場合、株主の応募を促すため、提示価格は直近株価を上回るのが一般的。状況によっては、提示価格が途中から引き上げられることもあります。一方、マンダトリー・オファーは買付者の意思とは無関係に、義務として実施されます。多くのケースで買付者に対象企業を買収する意思はありません。このため買付者は公開買付の実施による財務負担を避けるため、応募する株主の数を減らす狙いから、直近株価を下回る水準に提示価格を操作する傾向があります。

対価

対価は現金だけではなく、有価証券の場合もあります。ただし、有価証券は上場株式とは限りません。未公開株、転換社債、債務証券のようなケースもあります。こうした対価だった場合、お客様が受け取ることができないこともあります。

前提条件

一般的に公開買付・非公開化の計画には、複数の前提条件がともないます。こうした前提条件がクリア(達成)、あるいは免除されない限り、株主が買付に応じたとしても、買付者による買い取りは実行されません。一般的な前提条件としては、応募株数が議決権ベースで一定の条件を満たすことなどがあります。場合によっては、政府当局の承認、企業に対する調査などがともなうこともあります。スキーム・オブ・アレンジメントの場合は、一定比率の株主の賛同を得ることが必要であるうえ、裁判所の許可が必要となります。そのルールは上場企業の登記地によって若干異なります。

手数料等

実際に発生した現地コストは、お客様にご負担いただきます。主に現地手数料と印紙税に分別されます。現地手数料は弊社お客様合計の応募株数などに基づき計算されるため、応募する段階では確定できません。印紙税は株式の譲渡・売買などに際して発生し、売り手側と買い手側がそれぞれ負担することになります。株式が直接消却されるスキーム・オブ・アレンジメントの場合、株式が譲渡されないため、印紙税の支払義務は発生しません。また、印紙税が発生しても、買付者がお客様の分まで負担することもあります。なお、対価が株式となっている場合、お客様にその「買い手」として印紙税を支払う義務が発生する場合もあります。

未公開株を保有する可能性

上場企業の登記地が先進国や租税回避地域だった場合、大多数の株式を掌握した買付者に、強制買取権が付与されることがほとんどです。強制買取権を買付者が行使した場合、株主の意思にかかわらず、全部の株式を買い取ることが可能となります。これにより買付に応募しなかった株主が、未公開株を保有するリスクはなくなります。ただし、上場企業の登記地が強制買取権を認めない国・地域(中国本土など)だった場合、応募しなかった株主が未公開株を保有することになる可能性があります。

株価への影響

提示価格が計画発表前の直近株価を上回る場合

市場では提示価格を大きく下回る値段で持ち株を売却する株主が少なくなります。このため株価は提示価格に近づくかたちで上昇します。ただし、前提条件のクリア(達成)が危ぶまれると、株価は提示価格から遠ざかる傾向となります。前提条件がクリア(達成)できなかった場合、提示価格が株価に及ぼしていた影響はなくなります。状況によっては、株価は提示価格から離れるかたちで下落します。

提示価格が計画発表前の直近株価を下回る場合

株価への影響はほとんどありません。ただし、株価が提示価格に近づくかたちで下落した場合、市場では提示価格を下回る値段で持ち株を売却する株主が少なくなります。このため提示価格は下値支持線のような役割を果たすようになります。

中国匯源果汁(01886.HK)に対するコカ・コーラのTOB

投資家の選択

買付者が非公開化(完全買収)を目的としている場合

前提条件がクリア(達成)されていない場合、市場での株価が満足できる水準に上昇していれば、すぐに売却するという選択肢があります。仮に前提条件がクリア(達成)できなかった場合、直近の水準に比べ下落する可能性があるためです。前提条件をクリア(達成)している場合、上場企業の登記地が買付者に強制買取権を付与しない国・地域であれば、未公開株を保有する可能性があるため、すぐに応じる、あるいは売却する必要があります。

買付者が非公開化(完全買収)を目的としていない場合

提示価格が株価を上回る水準であれば、応じるという選択肢があります。ただし、公開買付の完了後も、株価が上昇する可能性もあるので、熟考する必要があります。